朝鮮の「統一新報」(無所属代弁紙)6月15日付は、最高人民会議常任委員会が5月29日付の政令で採択した朝鮮民主主義人民共和国経済開発区法(全7章62条、付則2条)の全文を掲載した。全文は次のとおり。
第1章 経済開発区法の基本
第1条(経済開発区法の使命)
朝鮮民主主義人民共和国経済開発区法は、経済開発区の創設と開発、管理において制度と秩序を正しく樹立し、対外経済協力と交流を発展させ、国の経済を発展させて人民生活を高めることに貢献する。
第2条(経済開発区の定義と種類)
経済開発区は、国家が特別に定めた法規に基づいて経済活動で特恵が保障される特殊経済地帯である。
経済開発区には、工業開発区、農業開発区、観光開発区、輸出加工区、先端技術開発区のような経済および科学技術分野の開発区が属する。
第3条(管理所属に伴う経済開発区の区分)
国家は、経済開発区を管理所属に基づいて地方級経済開発区と中央級経済開発区に区分して管理するようにする。
経済開発区の名称と所属を定める事業は、非常設国家審議委員会が行う。
第4条(経済開発区の創設事業主管機関)
朝鮮民主主義人民共和国において経済開発区の創設に関する実務事業は、中央特殊経済地帯指導機関が統一的に受け持って行う。
国家は、経済開発区の創設と関連して内外的に提起される問題を中央特殊経済地帯指導機関に集中させて処理するようにする。
第5条(投資家に対する特恵)
他国の法人、個人と経済団体、海外同胞は、経済開発区に投資することができ、企業、支社、事務所のようなものを設立して経済活動を自由に行うことができる。
国家は、投資家に土地利用、労力採用、税金納付のような分野で特恵的な経済活動条件を保障するようにする。
第6条(投資奨励および禁止、制限部門)
国家は、経済開発区でインフラ建設部門と先端科学技術部門、国際市場で競争力が高い商品を生産する部門の投資を特別に奨励する。
国の安全と住民の健康、健全な社会道徳生活、環境保護に害を及ぼしたり、経済技術的に立ち遅れた対象の投資と経済活動は禁止、または制限する。
第7条(投資家の権利と利益保護)
経済開発区で投資家に付与された権利、投資財産と合法的な所得は法的保護を受ける。
国家は、投資家の財産を国有化したり没収したりせず、社会公共の利益と関連してやむを得ず投資家の財産を没収したり一時利用する場合には、事前に通知し、その価値を随時に十分補償するようにする。
第8条(身辺安全の保障)
経済開発区で個人の身辺安全は、朝鮮民主主義人民共和国の法に基づいて保護される。
法に基づかずには、拘束、逮捕せず、居住地を捜索しない。
身辺安全と関連し、我が国と当該国間に締結された条約がある場合はそれに従う。
第9条(適用法規)
経済開発区の開発と管理、企業運営のような経済活動には、同法と同法に伴う施行規定、細則を適用する。
第2章 経済開発区の創設
第10条(経済開発区の創設根拠)
経済開発区の創設は、国家の経済発展戦略に基づいて行う。
第11条(経済開発区の地域選定原則)
経済開発区の地域選定原則は次のとおり。
1.対外経済協力と交流に有利な地域
2.国の経済および科学技術発展に貢献できる地域
3.住民地域と一定の距離をおいた地域
4.国家が定めた保護区域を侵害しない地域
第12条(経済開発区に関連して提起される問題の処理)
機関、企業所、団体は、他国の投資家から経済開発区の創設、開発と関連した問題を提起された場合、中央特殊経済地帯指導機関に提起された内容を文書で伝達しなければならない。
中央特殊経済地帯指導機関は、提起された文書を具体的に検討、確認して処理しなければならない。
第13条(当該国政府の承認とその状況通知)
他国の投資家は経済開発区に投資しようとする場合、自国政府の事前承認を受け、その状況を我が国の当該機関に文書で通知しなければならない。
自国の法によって政府承認を受ける必要がない場合には、承認通知を行わない。
第14条(地方級経済開発区の創設申請文書提出)
地方級経済開発区の創設申請文書は、当該の道(直轄市)人民委員会が中央特殊経済地帯指導機関に提出する。この場合、道(直轄市)内の当該機関と合意した文書を一緒に提出する。
第15条(中央級経済開発区の創設申請文書提出)
