金 日 成

国連貿易開発会議事務局長一行との談話
−1984年3月15日− 
 
 訪朝された国連貿易開発会議の事務局長一行を熱烈に歓迎します。

 私はきょう、あなたがたと知り合いになり話し合えるようになって非常にうれしく思います。

 あなたがたは、世界各国の経済発展をはかる進歩的で正義の活動をしています。私は、極めて複雑な国際情勢のもとで、あなたがたが発展途上諸国、第3世界諸国の発展のために多くの努力を傾けていることに対し高く評価し、あなたがたの正義の活動を積極的に支持するものです。

 私は、あなたがたが関心をもっている国際情勢と南南協力問題について述べようと思います。

 現在、発達した資本主義諸国は、深刻な経済危機に見舞われています。久しい前からはじまった発達した資本主義諸国の経済危機は日を追って深まっており、それは新たな世界戦争の危険を増大させています。

 過去の歴史をみれば、独占資本家は、深刻な経済危機を脱するために戦争を起こしました。経済危機からの活路を戦争に求めるのは独占資本家の常套手段です。独占資本家は戦争を起こしてこそ、軍需品を大々的に生産して多くの金をもうけることができます。いまアメリカの大統領レーガンが国際緊張を激化させ戦争政策を強化していますが、それは経済危機からの活路を戦争に求めようとするアメリカの独占資本家の要求が背景にあります。

 しかし、戦争の方法によっては、資本主義世界が直面している経済危機を根本的に解消することはできません。発達した資本主義諸国が経済危機から脱するためには、発展途上諸国、第3世界諸国との経済関係を好ましく発展させていかなければなりません。言いかえれば、アメリカをはじめ、発達した資本主義諸国は、軍備増強策動と戦争政策を追求するのでなく、発展途上諸国、第3世界諸国が経済的に発展できるように援助しなければなりません。

 私は発達した資本主義国の人々に会うたびに、あなたがたが経済危機から脱するためには軍備を増強するのでなく、第3世界諸国を援助すべきであり、旧国際経済秩序にもとづいて発展途上諸国の原料を安値で買い入れるのでなく、公正な新国際経済秩序を確立し、互恵の原則でそれらの国との経済関係を発展させるべきだといっています。数年前、ヨーロッパの発達したある資本主義国の党首が訪朝したさいにも、そのように話しました。そして彼に、これからあなたが新しい公正な国際経済秩序を確立し、発展途上諸国を援助するうえで先駆者になることを望むといいました。発達した資本主義諸国は依然として、旧国際経済秩序にもとづいて発展途上諸国を搾取する政策を放棄していません。

 数年前、メキシコのカンクンで開かれた南北首脳会議では新国際経済秩序確立の問題が討議されましたが、発展途上諸国に対する搾取をつづけようとする発達した資本主義諸国の誤った要求と主張のため失敗に終わりました。

 弱小民族国家を支配し搾取しようとする帝国主義者の本性と政策は、いささかも変わっていません。帝国主義者にとって変わったものがあるとすれば、それは略奪的本性ではなく、搾取の手口です。帝国主義者がかつては立ち後れた国々を植民地にして搾取したなら、いまは新植民地主義的方法で発展途上諸国を搾取しています。かつて、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、ポルトガル、イタリアなど発達した資本主義諸国は、世界各地に植民地をたくさんもっていました。アメリカはかつて植民地をもっていなかったかのように装っていましたが、実際はラテンアメリカ諸国の経済命脈を握り、それらの国の人民を意のままに搾取しました。こんにち、帝国主義者は、かつて植民地であった国々に形式上の独立を与え、旧国際経済秩序に依拠してそれらの国を支配し略奪しています。発達した資本主義国の人たちが、あたかも自分たちがいなければ発展途上諸国がやっていけないかのように思い、旧国際経済秩序に依拠して、それらの国に対する搾取をつづけようとするのは時代錯誤的な考えです。

