金正日「建築芸術論」−3 建築と形成

2 建築形成での基本は、調和である


 建築は、さまざまな構成要素と構成単位の結合によってなされる。見栄えがし、魅惑的な美感を呼び起こす建築物は、例外なく、さまざまの構成要素がバランスよく造形芸術的に洗練されて美しい調和をなしている。

 建築形成における調和は、生活の美しさと視覚的な美しさを総括的に解決していくカギである。調和は、建築形成の原則と方法を一つに結合する役割を果たす。

 調和は、多様な構成要素の統一的な解決によって生まれる造形的性格である。調和は、建築の造形的特徴を生かし、思想的内容をリアルに表現させ、人民の美的・情緒的要求を充足させる。

 建築形成での調和は、造形性表現の基礎となる。調和をぬきにした建築形成はありえない。建築形成の過程は、すべての構成要素を形成上の要求に即して適切に組み合わせて芸術的調和を創造していく過程である。

 建築芸術は、常に調和を前提とする。調和がとれなくては、美しい建築は創造されない。そういう意味で建築芸術を調和の芸術というのである。

 建築形成において調和は、統一性と密接な相関関係にある。建築形成において統一性が保たれなければ調和は保たれず、調和がとれなければ統一性は保障されない。建築形成における調和を保つうえで最も重要かつ第一義的な問題となるのは、建築の統一性を保障することである。

 建築形成における統一性は、さまざまな建築要素を一つの統一的な体系と秩序に服従させて収束し、調和させる属性である。統一性の問題は、都市空間の形成においてのみ提起されるのではなく、個別的な対象、細部、装飾、建築物と自然空間の相互関係など建築形成全般にわたって提起される。統一性が保障されない建築は、決して美しい建築とはなりえない。

 建築形成において統一性が重要な意義をもつからといって、統一性の保障にのみ偏ってはならない。建築の統一性のみを強調すれば、建築形成が無味乾燥なものとなって見栄えがしなくなり、生活も快適さを欠くようになる。

 建築形成における統一性は、個々の要素と部分の質的共通性を探しだし、それを全一的な形成体系と秩序に服従させて、調和よく結びつけてこそ実現される。個々の建築構成の要素と部分は、その建築物の性格と使命の表現に服従しなければならないので、それがすべて質的共通性を有してこそ、統一性を保障することができる。板壁式体系で形成された建築物の場合、上端部に浮き彫り装飾を施して古風な味をただよわせた太い円柱や多角形柱を配するならば、全般的な形成体系と秩序に合わなくなり、結局は全般的な調和が破壊されて統一性を保障することができなくなる。

 質的共通性を探し出すことと、全一的な形成体系と秩序に服従させることは、建築的統一性を保障するための先決条件であり、建築創造で守るべき一つの原則である。

 個別的な建築群や街、または都市の形成における統一性は、主導的なものと従属的なものを正しく設定し、その相互関係を円滑に解決してこそ実現される。

 建築形成における主導的な対象としては、政治的、経済的、文化的に大きな意義をもち、性格と使命が異なり、特色づけて形成できるものでなければならない。そのような対象は、人々の視線を集めて深い印象を与え、ほかの対象よりきわだち、建築形成で主導的な役割を果たすことができる。

 主と従の関係の解決においては、建築の構成要素と構成単位の性格と使命に即して形成中心を主たるものをもって選定し、そのほかの構成要素と部分はこれに服従させなければならない。そうしてこそ、建築の構成要素と構成単位の形成中心が思想的内容を正しく表現し、視覚的にも強い印象を与えることができる。

 建築形成において主と従の関係を無視したり、全般的な形成に関心を払わず、一つの対象、自分の受け持った対象だけをきわだたせて表現しようとすれば、芸術的調和を実現することはできない。鶴の首が長いことを強調するために、そのそばに首の短い亀を立たせては漫画めいたものになってしまう。全般的な調和のなかでのみ個々の対象が引き立ち、個性も生かされるのである。絵画的な構図にのみ関心を払うのは、建築創造において形式主義を生む要因となる。建築形成において主と従の関係を正しく解決することが重要な問題となる理由は、まさにここにある。

