金正日「建築芸術論」−4 建築と指導

2 建築創作の指導に集団主義を具現すべきである


 建築創作の指導に集団主義を具現することは、建築家と建築創作部門の活動家の集団的知恵と力を引き出して建築の質を高める決定的な裏付けである。建築創作の指導に集団主義が具現されてこそ、特定の幹部が建築創作の指導を自分勝手に、官僚主義的におこなう傾向をなくし、創作指導の客観性と公正さを期することができる。

 建築創作の指導に集団主義を具現するためには、建築設計にたいする集団的審査制度を強化しなければならない。そうしてこそ、建築創造において党の唯一的指導を確固たるものにし、創作活動で同志的協力と団結を強化し、建築家の創作上の個性を最大限に発揮させることができる。

 集団的審査制度は、建築に関する党の構想と意図を立派に具現し、人民大衆の志向と要求を十分に実現させる根本的保証である。

 設計の審査を機関本位にしたのでは、立派な設計が生まれるはずがない。自分の手にある設計文書を出して審査するようなやり方では、設計の審査が党の原則にもとづいて公正におこなわれず、設計の質を高めることもできない。

 国家審査委員会をしっかりかため、審査員の責任感と役割を高めることは、建築設計にたいする集団的審査制度を強化する基本条件である。

 国家審査委員会は、革命的領袖観が確立し、党的眼識と政治的見識が高く、能力のある老練な建築設計士と経験豊富な現場の活動家で構成すべきである。そうしてこそ、党政策と労働者階級の立場から逸脱することなく審査し、審査委員会を着実に運営することができる。

 審査員が設計の審査で党性、労働者階級性、人民性の原則を堅持することが重要である。審査員は、高い党的眼識と政治的見識をもって審査の対象を分析、評価し、思想性と実用性、造形芸術性、構造の合理性を総合的に審査すべきである。これは、設計審査の政策的水準と科学技術的水準を高める前提となる。

 審査員は、建築家を助けて設計をより立派に完成させる方向で意見を交わし、討議をおこなうべきである。そうしてこそ、審査委員会はその使命と任務をまっとうすることができる。これは、国家審査委員会を組織する目的にも合致する。

 建築設計の集団的審査で重要なことは、政策面での審査と技術面での審査を正しくおこなうことである。

 建築設計にたいする政策面での審査を正しくおこなってこそ、革命発展の各段階、各時期における党政策上の要求と人民大衆の生活上の要求を建築に正しくもりこむことができる。政策面での審査を正しくおこなうためには、審査員が対象にたいする党の要求を深く把握したうえで、建築家がそれを設計にどのように具現したかを具体的に検討し、誤りを正さなければならない。

 建築設計の審査では、政策面での審査を優先させるとともに、技術面での審査を正しく結びつけなければならない。設計にたいする技術面での審査は建築計画にたいする審査であり、その実用性と造形芸術性、構造の合理性にたいする審査である。技術面での審査では、建築家が党の主体的な建築思想と理論にもとづいて整然とした形成体系と秩序をうち立て、建築計画と形成を立派におこなうよう、実質的に援助し導くべきである。

 建築設計にたいする審査を正しくおこなうためには、審査員がだれよりも党の主体的な建築思想と理論で武装し、豊かな創作経験を積まなければならない。審査員は党の主体的な建築思想と理論で武装してこそ、審査で党政策の線を明確に示し、党の構想と意図どおりに創作するよう実質的な援助を与えることができる。審査員に豊かな創作経験があれば、建築形成上の誤りを見つけだし、設計を練りあげて完成させることができる。

 建築設計にたいする審査で重要なことは、主観主義と形式主義を徹底的に克服することである。審査員が主観的に、形式的に設計を審査するならば、設計の誤りを正すことができず、国家に莫大な損失を与えることになる。

 建築設計を集団的に審査するさいには、目に映る外形にのみとらわれることなく、平面計画、断面計画、構造解決の可能性をはじめ、建築設備の適用、施工の容易さ、建材の適用条件、経済性にいたるまで具体的に検討する必要がある。

 審査に付された対象を一度見てまわっただけで審査員がそれを評価するといったようなことがあってはならない。審査員は一つを指摘するために十、百を検討し、建築家の創作に役立つ実のある助言を与え、欠点を是正するためのいろいろな代案を示すべきである。審査員は主観にとらわれて自説に固執し、それを押しつけてはならない。

 審査で提起された問題については、審査員が寄り集まって虚心坦懐に合議し、学術的に、原理的に意見の一致をみるべきである。集団の合意をみた内容は審査の結果として発表し、法とすべきである。そうせずに、審査員がそれぞれ自分の意見を述べれば建築家は見当がつかず、審査における集団主義を保障することができない。

