羅先経済貿易地帯の税金制度の特徴と問題
「経済研究」2011年2号


 朝鮮民主主義人民共和国の経済学部門理論誌(季刊誌)「経済研究」2011年2号は、「羅先経済貿易地帯外国投資企業および外国人税金制度の特徴とその運営を改善するうえでのいくつかの問題」と題する文を掲載した。その全文は次のとおり。


 金日成主席は、次のように教えた。

 「我々は、完全な平等と互恵の原則で外国投資家が共和国領域内に投資することを奨励し、外国投資家の投資を保護し、彼らの合法的権利と利益を保障するため外国人投資法をはじめ、関連法を制定して発表しました」

 こんにち、我が国の最北端羅先市では、党と国家の外国投資奨励措置によって、経済貿易地帯が運営されている。

 羅先経済貿易地帯は、特恵的な貿易および投資、中継輸送、金融、観光、サービス地域に宣布した共和国の特殊経済地帯である。羅先経済貿易地帯を世界的な経済貿易地帯として立派に整え、国の経済発展と人民生活の向上に積極的に寄与するようにするのは、人民のために生涯自身のすべてをささげた金日成主席が生の最後の時期に我々に託した遺産である。

 主席の遺訓を貫徹して羅先経済貿易地帯を国の重要な対外貿易拠点に整え、強盛大国建設に貢献するようにするのはこんにち、我が党の意図である。

 主席の生前の願いと金正日総書記の遠大な構想が宿る羅先経済貿易地帯を活性化して経済強国建設に積極的に貢献するようにするうえで、経済貿易地帯の税金制度が占める地位とその役割は非常に大きい。それは、税金制度自体が、当該国または地域に外国投資を引き入れるうえで重要な役割を果たしている事情と関連する。

 外国投資家は、どの国でも投資に先立ち、当該国または地域の原料・資材調達、労働力、販売市場、税金特恵の各条件などを打算するが、ここで税金特恵条件は最も重要な条件であると言える。それは、いくら最小原価で最も高く販売し、最大の利潤を得たとしても、過重な税金を払うなら、利潤が大幅に減るためである。したがって、税金制度を正しく管理、運営するのは、羅先経済貿易地帯開発に必要な外国投資を招いて地帯を成功裏に開発するうえで非常に重要であると言える。

 羅先経済貿易地帯に樹立された税金制度は、他国の税金制度とは異なる一連の特徴をもつ。

 羅先経済貿易地帯の税金制度の特徴は第1に、それが同地域で経済活動を行う外国投資企業と外国人だけを対象とする税金制度ということである。

 一般的にどの国でも納税対象には、税金納付能力があるすべての企業や個人、団体などが属する。しかし、羅先経済貿易地帯では、税金制度が廃止された我が国の特殊な環境と条件に合わせて、外国の投資企業と外国人だけが納税義務を有することになる。

 羅先経済貿易地帯の税資金制度の特徴は第2に、税務管理機構が大多数の資本主義諸国でのような国家権力執行機関ではなく、社会主義国家の一般的財政機関になっていることである。

 租税が国家の基本財源になっている資本主義諸国では、租税なしには国家を一時も維持・運営することができないため、租税を徴収するためなら財産の差し押さえと没収、営業中止、懲役刑に至る強権や暴力もいとわない。したがって、税務管理機構は国家権力執行機関が担っている。しかし、羅先経済貿易地帯での税務管理機関は、資本主義諸国でのような国家権力執行機関でなく、一般的な国家財政機関である。

 羅先経済貿易地帯で、税務管理機関が国家権力執行機関でなく一般財政機関であるからといって、それが外国投資企業と外国人に対する税務管理事業を弱めたり、おろそかにする根拠になるのではない。

 羅先経済貿易地帯の税務管理機関(市人民委員会税務局)は、共和国の人民政権機関の一つの部署で、地帯で税務秩序を正しく立てるため、さ細な脱税現象も絶対に見過ごさないし、万一、このような現象が起きた場合には、外国投資企業および外国人税金規定細則に準じて強い法的および行政的制裁を科すことができる法的権限を有している。

 羅先経済貿易地帯の税金制度の特徴は第3に、それが特恵的な税金制度ということである。

 外国投資企業と外国人に他国やほかの地域よりも有利な税金特恵を保障するところに羅先経済貿易地帯の税金制度のもう一つの特徴がある。

 税金収入が国家財政収入の圧倒的比重を占める資本主義諸国で、すべての納税者のための税金特恵などありえず、あるとすれば唯一、奨励部門の企業や大独占企業だけにありえる。

