数日後、西海地区の工場、企業の見学実習に発つことになりました。これに関連して、今日は社会主義経済建設における若干の問題について述べたいと思います。
社会主義経済建設で提起される重要な問題は、国の経済的基盤構築と人民生活向上の問題を正しく結びつけて解決していくことです。
人民生活を向上させるからといって経済的基盤をかためることをおろそかにしてはならず、経済的基盤をかためるからといって人民生活に無関心であってもなりません。当面の人民生活の問題についてだけ考え、経済的基盤の構築をおろそかにすれば、国の経済的威力を強化することができないのは言うまでもなく、拡大再生産を保障することができず、したがって、人民の明日の幸福を期待することはできません。かつて、反党分派分子は、わが党が示した社会主義経済建設の基本路線に文句をつけ、当面の人民生活を口実に国の経済的基盤をかためることに反対しました。人民生活が絶えず向上するのは社会主義社会の合法則的現象ですが、国の経済的基盤をかためて拡大再生産を保障しなければ人民生活を向上させることはできません。一方、経済建設にだけ力を入れ、人民生活の向上に関心を払わないのは、社会主義建設の目的に反します。人民生活を向上させるのは、社会主義基本経済法則の要求であり、主権を握った労働者階級の党が経済を建設する目的もここにあります。
経済的基盤の構築と人民生活の向上の関係は、結局、社会主義経済建設における将来の利益と当面の利益との相互関係の問題に関連しています。党が経済活動を指導するにあたっては、経済的基盤構築の問題と人民生活向上の問題を正しく調整し、人民の将来の利益と当面の利益を適切に結びつけていくことが重要です。
経済的基盤構築と人民生活向上の問題を正しく結びつけて解決するには、経済活動において蓄積と消費の相互関係を合理的に調整する必要があります。国の経済的基盤をかためる問題と人民生活を向上させる問題は、蓄積と消費の関係の問題と直接結びついています。国民所得のうち、蓄積は主に国の経済的基盤をかためるための元手であり、消費は人民生活の問題を解決するための元手です。蓄積を増やしてこそ、国の経済的基盤をかためて拡大再生産を保障することができるのであり、消費があってこそ、当面の人民生活を保障することができるのです。
蓄積と消費の相互関係を調整するうえで重要なのは、蓄積を優先的に増やしながら同時に消費を増やす原則を堅持することです。これは、蓄積と消費の均衡の法則の要求です。
いま、学界では、社会主義的蓄積の法則について論じ蓄積と消費の均衡関係を同じように説明していますが、社会主義的蓄積の法則と蓄積と消費の均衡の法則は相異なる法則です。蓄積の法則が、蓄積の成長が消費にどのような作用を及ぼすかを明らかにするならば、蓄積と消費の均衡の法則は、国民所得が蓄積と消費にどのように分割されるかを明らかにします。
蓄積と消費の均衡は、蓄積を優先的に増やしながら同時に消費を増やすという原則にもとづいて図るべきです。この原則に立って蓄積と消費の均衡を正しく調整してこそ、人民経済の発展と勤労者の当面の需要の充足、社会共通の利益と勤労者の個人的利益を正しく結びつけることができるのです。経済活動をおこなうにあたっては、蓄積と消費の均衡の法則の要求に即して蓄積を優先的に早く増やしながら、国民所得の多くの分が消費にふり向けられるようにしなければなりません。
わが党はこれまで、社会主義経済法則の要求に即して蓄積と消費の均衡を合理的に調整してきました。党が蓄積と消費の均衡を適切に調整してきたので、国の自立的経済の土台をかためながら当面の人民生活の問題も円滑に解決し、今後、人民生活をさらに向上させるための大きな元手を準備することができたのです。
経済的基盤の構築と人民生活向上の相互関係の問題を解決するうえで重要なのはまた、生産手段生産と消費財生産の相互関係を正しく解決することです。
