金正日「チュチェの社会主義経済管理理論で武装しよう」

1 社会主義経済管理の基本的原理について


 チュチェの社会主義経済管理理論は、人民大衆を経済管理の主人とみなして展開した人間中心の独創的な経済管理理論です。

 経済管理は、一定の経済的目的を実現するために、人々の経済活動を指揮する機能です。どのような社会であれ、人々の集団労働にもとづいて経済活動がおこなわれるところでは経済管理がなされます。経済管理の本質と基本的原理、システムと方法は、その主人がだれであるかによって根本的に異なります。資本家が主人がましくふるまう資本主義社会では、経済管理は資本家の利潤追求のために勤労者を抑圧し搾取する機能となります。これとは異なり、人民大衆が経済管理の主人となっている社会主義社会では、経済管理が勤労者の自主的で創造的な経済活動を保障する社会的な指揮機能となります。

 社会主義経済管理の基本的原理は、人民大衆を経済管理の実質的な主人とならしめることです。言いかえれば、人民大衆に経済管理において主人としての権利を実質的に行使させ、主人としての責任と役割を果たさせることです。

 人民大衆を経済管理の実質的な主人にすることができるかどうかは、社会主義経済管理における根本問題であり、これをいかに解決するかによって、社会主義経済建設の成果と社会主義制度の運命が左右されます。

 人民大衆は、国家主権と生産手段の主人になれば、経済管理においても主人の地位を占め、主人としての責任と役割を果たせる社会的条件がととのいます。しかし、それらの社会的条件がととのうからといって、経済管理において人民大衆がおのずと主人の地位を占め、主人としての責任と役割を果たすことになるのではありません。

 人民大衆が、経済管理において主人の地位を占め、主人としての責任と役割を果たすためには、社会主義社会の経済管理が人民大衆の利害と要求に即して実現されなければなりません。資本主義的所有が廃され、社会主義的所有が確立されて、人民大衆が経済管理の主人になる社会的条件がととのったとしても、人民大衆の意思と要求に即して経済管理をおこなわなければ、人民大衆が経済管理の主人としての権利を行使し、責任と役割をまっとうすることはできません。

 経済管理が人民大衆の意思と要求にかなったものになり、人民大衆自身のものになってこそ、すべての勤労者は経済管理に主人らしく参加し、経済建設において自分の創造的能力を十分に発揮することができます。そのためには、かれらの政治的自覚と創造的積極性を高めなければなりません。社会主義経済管理においては、その主人である人民大衆の政治的自覚を高め、勤労者の創造的エネルギーと知恵をくみ上げて、すべての問題を解決していかなければなりません。人民大衆が経済管理の実質的な主人になるときにのみ、国の経済は一つの生産有機体をなして集団主義の威力を最大限に発揮しながら、たえまなく速いテンポで発展することができます。

 社会主義経済管理において同志的団結と協力の関係をたえず発展させることは、人民大衆を経済管理の実質的な主人にするうえで提起される基本問題の一つです。人民大衆の主人としての自主的で創造的な経済活動は、集団主義にもとづいてのみ成功裏におこなわれます。人間は社会関係を結んで生活し活動する社会的存在であるため、社会的集団のなかでのみ自主的要求を実現し、創造的役割を果たすことができます。社会主義社会において人民大衆が経済管理で主人の地位を占め、主人としての責任と役割を果たすようになるのも、社会主義社会が集団主義にもとづいており、団結と協力が社会関係の基本をなしているからです。社会主義経済の管理において、集団主義にもとづく経済管理秩序に従って集団と個々の勤労者の経済活動を統一的に組織し、同志的団結と協力の関係を正しく実現すれば、人民大衆を経済管理の実質的な主人にすることができます。

 社会主義経済管理の基本的原理は、社会主義社会の性格を反映しています。社会主義社会は共産主義社会の低い段階であって、共産主義的性格をおび、共産主義社会の高い段階にたいする未熟さのため過渡的な性格をおびます。

 社会主義経済建設が前進して社会主義社会の過渡的性格が克服されるにつれ、社会主義経済管理の基本的原理はいっそう完全に具現され、それにもとづく経済管理システムと方法もいっそう完成されていくようになります。

 社会主義経済管理は、社会主義社会の共産主義的性格を反映しているため、個人主義にもとづく資本主義的企業管理とは区別される固有の特徴をもっています。

 社会主義経済管理は、政治的指導を基本にすることを求めます。

 党の指導は社会主義経済管理の生命線であり、その優越性と生命力の根源です。社会主義経済管理において、党の指導は人々の経済活動にたいする政治的指導を通じて実現されます。社会主義経済は党の政治的指導のもとでのみ、その本性に即して正しく管理、運営されます。

