「真由美自白」の真っ赤なウソ

資料 日本のマスコミにみる事件の疑惑


 衝撃的な「真由美」の告白によって、「北の犯行」が決定づけられるはずだったが、そのあまりにも演出じみた会見について、日本の良識派は多くの疑惑を抱いている。


「真由美」会見の疑惑

 ○「事件発生直後から北朝鮮の工作とされていたが、機体も見つかっていないのに爆破と断定できるのか。証拠は「真由美」という女性の自白しかない」(児島襄・作家 『日本経済新聞』1.16)

 ○「韓国としては、『真由美』の白白と状況証拠だけで公判は維持できるということなのでしょうが、これだけの大事件で物的証拠がゼロというのでは、民主主義国としては話になりませんね。日本だったらこの程度の材料では、とても公判維持はムリですね」(板倉宏・日本大学教授・刑法学者 『日刊ゲンダイ』 1.20)

 ○「日本で被疑者を取り調べる場合、必ず弁護士が付くが、『真由美』の場合には、こういう手続きが全くなされていないように思える。行政が前面に出てきており、会見したからといって『北』の犯行とはにわかに信じがたい」(佐木隆三・作家 『東京新聞』1.16)

 ○「果たしてこの発表を全部信じていいのか、まだ非常に疑問に思っている。張作霖爆死事件などのように、この種の事件は後になってその通りでなかったことが多い。もし、謀略のネットだとすれば、学習によってより巧妙になることも可能だ。事件のスタートから作り事である可能性は否定できない」(関寛治・立命館大学教授 『朝日新聞』1.16)

 ○「金大中事件をテーマにした小説の取材中に、韓国諜報機関の手法についてかなりの知識を得た。『真由美』の自供は、予想されていたもの。1カ月にわたる取り調べの経過は闇の中であり、信用できない。事件は、金大中を大統領にさせない作戦と並行して、北の脅威を印象づけるために仕組まれたものだろう」(中薗英助・スパイ小説家 『毎日新聞』1.16)

 ○「『真由美』のTV会見は、あらかじめ決められたセリフをただ伝えている感じだった。記者会見の初めの質問に対して30秒ほど考えていましたが、あれもテープレコーダーを巻戻すのと同じで、暗記した部分を思い出して、それでしゃべり出したように受け取れましたね。あの自白のなかには彼女の証言もあるんでしょうが、ほとんどは韓国側の脚色と見るのが正解でしょうね」

 「南で工作する北のスパイが、韓国の街を見て心変わりしたという自供は、とうてい信じられませんが、それ以上に今回の韓国の発表には大きな矛盾があります。つまり、北の筋金入りのスパイということと、短期間で自供したという2つの話は両立し得ないことなのです。本当に筋金入りスパイなら、既にどんな手を使ってでも自殺しているでしょうし、仮に捕えられたとしても、したたかに対応するはずです。それが韓国側のシナリオ通りに動いているということは、『真由美』は、あんな大仕事ができるような筋金入りスパイではない証明ですよ。彼女の正体についてはもう一度、根っから疑ってみる必要がありますよ」(小林久三・作家 『日刊ゲンダイ』 1・20)
 
 ○「北朝鮮工作員であることを自供する『真由美』をテレビで見た。一人の女性が権力に操られている悲しさを痛切に思った。大事件の容疑者がテレビの前で自分を語らせられる異常さ。全面自供に至る理由として、『ソウルの街を見て、これまで自分が教育されて来た内容がウソだった』という不自然さ。とても信用できない内容で、韓国情報機関の演出だな、と思った」(大宅映子・ジャーナリスト 『毎日新聞』1.16)

 ○「ああいう場(記者会見)では我々だって相当あがるが、緊張したり興奮すると一般には声帯の基本周波数が高くなる。ところが『真由美』は最初220ヘルツ前後が数秒続いて、200ヘルツに落ちてずっとそのままだ。その最後に遺族に謝って泣き出しそうになったとき、また220ヘルツまで上がった。彼女の基本周波数は200ヘルツぐらいだが、背かっこうからすると、普段話しているのはもっと高いはずで、無理して低くしている感じがある。普通の人間ならあれだけの事件をやっているのだから、300〜400ヘルツぐらいまであがると思う。それがあがっていないのはなぜか。声の周波数からみると、自分がしゃべる内容について何回も何回も予行練習をやっているとしか考えられない」(鈴木松美・日本音響研究所所長 『週刊大衆』2・8)

