匿名記者座談会 「真由美自白」と「捜査報告」の疑惑をつく

パートV 米日韓共通の“利益”と三者三様の狙いと背景


 ■ 「分断固定」「クロス承認」を基盤とした米対朝鮮半島政策に沿った米日韓共同の政治的意図

 A 最後に、事件の意図、背景について分析してみたい。今回の発表自体もオリンピックと非常に関連づけて行なわれている。この問題についてはどうか。

 C 大統領選挙からオリンピックまでというのは、アメリカなり韓国なりの対朝鮮半島戦略、対北戦略において重要なポイントになる。だから、大統領選挙の関連でいえば平和的な政権交代なんだということで、政治発展もしくは民主化を進めるということで次期盧泰愚政権を安定させることが一つの重大なポイントであり、またオリンピック問題では北の言う共催をせずに、むしろ北をいかに孤立化させて、分断固定というか、クロス承認を実現させえる状況をつくるのかということが、80年代におけるアメリカの対朝鮮半島政策での大きな柱であり重要なポイントになっている。その意味で、今回の事件が、真相は別にしてもアメリカと韓国にとってまさしく格好の事件であったことは間違いない。

 捜査発表によればオリンピックの妨害だというようなことが言われているが、それは全く逆で、オリンピックに限定していっても、これではむしろ北の主張する共催案がつぶされる。第一、北がオリンピックの妨害のために中東ラインの空で飛行横を落とす必要性は全くない。脈絡が全く通じない。そういう意味で、犯罪捜査の初歩となる動機は韓国側にあったことは明らかだ。

 B 今回の事件を推理していくうえで、まず第一番になる犯行の動機、メリット、その成果という点から見れば、すべてのベクトルは韓国側を指している。どの角度から突っ込んでも、すべての矢印は韓国側に向けられるというのは間違いない。

 そして、事件の背景として非常にはっきりと出てきたのは、大統領選挙からオリンピックまでの乗り切りということだ。

 どういうことかというと、まず大統領選挙戦の前に、既に訪米させて“認知”してみせた盧泰愚を勝たせること。次に盧泰愚に、北を孤立化させたうえでのオリンピックの成功という形で基盤づくりをさせるということ。だからこれは、80年代末から90年代初期にかけてのアメリカの対朝鮮半島政策、あるいは対韓政策の土台づくりをするうえで、最も格好の事件として登場してきたと言える。

 事実そのとおりに事は進んでいる。大統領選挙では盧泰愚が勝ったし、オリンピック問題においては北が望んでいた共催を、少なくともいまのところは、つぶした状況にある。

 もう一つは、オリンピックに向けて国内的な反共キャンペーンを展開して、目の上のタンコブである学生運動つぶし、民主化運動つぶしを進めて、それと同時に、金大中包囲網を作っていくということがある。こうした流れは、米日の出した制裁措置なるものをみれば非常にはっきりする。オリンピック明けまで続けるんだと。要するに、これはオリンピックまでにこの措置は盧泰愚の基盤を固めさせるうえで、日米が後押しするんだということにほかならない。その理由づけとして、今回の事件を物の見事にそのクロスワードの中に当てはめていった。昨年末から今年秋のオリンピックにかけての一年間のスケジュールが、この事件一つですべてスムーズに流れるようなセッティングがされた。

 そして、盧泰愚ばかりでなく、米日ともに大きな“取り分”がある。アメリカは分断固定、クロス承認という対韓政策に基づいてその状況作り、すなわち北を追い込むという面でメリットを得た。そして日本は、「北の工作員」「海岸線での拉致」云々の作り話の背景で狙っているものは、明らかに「スパイ防止法」制定のための世論誘導だ。

 で、一方北側はどうかというと、38度線を境にした軍事的対峙に対する軍事負担からの解放を望んでいた。そのための南北対話であり、オリンピックの共催、統一へ向けての動きがより強まっていた。そして軍事費のむだを省き、国内経済を優先させたいという緊張緩和路線が政策のペースになっていた。それを今回の事件はつぶしている。みずからをより困難な立場に追い込む事件を起すバカはいない。

 A 北がオリンピックを妨害するために飛行機を爆破するなどということが、韓国側のデマであることは間違いない。にもかかわらず、日本のマスコミがソウル情報に簡単に振り回されている状況は、うすら寒さを感じさせる。右旋回の世論誘導にマスコミが乗せられきっているという感じが強い。いま一度真のジャーナリズムとは何かを振り返ってみるべき時期ではないか。今回の事件をその契機とするべきだ。では今日はこれで終ろう。




inserted by FC2 system