匿名記者座談会 「真由美自白」と「捜査報告」の疑惑をつく

パートIV “神隠し”にあった機体の謎
──謀略事件に顔を出しすぎるKALの体質


 ■ あいまいにされた最終通信地点の特定とおざなりにされた機体捜査の意味

 A 次に機体の問題、これが最大の謎だ。普通、飛行機事故が起きると、その原因を捜査するうえで一番目にやることは、機体を発見するということ。飛行機はブラックボックスというものを積んでいて、コックピットでの会話が30分間のエンドレステープで記録されている。それから、高度、油圧系統など、すべてが記録されている。本体は、飛行機が何らかの事故で落ちた場合も、一番安全だと言われている後部に大体置いてあるが、これがいまだに見つかっていない。電波が約1カ月開発信するということで、それを考えれば、もう発信は終わっている。ところがこうした機体の捜査が、本気でやられていない。既に、昨年の12月8日に捜査は早々と打ち切られて、その後KAL名入りの救命ボートがある日突然見つかって、これによってアンダマン海に落ちたんだというふうになっている。

 C 韓国側の捜索が、なぜか約10日間でストップされてしまったことは、今言われたとおりだが、その問題の前に、事件発生から捜査発表に至るまで、一体飛行機はどこの地点で行方不明なったのかということがまず全然わからない。韓国側の発表では、どこで行方不明になったかということが、初めから非常にあいまいにされていた。

 アンダマン海上には、トリス、オディス、タボイなどに通信地点があるが、今までの韓国側の発表によれば、最後の通信地点と言われるところはオディスとされていた。ところがそれ自体疑わしい。後の『朝日新聞』の取材によると、トリスではなかったかということが、ラングーン管制塔に対する取材で明らかにされている。いずれにしろ、今回の「捜査報告」でも、そういうものは一切明らかにされていない。

 それから、捜査なるものは一体どうやって行なわれたのか。飛行機が落ちた時点さえも特定されていない。今は海に落ちたと推測されているが、であるならば、にもかかわらず山の中を捜したという行動を一体どういうふうに理解すればいいのか。

 B 飛行機事故の場合、機体を捜すというのが当たり前のまず第一歩なのだが、ところが韓国側は捜す気が全くないような行動で終始一貫している。それは大韓機当局もそうだし、韓国政府自体もそうだが、なおかつ宇宙衛星すべての通信網を通じてキャッチしていたであろうアメリカ自身も、サハリン事件のときには、あれほど克明に経路を追いかけた航路図まで出したところが、今回は一切何も言わないままに過ごしてきているというところが謎だ。今回の場合、「北の工作員」云々というセンセーショナルな情報操作が先走って、飛行機事故の場合、機体捜査という本来の第一歩であるところが、我々日本のジャーナリズムの間でも非常におざなりにされているという面があったことは事実だ。


 ■ ゴムボート発見と「真由美」ソウル移送実現の奇妙な時期的一致

 C ゴムボートの発見だが、洗い直してみるとこの発見の経緯が非常におもしろい。大統領選投票日直前の12月15日に「真由美」はソウルに移送されたが、彼女の移送をめぐっては、米日韓を含めて駆け引きが行なわれていた。バーレーン側としては、当初、日本側に「真由美」を渡したかった。韓国に渡す理由がないということで、渡すのを渋っていた。当時、我々がバーレーン側を取材する中ではっきりしたのは、バーレーン側が言ったのは、「真由美」と飛行機事故とどういう関係があるのかということと、機体の一部も出ていないではないかということで、韓国側の特使に強く拒否の姿勢を示していた。

 それで、韓国側は、「真由美」移送のための飛行機をバーレーン空港まで持ってくるのだが、一度返さざるを得なかった。それが実は12月10日の時点だ。で、12月11日になると、突如、韓国側の捜査本部から、「米軍のP3Cによって機体が発見された。漂流物がある」という情報がどんどん流される。ところが、あとでわかってみると、実はそれは漂流物ではなかったという結論になって、我々は唖然とさせられた。そしてそのような情報が流されているなかで、13日にゴムボートを発見したということになっている。そのゴムボートの発見も、「真由美」がソウルに着いた直後に発表されている。

 こういう経緯を見てみると、つくられた感じが極めて強い。ゴムボートの発見は、バーレーン側から「真由美」をソウルに移送するための演出ではなかったのか。なぜならば、一切機体を捜そうとしなかったことに比べれば、わずか3日間の機体捜索の進展というのはものすごい。では、「真由美」のソウル移送が終わった後はどうなのか。ブラックボックスは少なくとも1カ月間は電波を発信すると言われているが、一切ブラックボックスの捜索をしているという話さえ聞かない。ゴムボートの発見自体も疑わしいと思わざるを得ない。ゴムボートの発見は、「真由美」をソウルに連れてくるためのデッチ上げではなかったか、という疑いをどうしても捨て切れない。


 ■ 謀略的なにおいの強い事件に顔を出しすぎるKALの体質

 B 機体の残骸、遺留品、遺体が一切何も見つかっていないといっていい状況。そういう飛行機事故というのは今までにない。ミサイルで撃墜されたサハリンのときですら、あれだけの漂流物、その他が出てきている。大韓機事件の直前に起こった南アフリカの航空機事故にしても、同じ海上と見ていいと思うが、それでも、バラバラになった遺体などいろいろ出てきている。だから、機体がどこに落ちたのかもわからない、遺体すらわからない、漂流物すらない、現在の航空技術あるいはレーダー技術からいって、まず考えられないような状況のままに置かれている。

 それとKALという航空会社は、世界の謀略的なにおいのする飛行機事件に名前を出し過ぎる。例えば、ヨーロッパの方からソビエトに入り込んでいって、ムルマンスクに胴体着陸をした事件。あれもソビエト側の発表ではスパイ機であった。ソビエト側のスクランブル体制、その他、レーダー通信網をアメリカが知るために、大韓機を使って意図的に領空侵犯させたと言われている。サハリンの事件も同じようなことが言われている。サハリンの事件に関しては、日本の大韓航空機事件の真相を究明する会が今年の1月に今までの調査結果をまとめて本を出したりしているが、明らかにこれもおかしい。

 A 唯一の物証である機体は明らかに意図的に隠され、それからアンダマン海で仮に落ちたと推測すると、それも非常に意図的だ。それは最後の交信をしたビルマのラングーンの管制塔にはレーダーがなかったということとも関連して、アンダマン海周辺というのは情報過疎地、情報遮断地域、隔離地域だとも言えるところだからだ。残骸を隠すにはもってこいの場所だとも言える。

 B 要するに今回の事件は、基礎石すらない上に無理に立てられた「バベルの塔」だ。

 C 機体捜索がおざなりにされた原因は、国際的な圧力がなかったということも言えるが、それはチケットが安くて、普段は利用数の多い外国人が乗っていなかったという不思議な現象が作り出されていたからだ。

 B 要するに事件は韓国にだけ限られたことで、外からの圧力を最初からとりはずす意図があったわけだが、もう一つ言うと、韓国内的にみても、海外出稼ぎ労働者の多くが全羅道の出身で、今回の被害者の多くもやはり全羅道出身者であるという。国内的にも巧妙な心理的トリックが使われているという気がする。




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