金 正 日

テアンの事業体系は独創的な社会主義経済管理システム
金日成総合大学学生への談話 
−1963年1月14日− 

 大安電機工場党委員会拡大会議における金日成同志の歴史的な演説『テアンの事業体系をいっそう発展させるために』が発表された後、数回にわたってテアンの事業体系についての討論がおこなわれました。

 討論で提起された問題を総合してみると、テアンの事業体系の優越性とそれを貫徹するための課題と方途については正しく理解していますが、その独創性については原理的に深く把握していないようです。

 テアンの事業体系は、金日成同志がわが国の社会主義経済建設を指導する過程でみずから創出した新しい経済管理システムですから、その独創性を原理的に深く把握することがきわめて重要です。そうしてこそ、社会主義経済笹理分野における金日成同志の貴い業績をよく知り、テアンの事業体系の正当性と生命力について幅広く理解することができるのです。

 わたしは、今日みなさんに、テアンの事業体系に貫かれている基本精神と、この体系が以前の経済管理システムと区別される主な特徴について述べたいと思います。

 まず、テアンの事業体系に貫かれている基本精神について述べましょう。

 討論の過程で、テアンの事業体系で何が基本なのかということについて、いろいろな意見が提起されました。ある人は、党委員会が当該単位の最高指導機関となって工場を管理、運営することが基本だと主張し、ある人は、企業の管理・運営で重要なのは生産指導であるから、生産に対する技術指導を強化し、生産を総合的に指導することが基本だと主張しました。党委員会が当該単位の最高指導機関となって工場を管理、運営することも、生産に対する技術指導を強化し、生産を総合的に指導することも、テアンの事業体系の重要な内容をなしています。しかし、これがテアンの事業体系に貫かれている基本精神だとは言えません。

 テアンの事業体系に貫かれている基本精神は、大安電機工場党委員会拡大会議における金日成同志の演説に明確に示されています。金日成同志は、演説で新しい工場管理システムでは生産に対して特定の個人が責任を負うのではなく、すべての党員と労働者、技術者が責任を負い、彼らが工場の管理・運営に積極的に参加していると述べています。我々は、金日成同志の教えにこめられている深遠な思想を正しく理解しなければなりません。金日成同志の教えには、テアンの事業体系全般にわが党の革命的大衆路線が具現されているという深遠な思想がこめられています。経済管理において大衆路線を具現していること、これがまさにテアンの事業体系の基本精神であり革命的本質です。

 経済管理において大衆路線を具現することは社会主義制度本来の要求です。

 経済をどのような原則にもとづいて管理、運営するかという問題は、企業管理の主人、生産の主人が誰であるかを考慮に入れて解かなければなりません。企業管理の主人、生産の主人が誰であり、彼が経済活動にどのような利害関係をもっているかによって、経済管理の原則、システムと方法が異なるものです。

 資本主義社会では、資本家が主人のごとく振る舞っているので、企業管理も専制的な性格を帯びています。資本主義社会では、生産者大衆の意思を参酌し、彼らの利益を図って企業を管理、運営することなど考えることもできません。

 しかし、社会主義社会では、人民大衆が生産と管理の主人となっているので、経済管理において必ず大衆路線を具現しなければなりません。言いかえれば、経済管理において生産者大衆の意思を尊重し、彼らの利益を擁護するとともに、経済管理上のあらゆる問題を生産者大衆の力と知恵に依拠して解決しなければなりません。それゆえ、大衆路線を具現した経済管理システムだけが社会主義制度の本性にかなった真の経済管理システムとなるのです。

 金日成同志は、社会主義経済管理の合法則的要求にもとづき、わが党の革命的大衆路線を社会主義経済管理分野に具現してテアンの事業体系を創出したのです。テアンの事業体系は、社会主義経済管理分野におけるわが党の革命的大衆路線のたまものです。

 テアンの事業体系は、計画化から労働行政、生産指導、資材の供給に至るまで、企業管理のすべての分野に革命的大衆路線を具現しています。

 テアンの事業体系では、何よりも広範な生産者大衆の意思に応じて企業管理を改善する対策を立てます。言いかえれば、生産者大衆を企業管理に積極的に参加させ、彼らと十分に討議したうえで金日成同志の教えと党の経済政策を実行するための具体的な方途を講じるのです。これは、生産者大衆に企業管理権を与え、彼らを経済管理の主人の位置に立たせることを意味します。生産者大衆に企業管理権を行使させることは、経済を人民大衆の意思と利益に応じて運営し発展させるための確固たる保証となります。

 テアンの事業体系ではまた、工場を管理、運営し、与えられた経済的課題を遂行するうえで生じるあらゆる問題を生産者大衆の創造的能力と知恵に頼って解決していきます。金日成同志が述べているように、人民大衆の力と知恵を発揮させれば、いかに困難で複雑な革命課題も立派に遂行することができます。テアンの事業体系では、党組織が対人活動を地道におこなうことによって、幹部と党員、労働者と技術者の革命的熱意と創造的積極性を高めて工場を正しく管理、運営し、生産を増大させていきます。

