主体的音楽芸術を立派に建設するためには、音楽芸術を大衆化しなければならない。時代の要請と人民の志向に合って、人民が好み、人民に奉仕する革命的で人民的な音楽芸術を創造することは、主体的音楽芸術建設の重要な原則の一つであり、わが党の一貫した方針である。

　音楽芸術を大衆化するということは、広範な人民大衆を音楽芸術創造活動に参加させ、かれらの集団的な力と知恵に依拠して音楽芸術を創造し発展させ、社会の全構成員が音楽を存分に楽しめるようにすることを意味する。一言でいって、音楽芸術を大衆化するということは、音楽芸術を大衆的基盤のうえで創造し発展させ、勤労人民大衆を音楽芸術の真の主人にならしめるということである。

　音楽芸術を大衆的基盤のうえで発展させ、勤労人民大衆を音楽芸術の真の創造者、享受者にすることは、主体的音楽芸術建設の合法則的要求である。

　勤労人民大衆が主権と生産手段の主人となっている社会主義制度下で、真の労働者階級の音楽文化を建設するためには、労働者階級をはじめとする勤労人民大衆が音楽芸術分野においても主人としての地位を占め、革命的で人民的な音楽芸術を創造し発展させるうえで主導的な役割を果たさなければならない。そうしてこそ、人民大衆が、容易に理解し、好んでうたい、革命闘争と建設事業に大いに寄与する革命的で人民的な音楽芸術を創造し、発展させ、主体的な音楽芸術を立派に建設することができる。

　世界のあらゆる物質的富と精神文化的財宝が勤労人民大衆の創造的労働によってつくられたように、音楽芸術も人間の創造的労働の過程で発生し、発展してきた。かつて、支配階級が、政治・経済分野だけでなく、文学・芸術の手段をすべて独占し、勤労人民大衆の文学・芸術創造活動まで抑制していた古い搾取社会においても、人民大衆は、自己の固有な民族文化を創造し、自分の志向と願望をもりこんだすぐれた民族音楽遺産を残した。わが国の多くの民謡が、いまも人民に愛され、広くうたわれているのは、それが勤労人民の集団的知恵によって創造され、磨きあげられ、かれらの志向と生活感情を素朴かつリアルにもりこんでいるからである。言うまでもなく、かつての人民音楽の遺産は、勤労人民大衆が社会・歴史発展の主人としての地位を占め役割を果たすことができなかった古い階級社会の産物であるため、一定の歴史的・階級的制約性がある。しかし、人民音楽の遺産に体現された美しく豊かな民族的情緒と生活感情、素朴で簡潔な形式に具現された音楽的表現のリアリティーと高い芸術的形象は、勤労人民大衆こそは、民族的で人民的な音楽芸術の真の主人であり、創造者であることを如実に物語っている。

　広範な勤労人民大衆を音楽芸術活動に参加させ、かれらの集団的力と創造的知恵を十分に発揮させるときにのみ、音楽芸術の進歩をもたらし、わが国の主体的音楽芸術をさらに速く発展させることができる。

　勤労人民大衆は、時代の要請と志向を自己の創造的努力とねばり強い闘争によって実現していく、もっとも知恵深く有力な存在である。

　音楽芸術創造活動に広範な人民大衆を参加させ、かれらの創造的情熱と芸術的才能を十分に発揮させてこそ、躍動する現実と、世界でもっともすぐれたわが国の社会主義制度で暮らし働く朝鮮人民の幸せで誇らしい生活感情を、リアルに生き生きと形象化し、斬新な形式と多種多様なジャンルの音楽作品をより多く、より立派に創造することができる。

　音楽芸術の大衆化は、チュチェの音楽芸術の明日を担う創作陣をしっかりととのえるためにも必要である。

　わが国の勤労者と青少年のなかには、音楽の才能と素質がある人がいくらでもいる。広範な大衆のあいだで音楽芸術活動を活発に展開してこそ、才能のある新しい芽を探しだして、かれらを高い思想・意識と特出した芸術的技量をそなえた有能な音楽創作家、芸術家に育てあげ、主体的な音楽芸術の創作陣を現実発展の要請に即してたえず拡大することができる。

　音楽芸術を大衆化することは、人民大衆の思想・意識水準と文化水準をたえず高めて、社会の全構成員を全面的に発達した共産主義的人間に育てる活動をより能動的に進める重要な方途の一つである。

　音楽芸術活動を広範な大衆的基盤のうえで強力に展開すれば、思想性・芸術性の高い音楽芸術作品を多く創作する過程で、社会の全構成員が、みずからをチュチェの革命観が確立し、豊かな文化的素養と気高い道徳的品性をそなえた共産主義的人間として、さらにしっかり完成させていくことができる。

