金 正 日

大豆栽培に転換をもたらすために
朝鮮労働党中央委員会の責任幹部への談話 
−2004年10月12日、12月10日− 

 昨年、朝鮮人民軍第534軍部隊管下の農場で多収穫品種の大豆を試験栽培して成功したので、党は今年から全党、全軍が、こぞって大豆を大々的に栽培するようにしました。

 人民軍では、党の意図を体して今年、大豆の栽培で望ましい実績をあげました。きょう、人民軍のある軍部隊に行ってみると、大豆栽培で大きな成果をあげていました。豊作で大豆が山積みにされているのを見ると、満ち足りた気持ちになりました。その軍部隊では、今年収穫した大豆で軍人に毎日、いろいろな食べ物をつくって供することができるとのことです。

 たしかに人民軍は、党の種子革命方針と二毛作方針の貫徹においても先頭に立ち、大豆栽培においても先頭を切っていると言えます。人民軍は、多収穫品種の大豆の種子を確保し、豊作をおさめて人民と軍人の食生活を改善するうえで重要な問題として提起されている大豆の問題の解決に展望を開きました。人民軍は、わが党の先軍政治を先頭に立って実践していく旗手、突撃隊らしく革命的軍人精神を強く発揮して、党の種子革命方針と二毛作方針の貫徹で模範を示し、大豆栽培においても革新を起こし、わが党の先軍思想の正当性と生命力を実践をもって示しました。わたしは、これをいちばんうれしく思っています。

 前述したとおり、人民軍は、先軍時代の農業革命の開拓者、先駆者です。人民軍は、革命的軍人精神を強く発揮し、党の農業革命方針の貫徹において引き続き全国の先頭に立つべきであり、来年の大豆栽培で凱歌をあげるべきです。

 今年、道、市、郡でも多収穫品種の大豆を栽培したところでは好成果をおさめ、大豆栽培発展のための経験を積みました。

 党の方針に従い、今年、全党、全軍が奮起して大豆栽培で得た成果と経験にもとづいて大豆栽培を積極的に発展させなければなりません。

 大豆は、人民と軍人の食生活に欠かせない重要な作物の一つです。朝鮮人民は昔から、大豆で豆腐やおぼろ豆腐、おからや、もやしのあえものなど大豆食品をつくって食べ、発展させてきました。大豆食品は、種類が多く美味です。基礎食品であるしょう油やみそも大豆で仕込んでこそ、本物の味が出ます。大豆食品は、人民と軍人の食生活と切り離せない朝鮮固有の民族食品です。

 大豆食品は、栄養価も高く蛋白質や油脂が豊富に含まれているので、健康に大変良いと言われています。そのためいま、ヨーロッパ諸国では牛乳をはじめ、家畜の乳より豆乳を飲むのが趨勢となっています。わが国でも、豆乳を生産して子どもたちに供給し、家庭でも豆乳をつくって飲んでいます。

 金日成同志は、大豆食品は味もよく栄養価もとても高いので、大豆さえあれば肉類を食べるのをうらやむ必要はないと述べています。

 ここ数年、我々は人民の食生活を改善するために、各地に近代的な基礎食品工場と養鶏工場、アヒル飼育工場、養魚場などを建設しましたが、これが効を奏するようにするには、大豆を量産して原料と飼料を十分に供給しなければなりません。現在、人民と軍人の食生活で懸案の一つが食用油ですが、大豆を量産すれば、他の油脂作物をそれほど植えなくても食用油の問題を解決することができます。大豆油は、他の油より味もまさっています。油を絞り取った後の豆かすは良質の蛋白質の飼料となります。豆かすのような蛋白質の飼料さえあれば、畜産と養魚においても転換をもたらすことができます。

 このように、大豆の生産を増やせば、基礎食品工場をフル稼働させて良質のしょう油、みそと食用油を生産し、豆腐をはじめ、大豆食品をつくって人民に供給できるし、畜産と養魚を発展させ、肉類と卵、魚を量産して人民の生活をより潤いのあるものにすることができます。

 大豆の栽培は、わが国のどこでも可能です。元来、わが国は大豆の原産地です。朝鮮人民は、古くから大豆を栽培してきました。わが国で営農条件が一番不利な地帯は両江道ですが、そこに住む人たちがおぼろ豆腐が得意で評判になったのをみると、そこでも遠い昔から大豆を栽培し、その出来も案外よかったということがわかります。実際、海抜の高い堡天郡でも大豆がよく出来ます。これは、わが国ではどこでも大豆栽培が可能であることを示しています。もちろん、慈江道や両江道などでは、農作物の栽培期間が短いため、大豆を二毛作の後作として栽培するのは不可能ですが、主作として栽培する場合はこれといって問題はないでしょう。咸鏡南北道と江原道は、海の影響を受けて農作がかんばしくありませんが、この地域でもトウモロコシより大豆を栽培する方がましでしょう。麦類の後作として大豆を栽培できるのですから、トウモロコシより大豆を大々的に栽培するようにすべきです。