 党の政治的指導は、経済活動において人民大衆の創造的能力を強く発揮させる基本的保証です。社会主義経済の優越性は、その主人である人民大衆の無限な創造的能力を強く発揮させるところにあります。人民大衆の創造的能力は、かれらが集団主義的生命観にもとづいて一つの社会的・政治的生命体として結束するときに最も強く発揮されます。人民大衆を強力な創造的能力をそなえた社会的・政治的生命体として結束させるのは労働者階級の党です。人民大衆は労働者階級の党の指導のもとでのみ、意識化、組織化され、領袖と一つの血脈につながり、不抜の力をもつようになります。党の政治的指導が確固と保障される状況のもとでのみ、経済活動に参加するすべての人を領袖の革命思想で武装させ、党と領袖のまわりにかたく結集させ、かれらの創造的エネルギーと知恵を最大限に発揮させて社会主義経済建設を力強く推進することができます。

 党の政治的指導は、経済機関と企業所に人民大衆の要求と利益に即して経済を管理、運営させます。ここで指導指針となるのは、党の路線と政策です。党の路線と政策は、革命と建設の各時期、各段階において人民大衆の自主性を擁護し実現するための闘争目標と方向、戦略と戦術、具体的な課題と方途を示します。党の政治的指導を確固と保障し、すべての経済機関と企業所が党の路線と政策を断固として擁護し実行すれば、人民大衆の要求と利益に即して経済を管理、運営することができます。

 党の政治的指導は、経済管理において革命的原則を堅持し、具現するための必須の要求です。党の政治的指導が確固と保障されてこそ、経済管理において資本主義的要素をはじめ、左右の偏向を徹底的に克服し、集団主義にもとづく社会主義経済制度を固守し、たえず発展させることができます。

 社会主義経済管理は、経済を国家の統一的指導のもとに計画的に管理、運営することを求めます。

 国家の統一的な指導のもとに経済を計画的にすみやかに発展させることは、社会主義経済本来の要求です。人民経済を計画的に速く発展させてこそ、社会主義経済制度をたえず発展させ、生産力の発展を促して、人民大衆の自主的で創造的な生活を物質的に円滑に保障することができます。

 社会主義経済発展の計画性と均衡性、たえまない速いテンポは、国家の統一的な指導のもとに経済を管理、運営することによって確固と保障されます。国家が経済を統一的に掌握して指導すれば、人民大衆の意思と要求にかなった人民経済発展計画を立て、その実行を正しく指揮し、国家計画規律を確立して人民経済を計画的、均衡的に、速く発展させることができます。国家の統一的な指導のもとに経済を計画的に管理、運営すれば、国の労働力資源と天然資源を合理的に利用し、生産と分配、蓄積と消費を計画的に実現して、社会主義的拡大再生産を大規模に進めることができ、国の科学技術をすみやかに発展させて、科学技術と生産の連係を合理的に実現して生産の効率を高めることができます。

 帝国主義者と反動たちは、社会主義計画経済は国家によって「行政官僚的」に運営される経済であるため生産の効率が低く、技術の発展を阻み、生産者の創意を抑制すると誹謗中傷し、社会主義計画経済を資本主義市場経済に変えさせようと悪らつに策動しています。資本主義市場経済はいくら粉飾しても、人民大衆に搾取と抑圧、失業と貧困をもたらす反人民的な本性を覆いかくすことはできません。こんにちブルジョア復活主義者によって社会主義計画経済が資本主義市場経済に移行した国々では、社会主義的所有が資本主義的所有になり、経済が混乱と麻痺の状態に陥り、生産の減退と大衆的な失業、商品不足と物価騰貴によって人民生活は日増しに悪化し、国の経済は従属経済に転落しています。社会主義計画経済を擁護し、その優越性を強く発揮させる道は、党の指導のもとに国家の統一的な指導を強化すること以外にありません。我々は、社会主義計画経済を資本主義市場経済に変えさせようとする帝国主義者とブルジョア復活主義者の策動を断固粉砕し、国家の統一的指導を固守しなければなりません。

 社会主義経済管理は、大衆路線を貫徹することを求めます。

 人民大衆が主人である社会主義社会では、経済管理においてもその本性に即して大衆路線を貫徹しなければなりません。我が党の大衆路線は、チュチェ思想の原理によって新たに提示された大衆指導の根本原則です。社会主義経済管理においては、大衆路線の要求に即して生産者大衆の意思を尊重し、その利益を擁護し、経済管理で提起されるすべての問題を生産者大衆の革命的熱意と創造的積極性によって解決していくべきです。国家経済機関と企業所の幹部は大衆路線の要求どおり、常に人民大衆の利益をあくまで擁護し、かれらに忠実に奉仕し、人民大衆の力を信じ、かれらのなかに入って苦楽をともにしながら、大衆の力と知恵を引き出すべきです。それでこそ、経済管理でのいかなる問題をも成功裏に解決することができます。