生産手段生産と消費財生産の相互関係は、経済的基盤構築と人民生活向上の相互関係と密接に関連しています。国の経済的基盤をかためるためには、それに必要な生産手段がなければならず、人民生活の問題を解決するためには消費財がなければなりません。生産手段の生産によって経済的基盤をかためるための現物的保証が得られ、消費財の生産によって人民生活の問題を解決するための現物的保証が得られるのです。
社会主義経済建設においては、生産手段生産の優先的成長を保障する原則にもとづき、生産手段生産と消費財生産の均衡を図る必要があります。生産手段生産の優先的成長は拡大再生産の一般的法則です。生産手段生産の優先的成長を保障し、それにもとづいて消費財生産との均衡を合理的に保つべきです。
金日成同志は、重工業を優先的に成長させながら、同時に軽工業と農業を発展させることを社会主義経済建設の基本路線として提示しました。重工業の優先的成長と軽工業と農業の同時的発展は、社会主義的拡大再生産の合法則性です。
社会主義経済建設では、社会主義的拡大再生産の合法則的要求に即して重工業を優先的に成長させながら、同時に軽工業と農業を発展させる方向で生産手段生産と消費財生産の均衡を図る必要があります。そうしてこそ、国の経済的基盤をかためながら、同時に人民生活の問題も円滑に解決することができるのです。
社会主義経済建設における重要な問題は、経済発展の速度と均衡を合理的に調整することです。
社会主義社会では、経済発展の絶え間ない速い速度の法則が作用します。この社会主義経覇発展の法則は、人民経済の各部門を速い速度で発展させることを求めます。
経済を速い速度で発展させるというのは容易なことではありません。だからといって、経済発展の速度を遅らせ、ぐずぐずするのは革命家の活動態度ではありません。
経済を速い速度で発展させるには、人民経済の合理的な均衡を保障する必要があります。金日成同志は、経済発展の速い速度は合理的な均衡を前提とすると述べています。均衡を保ってこそ、社会的労働を合理的に利用して生産を早く発展させることができるのです。
合理的な均衡を保ちながら経済を速い速度で発展させることは、経済活動で堅持しなければならない原則的要求です。
速度と均衡の問題を正しく解決するには、計画化を周到におこなわなければなりません。
社会主義経済は、計画経済なので、経済活動は計画化から始まります。計画化は、需要と源泉をかみ合わせる活動です。計画化を綿密におこなって人民経済の需要と供給源をしっかりかみ合わせてこそ、経済発展における不均衡を防ぎ、国の経済全般を計画的に、均等に発展させることができるのです。
計画化の基本は、人民経済の均衡を保障することです。こうした意味で、計画化は人民経済の均衡を保障するための経済組織活動だと言えます。
人民経済の均衡を保障するには、計画化において科学性と現実性を保障しなければなりません。人民経済計画は、労働力、労働手段、労働対象、そして、資金の供給状況を正確に見積もって現実性のあるものにしなければなりません。労働者の技術・技能水準、労働力の供給状況、設備の状態、原料や資材、資金の供給状況などを正確に見積もって計画を立てるべきであって、こういったことを具体的に見積もらずにいい加減に計画を立てると、正しい均衡を保障することができず、計画そのものが無意味なものになってしまいます。
均衡を保障することが計画化の基本であるからといって、消極的で保守的な計画を立ててはなりません。目標を低く定めると、均衡を保障するのも楽で、計画を立てるのも容易です。金日成同志が述べているように、計画性と均衡性は、それ自体に目的があるのではなく、経済発展の速い速度を保障するための手段なのです。計画は、必ず科学的かつ現実的なものでありながらも、経済発展の速い速度を保障しうる積極的で動員力のあるものとならなければなりません。
計画は経済発展の予定であって、現実ではありません。速度と均衡の相互関係に即して正確な計画を立てた後は、それを無条件に実行する対策を講じなければなりません。
作成された計画を実行するうえで重要なのは、潜在力を積極的に動員することです。