中央級経済開発区の創設申請文書は、定められた手続きに従って当該機関が作成し、中央特殊経済地帯指導機関に提出する。この場合、当該機関と合意した文書を一緒に提出する。
第16条(関連機関との合意)
中央特殊経済地帯指導機関は、経済開発区の創設審議文書を非常設国家審議委員会に提起する前に関連の中央機関と十分に合意しなければならない。
第17条(経済開発区の創設承認)
経済開発区の創設承認は、非常設国家審議委員会が行う。
中央特殊経済地帯指導機関は、創設審議文書を非常設国家審議委員会に提起する場合、関連の中央機関と合意した文書を一緒に提出しなければならない。
第18条(経済開発区の創設公布)
経済開発区を設置する国家の決定を公布する事業は、最高人民会議常任委員会が行う。
第3章 経済開発区の開発
第19条(経済開発区の開発原則)
経済開発区の開発原則は次のとおり。
1.計画に基づいて段階別に開発する原則
2.投資誘致を多角化する原則
3.経済開発区とその周辺の自然生態環境を保護する原則
4.土地と資源を合理的に利用する原則
5.生産とサービスの国際競争力を高める原則
6.経済活動の便宜と社会公共の利益をともに保障する原則
7.当該の経済開発区の持続的で均衡がとれた発展を保障する原則
第20条(開発当事者)
他国の投資家は、承認を受けて経済開発区を独自、または共同で開発することができる。
我が国の機関、企業所も承認を受けて経済開発区を開発することができる。
第21条(開発企業に対する承認)
開発企業に対する承認は、中央特殊経済地帯指導機関が行う。
中央特殊経済地帯指導機関は、開発企業を登録し、開発事業権承認証書を発給しなければならない。
第22条(開発計画の作成と承認)
経済開発区の開発総計画と細部計画は、地域国土建設総計画に基づいて当該機関、または開発企業が作成する。
開発総計画の承認は内閣が行い、細部計画の承認は中央特殊経済地帯指導機関が行う。
開発計画の変更承認は当該計画を承認した機関が行う。
第23条(開発方式)
経済開発区の開発方式は、当該の経済開発区の特性と開発条件に即し、国の経済発展に貢献できる合理的な方式で定めることができる。
第24条(土地賃貸の契約)
開発企業は、土地を賃貸しようとする場合、当該の国土管理機関と土地賃貸契約を結ばなければならない。
土地賃貸契約では、賃貸期間、面積と区画、用途、賃貸料の支払期間と支払い方法、その他の必要な事項を定める。
当該の国土管理機関は、土地賃貸契約に従って土地賃貸料を支払った企業に土地利用証を発給しなければならない。
第25条(土地賃貸期間および賃貸期間延長)
経済開発区の土地賃貸期間は最高50年までとし、土地賃貸期間は当該企業に土地利用証を発給した日から計算する。
土地賃貸期間が終了した企業は必要に応じて契約を再び結び、借りた土地を引き続き利用することができる。
第26条(土地利用権の出資)
機関、企業所、団体は、他国の投資家と一緒に開発企業を設立する場合、定められたことに基づいて土地利用権を出資することができる。
第27条(建物、付属物の撤去と移設費用負担)
経済開発区で開発区内にある建物と付属物の撤去、移設と住民移住にかかる費用は、開発企業が負担する。
第28条(インフラおよび公共施設建設)
経済開発区のインフラと公共施設建設は、開発企業が行う。
開発企業は定められたことに基づいて、インフラ、公共施設建設を他の企業を介して行うことができる。
第29条(土地利用権と建物の売買、再賃貸価格)
企業は、土地利用権と建物所有権を売買、再賃貸、贈与、相続したり抵当にすることができる。
開発した土地の利用権と建物の売買、再賃貸価格は開発企業が定める。
第30条(土地利用権、建物所有権の登録)
企業は、土地利用権、または建物所有権を取得した場合、管理機関に登録し、当該の証書を発給されなければならない。
土地利用権、建物所有権が変更された場合には、変更登録を行い、当該の証書を再び発給されなければならない。
第4章 経済開発区の管理
第31条(経済開発区管理機関)
経済開発区の管理は、中央特殊経済地帯指導機関と当該の道(直轄市)人民委員会の指導・援助のもとに経済開発区管理機関が行う。