 社会主義経済管理において、大衆路線は国家の統一的な指導と結びつくとき、立派に貫徹されます。社会主義経済管理は大衆路線を貫徹するとき、人民大衆の利益に真に奉仕する人民大衆のための経済管理となり、人民大衆が経済管理に主人として参加し、助け導きあいながら高い革命的熱意と創造的積極性を発揮し、党の政策とその具現である国家計画を確実に遂行する人民大衆自身の経済管理となります。

 我が国における社会主義経済管理の実践的経験は、経済管理において大衆路線を貫徹してこそ、経済管理が人民大衆に奉仕し、人民大衆自身の仕事に確固と転換されることを示しています。我が党は、国家経済機関の幹部が社会主義経済の指導と管理において官僚主義を排除し、大衆路線を貫徹する努力を根気よくつづけるようにし、その過程で革命的な活動システムと活動方法を確立して、経済管理における大衆路線貫徹の問題を立派に解決しました。

 社会主義経済管理は、社会主義社会の過渡的性格を反映した特徴ももっています。社会主義社会の過渡的性格が社会主義経済管理の本質的特徴を規定することはできませんが、それを考慮することは経済管理において重要な意義を有します。社会主義社会の過渡的性格からして、社会主義経済管理では企業所が相対的独自性をもって経営活動をおこない、労働にたいする物質的刺激と商品貨幣関係と価値法則を経済管理の手段として利用することになります。社会主義経済管理において社会主義社会の共産主義的性格だけを絶対化し、その過渡的性格を無視してはなりません。

 社会主義経済管理では、社会主義社会の共産主義的性格と過渡的性格をともに考慮すべきです。社会主義社会の共産主義的性格と過渡的性格に即して経済管理問題を解決するうえで重要なことは、社会主義社会の過渡的性格を反映した経済法則とカテゴリーを社会主義社会の集団主義的本性に即して正しく利用することです。社会主義社会の過渡的性格にかかわる経済法則とカテゴリーは、まだ旧社会の遺物が残っている社会主義社会の社会経済的条件を反映しています。社会主義経済管理では、過渡的性格と関連した経済法則とカテゴリーの利用を軽視してはならず、それを過度に強調して絶対化してもなりません。過渡的性格を反映した経済法則とカテゴリーを絶対化すれば、資本主義的要素が育ち、社会主義経済が資本主義経済に変質する重大な結果をまねくようになります。社会主義経済管理では、過渡的性格を反映した経済法則とカテゴリーを社会主義社会の集団主義的本性に適応させて効果的に利用し、社会主義制度の優越性を発揮させるのに奉仕する経済的手段とすべきです。

 いま現代社会民主主義者は、社会主義社会の過渡的性格を反映した経済法則とカテゴリーを過度に強調して絶対化したあげく、資本主義市場経済を導入しています。これは社会主義を放棄し、資本主義を復活させる道です。社会主義社会で過渡的性格を反映した経済法則とカテゴリーを利用することは、あくまでも集団主義にもとづく団結と協力の関係をより立派に実現し、社会主義計画経済を強化するためのものとなるべきであって、個人主義、利己主義を助長し、資本主義市場経済を復活させるものとなってはなりません。集団主義と個人主義は根本的に対立し、集団主義にもとづく社会主義計画経済と個人主義にもとづく資本主義市場経済とは決して両立しません。

 我々は、社会主義経済管理の本質的特徴に即して過渡的性格を反映した経済的テコを正しく利用し、それが個人主義、利己主義を排除して集団主義の原則を立派に具現し、国家による経済の統一的な計画的管理を強め、社会主義計画経済の優越性を強く発揮させることに効果的に奉仕するようにしなければなりません。

 社会主義経済管理は、社会主義経済制度の優越性を十分に発揮させて経済建設を最大限に推進し、社会主義・共産主義の物質的・技術的土台を強固に築き、人民大衆の自主的で創造的な生活を円滑に保障することを基本的任務としています。社会主義経済制度の優越性は、党と領袖の賢明な指導のもとに、社会主義経済の指導、管理を正しくおこなえば、強く発揮されます。我が国では、党と領袖の賢明な指導のもとに、社会主義経済管理の問題が正確に解決され、社会主義経済制度の本質的優越性を全面的に発揮させています。

