金 正 日

帝国主義植民地体制崩壊の不可避性について
金日成総合大学学生への談話 
−1961年3月9日− 

 資本主義の全般的危機についての学科討論を準備する過程で帝国主義植民地体制の崩壊に関するいくつかの理論問題が提起されたので、それについて手短に述べたいと思います。

 19世紀末から20世紀初めにかけて、産業資本主義が帝国主義へと移行する過程で帝国主義植民地体制が形成されました。

 数世紀前から海外侵略と略奪を強行してきた資本主義列強は、この時期にアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に対する強盗さながらの侵略と略奪政策をさらに強化しました。地球上には、帝国主義列強による植民地支配の時代が到来し、多くの国が植民地従属国になりました。わが国もこの時期に日本帝国主義の植民地になってしまいました。

 帝国主義者にとって、植民地は、安価な原料産地、労働力の供給地、資本の投下地、過剰商品の販売市場、海外膨張のための侵略的な軍事基地となっています。帝国主義の独占資本は、植民地への略奪を通じて肥大化しました。アメリカのロックフェラーやモルガン財閥も植民地人民の膏血を絞り取り、いまのような巨大な独占資本になったのです。植民地支配と略奪は、帝国主義の生存方式です。帝国主義者が一つでも多くの国を植民地にし、崩壊しつつある植民地体制を維持するために必死であがいている理由はここにあります。

 植民地従属国の人民に対する支配と略奪は、人民を反帝民族解放闘争に立ち上がらせます。帝国主義者の植民地支配と略奪が存在する限り、民族解放闘争が起こるのは法則です。いまも、帝国主義の植民地下にある多くの国で民族解放闘争が熾烈に繰り広げられています。

 みなさんは、植民地従属国の人民の民族独立を勝ち取り、帝国主義植民地体制を崩壊させるうえで植民地民族解放闘争がどのような意義をもつかという問題を提起しました。

 帝国主義植民地体制を崩壊させるうえで植民地民族解放闘争は決定的な意義を有します。もちろん、植民地従属国の人民が民族の独立をなし遂げるうえで国際的環境も一定の影響を及ぼします。しかし、植民地の民族問題解決の主人は、あくまでもその国の人民自身であり、個々の国の人民が自分の力を信じ、帝国主義、植民地主義に反対して力強くたたかってこそ民族解放の偉業をなし遂げることができるのです。

 植民地従属国の人民は、たたかわずして帝国主義者から独立を勝ち取ることができると考えてはなりません。第2次世界大戦後、狡猾な帝国主義者は一部の植民地従属国の独立を認めることによって、人々に彼らが植民地の人民に独立を「もたらした」かのような印象を与えました。しかしこれは、植民地従属国の人民の反帝民族解放闘争が強力に展開されている状況下で当帝国主義者が従前のような方法では植民地体制を維持することができなくなった歴史的事実を反映したものです。新たな状況下で帝国主義者は、植民地従属国の「独立」を認め、狡猾な新植民地主義的手法で植民地支配を実現しようと策動したのです。歴史的事実は、戦後、帝国主義者が植民地従属国の人民の「独立」を認めたのも反帝民族解放闘争を抜きにしては考えられないことを示しています。植民地従属国の人民は、帝国主義者にいかなる幻想も抱いてはならず、独立を哀願してはなりません。ただ、闘争のみが民族の独立と解放を勝ち取る唯一の道なのです。

 植民地民族解放闘争を小ブルジョア運動とみなし、その意義を過小評価してもなりません。こんにち、植民地従属国の社会的・階級的構成に一連の変化が起こり、進歩的な政党や組織が出現して民族解放闘争を導いています。民族の独立をなし遂げ、帝国主義植民地体制を崩すうえでの反帝民族解放闘争の意義を無視するのは、現実から目をそらす誤った立場であり態度です。

 一部の人は、植民地民族解放闘争の意義に関連してレーニンの命題を引用していますが、我々は古典の命題を当代の歴史的環境と結びつけて理解する必要があります。

 レーニンは、植民地民族解放運動は宗主国におけるプロレタリア革命の予備軍だと述べました。当時はまだ、植民地諸国における民族解放闘争は、自力で民族の独立を達成しうるほどの大きな勢力にはなっていませんでした。植民地民族解放闘争が独自の強力な革命勢力になっていなかった状況のもとで、植民地従属国の人民の民族の独立は宗主国でプロレタリア革命が勝利する場合にのみ可能だと考え、その時、植民地民族解放運動は宗主国でのプロレタリア革命の勝利を勝ち取るための予備軍としての意義をもつものと考えたのです。