生産成長の潜在力には、恒久的な潜在力と一時的な潜在力があります。遊休労働力や遊休資材などは主に復興期に多く存在する一時的な潜在力です。社会主義経済を絶えず速い速度で発展させるうえでの基本は、社会主義建設の全期間を通じて存在する恒久的な潜在力です。
経済幹部は、生産成長の恒久的な潜在力が何であるかをはっきり知り、それを引き出すための活動に積極的に取り組むべきです。社会主義社会には、それに固有な生産成長の無限の潜在力と可能性があります。生産成長の重要な潜在力は、人々の思想と技術、仕事の手配にあります。
潜在力を探し出すようにと言われると、少なからぬ人が潜在力は戦後の復興建設の時期にあったのであって、いまは潜在力があるはずがないと考えますが、これは生産成長の恒久的な潜在力を見ようとしないことに起因しています。人々の思想を啓発し、技術を発達させ、仕事の手配を綿密におこなうことが、すなわち生産を早く発展させる潜在力です。
社会主義経済発展の絶え間ない速い速度の法則、人民経済の計画的・均衡的発展の法則の要求に即して計画化を綿密におこない、潜在力を積極的に引き出せば、人民経済の均衡を主動的に保ちながら、経済発展の速い速度を保障することができます。
これまでわが党は、社会主義経済建設を指導するうえで速度と均衡の問題を円滑に解決してきました。
戦後の復興建設を短期間に終え、チョンリマ(千里馬)大進軍の過程で工業生産を年に40〜50%ずつ高めて5カ年計画を期限前に超過遂行したことは、わが国で社会主義経済建設が非常に速い速度で進められていることを示しています。
経済発展の速い速度を保障しながら均衡を保つのは難しいことです。この5カ年計画の期間にチョンリマの速度で経済を発展させたため、一部の部門では不均衡が生じる恐れがありました。わが党はこうした問題を適時にとらえ、1960年を調整期と定め、経済発展の速い速度を引き続き維持しながら均衡の調整を図りました。
社会主義経済建設において重要なのはまた、種々の手段を正しく利用することです。
社会主義経済建設に利用される手段のなかには、社会主義制度の本性を反映したものもあれば、旧社会の遺物と関連しているものもあります。
社会主義制度は、その本性において資本主義と根本的に異なるすぐれた社会制度です。社会主義社会には、この制度の本性を反映した経済法則と範疇、経済的手段が存在します。一方、社会主義社会は共産主義の低い段階であり、ここには旧社会の遺物もあり、それを反映した経済法則や範疇もあります。こうした特性を見ずに一面に偏して経済建設を指導すると、左傾的または右傾的な誤りを犯しかねず、経済を正常に発展させることができません。いま、一部の国では、社会主義建設を指導するうえでさまざまな偏向があらわれ、重大な結果をまねいています。我々は他国に現れている偏向を直視し、左右の誤りを犯さないようにしなければなりません。経済幹部は、社会主義社会の特性に即して種々の手段を正しく組み合わせる原則にもとづいて経済活動を指導すべきです。ここでいろいろな問題が提起されるでしょうが、そのうち幾つかの問題に限って述べたいと思います。
経済活動において、労働の結果に対する政治的・道徳的刺激と物質的刺激を正しく組み合わせるべきです。
経済建設を立派に進めるには、勤労者の労働意欲を高めなければなりません。社会主義社会において、勤労者の労働意欲を高める手段は政治的・道徳的刺激と物質的刺激です。
政治的・道徳的刺激は、社会主義制度の本性に関連する刺激の形態であり、物質的刺激は人々の頭の中に古い思想が残っている社会主義社会の過渡的特性に関連する刺激の形態です。
政治的・道徳的刺激と物質的刺激の手段を利用するうえで左右の偏向を犯してはなりません。政治的・道徳的刺激を無視して物質的刺激だけを重視するのは、社会主義制度の本性と優越性を理解していないことに起因する右傾的偏向です。いま、修正主義者が持ち出している利潤本位の企業管理方法は、物質的刺激を第一とすることから生じたものです。これとは反対に、政治的・道徳的刺激だけを重視し、物質的刺激を軽視するのは、共産主義の高い段階と区別される社会主義社会の特性を理解していないことに起因する左傾的偏向です。政治活動だけを強調し、労働による分配を正しくおこなわなければ、人々の頭のなかに古い思想が残っている状況のもとで、働かずに遊んで暮らそうとする人があらわれかねません。