 しかし、羅先経済貿易地帯では同地域に対する外国投資を奨励し、地帯を活性化する目的で納税者、すなわち、すべての外国投資企業と外国人に対して、他国やほかの地域よりも有利な税金特恵を保障している。

 羅先経済貿易地帯で外国投資企業と外国人に与えられる税金特恵で重要なのは、何よりも彼らに適用される税金の種類が非常に単純であるということである。

 地帯では、外国投資企業と外国人にさらに有利な投資環境と条件、利益を保障し、地帯開発を推し進めるため、他国では数十種類の税金を徴収しているが、わずか7種類の税金項目だけを法的に規定しており、そのなかでも、現在は企業所得税、取引税、営業税、個人所得税、地方税(都市経営税、自動車利用税)など5種類の税金だけを徴収している。

 このように、外国投資企業と外国人に適用される税金の種類だけを見ても、国家が地帯開発のため大きな税金特恵を与えていることがよくわかる。

 羅先経済貿易地帯で外国投資企業と外国人に与えられる税金特恵で重要なのは次に、税率が非常に低いということである。

 それはまず、企業所得税の税率で見ることができる。

 現在、羅先経済貿易地帯での企業所得税の税率は14%で、中国経済特区の15%、中国・香港の18%、シンガポールの26%よりも低い水準である。

 このような税金特恵は、企業所得税だけでなく、営業税と取引税の税率設定でも同様である。

 羅先経済貿易地帯で外国投資企業と外国人に対する税金特恵はまた、財産税の課税対象設定とその賦課にもはっきりあらわれている。

 一般的に税金制度が存在する大多数の国では、財産税が所得税、付加価値税(消費税)などとともに最も重要な税金項目になっており、生産用固定財産であれ、非生産用固定財産であれ関係なく、すべての固定財産に財産税を賦課するのが一般的である。

 しかし、羅先経済貿易地帯では、外国人が地帯にさらに多くの財産を投資するよう奨励し、地帯開発を促進する目的で財産税の課税対象を単に非生産用固定財産だけに限らせ、それも自家用飛行機と船舶、住宅用建物と別荘などの特殊な部類の非生産的固定財産についてだけ適用している。

 これとともに、住宅用建物である場合でも外国人が地帯に建物をさらに多く建設するよう奨励するため、彼らが直接建設したり、自分の資金で購入した場合には竣工した時から5年間、財産税を免除すると法的に規定している。

 羅先経済貿易地帯での税金特恵は次に、税金減免期間設定にもはっきりあらわれている。

 羅先経済貿易地帯では、奨励部門と生産部門の外国投資企業が10年以上企業を運営する場合、企業所得税を利潤が生まれた年から3年間免除し、その次の2年間は50%程度減らす(3免2減)とともに、外国投資企業が総投資額が3000ユーロ以上のインフラ建設部門に投資した場合には、企業所得税を利潤が生まれた年から4年間免除し、その次の3年間は50%程度減らす特恵(4免3減)を施している。

 また、最近の2010年9月に公布された羅先経済貿易地帯外国投資企業および外国人税金規定細則に従い、インフラ建設部門に優先的に投資した外国投資企業の企業所得税は、利潤が生まれた年から5年間免除し、その次の3年間は50%程度減免(5免3減)できるようになっている。このような3免2減や4免3減、5免3減のような税金特恵は、中国をはじめ、周辺諸国での上記の同様の条件での2免3減特恵に比べたとき、外国投資企業と外国人にとってさらに大きな税金特恵にならざるをえない。

 羅先経済貿易地帯での税金特恵は次に、税金返還条件にもあらわれている。

 羅先経済貿易地帯では、利潤を再投資する外国投資企業は既に収めた再投資分に当たる企業所得税額の50%が返還され、インフラ建設部門は全部を返還される特恵を与えることによって、外国投資企業と外国人が地帯に利潤を再投資したり、インフラ建設部門に投資することに有利な条件を与えている。

 羅先経済貿易地帯で外国投資企業と外国人に与えられる税金特恵は、このほかにもさまざまな面で見ることができる。

 以上のように、大多数の国でのように納税者からさらに多く税金を徴収することを目的とする略奪的な税金制度ではなく、経済貿易地帯に対する外国投資を増やし地帯開発を促進するために外国投資企業と外国人により多くの税金特恵を与えることを目的とした特恵的な税金制度であるということに羅先経済貿易地帯の税金制度の重要な特徴がある。