 しかしその後、事情は変わりました。特に、第2次世界大戦後、植民地従属国で人民の民族自主意識が高まり、社会的・階級的構成も反帝闘争に有利に変わって、みずからの民族解放勢力が急速に成長するとともに、国際舞台においても力関係は革命の側に有利になりました。支配と従属に反対し、自由と独立を志向するのが世界的な趨勢、時代の流れとなっている状況のもとで、民族の独立と解放をなし遂げるうえで植民地民族解放闘争の果たす役割は比すべくもなく大きくなりました。

 こんにち、アジアでは植民地がほとんどなくなりました。わが国をはじめ、中国、ベトナム、モンゴルの人民は、社会主義の道を力強く進んでおり、長い間植民地奴隷としてくびきに縛られていたアジアの数億万の人民が既に民族の独立を達成しました。こんにち、アフリカ大陸では多くの国が植民地的従属から抜け出して独立を勝ち取りました。かつて、アフリカ諸国のほとんどは、帝国主義列強によって占領された植民地従属国でした。しかし、いまでは、アフリカ大陸の半分以上の面積と人口の4分の3を占める国が民族の独立の道を踏み出しました。ラテンアメリカでもキューバで革命が勝利し、帝国主義植民地体制が崩壊しています。

 第2次世界大戦後、世界の多くの国が帝国主義への植民地的従属の鉄鎖を断ち切って民族の独立を勝ち取りましたが、宗主国で社会主義革命が勝利した結果として民族の独立を勝ち取った国は一国もありません。歴史的事実は、植民地民族解放運動が帝国主義の植民地支配を終わらせ、民族の独立をなし遂げる独自の革命勢力になったことを示しています。植民地民族解放運動は、帝国主義への植民地的従属下にある国々が民族の独立を勝ち取るための強力な革命勢力です。以前と同様にこんにちも、帝国主義への植民地的従属下にある国の人民は、民族解放闘争を通じてのみ民族解放の歴史的偉業を達成することができます。

 討論ではまた、帝国主義者の狡猾な新植民地主義の手法が植民地体制を維持するうえでどれほどの「効力」をもつかという問題が提起されました。

 第2次世界大戦後、アメリカを頭目とする帝国主義者は、崩壊しつつある植民地体制を維持するため、植民地支配の方法を新植民地主義的手法に変えました。

 帝国主義者は、第2次世界大戦後、社会主義諸国の威力が強まり、民族解放闘争が激化して、従前どおりの手法では植民地を維持することができなくなったため、植民地人民を引き続き植民地奴隷の鉄鎖に縛りつけ、独立した国の人民を再び従属させる狡猾な目的で形式上の独立を認め、自分たちが育てたかいらいを押し立てて植民地政策を推し進めています。

 帝国主義者は、新植民地主義的支配手法にもとづき、自分たちに忠実な走狗たちを利用してかいらい政権をつくりあげ、裏で操る方法で植民地従属国を政治的に支配しています。帝国主義者はまた、「援助」をえさにして不等価交換や植民地の利権など、さまざまな狡猾な手法を用いて植民地従属国の経済の命脈を握り、豊富な資源とその国の人民の労働の産物を苛酷に略奪しています。

 新植民地主義も旧植民地主義と同様に、他国の人民を支配し略奪するための帝国主義の侵略政策の産物であるという点では違いがありません。

 新植民地主義は、植民地支配の方法がより狡猾で悪辣であるところにその特徴があります。

 帝国主義者が新興独立諸国に足を踏み入れて政府転覆の陰謀を企て、進歩的な政府を覆して右傾化の道へと逆戻りさせようとし、自分たちの植民地支配の障害になるとかいらいをためらうことなくすげ替えるという破廉恥な策動をおこなうのは、新植民地主義的支配方法の悪辣さを如実に示しています。帝国主義者が唱える「援助」なるものも、つまりは一つを与えて十を奪うという略奪の代名詞です。