 テアンの事業体系に大衆路線がどのように具現されているかについては、昨年の春、我々が西海地区の工場、企業で見学実習をした時に体験しました。あの時作成したレポートを見ると、工場の管理・運営におけるあらゆる問題を党委員会で集団的に討議して決定し、広範な大衆討議を経て計画を立てている実態が具体的に記されていますが、まさにこれが、経済管理において大衆路線を具現している生き生きとした実例です。

 テアンの事業体系は、徹頭徹尾、革命的大衆路線を具現している社会主義経済管理システムです。

 次に、テアンの事業体系の主な特徴について述べましょう。

 金日成同志は、大安電機工場を現地指導した際、経済管理において大衆路線を具現できるように以前の不合理な管理機構を新たに改編し、活動体系と活動方法を確立しました。その結果、テアンの事業体系は、社会主義経済を立派に管理、運営しうる威力ある経済管理システムとしての体裁を完全に備えることができました。

 テアンの事業体系は、以前の経済管理システムとは根本的に異なる特徴をもっています。

 テアンの事業体系は何よりもまず、党委員会の集団指導のもとに経済を管理、運営するシステムです。

 金日成同志はテアンの事業体系を創出した際、党委員会を当該単位の最高指導機関と規定し、企業管理におけるあらゆる問題を党委員会で集団的に討議し決定するという新しいシステムを確立しました。以前は企業、管理において一切の決定権が支配人にあり、支配人が生産について責任を負い、彼の意思によって工場が管理、運営されていました。テアンの事業体系では、党委員会が当該単位の最高指導機関として党の経済政策の実行と企業管理について全的に責任を負い、企業管理におけるあらゆる問題を党委員会で討議、決定し党委員会の指導のもとに実行します。党委員会の指導のもとに工場を管理、運営するシステムが確立したことによって、企業管理において個人の主観と独断を一掃することができるようになりました。

 テアンの事業体系は、経済管理において上部が下部を助けるシステムです。

 経済管理において上部が下部を助けるのは、大衆路線を貫徹するための基本的要求であり、経済指導と企業管理の科学性、現実性を保障する重要な保証です。経済幹部が下部に出向いて大衆のなかに入ってこそ、下部の実情を具体的に把握し、経済指導と企業管理を実質的におこなうことができるのです。

 テアンの事業体系では、省、局の幹部が、工場、企業に出向いて助け、工場、企業の幹部が職場や作業班、生産現場に出向いて懸案を責任をもって解決することになっています。

 しかし、以前の古い事業体系では、経済幹部が上部に居座って指示書を下達したり下部の人を呼びつけて報告させたりし、下部に出向く場合も、怒鳴ったり督促したりしたものです。

 金日成同志は大安電機工場を現地指導した際、資材を上部から下部に供給し、労働者への給養活動を責任をもって保障する新しいシステムを確立しました。金日成同志が新たに確立した資材供給システム、給養システムは、生産を保障するうえで上部が下部を責任をもって助けるという要求を具現しています。

 新しい資材供給システムと給養システムは、資材を現物で生産現場に供給し、労働者への給養活動を責任をもって保障するシステムです。それゆえ、テアンの事業体系は、経済管理において上部が下部を助ける威力あるシステムなのです。

 テアンの事業体系は、総合的かつ集中的な生産指導システムです。

 企業管理の基本は、生産指導を正しくおこなうことです。生産指導は、物質的生産の具体的実情に即しておこなわれるべきです。生産工程は、すなわち技術工程であり、社会主義的生産は計画的におこなわれます。それゆえ、生産指導を正しくおこなうには、それがとりもなおさず技術指導となり、計画的指導とならなければなりません。

 以前の生産指導システムでは、技術を知っている人が直接生産を指導するようになっておらず、計画化事業が生産指導と分離されていました。

 金日成同志は大安電機工場を現地指導した際、古い生産指導システムの欠陥をいちはやく見抜き、社会主義的生産の要求に即して生産指導システムを新たに改編しました。新しい生産指導システムでは、技術を知っている人を参謀長とし、彼が生産の計画と準備、指導を統一的に受け持ちます。

 政治活動を優先させて大衆の自発的熱意と創意を大いに発揮させる方法で企業管理をおこなうのも、テアンの事業体系の特徴と見るべきだと思います。

 金日成同志はこの著作で、管理機構は必ずそれに適した活動方法と結合すべきであると指摘し、テアンの事業体系の威力は、新しい管理機構にチョンサンリ(青山里)方法を結びつけることによって生まれたと述べています。金日成同志の教えは、チョンサンリ方法の要求どおりに政治活動を優先させて大衆の自発的熱意と創意を発揮させる方法で経済的課題を遂行することが、テアンの事業体系において重要な側面をなし、そこにテアンの事業体系の威力の源があることを示しています。

