金正日
 
音楽芸術論
 −1991年7月17日−
 
  生活があるところには音楽があり、音楽があるところには生活がある。音楽は人々に、生活にたいする燃えるような情熱と豊かな情緒、躍動する生気、明日への希望とロマンを与える人間生活のもっとも近しい芸術である。

 音楽の深い情緒は、人々に清らかで気高い感情をもたらし、人々の心に長く余韻を残す。音楽は人々に力と勇気を与え、未来へいざなう。

 音楽は、大きな思想的・情緒的感化力をもっている。音楽の思想的・情緒的感化力は、真の音楽だけが強く発揮することができる。音楽は、人々を自主的な存在に育てるための思想・情操教育に大いに寄与し、人民大衆の創造的な生活と闘争に奉仕すべきであり、人間の自主的な思想を反映し、人民大衆すべてに理解でき、楽しめるものでなければならない。人類の音楽史は、数々の音楽流派が入れ替わる過程で、真の音楽はどうあるべきかという根本問題にたいする解答を模索してきた歴史であるといえる。

 人類史発展の長きにわたって論議されてきた音楽の真の使命と役割、性格に関する根本問題は、我々の時代にいたってはじめて、チュチェ思想によって完全に解決された。チュチェ思想は、世界における人間の地位と役割を新たに解明し、社会的運動の主体に関する新しい思想を明示することによって、音楽の使命と性格にたいする科学的な解答を見いだし、その実現方途を全面的に明らかにする道を開いた。

 チュチェ思想にもとづいて、音楽の本性とその使命と役割、内容と形式に関する原理的な問題を全面的に解明し、音楽にたいする正しい観点と立場をもって朝鮮式の音楽を建設するための理論的・実践的諸問題を解決することは、時代が我々に提起している歴史的課題である。

 金日成同志が、つとに抗日革命闘争の炎のなかで独創的な主体的文芸思想を示し、みずから革命音楽の伝統を築き、主体的な音楽芸術の建設を賢明に指導することによって、こんにち、わが国には、チュチェ音楽芸術の一大開花期が訪れた。我々は、金日成同志が指導してきた主体的な音楽建設の輝かしい歴史と、党によって築かれたチュチェ音楽創造の業績と経験を集大成し一般化して、チュチェ音楽芸術が時代と革命にたいする栄えある使命をまっとうできるようにすべきである。

 目  次
 
 1 チュチェ音楽
   1 チュチェ時代は新しいタイプの音楽を求める
   2 主体性は朝鮮音楽の生命である
   3 革命に必要なのは名曲である
   4 音楽を大衆化すべきである
   
 2 作  曲
   1 音楽はメロディーの芸術である
   2 有節歌謡は人民音楽の基本的形式である
   3 楽器編成の基本は民族楽器と洋楽器を組み合わせることである
   4 編曲は創作である
   5 多様なジャンルと形式の音楽を創作すべきである
   
 3 演  奏
   1 演奏は創造の芸術である
   2 演奏では民族的情緒と現代的美感を正しく具現すべきである
   3 演奏では個性的特性を生かすべきである
   4 演奏は情熱をこめておこなうべきである
   5 演奏者は創造のベテランにならなければならない
   6 指揮者は楽団の司令官である
   
 4 音楽の後進育成
   1 後進の備えがなくては音楽芸術は発展しない
   2 ぬきんでた才能をもつ音楽家の後進は系統的に、科学的に育成すべきである
 
 
注 釈 


 革命頌歌『朝鮮の星』 金日成主席の初期革命活動の時期、民族の救星として敬慕する金日成主席に忠誠を尽くさんとする青年共産主義者と革命組織メンバーの一致した願いをこめて、革命詩人金赫が作詞、作曲した初の革命頌歌。この頌歌には、1920年代の後半期、金日成主席を民族の太陽として高く仰ごうとする朝鮮人民の切々たる念願と真心が反映されている。

朝鮮の星

     暗い夜空を きらめきながら
     傷つく大地を だきしめて
     夜明けのときを つげる星/民族の灯(ともしび) 明星(ほし)をあおぐ

     うめく夜空を 見あげれば
     涙の祖国が 目に浮かぶ
     誓いもあらた 肩をくみ
     民族の灯 明星をあおぐ

     にくい侵略者 うちやぶり
     夜明けの陽光(ひかり)てらすとき
     祖国に 春の花がさく
     民族の灯 明星をあおぐ



 時調 朝鮮固有の国文詩歌ジャンルの一つ。11世紀初に発生した定型詩歌形式で、初章、中章、終章の三つの章と六つの句からなっており、詩行の韻律は3・4調、または4・4調が基本となっている。


 火線楽器 祖国解放戦争(朝鮮戦争)の時期、朝鮮人民軍の勇士たちが苛烈な戦闘に明け暮れる火線で合間合間に自分の手でつくって奏した楽器をいう。この楽器では、火線音楽会も開かれ、人民軍兵士の楽天的な生活気風と勝利の確信をさらに高めた。


 伽琴 指先で弦をはじいて奏する民族弦楽器。朝鮮の封建国家として存在した伽国でつくられたことに由来する。6世紀初葉、伽国の楽師として知られる音楽家于勒によって創製された。 
 出典:「金正日選集」11巻




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