 社会主義経済管理の基本的原理は、経済管理の基本原則に具現されています。

 金日成同志は、社会主義経済建設を賢明に導きながら、経済管理で積んだ豊かな経験を一般化し、社会主義経済管理の基本原則を科学的に提示しました。

 金日成同志によって明示された社会主義経済管理の基本原則は、政治的指導と経済的・技術的指導、国家の統一的指導と各単位の創意性、民主主義と唯一的指揮、政治的・道徳的刺激と物質的刺激を正しく結合することです。言いかえれば、社会主義経済管理の基本原則は、党の政治的指導のもとに国家経済機関が経済的・技術的指導を実現し、国家の統一的で計画的な指導を確固と保障する基礎のうえで各単位の創意性を高め、民主主義を保障する条件で指揮を唯一的におこない、政治的・道徳的刺激を基本としながら、これに物質的刺激を適切に結合していくことです。

 社会主義経済管理の基本原則は、経済管理において労働者階級の革命的原則を固守し、社会主義制度の本性に即して経済を科学的に、合理的に管理、運営できるようにする革命的な原則です。

 チュチェの社会主義経済管理理論が、人民大衆を中心にして社会主義経済管理の基本的原理と原則を科学的に示したため、人民大衆が生産と管理において主人としての地位を占め、その責任と役割を果たせる真の道が開かれました。人民大衆を中心にして社会主義経済管理の基本的原理と原則を明示したところに、チュチェの社会主義経済管理理論の独創性と優越性の一側面があります。

 従来の労働者階級の革命理論は、物質中心の世界観による制約性だけでなく、社会主義建設の実践的経験の未熟さからして、社会主義経済管理の基本的原理と原則について正しい解明を与えることができませんでした。これまで一部の国では、社会主義経済の指導、管理において、経済的・技術的指導と行政的方法、物質的刺激を基本としていました。これは経済管理に官僚主義を扶植し、人々のあいだに利己主義、なわばり主義のような古い思想の残りかすを助長して、社会主義制度の優越性を十分に発揮できなくしました。

 こんにち現代社会民主主義者は、経済管理に資本主義的方法を取り入れて、社会主義経済を資本主義経済に変質させています。資本主義的経済管理は社会主義的経済管理とは根本的に対立しています。資本主義社会での企業管理権は生産手段の所有者である資本家に掌握されており、生産者大衆は資本に従属させられた奴隷であって、何の管理権ももっていません。資本家と生産者大衆との関係は、階級的対立と闘争の関係で特徴づけられます。資本主義的企業管理制度は、生産者大衆を資本家のための企業活動に強制的に服従させる横暴な専制制度であり、生産者大衆をカネで縛りつけて抑圧する反人民的な搾取制度です。現代社会民主主義者は、このような反動的な制度を生産者大衆に強要しています。かれらは経済管理において、失業を労働の強度を高める手段として利用し、人間関係を商品貨幣関係にかえ、党の指導と国家の中央集権的・計画的指導を拒否して企業の私有化と無制限な自由競争を奨励しています。現代社会民主主義者は物質至上主義に陥ったあげく、生産者大衆を自主的な思想・意識をもった尊厳ある存在としてではなく、単なる個人の欲求を追求する低俗な存在、創造的能力をもった強力な存在としてではなく、物質的・経済的条件によって支配される無気力な存在とみなしています。生産者大衆にたいする、このような誤った見解と観点から、社会主義経済管理における難関を資本主義市場経済と個人主義的方法の導入によって克服しようというのは愚かなことです。こんにち一部の国に生じている重大な事態は、社会主義経済管理の問題を人民大衆を中心にするのでなく、物質や利潤を基本として考察するなら、社会主義経済制度の優越性を発揮させることはおろか、社会主義制度の存在そのものも不可能にすることを明白に示しています。

 我が国では党の指導のもとに、社会主義経済管理の基本的原理と原則に従って、人民大衆に忠実に奉仕し、人民大衆の創造的役割を十分に発揮させる人民大衆中心の経済管理システムと方法を確立することによって、社会主義経済管理問題を労働者階級の革命的原則と社会主義制度の本性に即して立派に解決しました。社会主義建設の実践的経験は、チュチェの社会主義経済管理理論が示した経済管理の基本的原理と原則に従って経済管理問題を解決していく以外に他の道はないことを実証しています。

 我々は、人民大衆中心の社会主義経済管理の基本的原理にもとづく、チュチェの社会主義経済管理理論の正当性と優越性を明確に認識し、それを社会主義経済管理に立派に具現していかなければなりません。

出典:金正日選集 11巻

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