 ○「彼女の記者会見の内容は、安全企画部が発表した捜査内容を繰り返し言ったにすぎない。エリートの女性工作員として長い期間にわたって教育訓練を受けたものが、ソウルの街の繁栄ぶりと、大統領選挙の民主化を見て、やっぱり韓国がいいなんて、本気でいっているとは、とうてい思えない。安全企画部は全貌をしゃべれば命は助けてやると、いわば取り引きをしてしゃべらせたと伝えられているが、供述の内容については、安全企画部の意図が反映されていると見ていい。とにかく、安全企画部の発表だということをよく認識しておく必要がある。いわば謀略機関が発表していることなんだ」(公安関係者 『週刊新潮』1.28)

 ○「『真由美』のインタビューを聞く限りソウルなまりがあるようで、南の謀略との見方は変わらない。『真由美』に会見をさせたのは、大韓機の行く方もわからないうちに、『真由美』の取り調べを始めた韓国側の捜査に無理があったからで、発表に信憑性をもたせるために予想された結果だ」(中川信夫・韓国問題評論家 『東京新聞』1.16)

 ○「一昨日、テレビジョンに登場した金賢姫は終始、はっきりしたソウル標準語を使った。ところが、質問する我々の記者たちは無粋なナマリのある言葉を何はばかりなく使った」(『朝鮮日報』=韓国で発行されている朝刊紙−原文はハングル−コラム欄「萬物相」1.19)

 ○「消息不明になったKAL機に西欧人が乗っていたら、事故直後に国際問題になっていたはずです。としたら、真由美の韓国移送は、そんなにスムーズにはいかなかったと思います。それが真由美の供述調査で突然、西欧人女性が出て来たのには、ただ、不可解としかいいようがないですね」(江口洋一・国際問題評論家 『週刊大衆』2.8)

 ○「日本女性が、『真由美』の教育係だったという話はいささかマユツバものです。日本を巻込むための情報操作ではないかと思いますね。日本国民に、『北は日本の若い女性をさらっていくあくどい国』という認識を植えつける意味で、大変な効果がありますからね」(中薗英助・スパイ小説家 『日刊ゲンダイ』1.20)

 ○「工作員を2年間にわたって教育する立場の人間は確固たる革命思想の持ち主であることが条件です。無理矢理、拉致してきた女性を短期間に『洗脳』して教育係にできるものかどうか……。しかも失跡した女性たちの職業は、衣料品店員、美容指導員、事務員と、日本の生活慣習を教えるにはどうみても力不足です。また、日本語教育にしても、新潟弁や鹿児島弁の彼女たちがキレイな標準語を教えられるとは思えませんね。この話が『真由美』のテレビ会見ではなく、捜査当局幹部から発表されている点に注目すべきです。『教育係は拉致女性』となれば、日本政府も邦人保護の建前上、動かざるを得ないし、日本の世論も北朝鮮批判が高まる。韓国にしてみれば、『反北』キャンペーンに日本を巻き込めるわけです」(事情通 『日刊ゲンダイ』1.21)

 ○「それにしても、今回の犯行には、なぜか粗さがつきまとう。父娘を装い、3年4ケ月も工作教育を受けたわりには、ミスが多い。金賢姫は日本の車が左ハンドルと思っていたし、ノリさえ知らなかったという。また、アブダビでの出入国にビザが必要なことすら知らなかったのもうかつな話ではある」(『週刊文春』 1.28)

 ○「何よりも不可解なのは、犯行後の二人の行動である。当初の予定では、アブダビからアンマン経由ローマへ向かうはずだったが、アブダビ空港の出入国審査が厳しく、急きょ、偽装のために用意したバーレーンへ脱出したとされる。この時は既に、韓国当局の追跡は始まっていた。しかし、二人は、計画の狂いに慌てることもなく、丸一日、バーレーン市内を観光している。犯行後、できる限り“安全地帯”に逃げ込むという、秘密工作の常識からは考えられない行動ではないか」(『週刊読売』 1.31)


“爆破”についての疑問

 ○「また韓国側は、『真由美』ら二人が大韓機に乗った直後からマークしていたのに、爆破を阻止できなかったというのも疑問」(児島襄・作家 『日本経済新聞』1.16)