 かつて、日本帝国主義はわが国を占領した後、統治機構を設置し、「総督」を通じて直接統治しましたが、こんにち、南朝鮮を占領しているアメリカ帝国主義はかいらい「政権」をつくりあげ、それを前面に押し立てて政治的に支配しています。日本帝国主義は、わが国の民族軍隊を解散させ、朝鮮がいかなる武力も持てないようにしましたが、アメリカ帝国主義は南朝鮮でかいらい軍をつくりあげ、その統帥権を握る方法で軍事的に支配しています。日本帝国主義は露骨な方法で朝鮮の経済命脈を握って経済的略奪をおこないましたが、こんにち、アメリカ帝国主義者は、欺瞞的な「援助」の看板を掲げて南朝鮮に対する経済的隷属化政策を実施しています。日本帝国主義の旧植民地主義政策により、過去の朝鮮は植民地従属国そのものでしたが、アメリカ帝国主義の新植民地主義政策の生けにえとなっているこんにちの南朝鮮は、「独立国」の仮面をかぶった植民地です。南朝鮮で実施されているアメリカ帝国主義の植民地政策は、新植民地主義的手法の狡猾さをはっきりと示しています。

 第2次世界大戦後、帝国主義者が植民地への支配方法を変えて新植民地主義政策に転ずるようになったのは、人民を欺き、彼らの反帝闘争意識を麻痺させて、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に対する植民地支配を続けるためでした。

 しかし、帝国主義者の新植民地主義政策も、植民地体制を最終的崩壊から救う効果的な方策とはなりえません。植民地従属国の人民に対する帝国主義的支配と略奪は、人民の反抗を呼び起こし、反帝民族解放闘争へと発展するものです。

 なおかつ、今日の人民は、昨日の人民ではありません。長い間、帝国主義植民地支配の苦汁をなめさせられた植民地従属国の人民は、自由と独立を志向する世界的な流れのなかで革命的に目覚めました。帝国主義者が、新植民地主義的手法によって人民を欺瞞することができると考えたのは誤算です。

 アメリカを頭目とする帝国主義者が、新植民地主義的手法でその侵略的で略奪的な正体を隠そうといくらあがいても、帝国主義、植民地主義に抗する人民の闘争の前途をさえぎることはできません。

 こんにちの世界情勢がそれをよく示しています。帝国主義者は人民の反帝民族解放闘争を骨抜きにしようと狡猾に策動していますが、植民地主義に抗する人民の闘争はアジア、アフリカ、ラテンアメリカの諸国で引き続き強力に展開されています。

 いま南朝鮮では、経済的破局はアメリカの「援助」政策によるものだとして、アメリカ帝国主義の経済的侵略を排撃する声が高まっており、去る2月8日に結ばれた南朝鮮とアメリカ間の侵略的で売国的な「経済および技術協定」に反対する闘争気勢が上がっています。南ベトナムでは「南ベトナム民族解放戦線」が結成され、アメリカ帝国主義の植民地支配に抗する人民の闘争が強力に展開されています。

 反帝反植民地主義闘争の炎は、アフリカ大陸でも燃え広がっています。今年の1月4日から7日にかけて開かれたアフリカ諸国首脳会議では、帝国主義者の支配と植民地支配からアフリカ大陸を解放し、植民地主義、特に、新植民地主義を一掃するというアフリカ諸国の強い決意を表明しました。アルジェリアをはじめ、多くの国で反帝反植民地主義闘争が強力に展開されており、国際的な支持と声援も日ごとに強まっています。

 第2次世界大戦後、植民地民族解放闘争は下火になったのではなく、より熾烈に展開されています。これまで3大陸の多くの国が呪わしい帝国主義植民地体制から抜け出して民族の独立をなし遂げたのは、第2次世界大戦後に起こった歴史的な出来事です。これは、帝国主義者がいくら狡猾な新植民地主義政策を追求しても、民族解放闘争の炎を食い止めることはできず、植民地支配体制を維持することもできないことを示しています。

 地球上には、いまなお帝国主義の植民地奴隷の境遇から抜け出せない人民が少なくありません。しかし、激しく燃え上がる植民地民族解放闘争の炎のなかで、帝国主義植民地体制が最終的に崩壊するのは動かしがたい歴史の法則です。

出典:『金正日選集』増補版1

<参考>金日成主席は、「朝鮮労働党第4回大会でおこなった中央委員会の活動報告」(1961年9月11日)で、当時の国際情勢を解析しています。


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