我々はこうした左右の偏向をともに克服し、労働の結果に対する政治的・道徳的刺激と物質的刺激を正しく結びつけなければなりません。二つの刺激を結びつけるうえで守らなければならない基本原則は、政治的・道徳的刺激を優先させながら、これに物質的刺激を正しく結びつけることです。こうしてこそ、社会主義経済建設に向けて大衆を確実に立ち上がらせることができるのです。
社会主義社会の特性に即して計画的管理の原則を守るとともに、商品・貨幣関係、価値槓杆の利用を適切に組み合わせていくことが重要です。
社会主義社会は、経済を計画的に管理、運営することを求めます。一方、社会主義社会には商品・貨幣関係が残っているのですから、経済管理においてそれを利用しなければなりません。
一部の人は、経済を計画的に管理、運営しながら、商品・貨幣関係、原価や利潤、収益性などの価値槓杆を利用することは矛盾ではないかと考えるかもしれませんが、そうではありません。社会主義社会に商品・貨幣関係が残っている以上、経済管理の面でそれを無視してはなりません。いま、一部の経済幹部は、経済管理において価値法則を利用するのは右傾的偏向であるかのように考え、商品・貨幣関係を利用するのをためらっていますが、これは経済知識が足りないからです。我々が修正主義を批判するのは、修正主義が人民経済の計画的管理の原則を無視し、価値法則の意義を誇張してその利用を絶対化するからであって、価値法則の利用そのものに反対しているわけではありません。工場に出向くと、経済幹部のなかに価値法則についてよく知っている人は数えるほどです。そのため、価値法則を利用するのは何か大きな誤りでも犯すことかのように考えています。社会主義社会の特性に即して価値槓杆を正しく利用しなければ、節約制度を強化することができず、企業管理を合理化することもできません。
価値法則を利用するからといって、それを原則を曲げて押し立ててはなりません。社会主義経済は、計画経済であるので、価値法則は人民経済の計画的・均衡的発展の法則の要求に従って利用しなければなりません。これは、価値槓杆の利用を厳格に計画化し、価値法則を人民経済の計画的・均衡的発展の法則の要求を実現するための補助的手段として利用しなければならないということです。人民経済の計画的・均衡的発展の法則の要求を無視し、価値法則の作用を放置し、その利用を絶対化すると、企業管理が資本主義化し、経済生活において自然発生性と無政府性が助長されます。
我々は、社会主義制度の本性に即して経済活動で計画的管理の原則を堅持し、商品・貨幣関係と価値槓杆の利用を正しく組み合わせなければなりません。
このほかにも、人民生活の問題を解決するうえで労働による分配と国家と社会的負担による追加的恩恵を正しく結びつけることなど、いろいろな問題が提起されています。
社会主義経済建設を立派に進めるには、政治的指導と経済的・技術的指導を正しく結びつける必要があります。
社会主義経済建設は、党の政治的指導によってのみ成功裏に進められます。社会主義経済建設は、党の経済政策を貫徹する過程です。党の経済政策は、人民大衆の経済的要求と利益、社会主義社会において作用する経済法則の要求を具現しています。党の政治的指導によってのみ、経済建設において党の政策的要求を実現し、人民大衆の利益と社会主義の法則に即して経済を建設することができるのです。党の政治的指導がなければ、舵のない船のように経済は正しい方向から外れ、目標なしに進むようになります。
社会主義経済建設は、自然を改造するための人民大衆の創造的な闘争過程です。人民大衆の自発的な創造的勤労闘争によってのみ、社会主義経済建設の課題を成功裏に遂行することができるのです。また、社会主義社会の嚮導的力量である党の政治的指導によってのみ、広範な人民大衆を党のまわりに結集し、社会主義経済建設において彼らの自発性と創意性を余すところなく発揮させることができるのです。