 大豆栽培で成果をあげるためには、優良種子を選択して植えることに第一義的な関心を払わなければなりません。他の農作と同様、大豆栽培においても種子が基本です。種子が悪くては、いくら苦労して栽培しても高い収穫をあげることができません。これまでわが国で栽培した大豆は、ヘクタール当たり600〜800キロの収量しか得られません。このような在来種の大豆を植えていては、栽培面積を増やしても大豆の問題を解決することはできず、そういう大豆の栽培は、実利的ではありません。在来種の大豆をあぜに副業として植えていた時期は過ぎ去りました。いま、党が大豆栽培を奨励しているのは、多収穫品種の大豆の種子が解決されたからです。多収穫品種であるその大豆は、ヘクタール当たりの収量が高いばかりでなく、他の品種の大豆より蛋白質や油脂の含量も多いのです。大豆栽培を大々的におこなうからには、収量の多いこのような品種の大豆を植えなければなりません。幹部は、多収穫品種の大豆の栽培は稲作に劣らず重要であるという観点に立って、それを力強く推進すべきです。多収穫品種の大豆を植えてヘクタール当たり6トン〜10トンまで収穫できるようになれば、大豆栽培における一つの革命だと言えるでしょう。我々が大豆栽培において革命を起こせば、近い将来、大豆の山の上であぐらをかくことができるようになります。大豆をヘクタール当たり3トン以上収穫するだけでも、大豆の問題はかなり解決されます。今年、各道、市、郡では、わたしが贈った種子を植えて来年度に使う多収穫品種の大豆の種子を少なからず確保したとのことですが、この大豆を大いに栽培すべきです。多収穫品種の大豆を植えたければ植え、植えたくなければ植えないといったことを放置してはなりません。内閣と農業指導機関は、各道、市、郡が、多収穫品種の大豆を無条件に栽培するよう厳しく監督すべきです。各道、市、郡は、来年度から数年間、大豆をヘクタール当たり3トン〜5トン収穫する目標で大豆栽培を強力に推進しなければなりません。

 大豆栽培では、適地を正しく定めることが大切です。いくら種子の問題が解決されたといっても、これまでのように、協同農場で大豆をやせ地や空閑地などに植えていては生産を増やすことはできません。大豆を大々的に栽培するからといって、主観的欲求にかられて何の目算もなしにしてはなりません。各道、市、郡と協同農場は、適地適作の原則にもとづいて大豆栽培の適地を正しく定め、種子問題を具体的に検討し、現実的条件に合わせて大豆栽培を発展させるべきです。

 大豆は主作にしたり、二毛作の後作としても植え、間作や混作といった方法でも植えるべきです。大豆は、二毛作地帯では、なるべく麦類の後作として多く植えるのが望ましいです。麦類の後作として大豆を栽培するのは、トウモロコシを植えるよりいろいろな面で有益です。大豆の価格は、トウモロコシより2倍も高いのです。したがって、麦類の後作として大豆を植えてヘクタール当たり3トン収穫すれば、トウモロコシを6トン収穫したのと同じです。麦類の後作として大豆を植える場合は、畑に種子をまけばよいのですが、トウモロコシの場合は、栄養ポットで育てた苗を移植しなければならないので、かなり手間がかかります。麦類の後作として大豆を栽培すれば、トウモロコシを栽培するより施肥量が少なくて済み、地力も保持できます。麦類の後作としてトウモロコシを植える場合は、麦類やトウモロコシのいずれも、多肥性作物で多くの肥料を施さなければならないので、麦類とトウモロコシを栽培し続けると地力が落ちてしまいます。しかし、大豆は、根が大気中の窒素を固定させて摂取する能力があるので、畑に大豆を植えれば肥料の施肥量を減らすことができるばかりでなく、地力もさほど落ちません。

 大豆栽培で解決すべき重要な問題は、栽培技術と方法を改善することです。大豆栽培の技術と方法を改善しなくては、生産を増大させることはできません。今年の大豆栽培で得た経験と現代科学技術にもとづいて、多収穫品種の大豆栽培の営農技術と方法を完成させていくべきです。