 歴史は前進し、時代は変わりました。帝国主義者が世界の各地域に多くの植民地をもち、それらの国の人民を意のままに搾取し略奪した時代はすでに過ぎ去りました。かつて、植民地、半植民地であったアジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々は、第2次世界大戦後ほとんどが民族独立をかちとり、新しい社会建設の道を踏み出しました。こんにち発展途上諸国、第3世界諸国は、支配と従属、搾取と抑圧のない新しい社会の建設をめざして力強くたたかっています。発達した資本主義諸国は、植民地的従属から脱して新しい社会建設の途についた発展途上諸国、第3世界諸国を過小評価してはなりません。

 こんにち発展途上諸国、第3世界諸国には、自立的民族経済を建設し、国の自主的発展をはかるべき課題が提起されています。自立的民族経済は自主独立国家の物質的基礎です。発展途上諸国、第3世界諸国は自立的民族経済を建設してこそ、かちとった政治的独立を強固にし、完全な経済的解放を実現することができます。

 発展途上諸国、第3世界諸国が自立的民族経済を建設し、国の自主的発展をはかるためには、事大主義と技術神秘主義を一掃しなければなりません。

 かつて植民地、半植民地であった国の人たちには、以前の宗主国と発達した資本主義諸国に対する崇拝思想が濃厚です。発展途上諸国、第3世界諸国の一部の人は、あたかも以前の宗主国と発達した資本主義諸国がなければやっていけないかのように考えています。彼らにはまた、技術神秘主義も見られます。これは発展途上諸国、第3世界諸国が富強で自主的な新しい社会を建設するうえで大きな障害となっています。

 地球上に大きな国と小さな国はあっても、発展しうる国と発展しえない国が別個にあるわけではありません。また、経済が発達した国の人は、必ずしも聡明で、経済が未発達の国の人はそうでないとはいえません。発展途上国の人民も他人に劣らず聡明で才能のある人民なのです。わが国の国際親善展覧館には私に送ってきた世界各国の贈り物が陳列されていますが、そこに行けば非常に興味深いことを見出すことができます。国際親善展覧館に陳列された贈り物を見ると、アジア諸国の手工業製品のほうがヨーロッパ諸国の手工業製品よりも立派です。これは、久しい前からアジア諸国の人民がすぐれた才能をもっており、これらの国で手工業が非常に発展していたことを物語っています。

 発展途上国の人々は聡明で立派な才能をもっているにもかかわらず、早い時期に産業革命をおこなうことができなかったためにヨーロッパ諸国よりも立ち後れるようになったのです。産業革命を最初におこなった国はイギリスです。イギリスにつづいてヨーロッパ諸国が産業革命をおこないました。アジアでは日本が明治時代に産業革命をしました。 世界の歴史を見れば、早い時期に産業革命をおこなった国々が急速な発展を遂げました。

 アジアのほとんどの国は、資本主義的産業革命をへることができませんでした。イギリスや日本などが産業革命をしたときにアジアの他の国々が産業革命をおこなうことができなかったのは、それらの国で社会の発展を抑制する封建制度があまりにも強かったからです。わが国と中国の歴史を見ると、かつて封建制度が非常に強く、封建勢力が産業革命をしようとする勢力をおさえつけてしまいました。わが国ではひところ、金玉均をはじめとする開化派が産業に動力を利用することを主張しました。しかし、封建支配層は、産業が発達すれば彼らの封建支配を維持できないと考え、産業革命を主張する開化派を弾圧しました。中国では、光緒帝の時代に康有為という人が産業革命を試みましたが実現できませんでした。かつて産業革命をへなかった国々は、いまなお立ち後れた状態にあります。

 発展途上諸国、第3世界諸国は産業革命をへなかったうえに、帝国主義者の侵略の結果、長いあいだ植民地、半植民地として自主的発展を甚だしく抑制されたので、おのずと人々の頭に宗主国と発達した資本主義諸国に対する崇拝思想、技術に対する神秘主義が生じるようになりました。