 こんにち、我々には金正日総書記の構想と意図どおりに羅先経済貿易地帯を特恵的な貿易および投資、中継輸送、金融、観光、サービス地域に整え、強盛大国建設に実質的に貢献するため、経済貿易地帯の税金制度運営を絶えず改善し、完成させなければならない重くも栄えある課題が課せられている。

 今、羅先経済貿易地帯の税金制度を正しく管理・運営して地帯を活性化するうえで何よりも重要なのは、税務法律制度を現実発展の要求に合わせて絶えず補充し、完成させ、外国投資企業と外国人の投資および財産所有権に対する確固たる法的保証を築くことである。

 これまでの税務法律制度がいくら完成されたものであるとしても、年月が流れて環境と条件が時々刻々と変わるなかで、それに合うよう税務法律制度を絶えず補充し、完成させることが必須である。

 我が国では最近、羅先経済貿易地帯を開発し、活性化するための一連の措置を講じた。

 党と国家の大きな関心のもとで、我が国では去る2009年12月に羅先市を特別市に制定し、その地位を高めることで地帯開発と運営に有利な条件を築き、2010年1月27日には最高人民会議常任委員会政令で「朝鮮民主主義人民共和国羅先経済貿易地帯法」を修正、補充して公布した。

 これとともに、2010年9月5日には「羅先経済貿易地帯外国投資企業および外国人税金規定細則」を公布した。

 今回公布された地帯法と税金規定細則は、外国投資を奨励して法的に保証し、地帯開発事業を推し進めて活性化するうえで大きな意義をもつ。

 羅先経済貿易地帯に対する外国投資を増やし、地帯開発事業を促進するうえで重要なことは次に、税務法律制度において一貫性を保つことで、外国投資企業と外国人の投資と財産所有権に対する確固たる法的保証を築くことである。

 地帯開発のためであるからといって、従来の税務法律制度をすべて無視し、一貫性のない法規定をたびたび修正していては、外国投資企業と外国人が投資財産に対する法的保証を失うことになり、こうなれば彼らの投資意欲を損ね、地帯開発事業に莫大な支障をきたすことになる。

 羅先経済貿易地帯では、このような偏向を徹底的に克服するため、今回外国投資企業および外国人税金規定細則を一貫性の原則で作成し、これに基づいて税務管理事業を行うようにする厳格な措置を講じた。特に、羅先経済貿易地帯で適用される税金の種類と企業所得税率、税金減免期間などを従来の法規定どおりにした。

 今後も地帯開発に有利な法的環境を築くため、経済貿易地帯の具体的な実情と税務法律制度と関連した世界的推移を考慮して経済貿易地帯の税務法律制度を改善していかなければならない。

 羅先経済貿易地帯の税金制度を正しく管理、運営していくうえで重要なのは次に、経済貿易地帯の税務管理活動家の実務水準を高め、彼らの責任と役割を著しく高めることである。

 羅先経済貿易地帯開発のために税金制度を正しく運営するにおいて、この事業を受け持って遂行する税務管理活動家の準備の程度と彼らが果たす役割は非常に重要である。

 税務管理事業は他の事業とは異なり、税務管理活動家が会計、財政管理、金融、価格など社会主義経済管理の知識だけでなく、税務学、資本主義財政管理、資本主義企業会計など、資本主義経済の知識も所有しなければならず、すべての外国投資関連法にも精通しなければならない困難で複雑な事業である。

 したがって、税務管理活動家がすべての外国人投資関連法に精通し、会計、財政、金融、価格、税務などの豊富な経済知識を所有し、それを巧みに活用する問題はこんにち、重要な要求として提起される。

 これとともに、対外実習や講習、学術討論会などに常に参加して視野を広め、税務管理分野に関する世界的推移をよく知る問題も重要である。

 現代は、情報産業時代、知識経済時代である。税務管理活動家は、税務管理業務の世界的推移と時代の現状に即して税務管理業務のコンピューター化、情報化水準を一段階高め、すべての税務管理業務をコンピューターをはじめ、現代的な情報技術手段に依拠して行っていかなければならない。

 羅先経済貿易地帯の経済指導活動家は、「朝鮮は決心すればやる!」という確固たる信念と不屈の精神力をもって、羅先経済貿易地帯を世界的な経済貿易地帯に、国の重要な対外貿易拠点に立派に整えることによって、金日成主席の遺訓と金正日総書記の遠大な構想を実現するうえで、自身の智恵と精力を尽くしていかなければならないであろう。

「月刊論調6月号




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