 重要な対象の設計については、権限をもつ少数の人が各自の好みによって勝手に結論をくだせないように厳格な規律と秩序をうち立て、特定の幹部が集団的審査で合意した意見を無視し、職権を乱用して自分の主観的な意見を押しつけるといったことが起こらないようにすべきである。特に、国家審査委員会の決定を無視し、勝手に建築設計を変更することのないようにすべきである。建築設計にたいする審査で個人の独断と好みが許されるならば、集団的審査はなんの意味もなくなり、そのような設計は低俗なものになってしまう。

 建築設計の審査は、試案の作成段階からおこなうべきである。建築設計の審査は合目的的に、計画的におこなうとともに、恒常的な活動として進めなければならない。建築設計の審査では建築家の創作上の個性を尊重し、新しい着想がわくように最大限に啓発しなければならない。建築設計の集団的審査は、建築家が設計の創作で党性、労働者階級性、人民性の原則を立派に具現し、斬新で特色のある設計を創作するため創作上の個性を生かしていけるようにすべきである。審査員は、建築設計の審査に入る前に技術課題を十分に研究し、その課題にもとづいてあらかじめ設計試案を立て、建築家が思いつかなかった新しい代案を見つけだして建築家に着想のヒントを与えるべきである。建築家を啓発し、新しい着想が得られるように指導、援助するためには、審査員が創作家のレベルと創作上の個性を深く把握しなければならない。審査員は、党と国家にたいし建築創作指導の責任を担っていることを肝に銘じ、建築家と一心同体となって真剣かつ虚心に協議し、常に長所を探しだし、それを生かしながら欠点を是正していくようにすべきである。

 集団的審査は形成設計にとどまってはならず、建築物が完工するまでひきつづきおこなう必要がある。形成設計の段階では平面図、断面図、立面図、透視図の域を出ないので、この段階での審査をするだけでは、建築的解決について全般的に、十分な審査をすることはできない。技術設計の段階に入って各部屋の建築形成をはじめ、細部の仕上げをするときまでひきつづき具体的に審査し、建設中の建築物も現場で審査して未熟な点をたえず修正してこそ、建築物を立派に完成させることができる。施工の指導にあたる責任幹部は、国家審査委員会で合意をみた内容を無視して、自分の主観的な意見を押しつけてはならない。

 完成された設計は、なんぴとも変更することのできない法的文書である。特定の幹部が完成された設計を勝手に変更しようとするのは、治外法権的な行為である。やむをえず設計を変更する場合は、法的な手続きを踏まなければならない。

 集団的審査を強化するうえで重要なことは、建設指揮部の設計審査分科の役割を高めることである。建設指揮部の参謀部は、建築物の形成設計の段階では審査を活発におこなっておきながら、建設段階になるとそれをおろそかにするといったことのないようにすべきである。

 厳格な創作総括制度を確立すべきである。創作総括は建築家を啓発し、誤りを正し、かれらの政治的・実務的資質を高めるうえで極めて重要な意義をもつ。創作総括で完工した建築物を正しく評定するのは、建築発展のための必須の要求である。創作総括は、党政策にもとづき、科学技術的に、批判的におこなうべきである。新しい建築は、それまでの創作経験と教訓にもとづいて、悪いものは捨て、よいものは積極的に取り入れてこそ創造することができ、すみやかに発展するものである。

 創作総括の唯一の基準は、党の主体的な建築思想と理論である。

 総括では、党の構想と意図にかなった立派な建築物にたいしては党の主体的な建築思想と理論にもとづいて正確に分析し、そのすぐれた技巧と手法を明確に認識させ、以後の建築創作に効果的に活用できるようにすべきである。

 建築創作総括では、モデルとなるすぐれたものを一般化すると同時に、欠点を厳しく批判してそのつど是正しなければならない。既に外国で建設されたものを模倣する傾向や、資本主義諸国に流布している反動的な建築流派の思想的要素があらわれたときは、集中的な打撃を加えるべきである。建築家は建築創作でよいものは学びとり、欠点は是正しながら、新たな革新と前進をもたらすために奮励努力すべきである。

 創作指導に集団主義を具現するうえで重要なことはまた、大衆の統制を強化することである。

 建築家は人民大衆のなかに入ってかれらの声に耳を傾け、大衆の要求どおりに建築を創造する、革命的で人民的な創作気風をうち立てるべきである。

 各階層の大衆の意見を広くくみ上げるためには、大衆的な合評会を広く開き、かれらをそれに積極的に参加させなければならない。

 党は人民大学習堂の建設にあたり、朝鮮式に建設するという金日成同志の教えを実践に移すため、さまざまな形成試案を人民文化宮殿に展示し、大衆的な合評会を開いた。展示会には平壌市内の各階層の大衆が参加したが、かれらの意見はみな朝鮮式がいちばんだということであった。これを通じて建築家は、金日成同志の構想の正当さをより深く体得し、金日成同志の構想と人民の念願どおりに人民大学習堂を朝鮮式に建設する決心をかためたのである。