 発展途上諸国、第3世界諸国が自立的民族経済を建設し、国の自主的発展をはかるためにはまた、民族幹部の問題を解決しなければなりません。

 植民地、半植民地の状態から独立をかちとった国々では概して民族幹部が不足します。帝国主義者は、弱小民族国家に対する植民地支配を実施し、民族技術幹部が育たないようにしました。

 その結果、植民地、半植民地であった国々には、数学、物理学などの自然科学を学んだ学者はほとんどおらず、学者がいるとしても法学、文学のような人文科学系の専門家が少しいるだけです。

 発展途上諸国が新しい社会の建設に必要な民族幹部の問題を速やかに解決するためには、教育事業を発展させるべきであり、特に自然科学部門の技術幹部の養成に大きな力を入れなければなりません。ところが、発展途上諸国は、自然科学部門の技術幹部養成に相応の力を入れていません。

 私は20年ほど前にアジアのある国を訪問し、その国の学者たちと話し合ったことがあります。そのとき、その国の大学生のうち社会科学と自然科学を専攻する学生の比率はどれくらいかと聞いたところ、文学や法学、語学、歴史学など社会科学を専攻する学生が80%以上で、数学、物理学、工学、農学など自然科学を専攻する学生は20%そこそこだということでした。それで、私はその国の人たちに、我々がかつて帝国主義の植民地奴隷であったときには詩を吟じ、小説を書くことで憂さ晴らしをしたものだが、国が独立したいまではそのように暮らすことはできない、農業を立派に営み漸次工業を発展させなければならない、経済を発展させてこそ国の政治的独立を強固にし完全な経済的解放をなし遂げることができる、民族経済を発展させようとするなら自然科学を専攻する学生の比率を高め、社会科学を専攻する学生の比率を低めるべきではなかろうかと言いました。こんにち、高等教育事業で自然科学を学ぶ学生の比重を高め、社会科学を学ぶ学生の比重を減らすのは一般的な趨勢となっています。

 発展途上諸国、第3世界諸国が事大主義と技術神秘主義を一掃し、民族幹部の問題を解決するというのは容易なことではありません。

 しかし発展途上諸国、第3世界諸国がかたく決心して取り組むなら、事大主義と技術神秘主義を一掃し、民族幹部の問題も解決し、自主的な新しい社会を成功裏に建設することができます。これは、我々の実際の経験がよく示しています。

 かつてわが国は、長いあいだ日本帝国主義の植民地下にあった立ち後れた国でした。我々は、日本帝国主義に抗する長期にわたる困難な闘争を展開して、1945年に国を解放しました。解放は遂げたものの、当時わが国は鉛筆さえも自力でつくることができませんでした。日本帝国主義者は、わが国の木材と黒鉛を自国にもっていって鉛筆をつくり、それをまた、わが国にもちこんで売りつけていたのです。我々は解放後、北朝鮮臨時人民委員会を組織したあと、第1回会議の議案として鉛筆生産問題を上程して討議し、我々の手で鉛筆をつくることに決定しました。鉛筆を生産してこそ非識字者をなくし、学生・生徒に勉強をさせ、事務員に事務をとらせることができたのです。解放後わが国での新しい社会の建設は実際のところ、ゼロの状態からはじまったといえます。

 わが国でも解放後、新しい社会の建設をはじめたとき、人々のあいだに大国に対する事大主義と技術神秘主義が甚だしかったものです。それで私は、新しい社会の建設に着手した当初から、事大主義と技術神秘主義を一掃する闘争を積極的に展開するようにしました。事大主義と技術神秘主義に反対し、主体性を確立する闘争を力強く繰り広げた結果、人々の頭に残っていた、大きな国、発達した国に対する崇拝思想と技術神秘主義がしだいになくなりました。