経済建設に対する党の政治的指導には、行政・経済機関の経済的・技術的指導が結びつかなければなりません。
自然を改造するためには、経済法則と自然法則をよく理解し、それに即して経済活動を指導しなければなりません。自然の運動過程には自然の法則が作用し、それを改造するための人々の闘争過程には経済法則が作用します。自然を改造する過程は、具体的な自然の法則を認識、利用する過程であり、客観的経済法則の要求を実現する過程です。経済建設を立派に進めるには、大衆の熱意だけでは不可能であり、それに客観的法則の要求に即応した経済的・技術的指導が裏打ちされなければなりません。
経済的・技術的指導は、行政・経済機関の重要な任務です。経済幹部は経済活動を技術的に指導し、物質的に保障するための活動を周到におこなうべきです。そのためには、豊富な経済知識と技術知識がなければなりません。一時、一部の学生の間に、経済学を専攻する者に技術知識は不要だと考え、技術工学の科目を軽視する傾向が見られました。経済幹部になるためには、経済知識とともに一定の技術知識を身につけなければなりません。いま、一部の工場、企業で経済活動に対する技術指導が満足におこなわれていないのは、幹部が技術に暗いところに主な原因があります。幹部は経済知識と技術知識を身につけていてこそ、経済建設に対する経済的・技術的指導を実質的におこなうことができるのです。
党の指導と国家的指導、政治活動と経済・技術活動を統一的にとらえていけば、経済建設を成功裏に進めることができます。
みなさんは、今度の見学実習期間に工場、企業を見学するだけでなく、社会主義経済建設におけるこのような問題を正しく理解し、工場の管理、運営についても関心を払うべきです。
出典:『金正日選集』増補版1
<参考> 金正日総書記が談話で述べる「槓杆(こうかん)」については、社会主義経済建設における提起であることを念頭に置くことが重要です。
資本主義社会での漢字の一般的な意味としては、「一定点を通る軸を中心に自由に回転し得る棒。ある点に力を加えて、他の点における力と釣り合いをとる装置。また、ある点の動きを他の点の動きに拡大または縮小する装置。梃子(てこ)」と解釈されます。
資本主義社会では、経済用語としての槓杆という概念はありません。
朝鮮・外国文図書出版社発行(1997年4月5日)の「일조사전(日朝辞典)」の項目「こうかん(槓杆)」に次の記述があります。
「価値法則を経済的槓杆として計画的に利用する」
「가치법칙을 경제적 공간으로씨 계획적으로 리용한다」
したがって、資本主義社会では「価値交換」であり、社会主義社会では「価値槓杆」という表現となり、社会主義社会の経済を論じる際に本質的な表現をしているものと理解することが肝要でしょう。
また、資本主義社会の価値法則の問題とは、この社会では、人間の労働がどのような法則にもとづいて分配されるかということになります。
<参考> 朝鮮とソ連の社会主義勝利について。
金日成主席は1958年9月16日、全国生産革新者大会でおこなった演説で次のように述べています。
「こんにち、我が国の都市と農村では、生産関係の社会主義的改造が完成しました。こうして、我々の社会は搾取と抑圧のない社会主義社会になりました。
我々の主要な任務は、共和国北半部の社会主義制度を強化し、それをさらに発展させ、社会主義社会を完全に建設することであります」。
ちなみに、史上初の社会主義国家建設を進めていたソ連では1959年1月27日〜2月5日、ソ連共産党(1952年10月、第19回大会でソ連共産党と改称)第21回臨時大会が開催され、次の確認がされました。
「大会は、(1917年)10月革命以来、党と国民があげた成功を総括することによって、社会主義はソ連邦で完全に最終的に勝利したという重要な結論を引きだした」(『ソ連共産党史』第3分冊 78ページ)。