 金日成同志が早くから述べているように、大豆栽培は専門化する必要があります。そうしてこそ、大豆栽培をいい加減におこなう傾向をなくし、科学技術的におこなってヘクタール当たりの収量を高めることができます。大豆栽培の専門化が可能な協同農場では、専門の作業班や分組を別個に組織し、大豆を科学技術的に栽培すべきです。

 大豆栽培で豊作をおさめるためには、肥料を十分に施さなければなりません。

 大豆も農作物ですから、肥料を施した分だけ実るものです。ところが、一部の人は、大豆栽培は、肥料を施さず種子をどこにでも適当にまいて収穫すればよいと考えていますが、これは誤った考えです。このような誤った考えを是正せずには、大豆栽培の成果は期待できません。まして、多収穫品種の大豆は、土質と肥料にたいする要求度が比較的高いので、基肥と生育段階別に必要とする肥料を十分に施さなくては高い収穫は望めません。

 大豆畑には、化学肥料より有機質肥料をたくさん施すべきです。有機質肥料を施せば、耕地の酸性化を防ぎ、地力を高めることができるだけでなく、栽培した農作物は人体にも無害です。そのためいま、世界的にも営農は、化学肥料でなく有機質肥料でするのが趨勢となっています。大豆の収量を高めるためには、有機質肥料をヘクタール当たり20トンぐらいは施さなければなりません。

 有機質肥料の問題は、堆肥を生産する方法によっても解決できるし、土補酸肥料を生産する方法でも解決できます。大豆を麦類の後作として植える場合は、前作として植えた麦類のわらを腐らせれば良質の堆肥になります。それに家畜小屋から出る堆肥をはじめ、各種の肥料源を動員、利用すれば、大豆畑に少なからぬ肥料を施すことができます。何としても大豆畑に堆肥をたくさん施さなければなりません。今年、人民軍が大豆栽培で成果をあげたのも、その秘訣は優良種子を植えたこととともに、多量の堆肥を施したことにあります。もちろん、畜産の基盤が弱く、人口密度の高くない一部の地域では、畑に多量の堆肥を施すのは困難でしょう。そういう地域では、大豆の栽培面積を一挙に増やそうとせず、実情に即して増やしていくべきです。大豆畑に堆肥を施すとともに、腐植土で土補酸肥料も自力でつくって施すべきです。土補酸肥料は、すぐれた有機質肥料です。国も土補酸肥料を量産するための対策を講じる必要があります。

 潅水を十分にするのは、大豆栽培で豊作をもたらす基本条件の一つです。

 大豆は、主作であれ二毛作の後作であれ、大体渇水期の5、6月に植えるので、潅水をしないと順調に発芽しません。特に大豆は、さやができて育つ時期に多量の水分を要求します。したがって、大豆の栽培では潅水をおろそかにしてはなりません。

 潅水を十分にするためには、近代的な潅水設備と潅水方法を大いに導入しなければなりません。近代的な潅水設備と方法を取り入れなくては、潅水面積を満足に拡大することも、経済的実利を得ることもできません。

 昨年、朝鮮人民軍第534軍部隊管下の農場へ行ってみると、その農場で使用している散水式潅水設備は近代的で、潅水能力も高いうえに、液状の農薬や肥料の散布にも利用できるので、いろいろ利点がありました。そのような潅水設備さえあれば、少ない資材と労働力でも、広い面積にそのつど十分潅水できるはずです。

 大豆畑に潅水するためには、近代的な潅水設備を導入する一方、現有の潅水設備と施設を整備、補修して大いに利用しなければなりません。各地方と農場では、それぞれの実情に応じて用水源を確保し、降雨式潅水、うねま潅水などさまざまな潅水方法を適用すべきです。

 大豆畑に潅水を十分にするとともに、雨季には溜り水と多湿による被害防止対策をしっかり立てなければなりません。各農場では溜り水による被害と湿気防止の溝掘りをそのつどおこない、中耕をして、大豆畑から水がよく排出されるようにすべきです。

 大豆栽培で機械化の比率を高めるべきです。

 他の農作と同じく大豆栽培も機械化せず手工業的にしていては、収量を高めることができず、農民の骨の折れる労働を軽減することも、二毛作の労働力不足を解消することもできません。我々は、石油が産出されないわが国の実情に即して、少量の燃料油で能率が高く、手軽な各種の農業機械を自力で生産して利用する運動を強力に展開すべきです。