 朝鮮人民は、新しい社会の建設で提起される問題を他国に頼らず、自力で解決しています。

 わが国ではじめて電気機関車の製作を試みたとき、発達したある国に電気機関車の設計図を求めたことがあります。その国の人たちは、朝鮮では自力で電気機関車を製作することはできない、自分たちの国で生産した電気機関車を買い入れるようにといいました。やむをえず、我々は自力で設計をして電気機関車の製作に取り組みました。わが国の労働者と科学者、技術者は自分の力で電気機関車を立派につくりあげました。我々はトラックとトラクター、トロリーバスと電動車もすべて自力でつくりました。科学と技術は知らないときはむずかしくて神秘なもののように思えますが、知ってみれば何でもありません。誰でも決心して勉強に取り組むなら、科学と技術を身につけることができます。

 我々は、解放後民族幹部の養成に大きな力を傾けました。当時、国情は困難を極めていましたが、我々は困苦欠乏にたえて大学を建て、民族幹部を養成しました。現在我々は120万人のインテリを擁しており、全社会のインテリ化を実現するために努力しています。わが国で教育事業がどのようにおこなわれているかについては、私の著作『社会主義教育に関するテーゼ』をお読みになればよくわかると思います。

 解放後ゼロの状態から新しい社会の建設をはじめたわが国は、すぐる40年のあいだ急速な発展を遂げ、いまでは高い水準に達しています。我々は発電機やタービンをはじめ、我々に必要なものはなんでも自力でつくっています。いま、わが国は発達した国々の水準にほとんど到達しています。これから我々がもう少し努力すれば、近い将来に発達した国々に追いつくことができます。

 我々は新しい社会を建設するうえで、外資を導入したことも、外国の援助を受けたことも、これといってありません。我々は、もっぱら人民の力に依拠して新しい社会を建設しました。現在わが国では、思想、技術、文化の3大革命が進められていますが、それも人民大衆の力によって推進されています。

 人間はあらゆるものの主人であり、すべてを決定します。革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおし進める力もまた人民大衆にあるのですから、新しい社会の建設では当然、人民大衆の力を信じ、それに依拠しなければなりません。自主的な新しい社会を「神様」が建設してくれるわけがありません。人間の生活に必要な物質的財貨も人間だけが想像することができるのです。

 わが党の指導思想であるチュチェ思想は、革命と建設において自主性を堅持し、人民大衆の創造性を高く発揮させることを求めています。かつてある国の人たちは、我々のチュチェ思想がマルクス・レーニン主義の原理に合致するかどうかと疑問をいだいていましたが、いまでは彼らも人民大衆が革命と建設で果たす役割について大いに強調しています。

 我々の経験は、人民大衆の力を信じ大衆の革命的熱意と創造的積極性を高く発揮させるならば、いかなる困難も克服し、自力で自主的な新しい社会を成功裏に建設することができるということを示しています。

 発展途上諸国、第3世界諸国が自主的な新しい社会を成功裏に建設するためには、自力更生の革命精神を高く発揮し、国内源泉を最大限に動員利用するとともに、南南協力を発展させなければなりません。

 こんにち、発達した資本主義諸国が、発展途上諸国をよく援助せず、旧国際経済秩序に依拠して搾取をつづけようとしている状況のもとで、南南協力を発展させるのは、発展途上諸国が立ちはだかる障害と難関を克服し、自主的な新しい社会を速やかに建設する重要な方途です。南南協力を発展させてこそ、発展途上諸国が懸案となっている経済・技術上の問題を成功裏に解決し、自立的民族経済を速やかに建設し、全世界の自主化を実現することができます。南南協力を発展させれば、人々の頭に残っている事大主義、技術神秘主義を一掃し、民族幹部の問題を解決することができ、そうなれば南北協力の実現も可能です。

 発展途上諸国はみな、民族の独立をなし遂げ、新しい社会を建設する過程で得た一、二のすぐれた技術と経験をもっています。

 発展途上諸国のなかには、中国、インドのような大きな国もあります。発展途上諸国が新しい社会を建設する過程で得たすぐれた技術と経験をもって互いに交流し協力すれば、各分野で急速な発展を遂げることができるでしょう。

