金 正 日

人民保健医療事業の改善で提起される若干の問題
保健医療部門の責任幹部への談話 
−1992年7月22日− 

 人民保健医療事業は、人民の健康増進をはかる非常に重要な事業です。わが党は人民保健医療事業を改善するため、時期ごとに重要な方針を示し、保健医療部門で提起される問題を優先的に解決してきました。

 金日成同志によって打ち立てられたわが国の社会主義保健医療制度は、世界で最も優れた制度です。わが国のように、国家が子どもから乳幼児のいる母親、老人に至るまで、すべての人の健康を責任をもって見守り、無料で治療する国は世界にまたとありません。しかしながら近年、幹部が保健医療部門に関心を払わなかったため、この事業は発展する現実の要請に比べ後れています。我々は、人民保健医療事業に力を注いで予防医療活動に転換をもたらさなければなりません。

 衛生防疫事業を大衆的運動として強力に繰り広げるべきです。 

 何よりもまず、伝染病の予防に力を入れることが大切です。

 いま世界的に、ウイルス性肝炎、特に、血液を媒体にして伝染する血清肝炎を防ぐことが重要な問題となっています。データによると、ウイルス性肝炎の大部分は血清肝炎です。血清肝炎にはウイルスの種類によってB型肝炎とC型肝炎がありますが、時機を逸することなく積極的に治療しないと、慢性肝炎や肝硬変、肝がんに移行する率が高くなると言います。ウイルス性肝炎の予防対策に万全を期さなければなりません。B型肝炎やC型肝炎は血液を媒体にして伝染するため、予防対策には格別、力を入れる必要があります。

 輸血によって肝炎が伝染することのないよう、徹底した対策を立てることが必要です。健康な人がB型肝炎かC型肝炎のウイルス保菌者から輸血を受けると、B型かC型の肝炎にかかります。輸血の不手際から健康な人を肝炎にかからせるのはきわめて重大なことであり、これは犯罪行為に等しいものです。保健医療部門では、給血機関を充実させ、検査、採血、保管、消毒システムを確立しなければなりません。

 注射器によって肝炎を伝染させることのないようにすべきです。注射器から肝炎が伝染する場合が少なくないとのことです。これを防ぐためには、注射器の滅菌消毒と個別化を徹底させることが大切です。保健部では、早急に使い捨て注射器を生産し、全国の保健医療機関に使わせる革命的な対策を講じるべきです。すべての病院で使い捨て注射器が使われるようになれば、伝染病を少なからず予防することができます。

 注射針の消毒を厳格にすべきです。いま一部の医師は、注射針をきれいに消毒せずに不特定多数の人に打っているそうです。消毒綿で注射針を1、2度ふくくらいでは、十分に消毒されたとは言えません。

 医療器具は、きちんと消毒すべきです。血清肝炎は病院で患者を治療する過程で伝染することが多いので、医療器具の厳密な消毒対策を立てなければなりません。

 伝染病を正確に診断、検査する対策も立てるべきです。特に、C型肝炎などの肝炎の正確な診断・検査方法を確定し、その検査水準を高める必要があります。

 パラチフスをはじめ、腸内性伝染病の予防医療活動を強化して、腸内性伝染病を根絶すべきです。そのためには、上下水道の消毒と衛生改善対策を立て、厳格な防疫規律を打ち立てなければなりません。伝染病の予防医療活動を強化し、伝染病にかかる人が一人もいなくなるようにすることが大切です。

 伝染病の予防医療活動を強化するためには、各種の予防薬を大量に生産しなければなりません。いま国内で生産されている予防薬のなかには、質の劣っているものもあります。予防薬の質を高めるとともに、その種類を増やす対策も講じるべきです。

 衛生防疫機関を物質的、技術的に充実させて、その役割を高め、必要な消毒薬品をそのつど供給しなければなりません。

 女性の健康管理にも深い関心を払うべきです。

 近代的な平壌産院が開院して以来、産婦と新生児の健康管理で大きな成果がありました。平壌産院に対する人民の反響はなかなかのものです。平壌産院は開院して10年余り経ちましたが、今後も引き続き正常に運営しなければなりません。保健部は毎年、平壌産院の設備を計画的に補充し、各種の部品や衛生機材、医薬品を円滑に供給すべきです。開院の際に整えたことに満足して関心を払わなければ、正常に管理、運営することはできません。地方の各産院と病院の産婦人科、里人民病院の産室も充実させ、助産を正しくおこなわせ、女性が糜爛性疾患をはじめ、さまざまな病気にかからないよう、予防医療対策に万全を期さなければなりません。

 女性の健康管理に必要な各種の器具や資材を大量に生産して供給すべきです。党は、女性の健康管理に必要な各種の器具、資材を生産する対策を講じています。ところが幹部は、最初は多少実行しましたが、そのうちにあれこれと口実を設けて中断してしまいました。こういうことを見ても、幹部の女性に対する見方が間違っていることがわかります。幹部は、女性に対する見方を正し、女性の健康管理に関心を払い、各種の器具、資材を大量に生産して切らすことなく供給できるようにすべきです。