 朝鮮人民軍第534軍部隊管下の農場を訪ねた際に見た農業機械が手ごろです。大豆播種機も結構なものだし、移動式大豆脱穀機も性能がその程度なら良さそうです。大豆栽培では、種まきと脱穀だけ機械化しても多くの問題が解決されます。これから大豆を大々的に栽培するに当たっては、脱穀をいかにするかが問題です。かつては、からざおで脱穀しましたが、これはかなり骨の折れる労働です。当時はからざおでも通用しましたが、いまは通用しません。我々の時代は労働党の時代であり、いまは21世紀です。我々は新世紀の要請に即して農作業で手労働をなくし、機械化をするにしても高い水準でおこなうべきです。移動式大豆脱穀機の研究をさらに深め、より能率的な機械として完成すべきです。この脱穀機は、構造が簡単なので、道、市、郡でも自力で十分につくれるはずです。農業科学院の農業機械化研究所が開発した大豆播種機も量産して供給する国家的対策を講じる必要があります。

 大豆栽培で実績を上げるためには、農薬の問題も解決しなければなりません。そうしてこそ、病虫害を防ぎ、安全な収穫をおさめることができます。農薬の問題を解決せずには、大豆栽培ばかりでなく、穀物や野菜、果樹栽培においても成果は期待できません。現在、穀物や野菜、果樹栽培で収量があがらないのは、農薬を満足に使えないこととも少なからず関係しています。だからといって、毎年多額の外貨を使って農薬を輸入することはできず、そのような方法ではいつになっても農薬の問題は解決することができません。我々は、あくまでも、わが国に必要な農薬は、自力で生産して利用する方向へと進むべきです。現在、わが国の実情では、複合微生物肥料より農薬を量産することがより重要です。地方に行って複合微生物肥料の効能について調べてみると、咸鏡北道の人が言うことと慈江道の人が言うことが違います。これをみると、複合微生物肥料はまだ未完成品だと言えます。

 大豆栽培において軍隊と社会とが互いに張り合い、社会においても道、市、郡が競い合うようにすべきです。現在、人民軍ではわれ勝ちに大豆栽培を大々的におこなっていますが、社会はそうでありません。何事であれ互いに競い合ってこそ、人に遅れをとるまいという熱意をもって発奮し、その過程で奇跡と革新が起こり発展するのです。

 大豆栽培を発展させるためには、科学研究を深めなければなりません。大豆栽培も科学化してこそ、革新を起こすことができるのです。科学研究を深めて優良品種の大豆をつくり出し、大豆栽培における科学技術上の問題を円滑に解決しなければなりません。

 大豆をはじめ、穀物の乾燥対策をしっかり立てるべきです。そうしなければ、苦労して取り入れた穀物を安全に保存、利用することができません。特に麦類は、収穫するとすぐ雨季に入るので、乾燥対策を講じないと腐敗、変質して台無しになってしまいます。関係部門は、朝鮮人民軍第534軍部隊管下の農場がもっているような近代的な固定式穀物乾燥機と移動式穀物乾燥機を製作する運動を繰り広げるべきです。

 大豆をはじめ、穀物を詰める容器の問題も解決しなければなりません。いま、穀物を詰める容器が非常に不足しています。容器としては、樹脂袋が最適です。農村に大豆を詰める樹脂袋を量産して送るべきです。樹脂袋は、原油を加工する際に産する湿ガスから原料をとって生産すればよいのです。内閣は、樹脂袋の生産対策を講じるべきです。樹脂袋の管理と回収システムも確立しなければなりません。樹脂袋の管理と回収システムを確立すれば、一度生産した樹脂袋を数年は利用できます。

 今年から大豆を大々的に栽培していますが、大豆をさまざまな方法で加工する研究を深めるべきです。大豆を量産しても、加工問題が解決されなければ、人民の食生活を改善することはできません。大豆の加工は、わたしがいちばん案じている問題の一つです。大豆の生産が増えるのに合わせて大豆の加工機械を開発し、大豆食品をつくる方法も絶えず発展させなければなりません。いま、人民軍では、大豆をさまざまな方法で加工する研究をしていますが、社会ではまだおこなわれていません。内閣は、これに関心を払う必要があります。搾油機をつくって大豆油を量産し、人民に供給することを考えるべきです。女性同盟の各組織でも、家庭で豆乳をはじめ、さまざまな大豆食品をつくる方法を広く紹介、宣伝すべきです。幹部は、人民の忠僕になると口で言うだけでなく、実際に人民のために一つでもよいことをすべきです。

 他のすべてのことと同様に、大豆栽培も道・市・郡党責任書記が発奮すれば、成果をおさめることができます。道・市・郡党責任書記は、大豆栽培を党の立場でとらえ、しっかり後押ししなければなりません。すべての道、市、郡では、人民軍の模範を見習い、大豆栽培に新たな転換をもたらすべきです。

出典:『金正日選集』15巻


ページのトップ


inserted by FC2 system