金正日総書記革命活動史

第6章 人民大衆中心の朝鮮式社会主義を固守するために

第1節 社会主義偉業を固守し前進させるための
思想・理論活動を展開

 1990年代の前半、金正日総書記は、社会主義の偉業を固守し前進させるために精力的な思想・理論活動を展開した。

 金正日総書記は、次のように述べている。

 「あらゆる敵との熾烈な闘争のなかで社会主義を擁護し発展させるためには、時代と革命発展の要請に即応して労働者階級の革命思想と理論をさらに発展させ、完成しなければなりません」

 1980年代末から1990年代初めにかけて、人民の自主偉業、社会主義の偉業は、帝国主義者と反動勢力の悪辣な挑戦に直面した。一部の社会主義国は、改革、改編の旋風を巻き起こして社会主義を急速に変質させ、資本主義復活の道を進んだ。そうして、ソ連と東欧諸国で社会主義が次々と崩壊し、資本主義が復活するという異常事態が発生し、これを奇貨として帝国主義者と反動勢力は、社会主義の「終末」について喧伝し、社会主義の理念をこきおろした。

 社会主義建設が深化するにつれて、従来の労働者階級の革命思想と理論、特に、社会主義建設理論の制約性もいっそう顕在化した。

 こうした情勢の要求を深く洞察した金正日総書記は、1990年5月30日と12月27日に党中央委員会の責任幹部におこなった演説『社会主義の思想的基礎に関する諸問題について』『わが国の社会主義はチュチェ思想を具現した朝鮮式の社会主義である』と、1991年5月5日の党中央委員会の責任幹部への談話『人民大衆中心の朝鮮式社会主義は必勝不敗である』など多くの著作で、朝鮮式社会主義の本質的特徴と優越性、その不抜の威力の源泉を明らかにした。

 総書記はまず、朝鮮の社会主義は、偉大なチュチェ思想を思想的基礎としている独特な社会主義であることを論証した。

 社会主義は、労働者階級の革命思想にもとづく社会であり、社会主義の発展はその基礎となる思想・理論の科学性、革命性、現実性によって保証される。朝鮮の社会主義は、最も科学的で革命的な労働者階級の革命思想、チュチェ思想にもとづく独特な社会主義である。朝鮮の社会主義はチュチェ思想に基づいているがゆえに、帝国主義者と反動勢力のいかなる圧力や妨害にも動揺することなく、勝利の道を確信をもって前進している。

 総書記は次に、朝鮮式社会主義の優越性を明らかにした。

 金正日総書記は、次のように述べている。

 「朝鮮式社会主義の根本的優越性は、人間中心の社会、すべてを人間を中心に考え、人間に奉仕させる社会だというところにあります。朝鮮式社会主義の優越性は、人間中心の思想であるチュチェ思想によって規定される優越性です」

 総書記は、朝鮮の社会主義は、人間本来の要求を最も立派に具現している優れた社会主義であることを明らかにした。自主性、創造性、意識性は、社会的人間の本源的属性であり、集団主義は社会的集団のなかでのみ自己の運命を切り開いていける社会的人間本来の要求である。朝鮮式社会主義は、チュチェ思想によって明らかにされた、こうした社会的人間本来の要求を最も立派に具現している優れた社会主義である。

 総書記は、朝鮮の社会主義は、人民大衆に自主的で創造的な生活を真に保障する最も優れた社会制度であることを明らかにした。

 政治生活と経済生活、思想・文化生活は、社会生活の基本分野をなし、勤労人民大衆が社会生活のこれらの分野で自主的権利と創造的能力をどれほど高い水準で享受し発揮するかは、社会の進歩性と優越性を評価する重要な尺度となる。

 チュチェ思想にもとづく朝鮮の社会主義の優越性は、単に国家主権と生産手段の主人が人民大衆であるというところにのみあるのではなく、政治生活、経済生活、思想・文化生活の各分野で人民大衆に自主的で創造的な生活を実質的に保障するというところにある。