 発展途上諸国が交流し協力し合うのは、発達した国々の援助を受けるよりはるかに有益です。いま発展途上諸国が発達した資本主義国の技術者を招請しようとすれば、一人当たり1か月に1000ドル以上は支払わなければならないでしょう。しかし、発展途上諸国同士が技術者を交流すれば、彼らに100〜200ドルぐらい支払い、食事をまかなう程度ですむでしょう。発展途上諸国の技術者は、発達した国の技術者のように高級住宅や乗用車を要求しはしないでしょう。

 技術文献のようなものも、発展途上諸国同士が交流するのが好ましいと思います。いま発達した資本主義諸国は発展途上諸国に設計図を一つ提供しても、その代金として数百万ドルを要求しています。甚だしきにいたっては、発展途上諸国が自動車や工作機械の技術文献のコピーを求めても巨額の代金を要求しています。発展途上諸国同士なら、自動車や工作機械の技術文献などは、無料で撮影したりコピーして提供することができます。発達した資本主義諸国は発展途上諸国に農作物の原種をよく売ろうとせず、売る場合も高値をつけています。我々は、発展途上諸国が農作物の原種や技術文献などを要求すれば無料で提供することができます。

 発展途上諸国が発達した国々から数千万ドルの「援助」を受けて工場を建設するとしても、設計図の代金と技術者に支払う金額を差し引けば、実際の利益はいくらにもならないでしょう。発展途上諸国は、発達した国々に期待をかけずに、互いに協力して生きていく道を切り開くべきです。発展途上諸国が力を合わせるなら、発達した資本主義諸国の世話にならなくても十分生きていくことができます。

 我々は、発展途上諸国が、農業分野から協力を発展させる必要があると思います。

 人間の生活で最も重要なのは食の問題です。十分に食べられるようになってこそ、人民は、政府を支持し、仕事に励み、他国をうらやむこともなくなるのです。発展途上諸国は、何よりもまず農業分野で協力し、食糧問題から自力で解決しなければなりません。発展途上諸国が10年ほど農業分野での協力に努めれば、食糧を自給自足することができるでしょう。

 いま、我々は、アフリカ諸国をはじめ、世界各地域の発展途上諸国と農業分野での協力を発展させています。わが国の農業技術者、専門家がアフリカ諸国に行って、試験農場や農業科学研究所を設けるなどして援助していますが、その結果は上々です。アフリカ諸国に農業技術者と科学者を派遣するとき、私は彼らに、あちらに行って発達した資本主義国の人たちのように仕事をしたのでは、その国の実情に合った援助をすることができない、皆さんはその国の人たちに自分の力で農業を営めるという自信をいだかせ、彼らが自力更生の精神を発揮できるように助けるべきだ、と言いました。すべてのことがそうですが、特に農業は、自国の具体的な実情に合わせておこなわなければなりません。我々には、わが国の実情に合った主体的農法が必要であり、アフリカ諸国の人たちには、それぞれの国の実情に合った農法が必要なのです。いかに先進的な農法であっても、ヨーロッパ諸国の農法をアフリカ諸国にそのまま適用したのでは、農業を発展させることができず、ヘクタール当たりの収量を増やすこともできません。国ごとに気候と土壌条件が異なり、農業の物質的・技術的土台と農民の技術・技能水準にも差があるのですから、それぞれの国、それぞれの地域の具体的な実情に合った農法で農業を営まなければなりません。

 わが国の農業技術者と科学者は、アフリカ諸国に行って、そこの人たちが自国の具体的な実情に合った農業を営めるように誠心誠意助力しています。その結果、それらの国では営農法が改善され、ヘクタール当たりの穀物の収量がいちじるしく増大しています。以前はヘクタール当たり0.5〜0.7トンのトウモロコシしか収穫できなかった畑で、いまは3.5〜6.8トンを収穫しているとのことです。試験農場と農業科学研究所を設けて運営する過程で、その国の人たちのなかから多くの農業技術者と専門家が生まれているそうです。

