修正、補充された社会主義憲法
−2009年4月9日−


 ことし4月9日に開かれた朝鮮民主主義人民共和国の最高人民会議第12期第1回会議で修正、補充された社会主義憲法の全文が、同国のウェブサイト「ネナラ(我が国)」に掲載された。

 新憲法は、第6章「国家機構」の第2節に「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長」を新設し、国防委員会委員長が「国の最高指導者」と規定し、国防委員会委員長の任務、権限について「国家の全般事業を指導する」、「他の国と締結した重要条約を批准、または廃棄する」などとした。

 また、国防委員会について「国家主権の最高国防指導機関」と規定し、任務と権限に「先軍革命路線を貫徹するための国家の重要政策を立てる」とした。

 新憲法は、第1章「政治」で、国の指導指針に「チュチェ思想」とともに、「先軍思想」を加える一方、国家が勤労人民の利益擁護とともに「人権を尊重」すると付け加えた。

 さらに、条文にあった「共産主義」が削除されたり、他の言葉に修正された。

 社会主義憲法の全条項はこれまでの166条から172条にふえた。

 以下に、新設された「朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長」の条文全文とその他修正、補充された条文を旧条文と比較する形で掲載する。

 ※(旧)は旧条文、(新)は修正、補充された条文。


新設


第6章 国家機構

第2節 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長

第100条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、朝鮮民主主義人民共和国の最高指導者である。

第101条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長の任期は、最高人民会議の任期と同じである。

第102条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、朝鮮民主主義人民共和国の全般的武力の最高司令官となり、国家の一切の武力を指揮、統率する。

第103条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、次のような任務と権限を有する。
 1.国家の全般事業を指導する。
 2.国防委員会の事業を直接指導する。
 3.国防部門の重要幹部を任命、または解任する。
 4.他の国と締結した重要条約を批准、または廃棄する。
 5.特赦権を行使する。
 6.国の非常事態と戦時状態、動員令を宣布する。

第104条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、命令を下す。

第105条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、自己の事業に対して最高人民会議の前に責任を持つ。


修正、補充

 ○第1章 政治

 第3条
(旧)朝鮮民主主義人民共和国は、人間中心の世界観であり人民大衆の自主性の実現をめざす革命思想であるチュチェ思想を自己の活動の指導指針とする。
(新)朝鮮民主主義人民共和国は、人間中心の世界観であり人民大衆の自主性の実現をめざす革命思想であるチュチェ思想、先軍思想を自己の活動の指導指針とする。

 第4条
(旧)朝鮮民主主義人民共和国の主権は、労働者、農民、勤労インテリとすべての勤労人民にある。
(新)朝鮮民主主義人民共和国の主権は、労働者、農民、軍人、勤労インテリとすべての勤労人民にある。

 第8条
(旧)国家は、搾取と抑圧から解放されて国家と社会の主人となった労働者、農民、勤労インテリとすべての勤労人民の利益を擁護し、保護する。
(新)国家は、搾取と抑圧から解放されて国家と社会の主人となった労働者、農民、軍人、勤労インテリとすべての勤労人民の利益を擁護し、人権を尊重して保護する。

 ○第2章 経済

 第29条
(旧)社会主義、共産主義は勤労者大衆の創造的労働によって建設される。
(新)社会主義は勤労者大衆の創造的労働によって建設される。

 第36条
(旧)朝鮮民主主義人民共和国において対外貿易は、国家または社会協同団体が行う。
(新)朝鮮民主主義人民共和国において対外貿易は、国家機関、企業所、社会協同団体が行う。

 ○第3章 文化

 第40条
(旧)朝鮮民主主義人民共和国は、文化革命を徹底的に遂行してすべての人を自然と社会に対する深い知識と高い文化・技術水準を有した社会主義、共産主義建設者にし、全社会をインテリ化する。
(新)朝鮮民主主義人民共和国は、文化革命を徹底的に遂行してすべての人を自然と社会に対する深い知識と高い文化・技術水準を有した社会主義建設者にし、全社会をインテリ化する。

 第43条
(旧)国家は、社会主義教育学の原理を具現し、後世を社会と人民のためにたたかう不屈の革命家に、知徳体を兼ね備えた共産主義的な新しい人間に育成する。
(新)国家は、社会主義教育学の原理を具現し、後世を社会と人民のためにたたかう不屈の革命家に、知徳体を兼ね備えたチュチェ型の新しい人間に育成する。


 ○第4章 国防

 第59条
(旧)朝鮮民主主義人民共和国武装力の使命は、勤労人民の利益を擁護し、外来侵略から社会主義制度と革命の獲得物を防衛し、祖国の自由と独立と平和を守ることにある。
(新)朝鮮民主主義人民共和国武装力の使命は、先軍革命路線を貫徹して革命の首脳部を防衛し、勤労人民の利益を擁護し、外来侵略から社会主義制度と革命の獲得物、祖国の自由と独立、平和を守ることにある。