 まさにここに、資本主義的生活に比べた社会主義的生活の優越性、物質中心の世界観にもとづいて建設した他国の社会主義に比べた朝鮮式社会主義の最大の優越性がある。

 次に総書記は、朝鮮の社会主義の不抜性と永遠の生命力を明らかにした。

 社会主義社会を前進させる主体は人民大衆であるが、人民大衆は党と領袖のまわりに一つにかたく団結してこそ革命の自主的な主体としての役割を果たし、社会主義建設を成功裏に遂行することができる。社会主義制度が確立したからといって、全社会の一心団結がひとりでに実現するわけではない。人民大衆に正しい指導思想と科学的な戦略戦術を提示し、彼らを意識化、組織化する事業は、労働者階級の卓越した領袖と党によってのみ遂行される。卓越した領袖と洗練された党の指導を受けることによって、全人民が党と領袖のまわりに一つの思想、一つの意志でかたく結束した、領袖、党、大衆の一心団結が実現し、この一心団結は、社会主義の不抜性の源泉、社会主義の永遠の生命力となる。

 総書記は、1992年1月3日の党中央委員会の責任幹部への談話『社会主義建設の歴史的教訓とわが党の総路線』で、一部の国で社会主義が挫折した原因とその教訓、社会主義建設で朝鮮労働党が堅持している総路線を全面的に明らかにした。

 まず、一部の国で社会主義が挫折した原因を解明し、それから得られる教訓を詳細に分析した。

 金正日総書記は、次のように述べている。

 「社会主義を建設していた一部の国で社会主義が挫折した根本的な原因は、一言でいって、社会主義の本質を歴史の主体である人民大衆を中心にして理解していなかったために、社会主義建設における主体の強化と主体の役割の向上の問題を基本としてとらえることができなかったところにあります」

 社会主義社会は、人民大衆が主人となった社会であり、一つに統一団結した人民大衆の創造力によって発展する社会である。人民大衆が主人としての高い自覚と能力をもち、同志として団結してたたかうところに、あらゆる搾取社会と区別される社会主義社会の本質があり、社会主義社会の発展を促す原動力がある。そのため、人間改造を優先させて革命の主体を強化し、大衆の革命的熱意と創造力を最大限に発揮させて主体の役割を強めることが、社会主義建設を成功裏に推進する根本的な方法となる。しかし、社会主義を建設していた一部の国の党はこの真理を正しく理解していなかったため、革命の主体を強化し、その役割を強めることをおろそかにした。まさに、ここに社会主義が挫折した根本的な原因がある。

 総書記は、一部の国で社会主義が挫折した原因はまた、社会主義と資本主義の質的な差異に目を向けず、一貫して社会主義の根本原則を堅持しなかったところにあると指摘した。

 人民大衆の自主的要求と利益を擁護し具現することは、社会主義建設において一貫して堅持すべき根本原則である。人民大衆の自主的要求と根本的利益に合わせて社会主義を建設するためには、労働者階級の党を組織的、思想的に強化し、革命と建設にたいする党の指導を確固と保障し、社会主義政権の機能と役割を絶えず高めるとともに、社会主義的所有を固守し発展させ、帝国主義と断固たたかわなければならない。しかし、かつて社会主義を建設していた一部の国は、社会主義建設の途上に横たわる一時的な難関を前にして動揺し、帝国主義者の圧力に屈し、やがて革命的原則を譲歩し放棄するようになったため、結局は社会主義の挫折と資本主義の復活をもたらした。

 総書記は、一部の国で社会主義が挫折した今一つの原因は、社会主義国の党同士の関係において、自主性にもとづく国際連帯を強めなかったところにあると指摘した。

 自主性にもとづいて、団結、協力し、国際連帯を強めながら自主性を堅持することが、社会主義国の党同士の関係において守るべき基本原則である。

 総書記は、一部の国で社会主義が挫折した原因を全面的に分析したうえで、歴史的経験は、社会主義にたいする確信と正しい指導思想をもって革命の主体を絶えず強化し、いかなる環境のもとでも社会主義の原則を固守し、自主性にもとづく同志的団結と協力を強めていく時、社会主義偉業は勝利の道を前進するが、そうしない時には紆余曲折と挫折を免れないことを示していると指摘した。そして、これは、人類が社会主義へ進む過程で得た深刻な教訓であると述べた。

 総書記は次に、社会主義建設に関する朝鮮労働党の総路線とその正当性を解明した。

 総書記は、人民政権を強化し、その機能と役割を絶えず高め、思想、技術、文化の3大革命を徹底的に遂行することが、金日成主席が打ち出した社会主義建設の総路線であると定義づけた。そして、社会主義建設の総路線は、チュチェ思想を具現して社会主義偉業を達成し、人民大衆の自主性を完全に実現する道を明らかにした科学的で革命的な路線であると指摘した。また、この路線は朝鮮の社会主義建設に立派に具現されており、その正当性と生命力は実践を通じて実証されていることを論証した。