 政治活動を優先させて大衆の自発的熱意と創意を大いに発揮させることは、社会主義経済管理の重要な方法の一つです。

 社会主義経済管理において経済組織活動を巧みにおこない、物質的刺激を正しく適用することも重要ですが、それだけでは社会主義経済を成功裏に運営することはできません。社会主義経済は、人民大衆の創造的な勤労闘争によって発展するので、社会主義経済管理を立派におこなうためには、大衆の自発的熱意と創意を大いに発揮させなければなりません。社会主義社会で大衆を経済建設に奮い立たせる有効な方法は政治活動です。

 しかし、古い事業体系では経済幹部が政治活動を優先させず、もっぱら命令や指示、官僚主義的に押し付ける方法で生産者大衆を動かしました。これは、社会主義制度の本性に反する経済管理方法です。

 テアンの事業体系は、経済管理において政治活動を優先させ、大衆の自発的熱意と創造を大いに発揮させるという原則を具現しています。テアンの事業体系では、すべての幹部が生産者大衆のなかに入って政治活動、対人活動を強化し、彼らが企業管理に主人らしく参加し、与えられた革命課題を高い革命的熱意と創造的積極性をもって遂行することになっています。それゆえ、政治活動を優先させて大衆の自発的熱意と創意を大いに発揮させる方法で企業管理を行うのも、テアンの事業体系の重要な特徴の一つと見るべきです。

 金日成同志がテアンの事業体系を創出したことは、社会主義経済管理システムを改善するうえで根本的な転換となります。

 テアンの事業体系が創出される前は、支配人唯一管理制によって企業を管理、運営していました。元来、支配人唯一管理制はレーニンが示した社会主義経済管理理論です。レーニンは、ロシアで社会主義革命が勝利した後、経済を支配人唯一管理制の原則にもとづいて管理、運営しなければならないと主張しました。レーニンは支配人唯一管理制を主張しましたが、それを社会主義経済管理の唯一の形態とはみなしませんでした。彼は、社会主義建設が深化、発展するにつれて、経済管理において支配人唯一管理制は次第に不要になるだろうと予言しました。しかし、レーニンも、その後、社会主義建設を指導したスターリンも、支配人唯一管理制に代わる合理的な経済管理システムを示すことはできませんでした。その結果、社会主義建設は大きく前進しましたが、企業管理では支配人唯一管理制の原則がそのまま適用されてきました。テアンの軍楽体系が創出されたことによって、企業管理において支配人唯一管理制がなくなり、社会主義経済管理分野に新たな革命的転換がもたらされました。

 テアンの事業体系が創出された結果、何よりも生産者大衆が企業管理と生産の実際の主人となりました。

 生産手段に対する社会主義的所有の確立は、生産者大衆を企業管理と生産の主人たらしめる社会経済的条件です。しかし、こうした条件が整ったからといって、広範な生産者大衆がおのずと企業管理と生産において主人としての役割を果たすようになるわけではありません。生産者大衆が企業管理と生産の実際の主人となるためには、彼らが主人としての役割を立派に果たせるように経済管理システムが確立されなければなりません。

 金日成同志が創出したテアンの事業体系では、生産者大衆の集団の意思によって経済管理におけるあらゆる問題が討議、決定され、彼ら自身の自覚と創意によって実行されます。生産者大衆が企業管理の主人、生産の主人となっているところにテアンの事業体系のもつ大きな意義があるのです。

 また、テアンの事業体系が創出された結果、社会主義経済管理分野において資本主義的残滓を最終的に一掃し、共産主義的生活原則を立派に具現できるようになりました。

 以前の工場管理システムは社会主義的なものではありましたが、資本主義的残滓が多分にありました。古い工場管理システムでは、幹部が下部に出向いて助けるのではなく、官僚主義的に怒鳴りちらし、生産者大衆は自発的熱意と創意を発揮して働くのではなく、命令によって動く雇用者のように行動するようになり、各人の間、各作業班の間、各職場の間には利己主義、なわばり主義の傾向が顕著にあらわれるようになりました。

 しかし、テアンの事業体系が創出されて、企業管理において上部の人と下部の人の間、各生産者の間、各作業班の間、各職場の間に互いに助け合い導き合う気風が発揮されています。そして、生産者が雇用者のように働くのではなく、高い革命的熱意と創意を発揮して働くようになりました。テアンの事業体系の創出は、古い経済管理システムから社会主義的かつ共産主義的な経済管理システムへの根本的な転換をもたらした、経済管理分野における一つの革命だと言えます。

 我々はこのたび、金日成同志が大安電機工場党委員会拡大会議でおこなった演説『テアンの事業体系をいっそう発展させるために』を研究し、それについて討論する過程で、金日成同志が独創的に示した社会主義経済管理に関する思想と理論を十分に理解しました。しかし、これに満足してはなりません。我々は、金日成同志のこの歴史的な演説をさらに学習し、テアンの事業体系の独創性と優越性をより深く体得しなければなりません。

出典:『金正日選集』増補版1


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