『金正日先軍政治』−1 先軍政治論

2 金正日政治の基本的な方式である先軍政治


 政治方式は国家政治の成否を左右する重要問題であり、とりわけ、アメリカとの厳しい政治的・軍事的対峙が続くなかで、社会主義を守り、前進させていかなければならない北朝鮮の場合、政治方式の選択問題は格別に重要な意味を持つ。

 こんにち、北朝鮮が置かれたこのような位置から、最も重要な問題は、社会主義を守り、それを強化、発展させることにある。

 先軍政治は本質において、軍事先行の原則をもって革命と建設の全般的事業をおしすすめ、軍を革命の柱として社会主義偉業を完成してゆく政治である。

 ここで軍事先行とは、軍事を最大の国是とし、軍事力の強化をほかに優先させるということである。つまり、軍事を最上位において路線・政策を立て、軍隊を社会のどの集団よりも先に精鋭化し、国防力の強化に最大の力を入れるということである。

 革命の力関係という観点からして、先軍政治は、革命軍隊を社会主義偉業遂行の主力=柱=中核として位置づけ、軍と人民を革命の二大勢力、社会的・政治的基盤と見るユニークな方式の政治である。社会主義偉業の進捗にともない、その担い手である主体的勢力を強化することは極めて重要な問題となる。

 対内的には、社会主義建設の進行にともなって技術労働者をはじめ、大量のインテリが生み出されることになるが、そのような状況のもとでインテリの革命化に力を入れなければ、革命の大衆的基盤が弱まるであろうし、対外的には、社会主義偉業の遂行を妨害し、社会主義の転覆をはかる帝国主義・支配主義勢力の策動がますます露骨になる状況のもとで、主体的革命勢力の強化がとりわけ重要な問題となるのである。

 金正日将軍は、主体的勢力関係という見地から先軍政治の持つ意味をつぎのように指摘している。

 「現在、我々は、ハンマーと鎌の上に銃があると言っています。これは、我が党の独創的な軍事重視思想、先軍政治路線を象徴した言葉です」

 先軍政治は、政治と軍事の相互関係において、軍を政治の中心に据えることを求める。

 政治と軍事の相互関係をどのように設定し、政治が軍事問題をどのように解決するかということは、政治指導者の政治方式問題以前の、国と民族の運命にかかわる重要な問題である。

 だから政治が軍を軽んじて非政治化、非思想化するのは事理にもとる。

 先軍政治は、軍を革命の大黒柱=主力の位置に据えることを求めるが、政治的指導者の命令や国家の法制定などの形成だけをもってしてできるものではない。軍を強化し、その役割を高めるためには、国と人民大衆の自主権擁護闘争における軍統帥者の危機管理能力および長年にわたる軍建設の業績、そこから生まれる絶対的な権威と卓越した統帥力に待たなければならないのである。

 軍の権威と地位、役割に関する問題は、金正日将軍によって立派に解決された。

 将軍は軍を完全に掌握し、人民軍は最高司令官の命令のもと一糸乱れずに動く強力な前衛に成長した。

 このことについて『ヴォイス・オブ・アメリカ』はこう報じている。

 「北朝鮮では、党の指導者金正日将軍が軍を掌握し、軍は金正日将軍を神のように崇拝し従っているために社会主義が揺るがず、北朝鮮の堅固な社会主義の砦も勝利に勝利を重ねている」

 先軍政治方式が軍を革命の柱=主力に押し立てたからといって、労働者階級をはじめ、諸政治勢力の歴史の自主的な主体としての地位が軽視されるということにはならない。

 社会主義社会の主人としての人民大衆の地位は、社会主義の運命とかかわっているということを忘れてはならない。軍が中核的役割を果たすことにより、社会の発展を促し、社会主義の運命を開いていく人民大衆の自主的な地位はさらに高まり、強固になるのである。

 革命軍隊は、敵の攻撃から国と民族の自主権を擁護することによって社会の全般的発展を保障し、社会の主人としての人民大衆の地位をゆるぎなく守るのである。

 先軍政治は国防力の強化に国費を惜しまないので、国の戦力は極めて強大なものとなる。

 こんにち、そのようにして築かれた北朝鮮の強大な国力にひびを入れ、ひいてはアメリカが支配する東アジアの秩序圏に北朝鮮を包み込もうとするのが、軍事技術的優位に依拠するアメリカの北朝鮮圧殺政策である。

 このような実情を考慮するとき、軍に依拠して帝国主義の策動を粉砕し、社会主義を頼もしく守る強力な政治方式としての先軍政治の持つ意義は極めて大きい。先軍政治の出現は、金正日将軍の正確な政治的判断と、いかなる世界的波動のなかでもチュチェの社会主義偉業を遂行せずにはおかないという不屈の意志と無比の胆力、それに断固たる革命的決断力をもって、はじめて可能であったということをここで強調しておきたい。





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