 総書記は、社会主義を誹謗中傷する敵のあらゆる詭弁の不当性と、それを粉砕して社会主義偉業をあくまで達成するうえで提起される原則的問題を明らかにした。

 1993年3月1日、総書記は、朝鮮労働党中央委員会機関誌『勤労者』に『社会主義にたいする誹謗は許されない』と題する談話を発表した。

 金正日総書記は、次のように述べている。

 「社会主義を『全体主義』『兵営式』『行政命令式』と非難するのは、途方もない詭弁である」

 総書記は、社会主義を「全体主義」だと非難する敵の詭弁の不当性をあばいた。

 全体主義は、もともとファッショ独裁者の政治理念として奉仕したものである。ひところヒトラーやムッソリーニのようなファッショ独裁者は、欺瞞的な「国家社会主義」のスローガンをかかげ、民族全体または国家全体のためにはいかなる労働運動も階級闘争も容認してはならないとして、勤労人民大衆の基本的な民主的自由と権利まで抹殺し、前代未聞の野獣じみた暴圧的政治を実施した。

 全体主義の反動的本質は、個人は全体に服従すべきだという美名のもとに、反動的支配階級の貪欲な利益のために勤労人民大衆の利益を犠牲にすることにある。敵が持ち出した全体主義の全体というのは、勤労人民大衆全体ではなく、ごく少数の特権階層を意味した。にもかかわらず、人民大衆があらゆるものの主人となっている社会主義を「全体主義」だと非難するのは、つまるところ、人民大衆の要求を反映した最も進歩的な理念をファッショ支配層の反動的な理念と同一視する途方もない詭弁である。

 総書記は、社会主義を「兵営式」だと非難する反動的詭弁の不当性をあばいた。

 社会主義は人間本来の要求を反映した最も進歩的な思想であり、社会主義制度は人民大衆に自主的で創造的な生活を思う存分享受させる最も先進的な制度である。人民大衆の自主性、創造性、意識性を抑制するのは社会主義制度ではなく、勤労人民が資本の奴隷となっている資本主義制度なのである。したがって、社会主義を「兵営式」だと中傷するのは、白を黒と言う反社会主義者の悪宣伝である。

 総書記は、社会主義を「行政命令式」だと非難する詭弁の不当性を明らかにした。

 概して、行政命令式の管理方法は、搾取社会で特権階級の要求を強権をもって押し付ける古い支配方法である。社会主義社会では、国家と社会の主人となった人民大衆が管理においても主人の地位を占め、主人としての役割を果たしている。かつて、社会主義を建設していた一部の国であらわれた行政命令式管理方法は、社会主義社会の本性から生じたのではなく、搾取社会から受け継がれた遺物である。したがって、社会主義を「行政命令式」だと非難するのは、全く理屈に合わない詭弁である。

 この著作で総書記は次に、社会主義偉業を固守し、あくまで達成するうえで提起される重要な原則的問題を明らかにした。

 総書記は、社会主義偉業を擁護しあくまで達成するためには、社会主義思想を絶えず発展させて完璧なものにし、それを人民大衆にしっかりと体得させ、彼らが社会主義を確固たる信念とするようにしなければならないと指摘した。そして、社会主義偉業を固守し、絶えず輝かしていくためには、人々が社会主義を守ることを道徳的義務とみなすようにしなければならないと述べた。また、社会主義偉業を擁護しあくまで達成するためには、労働者階級の党と国家が、社会主義建設を立派に進めて、その優越性を強く発揮させることに力を集中させなければならないと強調し、社会主義社会の本質的な優越性を強く発揮させるための具体的な方途を示した。

 次いで総書記は、社会主義を固守するためには、社会生活の各分野で集団主義の原則を具現しなければならないと指摘した。

 社会主義を「全体主義」「兵営式」「行政命令式」だと誹謗中傷するあらゆる反社会主義的悪宣伝は、結局、社会主義的集団主義を中傷し、ブルジョア個人主義を賛美するものである。それゆえ、社会生活の各分野で個人主義に反対し、集団主義の原則を具現することは、社会主義偉業を固守しあくまで達成するための重要な方途となる。

 金正日総書記は、1990年代前半の数年間の思想・理論活動を通じて、一時、胸の痛む失敗と挫折を経ていた社会主義運動を新しい思想的基礎のうえで一日も早く立て直し、社会主義偉業を高揚へと導くことに大いに寄与した。





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