<参考> 金日成主席の著作、社会主義経済建設について。
金日成主席は1959年12月4日、朝鮮労働党中央委員会総会での結語で、社会主義経済建設について、社会主義制度下の蓄積と消費の問題について、党活動について総括をおこないながら当面の課題について、その方向を示しています。
以下に、語録を紹介します。
「周知のように、社会主義経済は計画なしには一歩も前進することができません。計画的および均衡的発展は、社会主義経済の重要な法則であります。社会主義経済を正しく運営するためには、まず、計画機関がこの法則にもとづいて正しい計画を立てなければなりません」
「人民経済計画は、蓄積と消費、生産手段生産と消費財生産のつりあいが保たれ、工業と農業、工業部門内部、その他、人民経済各部門相互間の均衡が必ず保たれるように立てられなければなりません」
「資本主義経済は、常に、前進と後退、上昇と下降のジグザグをへるのですが、社会主義経済はたえまない前進、たえまない上昇が特徴です。計画は、必ずこの法則にそって立てなければなりません」
「党の指示には無条件服従しなければならず、党の決定はどんなことがあっても義務的に実行しなければなりません」
「社会主義建設においても(戦争にたとえて)やはり、経済発展の一段階をなす大きな課題を遂行し、新たな段階の課題遂行に移行するときには、必ずこれまでの成果をかためる一方、新たな課題を遂行するための準備をととのえなければなりません。特に、ここ数年間、刻苦奮闘して経済を飛躍的に発展させ、第1次5か年計画を2年以上繰り上げて遂行したため、このような準備期間は切実に必要となります」
「重工業を優先的に発展させるというのは、重工業のための重工業を発展させることではありません。その目的は結局、人民経済各部門に機械設備と動力および燃料を供給し、生産力の発展をはかることにあります」
「…農業の機械化は、急速に発展する工業に農業が後れをとらぬよう、すなわち工業と農業の均衡的発展のために必要です」
「社会主義制度下で蓄積の目的はなんでしょうか。拡大再生産のため、工場をさらに増設し、機械をより多く備え、文化厚生施設を設けるなど、結局は勤労者の将来の生活向上をはかるためであります。蓄積は勤労者の当面の消費でないというだけで、実際上はかれら自身のものであり、人民の将来の幸せのためのものなのです」
「…まだ共産主義社会ではありません。かりに、共産主義社会になったとしても働ける人は働くべきであり、遊んで暮らせという法はありません。そのときになっても、やはり労働が基本です」
「社会主義経済と資本主義経済の発展法則は異なっています。こんにち、社会主義経済形態の全一的支配が確立した条件のもとで、我が国の経済は、計画的生産、計画的蓄積、計画的消費によってのみ発展させることができます。一口に言って社会主義経済は、計画的にのみ運営し、発展させることができるのです」
「我が党のすべての政策は、マルクス・レーニン主義の原則を我が国の現実に即して創造的に適用したものです。したがって、我が党の政策と路線は正しく、大きな生命力を発揮しているのです」
「理論を学ぶ目的は、我々がすでに実践している問題をさらに正確かつ深く知るためです。理論を学べば党政策をさらに深く理解し、自分のとぼしい経験から脱し、活動を創造的に発展させることができます。
我々の革命課題は、非常に複雑で多難です。我々は北半部で社会主義を建設し、祖国の平和的統一を実現しなければなりません。この複雑で多難な革命課題を立派に遂行するためには、さらに学ばなければなりません」
「…党活動で重要な問題は、革命的大衆を団結させて不断に教育することです」
<参考> 価値法則について。
エンゲルスの「反デューリング論」は、価値法則の性格を説明し、マルクスの「ルードビィヒ・クーゲルマンへの手紙」は、価値法則に関する一節です。