　音楽芸術を大衆化するためには、音楽芸術活動に広範な勤労人民大衆を参加させなければならない。そうしてこそ、内容と形式が豊かで多様な大衆音楽をより多く創造し、かれらを音楽芸術の真の創造者にすることができる。

　我々はこれまで、音楽芸術活動に広範な人民大衆を参加させるという党の一貫した方針を貫徹することによって、大衆音楽芸術の創造で大きな成果をおさめ、貴重な経験を積んだ。

　解放後、あらゆる搾取と社会的束縛から抜けだして国の主人となった勤労人民大衆は、はじめて味わった幸福な生活と誇りある労働のなかで体験した歓喜と喜びを歌に託してうたい、英知ある勇敢な人民軍兵士は、祖国解放戦争のきびしい環境のもとでも火線楽器をつくり、確固たる勝利の信念と革命的楽天主義で貫かれた思想・感情をうたった。戦後の復興建設期と社会主義建設の大高揚期に、勤労人民大衆の大衆音楽創作活動はさらに活発になり、革命的で社会主義的な内容を素朴で生活に密着した生き生きとした形式にもりこんだ多種多様な大衆音楽作品が数多く創作された。こんにち、わが国の主体的音楽芸術がより高い段階へとたえず発展している主な要因は、まさに人民大衆が音楽芸術活動に広く参加していることにある。

　音楽芸術の大衆化で堅持すべき重要な原則は、音楽芸術活動で労働者大衆を前面におし立て、かれらが創造した労働者階級の音楽芸術を都市と農村に普及することである。音楽芸術創造活動で労働者階級をおし立て、かれらが創造した革命的な音楽をモデルにして大衆音楽を発展させてこそ、主体的音楽芸術の労働者階級的性格を確たるものとし、大衆音楽芸術を健全に発展させることができる。

　大衆音楽を発展させるためには、音楽芸術創造活動に労働者階級とともに農民と兵士、青少年学生をはじめ、より広範な大衆を参加させる必要がある。それでこそ、多様な生活と思想・感情を反映したさまざまな形式とジャンルの音楽作品をより多く創作し、わが国の大衆音楽芸術をいっそう豊かに開花させることができる。

　音楽芸術を大衆化するには、音楽創作を神秘化し、専門家本位に走る傾向を一掃しなければならない。

　音楽芸術の創造活動を神秘化し、専門家本位に走るのは、勤労人民大衆を力と知恵のある存在とみなさず、人民的で大衆的な音楽を幼稚でレベルの低いものとして見くだす反人民的なブルジョア思想の残滓のあらわれであり、支配階級と一部の特権階級が音楽芸術の創造と享受を独占していた搾取社会の古い悪習をそのまま存続させようとする反動的な思想傾向である。

　社会の全構成員が参加して楽しめる大衆芸術を発展させ、全国の芸術化を実現することが、わが党の目標である。芸術発展の見地からすると、共産主義社会は社会の全構成員が芸術創造活動に参加し、それを心ゆくまで楽しめるように大衆芸術が高いレベルに達し、全国の芸術化が完全に実現した社会といえる。わが国の主体的音楽芸術をより高い段階に発展させ、共産主義的音楽芸術の建設をさらに推進するためには、音楽芸術活動において専門家本位に走る傾向をなくし、音楽を大衆的なものに発展させる原則を堅持しなければならない。

　勤労者のあいだで音楽芸術サークルを広く組織し、大衆音楽創作活動を積極的に展開することは、音楽芸術を大衆化する実践的な方途の一つである。

　社会主義制度下では勤労人民大衆が音楽芸術活動に自由に参加できる社会的環境と条件が保障されるからといって、音楽芸術の大衆化がおのずと実現するわけではない。勤労者の芸術活動は、組織化され集団的なものとなってこそ、大きな威力が発揮される。こういう意味で、芸術サークルは、大衆的な音楽芸術活動の基本的組織形式であり、拠点であるといえる。

　芸術サークルは、工場や企業所、協同農場、学校から居住人民班にいたるまですべての部門で、生産単位、生活単位を基本にし、実情に応じて組織すべきである。芸術サークルは、さまざまな形式と方法で機動的に、日常的に運営すべきである。

　芸術サークル活動では、多様な主題と形式の作品によって勤労者の勤労闘争の成果を宣伝し一般化することに重点をおき、否定的傾向にたいする批判もおこなうべきである。そうしてこそ、勤労者の勤労闘争を鼓舞激励するとともに、かれらの頭に残っている古い思想を一掃することができる。