 建築形成において主と従の関係を正しく解決するには、構成が緻密なものとなり、一貫性がなければならない。緻密な構成は調和の基礎となる。構成が緻密であるかどうかによって、建築形成で中心が生かされるかどうかという問題や、調和が保たれるかどうかという問題が左右される。構成を緻密なものにするためには、すべての構成要素が狂いなく組み合わされなければならない。構成を緻密なものにするこつは、構成要素を適切に組み合わせるところにある。建築形成で決定的な役割を果たすのは形成中心であるため、構成要素を組み合わせる基準は、あくまでも中心主題をよく生かすところにある。

 個別的な対象では、構成要素が建物の性格と使命を表現することに服従し、一つの構成単位ではその中心にすべての構成要素と構成単位が服従し、都市の建築形成では中心主題をきわだたせるのに服従しなければならない。基本形成中心と補助形成中心とが互いに主と従の関係をなし、さまざまな調和手段と手法によって全一的な形成体系と秩序に組み合わさるようにしてこそ、建築形成における調和を保つことができる。

 基本形成の中心を主たるもので構成するときには、その構成単位の建築解決で求められる造形性があらわれるようにし、それに補助形成中心の造形性を無理なく組み合わさなければならない。最近、我々がスポーツ競技館を大々的に建設しながらその外形構成の中心主題としたのは、スポーツマンのたくましい気概を象徴的に表現することであった。ところが、形成試案段階において、スポーツ競技館が記念碑的建造物であるということで華麗さとモニュメンタルを強調しすぎて、建物の性格と使命があいまいに表現されたものもあり、現代性を生かそうとして軽快さを強調しすぎて、スポーツ競技館としての外形を保てなくしたものもある。スポーツ競技館の形成ではあくまでも、スポーツマンのたくましい気概の表現に重点をおき、その他の形成上の要求はそれに服従させなければならない。形成の中心を生かしながら、それにすべての細部要素を服従させるのは、構成を緻密なものにする条件となる。

 構成が粗雑であると建築家の意図を生かすことができず、いくら新しいものであっても人々に強い印象を与えることができず、結局は芸術的価値を失い、いびつな品物のように見捨てられることになる。

 主と従の関係の設定においては、個別的な構成要素の造形的な魅力に惑わされてはならない。個別的な構成要素がいかに魅力的なものであっても、全般的な建築形成に合わなければ蛇足となって価値を失い、建築の統一性を破壊してしまう。

 構成要素の主となるものと従となるものを正しく選定するとともに、主と従の関係に即して構成要素と構成単位を適切に配置しなければならない。個別的な構成要素や構成単位の主となるものと従となるものが、全般的な建築形成に適合して適所に適当な大きさと形で配置されてこそ、統一的な調和をそこなわず、整然とした形成体系と秩序を保つことができる。

 個別的な構成要素を思いどおりに配置するからといって、それなりに突出させたり引き立てたりすると、統一的な調和が破壊されて、建築形成において散漫さと粗雑さを避けることができない。構成要素を整然と配置して主と従の関係を正しく生かしてこそ、そのもの固有の造形的特性をあらわし、全般的な統一的調和を保つことができ、人々に強い印象を与えて美的感興を呼び起こすことができる。

 主と従の関係の要求どおり構成要素と構成単位を配置することは、建築形成において統一と調和を保つための基本的条件の一つである。構成要素と構成単位の配置においては、単に視覚的な側面だけを見てはならず、あくまで生活の論理、建築形成の論理に従わなければならない。そうしてこそ、全般的な建築形成がリアルで生活的なものになる。

 主と従の関係が明確にあらわれない同質の構成要素の単純な配置においても、主となるものと従となるものを正しく結びつけて全般的な構成を洗練させなければならない。同質の構成要素の単純な結合にしても、自然に調和がとれるのではない。建築形態が単純なものであればあるほど、建築家のより洗練された深奥な創作的思索が求められる。特に相異なる構成要素を配置するときには、主と従の関係を明確に解決してこそ、建築物の性格と使命をはつきりとあらわし、印象深く形成することができる。