管理機関は、当該の経済開発区の実状に合うよう管理委員会、管理事務所のような名称で組織することができる。
第32条(経済開発区の管理原則)
経済開発区の管理原則は次のとおり。
1.法規の厳格な順守と執行
2.企業の独自性保障
3.経済活動に対する特恵提供
4.国際慣例の参考
第33条(中央特殊経済地帯指導機関の事業内容)
中央特殊経済地帯指導機関は次のような事業を行う。
1.経済開発区と関連した国家の発展戦略案作成
2.経済開発区と関連した他国政府との協力および投資誘致
3.経済開発区と関連した委員会、省、中央機関との事業連携
4.管理機関の事業援助
5.経済開発区企業創設審議基準の検討、承認
6.経済開発区の税務管理
7.その他に国家が委任した事業
第34条(道・直轄市人民委員会の事業内容)
道(直轄市)人民委員会は、自己に所属する経済開発区と関連して次のような事業を行う。
1.管理機関の組織
2.経済開発区法規の施行細則のような経済開発区事業と関連した国家管理文書の作成および示達
3.管理機関の事業援助
4.経済開発区の管理と企業に必要な労力保障
5.その他に国家が委任した事業
第35条(管理機関の構成と責任者)
管理機関は、当該の経済開発区の実状と実利に即して必要なメンバーで構成し、責任者は管理委員会委員長、または管理事務所所長である。
責任者は、管理機関を代表し、管理機関事業を主管する。
第36条(管理機関の事業内容)
管理機関は次のような事業を行う。
1.経済開発区の開発、管理に必要な準則作成
2.投資環境の醸成と投資誘致
3.企業の創設承認と登録、営業許可
4.対象建設許可と竣工検査
5.対象建設設計文書の保管
6.土地利用権、建物所有権の登録
7.企業の経営活動協力
8.インフラと公共施設の建設、経営に対する監督および協力
9.環境保護と消防対策
10.管理機関の規約作成
11.この他に中央特殊経済地帯指導機関と道(直轄市)人民委員会が委任する事業
第37条(管理機関の予算編成と執行)
管理機関は、自己の予算を編成して執行しなければならない。この場合、定められたことに基づいて予算編成および執行状況と関連した文書を当該の人民委員会、または中央特殊経済地帯指導機関に提出する。
第5章 経済開発区での経済活動
第38条(企業の創設申請)
経済開発区に企業を創設しようとする投資家は、管理機関に企業創設申請文書を提出しなければならない。
管理機関は、企業創設申請文書を受理した日から10日以内に企業創設を承認したり、否決し、その結果を申請者に知らせなければならない。
第39条(手続きの簡素化)
中央特殊経済地帯指導機関と当該の道(直轄市)人民委員会、管理機関は、企業創設と関連した申請、審議、承認、登録のような手続きを簡素化しなければならない。
第40条(企業登録と法人資格)
企業創設承認を受けた企業は、定められた期日内に創設登録、住所登録、税関登録、税務登録を行わなければならない。
企業は、管理機関に創設登録を行った日から我が国の法人となる。しかし、他国企業の支社、事務所は我が国の法人にならない。
第41条(労力の採用)
経済開発区の企業は、我が国の労力を優先的に採用しなければならない。この場合、当該の労働行政機関に労力採用申請文書を提出し、労力を保障されなければならない。
必要に応じて他国の労力を採用する場合には、管理機関と合意しなければならない。
第42条(従業員の賃金最低基準の制定)
経済開発区従業員の賃金最低基準は、中央特殊経済地帯指導機関が定める。この場合、管理機関、または当該の道(直轄市)人民委員会と協議する。
第43条(商品、サービスの価格)
経済開発区では、企業間に取り引きされる商品価格、サービス価格、経済開発区内の企業と開発区外の我が国機関、企業所、団体間に取り引きされる商品価格は、国際市場価格に従って当事者間が協議して定める。
第44条(企業の会計)
経済開発区で企業の会計計算と決算は、経済開発区に適用する財政会計関連法規に準じて行う。
財政会計関連法規で定められていない事項は、国際的に認められる会計慣習に従う。
第45条(企業所得税率)
経済開発区で企業所得税率は決算利潤の14%に、奨励する部門の企業所得税率は決算利潤の10%にする。
第46条(流通貨幣と決済貨幣)