「我々が見たように、資本主義的生産様式は、商品生産者、個人生産者の社会に入りこんできた。そして、これらの生産者の社会的関連は、彼らの生産物の交換によって媒介されていた。しかし、すべて、商品生産のうえに立つ社会は、そこでは生産者たちが彼ら自身の社会的関係に対する支配力を失っている、ということをその特徴とする。各人は、各自別々に、彼の偶然的生慶手段をもって、彼の個人的交換欲望のために、生産する。誰も、自分の商品と同じものがどれだけ市場に出てくるのか、そのどれだけがそもそも必要とされるのか、を知らない。誰も、自分の個人生産物が現実の需要を見出すかどうか、自分の費用を回収できるかどうか、または、そもそも自分は売ることができるかどうか、を知らない。そこには、社会的生産の無政府がある。しかし、商品生産は、他の各生産形態と同じく、それに特有の、内具の、それから分離されえない諸法則をもっている。そして、これらの法則は、無政府状態に抗して、無政府状態のうちにあって、それを通じて、自己を貫徹する。これらの法則は、社会的関連の唯一のなお存在する形態において、交換において、前景にあらわれ、個々の生産者に対しては競争の強制法則として効力を発揮する。したがって、これらの法則は、この生産者たちには当初は知られていないものであって、長い経験の後に初めてしだいに彼らによって発見されねばならない。かくて、これらの法則は、生産者たちの関与なしに、生産者たちの意に逆らって、彼の生産形態の盲目的に作用する自然法則として自己を貫徹する。生産物が生産者を支配する」(エンゲルス「反デューリング論(II)」 『マルクス・エンゲルス選集』第12巻、18〜19ページ)
「1年といわず2、3週間でさえ労働を止めたら、どんな国民でも死んでしまうということは、子どもでもみんな知っています。同様に、欲望の量が違うにつれて生産物の量が違ってくるが、それは、その生産物の量はそれぞれ一定量の社会的総労働を必要とするということも、どんな子どもでも知っています。社会的労働を一定の比率で配分することの必要は、決して、社会的生産の特定の形態によっては廃棄されず、ただ、その現象様式を変えうるだけだということは自明のことです。自然法則は、一般に廃棄されうるものではありません。歴史的に状態が異なるに従って変化しうるのは、ただ、自然法則がおこなわれる形態だけです。そして、社会的労働のあいだの関連が個人的労働生産物の私的交換として実現される社会状態においては、こうした労働の比例的配分がおこなわれる形態が、まさにこれらの生産物の交換価値なのです。
価値法則がどのようにしておこなわれるかを展開すること、これこそが科学です」(マルクス「ルードビィヒ・クーゲルマンへの手紙」 『マルクス・エンゲルス選集』第4巻、185〜186ページ)
「商品の価値は、その商品を生産するのに要する、その社会の平均的な労働時間によって決まるのである。労働時間によって交換比率が決まるという法則を価値法則という」(『働くものの経済学』 30ページ)
<参考> 資本主義社会のしくみについて。
「いまの日本は、資本主義社会です。資本主義社会とはどのような原理にもとづく社会であるのかを知ることが、現在の世界と日本を正しくみるうえで大切です。
資本主義社会は、商品生産にもとづく社会です。商品生産とは、交換を目的とする生産のことです」(『自主・平和の思想』 188ページ)
<参考文献> 『マルクス・エンゲルス選集』第12巻 新潮社発行 1972年版
『マルクス・エンゲルス選集』第4巻 新潮社 1972年版
『自主・平和の思想』 白峰社 2015年1月20日発行
『ソ連共産党史』第3分冊 1986 プログレス出版所発行
『働くものの経済学』 日本社会党中央本部機関紙局 1980年5月15日発行
『資本論入門』 岩波書店 1967年11月10日発行
『学習「賃労働と資本」』 労働大学 1976年3月1日発行
『経済学入門』 労働大学 1975年12月20日発行
『資本論解説』 労働大学 1975年8月15日発行
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