　芸術サークル活動を専門化する傾向を一掃すべきである。

　芸術サークル活動を専門化すると、生産に支障をきたすのはもちろん、大衆芸術に固有な特性も失うことになる。

　芸術サークル活動は、抗日遊撃隊式におこなうべきである。

　簡便な大衆楽器と生き生きとした現実的な芸術作品をもって、時と場所にこだわらず戦闘的かつ機動的に公演し、大衆の才能を大いに開発しておもしろくするのが、すなわち、抗日遊撃隊式の芸術活動である。我々は、抗日武装闘争期に築かれた革命伝統を正しく継承し、それをモデルにして大衆芸術を朝鮮式にさらに発展させるべきである。

　芸術サークル活動を強化し、広範な人民大衆のあいだで大衆音楽芸術をさらに発展させるためには、専門の創作家、芸術家が、それを積極的に助ける必要がある。創作家、芸術家は、しばしば生産現場に出向き、労働者、農民と一緒に働きながら、かれらから学ぶとともに、かれらが、芸術サークル活動を活発に展開するように助け、導くべきである。

　創作家、芸術家は、勤労者の芸術サークル活動と大衆音楽創作活動を助けるからといって、かれらに専門家の真似をさせたり、作品を書いてやるといったやり方をしてはならない。

　芸術サークル活動の指導で大切なのは、素朴でリアルな大衆芸術の持ち味が失われないようにし、大衆創作の新しい芽を見つけ、勤労者の創作的情熱を大いに引き出して、かれら自身が作品を完成するように十分援助することである。我々は、芸術団や宣伝隊で活動する創作家、芸術家を大衆のなかに送りこみ、かれらが芸術啓蒙活動をおこない、芸術サークル活動と大衆音楽創作活動を実質的に助けるように深い関心を払うべきである。

　芸術普及活動を強化すべきである。

　芸術普及活動を積極化してこそ、広範な勤労人民大衆が芸術作品を思う存分見たり聞いたりして楽しむ真の享受者となり、その過程で革命的に教育されるのである。

　人民大衆の芸術啓蒙のためにも、芸術普及活動を強化する必要がある。芸術普及活動によって、人々に革命的文学・芸術の真価を深く認識させて芸術的識見を広め、かれらの文化的素養と芸術的技量を高めて大衆芸術をより速く発展させることができる。勤労者のあいだで音楽芸術普及活動を強化すれば、音楽を鑑賞するにしても深く鑑賞でき、歌をうたうにしても、それにもられている思想的・情緒的内容と芸術形象的特徴をのみこんで、いっそう意味深くうたうことができる。

　音楽芸術普及活動は、党の宣伝活動の方向と要求にそって進めるべきである。

　音楽は、人々を革命的に教育する強力な武器であり、党の思想活動の重要な手段の一つである。音楽が党の思想活動の手段としての戦闘的機能と使命を果たすためには、音楽芸術普及活動を各時期の党の思想活動の方向と要求にそって計画化し、その遂行において革命的気風を確立しなければならない。そうしてこそ、時機に合わせて新たに創作された立派な音楽作品を時を移さず普及し、勤労者を革命闘争と建設事業に奮い立たせるだけでなく、かれらが革命的楽観にみちて生活し、働くようにすることができる。

　芸術普及活動は、わが党によって独創的にうち立てられた主体的な芸術普及システムにもとづいておこなうべきである。それぞれの地方の特性を生かすからといって、水準の低い作品を好き勝手に普及する無規律な行為を許せば、人々に悪い影響を与えかねない。我々は、統一的な音楽普及システムを確立して、すべての人民が中央で創作され、党が承認した思想性・芸術性の高い歌をひとしくうたうようにすべきである。

　芸術を大衆化するためには、育ちゆく新しい世代にたいする芸術教育を強化しなければならない。

　いまは、勤労者の全般的な文化水準が高まり、全般的11年制義務教育と高等教育を受けた新しい世代が工場や企業所、農村に多く進出して、大衆のあいだで大衆文学・芸術をさらに発展させうる土台が築かれているので、育ちゆく新しい世代にたいする芸術教育に力を注げば、芸術の大衆化をより早く、立派に実現することができる。芸術教員の養成において教育の質を高め、有能な芸術教員をより多く養成するとともに、普通教育部門で芸術教育の強化に深い関心を払うなら、11年制義務教育期間に一般的な文化的素養を高めると同時に、音楽芸術の基礎知識を十分に身につけさせ、すべての生徒・児童を踊りも歌も上手で、一つ以上の楽器をこなせるように育てることができる。芸術教育を十分に受けた新しい世代が生産現場に進出すれば、社会の全構成員の文化水準が著しく高まるばかりか、大衆音楽芸術活動をより活発に展開して音楽芸術を大衆化するという党の方針を立派に実現し、全社会の芸術化をさらに早めることができるようになる。