 ○「二人がバーレーンで逮捕されるきっかけとなった日本大使館員が見破った偽造旅券のこと。バーレーンへはアブダビの日本大使館員がかけつけたわけですが、そのアブダビの日本大使館に対して、実は『蜂谷親子』がベオグラードを出た直後に『日本の旅券をもった怪しい二人がいる』という通報が入っていると思われることです。つまり、そんなにも早くこの怪しい二人のことを知っていた人がいたということですよ」(米谷健一郎・国際問題評論家 『週刊新潮』1.28)

 ○「バグダッド空港は、イラン・イラク戦争が続く緊張状態にある。航空機爆破やハイジャックに対する警戒は厳重を極めているといわれ、爆発物の機内持込みには神経をとがらせている。いったん規則違反で機内持込みを禁止されたものが、抗議したからといって、ひっくり返るものかどうか。しかも、役人の権威が強い中近東で、保安体制で規則を曲げるだろうか」(『朝日新聞』1.17)

 ○「ハイジャック防止のためのハーグ協定が結ばれてからは、どこもチェックが厳しくなっている。それなのにベオグラードからバグダッド、アブダビと爆弾を持ったまま移動している。よくチェックに引っかからなかったものです。しかも、バグダッド空港で、電池でもめたときも、抗議したら返してくれたと言っている。よほど運がよかったとしかいいようがないです。あの辺なら電池でトラブったら、ラジオまで調べられるのが普通なんですけどね」(アラブに詳しいジャーナリスト 『週刊サンケイ』2.4)

 ○「ベオグラードもさることながら、バグダッド空港のチェックをよく『突破』できたものですね。あそこはイラン・イラク戦争の関係で手荷物の機内持込みには神経をビリビリさせていることで有名。しかも『真由美』らは乗り換え組。『乗り換え客の荷物には特に目を光らせよ』というのが航空テロ防止対策の合言葉なのです。途中で降りる乗客がいると、テロ防止のためにも置き去りの荷物はないかと棚を開けて見るのが航空会社の鉄則です。不審な荷物のチェックが厳しい大韓航空の場合、なおさら難しいはずなんですがね」(航空会社社員の話 『日刊ゲンダイ』1.20)

 ○「わたしたちはお客様がお降りになったら、後のセットを直すのと、忘れ物がないかをチェックするのは常識です。たいていどこの会社でも同じだと思うのですが」(日本航空スチュワーデス 『週刊サンケイ』 2・4)

 ○「大韓機といえば、乗員の中に必ず2人以上の保安要員(公安関係者)が乗り込むといわれるほど、警備の徹底した機だ。不審な『忘れ物』などがあれば、すぐに発見して当然と思えるのに、なぜか見つけられなかった」(『週刊読売』1.31)

 ○「極論すれば 『蜂谷真一』は最初から手荷物は持っていなかった、という考えもできるわけだ。ということは、『蜂谷親子』自身は爆弾を仕掛けていない! ということになる」(『週刊サンケイ』2.4)

 ○「この程度の爆弾(プラスチック爆薬・コンポジション4=350g、液体爆薬・P・L・X=700CC)ではジュラルミンの外壁に1、2メートルの穴を開けるのがせいぜいでしょう。もちろんそれでも2万メートルの高度を飛ぶ横内に急減圧が生じ、いずれ機体は空中分解したかもしれませんが、少なくとも5分以上の『余裕』はできたはず。発表された爆薬量と仕掛け方では、事故発生の緊急信号も出せないほど瞬時に破壊されたとはとても考えられない」(小川和久・軍事評論家 『日刊ゲンダイ』1.20)

 ○「墜落した飛行機の破片すら満足に発見できていない状況で、何ひとつ証拠がないにもかかわらず、『真由美』をテロの犯人として取り調べることはできないはずです。果たして本当に発表された爆薬で飛行機が爆破できるものかどうか。それも全く緊急通信すらできないほどの瞬時に爆発したことになっているんですからね」(吉原公一郎・作家 『週刊サンケイ』2.4)


事件の意図・背景

 ○「北朝鮮にとって、今回の事件は何のメリットもない。『北』は緊張緩和路線を打ち出している。ソウル五輪についても、現段階では『参加しない』と言っているが、今後も話し合いは続けるとしている。北朝鮮の内部状況を見ると、あんな事件を起こす理由はない」