経済開発区で流通貨幣と決済貨幣は、朝鮮ウォン、または定められた貨幣にする。
第47条(外貨、利潤、財産の搬出入)
経済開発区では外貨を自由に搬出入することができ、合法的な利潤とその他の所得を制限なく経済開発区外に送金することができる。
経済開発区に搬入した財産と合法的に取得した財産は、経済開発区外に搬出することができる。
第48条(知的所有権の保護)
経済開発区で知的所有権は、法的保護を受ける。
知的所有権の登録、利用、保護と関連した秩序は、当該の法規に従う。
第49条(観光業)
経済開発区では、当該地域の自然風致と環境、特性に合う観光資源を開発し、国際観光を発展させるようにする。
投資家は、定められたことに基づいて観光業を行うことができる。
第50条(人員、運輸手段の出入りと物資の搬出入条件保障)
通行検査、税関、検疫機関と当該機関は、経済開発区の開発と管理、投資家の経済活動に支障をきたさないよう人員、運輸手段の出入りと物資の搬出入を保障しなければならない。
第51条(有価証券取引)
経済開発区で、外国人投資企業と外国人は、定められたことに基づいて有価証券を取り引きすることができる。
第6章 奨励および特恵
第52条(土地利用と関連した特恵)
経済開発区で企業用土地は、実際の需要に基づいてまず提供され、土地の使用分野と用途によって賃貸期間、賃貸料、納付方法で互いに異なる特恵を与える。
インフラ施設と公共施設、奨励部門に投資する企業については、土地の位置の選択で優先権を与え、定められた期間に当該の土地使用料を免除することができる。
第53条(企業所得税の減免)
経済開発区で10年以上運営する企業については、企業所得税を減らしたり、免除する。
企業所得税の減免期間、減税率と減免期間の計算時点は規定で定める。
第54条(再投資分に当たる所得税還元特恵)
投資家が利潤を再投資して登録資本を増やしたり、新らしい企業を創設して5年以上運営する場合には、再投資分に当たる企業所得税額の50%を還元する。
インフラ建設部門に再投資する場合には、納付した再投資分に当たる企業所得税額のすべてを還元する。
第55条(開発企業に対する特恵)
経済開発区で開発企業は、観光業、ホテル業のような対象の経営権取得で優先権を有する。
開発企業の財産とインフラ施設、公共施設運営には税金を賦課しない。
第56条(特恵関税制度と関税免除対象)
経済開発区では、特恵関税制度を実施する。
経済開発区建設用物資と加工貿易、中継貿易、補償貿易を目的に搬入される物資、企業の生産、または経営用物資と生産した輸出商品、投資家が使う生活用品、その他に国家が定めた物資には関税を賦課しない。
第57条(物資の搬出入申告制)
経済開発区で物資の搬出入は申告制とする。
物資を搬出入しようとする場合には、物資搬出入申告書を作成して当該の税関に提出する。
第58条(通信保障)
経済開発区では、郵便、電話、ファクスのような通信手段利用で便宜を提供する。
第7章 提訴および紛争解決
第59条(提訴とその処理)
経済開発区で個人、または企業は、管理機関、中央特殊経済地帯指導機関、当該の機関に提訴することができる。
提訴を受けた機関は、30日以内に了解、処理し、その結果を訴えた者に知らせなければならない。
第60条(調停による紛争解決)
経済開発区で当事者らは、調停の方法で紛争を解決することができる。
調停案は、紛争当事者らの意思に基づいて作成し、紛争当事者らが署名してこそ効力を有する。
第61条(国際仲裁による紛争解決)
紛争当事者らは、仲裁合意に従って我が国、または他国の国際仲裁機関に仲裁を提起して紛争を解決することができる。
仲裁の手続きは、当該の国際仲裁委員会の仲裁規則に従う。
第62条(裁判による紛争解決)
紛争当事者らは、当該の経済開発区を管轄する道(直轄市)裁判所、または最高裁判所に訴訟を提起して紛争を解決することができる。
付 則
第1条(法の施行日)
この法は、採択した日から施行する。
第2条(適用制限)
羅先経済貿易地帯と黄金坪・威化島経済地帯、開城工業地区と金剛山国際観光特区にはこの法を適用しない。【朝鮮通信=東京】
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