 子どもの健康管理にも関心を払うべきです。子どもを丈夫に育てるのは、国の将来にかかわるきわめて重要な問題です。これから平壌に近代的な中央児童病院を大きく建てる計画です。この病院が建設されて開院すれば、わが国の子どもの健康管理に大きく寄与することができます。地方の児童医療・予防機関と託児所、幼稚園も十分に整備し、子どもの衛生管理と栄養管理の改善策を講じる必要があります。特に、託児所、幼稚園の消毒・防疫対策に万全を期し、伝染病がはやらないようにしなければなりません。

 歯科医療部門を発展させるべきです。

 歯科医療に対する住民の要望は非常に高まっています。歯が丈夫であってこそ、いろいろな食べ物を存分に口にし、健康な体で仕事に励むことができます。歯が丈夫でなければ、食べ物を満足にかみこなすことができず、消化器系の病気にかかったりして苦しむようになります。

 平壌に新設する中央児童病院に歯科病院を併設する計画ですが、これが建設されれば、子どもの歯の病気の予防医療をさらに改善することができるでしょう。歯の衛生管理は幼年のころから心がけなければならず、それを怠って幼年のころに歯を悪くすると、一生苦労するようになります。

 子どもと住民のあいだに口内衛生を守るよう衛生宣伝活動を強化し、誰もがいつも口内衛生に努めるようにしなければなりません。口の中をきれいにすれば歯の腐食を防ぎ、歯槽膿漏などのさまざまな口内疾患を予防することができます。

 歯科系の予防・医療機関を物質面、技術面から充実させ、歯科医と歯科技工士の技術・技能水準を決定的に高めなければなりません。特に、歯科技工部門の技術水準と技工士の技能水準の向上に力を注ぐべきです。歯科医療部門に必要な機器と材料を供給することも大切です。歯科医療部門には、他の専門科とは違って多種多様な小器具や材料が必要となります。保健部は、良質の各種小器具と材料を供給する対策を講じる必要があります。国産でまかなう品目と輸入する品目を分けて細密な計画を立て、歯科医療部門に必要な小器具と材料を十分に供給しなければなりません。

 がん性疾患の予防医療に大きな力を注ぐべきです。

 世界的にがん性疾患の治療が難問題となっています。がん性疾患で毎年、多くの死亡者が出ています。

 がん性疾患を予防するためには、摂生に努め、日ごろから身体を鍛えることが大切です。

 ヨーロッパ人に肺がんの発病率が高いのは、タバコを多く吸うのが主な原因だといいます。ヨーロッパ人は肉食が多いので便秘症の人が多く、大腸がんの患者も少なくありません。肉を食べ過ぎると健康を損ねます。ヨーロッパ人に心臓血管系統の病気が多いのも、動物性脂肪を取りすぎることに起因しています。

 朝鮮人は昔から野菜と魚を多く食べてきました。わが国には、いろいろな栄養素を多く含む野菜が豊富であり、3面が海に囲まれているので魚類も豊富です。魚には蛋白質が豊富で、健康によい不飽和脂肪酸も多量に含まれています。朝鮮人の食生活習慣は申し分のないものです。食べ物は塩辛いものや辛いものを避け、食べ過ぎないことが大切です。

 病院を開設する際には、自己本位主義に走らないようにすべきです。

 いま、工場、企業や軍隊、社会安全機関、鉄道などの各部門別に、特殊性を口実にそれぞれが病院を設けていますが、それではいけません。管理運営に関する具体的な試算もなしに病院を増やしては、医療システムを複雑化するだけで、有益なことはありません。

 人民保健医療事業を発展させるためには、医薬品と医療機器、衛生資材などを集中的に生産して病院に提供することが必要です。保健部は、確実性のある良質の医薬品を大量に生産して、その一部を輸出し、そこから得た外貨で必要な医薬品や設備を輸入することもできます。国産医療機器の質を決定的に高めなければなりません。

 わが国各地にある鉱泉や温泉、鉱泥土などの天然手段を医療に積極的に活用する対策も立てるべきです。

 保健部は、医科学技術の発展と医師の技術・技能水準の向上に大きな力を注ぎ、わが国の医学をすみやかに世界的レベルにまで引き上げなければなりません。

 人民保健医療事業を改善するためには、保健部の役割を高め、道・市・郡行政・経済委員会が保健医療事業に対する指導を強化しなければなりません。保健部は、人民保健医療事業の改善について具体的に試算したうえで計画を確定し、幹部が革命的展開力を発揮して活動を積極的に進められるようにすべきです。政務院と地方行政・経済委員会は、病院を近代化し、医療・予防事業に必要な外貨を提供する問題など、保健医療部門で提起される問題を主人としての立場でそのつど解決すべきです。

 我々は、人民保健医療事業の発展に大きな力を注ぎ、わが国の社会主義保健医療制度の優越性をさらに強く発揮させていかなければなりません。

出典:『金正日選集』13巻


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