 発展途上諸国は農業を発展させたあと、そこから得られる資金で工業の発展に力を入れるべきです。工業を発展させるにおいてはまず、農業に奉仕する工業を発展させなければなりません。特に、農産物を加工する工業を創設することが重要です。アフリカのある国では多量の落花生を生産していますが、国内で加工することができず、他国で加工してくるとのことですが、それでは取り分がいくらにもなりません。加工業を発展させて、落花生のような農産物は自国で加工すべきです。

 発展途上諸国は、保健医療分野でも協力すべきです。保健医療分野で南南協力を実現してこそ、多くの医師を養成し、医科学技術を発展させて、帝国主義の植民地支配が残した病魔の苦痛から人民を速やかに解放することができます。

 発展途上諸国は、建設分野でも協力することができます。我々は、戦争によってひどく破壊された工場、企業所を復旧し、都市と農村を建設する過程である程度の経験を積みました。我々には工場を建設した経験があり、潅漑工事や都市建設をおこなった経験もあります。

 発展途上諸国は、地質調査と鉱山開発においても協力することができます。

 発展途上諸国は、可能なすべての分野で協力し交流し合って国の経済的土台を築くべきであり、ひいては機械工業を発展させて自立的民族経済を建設しなければなりません。

 我々は、ここ数年のあいだ南南協力を実現するために多くの努力を傾け、その過程で一定の成果と経験を得ました。

 わが党と共和国政府は、南南協力を発展させる過程で得た成果と経験にもとづき、これから南南協力をさらに発展させていこうと考えています。我々は、この1月に開かれた最高人民会議第7期第3回会議で南南協力を発展させる問題を討議し、決定を採択しました。いま世界の多くの国が南南協力を発展させるというわが国の最高人民会議の決定を積極的に支持しています。


 あなたがたが積極的に助力してくれるなら、南南協力を発展させるうえで大きな成果がもたらされるものと思います。

 南南協力を発展させるべきだというのは、決して南北協力に反対するということではありません。我々は、南南協力を基本にしながら南北協力もしようというのです。これから発展途上諸国が南南協力を実現するため積極的に努力すれば、一部の発達した国が発展途上諸国の援助に乗り出すかもしれません。そうなれば、特権をふりまわして、おごり高ぶる発達した国々を孤立させることができるでしょう。

 南北協力を実現するためには、発達した国々が発展途上諸国、第3世界諸国に対する誤った態度を改めなければなりません。南南協力を発展させるには、発展途上国の人々の頭に残っている発達した国々への崇拝思想をなくすことが重要であるように、南北協力を発展させるには、発達した国の人々の頭に残っている発展途上諸国を見下げる誤った観点を正すことが重要です。

 私は、あなたがたが南南協力と南北協力の発展のために、世界各国人民間の友好と団結の強化のためにひきつづき努力されることを期待します。

 夏にまた朝鮮に来てください。あなたがたと再会するときには旧友として、いろいろな問題について長時間話し合うことができるでしょう。


<注釈>−金玉均(1851〜1894) 1884年のブルジョア改革の指導者。
 金玉均は、両班出身であったが、朝鮮の封建制末期の先覚者として国の文明開化をめざして尽力した。彼の活動した19世紀後半期は、朝鮮における封建制度の危機がその極に達した時期であり、ブルジョア改革が機の熟した要求となっていた。彼は、腐りきった無能な保守派政権を打倒し、国政を改革して自主的な国家の土台を築くことを熱望した。金玉均を中心とする改革派は、1884年12月に政変を起こして反動的な保守派政権を打倒し、一時政権の奪取に成功した。外部勢力の干渉と改革担当者の社会的・階級的制約のため政変は失敗に帰した。しかし、彼の開化思想と実践活動は、朝鮮最初のブルジョア改革の試みとして進歩的な役割を果たした。
出典:『金日成著作集』38巻 

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