 第61条
(旧)国家は、軍隊内で軍事規律と群衆規律を強化し、官兵一致、軍民一致の気高い伝統的美風を高く発揚させるようにする。
(新)国家は、軍隊内で革命的統帥体系と軍風を確立し、軍事規律と群衆規律を強化し、官兵一致、軍政配合、軍民一致の気高い伝統的美風を高く発揚させるようにする。

 ○第6章 国家機構

 −第1節 最高人民会議
 第95条
(旧)最高人民会議で討議する議案は、最高人民会議常任委員会、内閣と最高人民会議の部門委員会が提出する。
(新)最高人民会議で討議する議案は、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長、国防委員会、最高人民会議常任委員会、内閣と最高人民会議の部門委員会が提出する。

 −(旧)第2節 国防委員会
 第100条 国防委員会は、国家主権の最高軍事指導機関であり、全般的国防管理機関である。
 第101条 国防委員会は、委員長、第1副委員長、副委員長、委員で構成する。
 国防委員会の任期は、最高人民会議の任期と同じである。
 第102条 朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長は、一切の武力を指揮、統率し、国防事業全般を指導する。
 第103条 国防委員会は、次のような任務と権限を有する。
 1.国家の全般的武力と国防建設事業を指導する。
 2.国防部門の中央機関を設置したり廃止する。
 3.重要軍事幹部を任命、または解任する。
 4.軍事称号を制定し、将官以上の軍事称号を授与する。
 5.国の戦時状態と動員令を宣布する。
 第104条 国防委員会は、決定と命令を下す。

(新)第3節 国防委員会
 第106条 国防委員会は、国家主権の最高国防指導機関である。
 第107条 国防委員会は、委員長、第1副委員長、副委員長、委員で構成する。
 第108条 国防委員会の任期は、最高人民会議の任期と同じである。
 第109条 国防委員会は、次のような任務と権限を有する。
 1.先軍革命路線を貫徹するための国家の重要政策を立てる。
 2.国家の全般的武力と国防建設事業を指導する。
 3.朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長命令、国防委員会決定、指示の執行状況を監督し、対策を立てる。
 4.朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長命令、国防委員会決定、指示に反する国家機関の決定、指示を廃止する。
 5.国防部門の中央機関を設置したり廃止する。
 6.軍事称号を制定し、将官以上の軍事称号を授与する。
 第110条 国防委員会は、決定、指示を出す。

 −(旧)第3節 最高人民会議常任委員会
 第110条 最高人民会議常任委員会は、次のような任務と権限を有する。
 6.憲法、最高人民会議法令、決定、国防委員会決定、命令、最高人民会議常任委員会政令、決定、指示に反する国家機関の決定、指示を廃止し、地方人民会議の誤った決定執行を停止させる。
 17.大赦権と特赦権を行使する。

(新)第4節 最高人民会議常任委員会
 第116条 最高人民会議常任委員会は、次のような任務と権限を有する。
 6.憲法、最高人民会議法令、決定、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長命令、国防委員会決定、指示、最高人民会議常任委員会政令、決定、指示に反する国家機関の決定、指示を廃止し、地方人民会議の誤った決定執行を停止させる。
 17.大赦権を行使する。
(補充)19.他国の国会、国際議会機構との事業をはじめ、対外事業を行う。

−(旧)第6節 地方人民委員会
 第141条 地方人民委員会は、次のような任務と権限を有する。
 4.当該人民会議と上級人民会議、人民委員会、内閣と内閣委員会、省の法令、政令、決定、指示を執行する。

(新)第7節 地方人民委員会
 第147条 地方人民委員会は、次のような任務と権限を有する。
 4.当該地方人民会議と上級人民会議決定、指示と最高人民会議法令、決定、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長命令、国防委員会決定、指示、最高人民会議常任委員会政令、決定、指示、内閣と内閣委員会、省の決定、指示を執行する。

(旧)第146条 地方人民委員会は、上級人民委員会と内閣に服従する。
(新)第152条 地方人民委員会は、上級人民委員会と内閣、最高人民会議常任委員会に服従する。

 −(旧)第7節 検察所と裁判所
 第150条 検察所は、次のような任務を遂行する。
 2.国家機関の決定、指示が憲法、最高人民会議法令、決定、国防委員会決定、命令、最高人民会議常任委員会政令、決定、指示、内閣決定、指示に反していないかを監視する。

(新)第8節 検察所と裁判所
 第156条 検察所は、次のような任務を遂行する。
 2.国家機関の決定、指示が憲法、最高人民会議法令、決定、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長命令、国防委員会決定、指示、最高人民会議常任委員会政令、決定、指示、内閣決定、指示に反していないかを監視する。

(旧)第153条 裁判は、中央裁判所、道(直轄市)裁判所、人民裁判所と特別裁判所が行う。
(新)第159条 裁判は、中央裁判所、道(直轄市)裁判所、市(区域)、郡人民裁判所と特別裁判所が行う。

(旧)第154条 中央裁判所、道(直轄市)裁判所、人民裁判所の判事、人民参審員の任期は、当該人民会議の任期と同じである。
(新)第160条 中央裁判所、道(直轄市)裁判所、市(区域)、郡人民裁判所の判事、人民参審員の任期は、当該人民会議の任期と同じである。
2009.9.1 朝鮮通信=東京


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