匿名記者座談会 「真由美自白」と「捜査報告」の疑惑をつく

パートIII 「捜査報告」でさらに深まった“爆破”にまつわる数々の謎


 ■「事実は小説より奇ならざる」───爆破物持ち込みは絶対に不可能

 A 次に、爆破の問題だ。この問題は、まず1つは、いかにして二人がKAL機の中に爆弾を持ち込めたのかということ。2番目は、「コンポジション4」 350グラムと液体爆弾。その程度で、あの大きなジェット旅客機が、緊急発信もできないほどに、それこそアッという間に空中分解してしまうものかどうか。

 C 持ち込みについては、ベオグラードでは絶対に不可能であるということを、既にベオグラード空港当局が、韓国の調査発表直後に声明として出している。「真由美」証言によると、そのときにも乾電池が一度は押収されたとなっている。それを返してもらったと。

 問題はバグダッドだが、戦時下にあり、検査は相当に厳しいと言われている。そこで乾電池を、一度は問題になっているにもかかわらず、「真一」の抗議によってそれを持ち込めたというのは、ちょっと信じられない。

 B ベオグラードもそうだし、特にバグダッドでのチェックというのは、世界でも最も厳しい部類に入るチェックが行われているわけで、まずテロに結びつく武器、爆弾、電子器具、その他一切持ち込みはまず不可能だろう。これは日本の商社マンたちが、小さなカード式の電卓すら、すべてチェックされているぐらいで、身体検査も並の身体検査ではない。

 そういうことからいくと、韓国の捜査当局が発表したように、抗議して電池を返してくれるような甘いところではない。戦時下でテロ多発地帯で、警備に非常に神経を使うところで、明らかにトランジスタ爆弾とわかるものを持ち込めるほど、捜査は甘くない。まして、これも小説の世界だが、チェックされないで見事に隠しきって中に入ったならともかく、いずれにせよ一たん押収されたものが抗議によって返されるなんてことは、その空港を利用した人のすべてが異口同音に、「まずあり得ない」ということをはっきり言っている。

 それと、ウィーンから既に韓国の捜査当局がこの二人をチェックしていたという話は、ほぼ出回っているわけで、とすれば、機内に乗っているNSP(安全企画部)の要員、あるいはチェックでずっと尾行していた要員たちが、二人が機内に持ち込んだ荷物を持たないで降りて、それを見過すなんてことは、まずあり得ない。情報機関でなくても、そこに乗り込んでいる大韓機のスチュワーデス、機内乗務員たちによっても放置されるということは、世界の常識からいってあり得ない。これはあらゆる航空会社に問い合わせてもみたが、まず100%あり得ない。そういう乗務員がいるとすれば、イロハのイを意図的に無視した乗務員でしかないということなんだね。だから、疑問というよりも、全くありえない話だと言わざるを得ない。

 C 「真由美」の陳述と「捜査報告」を見ると、彼女の陳述によれば、爆弾を持ち込んで棚の上に置いたのは「真一」であると言っているのに、「捜査報告」では、なぜか「真由美」になっている。「捜査報告」と陳述は一体のものであるはずなのに、それ自体、食い違ったまま発表されている。デタラメも甚だしい。

 B 昨年12月の段階で乗務員たちが記者会見したときには、「蜂谷真一は荷物を持っていなかった」と言っていた。ところが今回の発表によると、「真一」はバックを持っていたということになっている。とすれば、先の乗務員たちの記者会見の内容は一体どうなったのか。既に「捜査報告」発表の前に、乗務員たちが、特に二人しか乗っていない日本人として一番注目していた、目立っていた二人であると言っていた。その彼らのことを乗務員たちが見落とすはずはない。ここにも重大な食い違いが生じている。


 ■爆破は可能でも、緊急発信ができないほどの瞬間爆破は不可能

 A 威力の問題についてはどうだろう。

 C 威力の問題は、「コンポジション4」がいかなる爆弾かということは僕にはよくわからないが、いずれにしろ、雑誌等を通じて、軍事専門家のコメントなども載っているように、少なくとも豆腐一丁大、ワインのびん一本分の爆弾で飛行機を一瞬のうちに粉々にするというのが不可能であることは明らかだ。専門家の話によれば、せいぜいあけても1〜2、3メートルの穴であろうということで、一瞬のうちに粉々にするには、トランク3個分の爆弾が必要ではないかという分析がある。

 83年にサハリン上空で意図的としか思えない領空侵犯でソ連によって撃墜された大韓機の場合、空対空ミサイルを射ち込まれても、なおかつ緊急発信をしていたということから見て、とても信じられない。緊急発信なしに粉々になることは、まずあり得ないのではないか。

 A 操縦席のすぐ近くに爆弾を置いたのだという説もあったりしたが、今回の発表によれば操縦席からは離れたところで爆破したことになっている。それから、威力を試すために韓国ではテストをやって、十分に破壊できるとして、その結果を発表しているが、そのテストの写真を見たら鉄板を置いて下でボーンと爆発させたら大きな穴があいたと。確かに旅客機というのは、高度1万メートル以上を飛んでいるわけで、機内にも与圧がかけられているから、穴があけばそこから被害が広がってくるということは常識の問題だ。しかし、であるにしても当然ながら瞬間爆破はとても立証できない。テストなるものは、「科学的根拠」を付与するためのトリックの一つだ。

 B 一般的にいって、「コンポジション4」で、捜査当局が発表した爆破能力で飛行機を落とすことが可能だということは事実だと思う。ただ、威力の問題では諸説あるが、全員が一致した見方というのは、緊急発信ができないほどの爆破というのは、まずもって不可能であると。操縦席の真下にトランク1個分の爆弾が仕掛けられ、機体の真ん中、そして最後尾にまた一個となれば話は別だが、爆破する威力はあったにしろ、緊急発信ができないほどのもということは、はっきりしている。




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