 建築創作の指導に集団主義を具現し、建築家の社会教育を強化するためには、建築家同盟の役割を高めなければならない。

 建築家同盟は、同盟員を党の主体的な建築思想と理論で武装させ、それを立派に実現するためにたたかう、我が国の建築家と建設技術者の社会組織である。

 建築家同盟は、建築家を党の主体的な建築思想と理論で武装させ、かれらが朝鮮式のチュチェ建築を立派に創作するよう積極的に援助すべきである。

 建築家同盟の最も重要な活動は、同盟員にたいする思想教育を着実におこなうことである。建築家同盟は、同盟員を党の主体的な建築思想と理論で武装させ、かれらが党の主体的な建築創作方針にもとづいて創作活動を進めることにより、建築創作の分野にさ細な異質的要素もあらわれないようにすべきである。建築家同盟員に、現在資本主義社会に流布しているさまざまな建築流派の反動的本質を深く認識させなければならない。同時に、建築創作活動にあらわれがちな偏向を克服するための思想教育を強化しなければならない。

 建築家同盟の活動で重要なことは、同盟員の建築的視野を広め、資質を高めるため、学術発表会、合評会、討論会、講習会、見学、創作経験発表会、展示会など、さまざまな活動を活発にくりひろげることである。

 建築家同盟は全国的な規模で設計の懸賞募集を計画的におこない、国際的な建築祭典に優秀な作品を出品するなどして、同盟員の創作的意欲を高めるべきである。また、設計等級別の設計懸賞募集、建築作品コンテストといったものも別個に催して、同盟員の創作的意欲と資質を高めるべきである。

 建築家同盟は、建築創作にたいする社会的関心を高めることにも力を入れるべきである。勤労者に建築に関する問題でたびたび講演をおこない、出版物に載せたり展示会を催すなどして、建築創作にたいする社会的関心を高め、建築創作が人民の高い関心のなかで進められるようにしなければならない。

 建築家同盟は、国家的に重要な記念碑的建造物の創作が提起されたときは、必ず設計を懸賞募集し、これに有能な建築家を義務的に参加させるべきである。懸賞募集に出品された建築作品については、広範な勤労者の意見を聞くようにすべきである。

 同盟員を建築創作に積極的に立ち上がらせることは、建築家同盟の重要な活動の一つである。建築家同盟は、同盟員のあいだで組織・政治活動を着実におこない、かれらが建築創作の主人としての高い自覚をもって創作活動に力強く立ち上がるようにすべきである。

 同盟員との活動で重要なことは、かれらが同盟の規約を自覚的に守り、同盟から分担された任務を誠実に遂行するようにしむけることである。

 建築家同盟は同盟の初級団体をしっかりかため、正しく運営しなければならない。建築家同盟の初級団体は建築家同盟の基層組織であり、同盟員の創作生活の拠点である。建築家同盟の初級団体をしっかりかため、正しく運営してこそ、同盟員の組織・思想生活を強化し、各時期に示される党の建築創作方針を立派に貫徹することができる。

 建築家同盟は、建築家の技術実務的資質をさらに高めるための技術資格等級の査定を正しく掌握し、適正な合意を与えなければならない。

 建築家同盟は、国際建築家同盟をはじめ外国の建築家同盟との交流を活発にして、我々の主体的な建築思想と理論を広く紹介、宣伝し、外国のすぐれた建築成果をそのつど取り入れるために努力すべきである。

 建築家同盟にたいする党の指導を強化することは、同盟を党にかぎりなく忠実な革命的で戦闘的な組織にするための必須の要求である。建築家同盟にたいする党の指導を強化してこそ、同盟の活動が党の要求どおりに進められ、同盟内に党の唯一思想体系を確立することができる。建築家同盟の活動にたいする党の指導で重要なことは、同盟の幹部陣容をしっかりかためることである。党組織は、建築家同盟の幹部陣容を党と領袖にかぎりなく忠実な人でかため、同盟組織の自立性を高めて、同盟の幹部が課された仕事を能動的に進めるようにすべきである。

 建築家同盟は、建築創作にたいする集団指導を強化して建築創作に新たな革新をもたらし、建築家を党の建築創作方針の貫徹へと力強く立ち上がらせることにより、国の建築発展に大いに寄与しなければならない。

出展:「金正日選集」11巻


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