 「私が聞いた限りでは、中国の人たちも、ラングーン事件の真相はわからないと言っている。歴史の曲がり角ではさまざまな事件が起きるが、公式発表をそのまま信じるのは妥当ではない。日本から金大中氏が拉致された事件でも、真実は公式発表と違う。あれは米中関係が好転しかけている時に起きた。今回は米ソ関係が改善しかけるという、よく似た条件下で起きている。発表を信じるのはあぶない」(関寛治‥立命館大学教授 『朝日新聞』1.16)

 ○「中東からソウルに向かう大韓機を爆破して、なぜ五輪の妨害になるのか。大韓機が危ないと思う国の選手団は、ほかの航空会社便を利用してソウル入りすれば済むことだし、だいたいはチャーター便で行くから問題にならない。もし、韓国が『不安な国』というイメージを与えたいなら、ソウルの五輪施設を狙うなど国内でテロ事件を起こした方が有利でしょう。政治混乱が狙い、に至っては、噴飯ものとしか言いようがない。大統領選挙の最中に起こって一方的にトクをしたのは盧泰愚側というのはハッキリしている。北朝鮮は、五輪共催問題も『野党政権との話し合いに期待する』と言明していたくらいだから、仮に何かをするとしたら大統領選の結果が出てからと考えるのが自然。もっともらしく聞こえる2つの『動機』なるものは、具体的に見ると、まるで根拠にはならないのです」(中川信夫・韓国問題評論家 『日刊ゲンダイ』1.20)

 ○「それにしても、この事件は発生が韓国大統領選の前、捜査結果はソ連のオリンピック参加決定のあとに発表されるなど、政治的に活用されている気がする」(児島襄・作家 『日本経済新聞』1.16)

 ○「そもそも『真由美』が本当に犯人なのかどうかを含めて、なぜ大統領選直前に墜落させたのか、要人が一人も乗っていない飛行機を落としたのかなど疑問は多い」(佐木隆三・作家 『東京新聞』1.16)

 ○「(韓国大統領選挙の)中盤戦までは金泳三が善戦していたが、終盤では盧泰愚が一歩抜きんでていたのである。中盤から終盤にかけて何がそのような情勢変化をもたらしたのか。大韓航空機の墜落事故によって、「北の脅威」を韓国民が改めて実感したことが大きいといわれる。『野党が勝てば、左翼勢力が羽をのばし、国内政治が混乱し、そこをまた北につけいれられる。国内安定のためには盧泰愚候補に投票を』という訴えかけが大きく功を奏したといわれる。だとすると、投票日直前に、『蜂谷真由美』の身柄をアブダビからソウルに移し、それとともに、彼女がもっていたスパイの七つ道具などをマスコミに公開して報道させたのは、政府側の見事な演出というほかはない」(立花隆・ジャーナリスト 『ぺントハウス』88・3)

 ○「(『真由美』こと金賢姫のテレビでの記者会見、捜査結果の発表などについては?)政府は選挙戦の中盤戦以降、大々的に計画的に報道して選挙戦に利用した。事件に対する国民の怒りを利用して、正当なる判断に悪影響を与えようとしたのです。その後、選挙が済んだら1カ月以上報道されなくなった。そして最近の発表になった。この発表は、朴鍾哲という学生の拷問致死事件の責任者として当時の治安本部長が拘束されたのと時を同じくしている。同日に発表して、相殺効果で、この事件を小さく見せようと狙ったのです。この国ではね、社会的に反政府的雰囲気になる事件が起こると、スパイを捕えて、時を見て発表する。そういう手口を、朴正煕政権以来、ずっと使っているんです。今回も、選挙中も選挙後にも、政府が政治的に悪用したんです」(金大中・韓国平和民主党総裁 『週刊サンケイ』2.11)

 ○「外務省は韓国で金賢姫という女性に面談して大韓航空機事件を北朝鮮側の爆破テロと断定したようだが、ハッキリした証拠がないのに、雰囲気のなかで決まった制裁措置としかいいようがない。極東の安定とソウル五輪の安全な遂行のためには、むしろマイナス要因になるのではないか」(河合秀和・学習院大学教授・比較政治学 『毎日新聞』1.26)




inserted by FC2 system