 主と従の関係を正しく解決することは、建築群と街、都市の建築形成において、特に重要な問題となる。

 建築群と街、都市は、個々の建築物と建築群、街の調和のとれた結合によって形成される。建築群と街、都市の構成要素と構成単位はすべて、ユニークで特色のあるものとして形成されなければならない。だからといって、それらをすべて引き立てようとするならば、建築形成は散漫で粗雑なものとなり、統一性を保つことができなくなる。主と従の関係は各建築形成段階で提起される問題であり、建築的統一と調和を保つための基本的保証となる。

 建築群と街の建築形成において、主と従の関係は相対的な性格をおびる。建築群では主導的な役割を果たしていた建築物が街の形成では補助的で従属的な役割しか果たせなくなる場合もあり、街の建築形成で主導的な役割をしていた建築物が都市の建築形成では従属的な使命を果たすことになる場合もある。

 しかし、都市中心部の建築形成では、主と従の関係が絶対性をおびる。歴史の流れとともに都市の規模がいくら膨大になったとしても、最初に設定した都市の中心部と中心主題は変わってはならない。これは、その社会の性格にかかわる問題であって、社会制度が根本的に変わらないかぎり、代を継いで受け継がれるべき原則である。

 我が国の都市中心部は、自主時代の指導思想である不滅のチュチェ思想を具現しており、人民大衆中心の社会主義制度の優越性を反映している。都市中心部のまんなかには、金日成同志の偉大さと不滅の功績を高くたたえ、代を継いで伝えるべき大記念碑と、モニュメンタルな建築物が建てられてある。我が国の都市は、すべて大記念碑とモニュメンタルな建築物を中心主題として形成されているため、思想的にも造形芸術的にも立派に統一され、美しい調和をなしている。

 都市中心部には、その社会の指導思想と指導理念、階級的性格が集中的に反映される。社会の階級的性格が変わらないかぎり、都市中心部の中心主題は変わるものではなく、また変わってもならない。

 都市の建築形成では、中心主題にすべての構成要素と構成単位を服従させなければならない。これは、都市の全般的な建築形成において統一と調和を保ち、中心主題をより明確に表現できるようにする前提となる。

 建築形成における統一性はまた、均衡性と形成手法の統一によって実現される。

 建築形成において均衡は、建築物や建築空間の一定の造形的な感触であり、主たる建築調和手段となる。建築的調和と統一は均衡を前提とする。均衡のとれない建築物や建築空間は統一性が保障されず、美しくもない。

 平壌市の普通江畔に建設されたアイススケートリンクは、形式が新しいばかりでなく、均衡のとれた建築物である。このリンクは初めから立派に形成されたわけではない。当初、リンクの隣に控え室だけを別棟として建てたので、片腕のない人のように見えて均衡がくずれ、調和も欠いていた。そこで調和の問題を解決し、選手の訓練条件もより十分にととのえるため、一階建のトレーニングジムをリンクに接続して建てるようにした。これは建築形成において均衡がとれなければ統一と調和も保たれないことをよく示している。

 建築形成においては、構成要素と構成単位の連結部を調和よく組み合わせなければならない。建築形成全般において構成要素の連結部の占める量的比重は非常に小さいものだが、全般的な統一性を保つうえではどの構成要素や構成単位よりも強力な手段となる。構成要素の連結部は各構成要素を実際に結びつける機能と、それぞれ異なる構成要素を調和よく収束する役割を果たす。

 それぞれ異なる構成要素が連結部なしに結合されれば、不自然で奇形的なものになる。連結部は、それらの構成単位の形成体系に合うものでなければならず、それとの統一性を保てるように解決しなければならない。連結部は、質的に対照される構成要素間の形成上の相違を緩和して、全般的な調和をつくりだす役割を果たす。

 相異なる構成要素の統一性を保つ手法は、定式化することはできない。建築家は対象の具体的な状況に即して、洗練され円熟した創作技法と豊かな経験にもとづいて、統一性をそれぞれ解決していかなければならない。

 建築スタイルを統一させるべきである。

 建築スタイルは、一つの対象の建築様式や建築形成の本質的特徴をその対象全般にあらわした独特な建築造形的な感触であり、建築のニュアンスである。建築スタイルは、時代性と地域的特性、民族性と階級性をおびる。

 建築的形象の独特な印象は建築物の様式によって表現されるが、それは建築スタイルによってさらに強調される。

 建築スタイルは、建築物の形象的色彩をきわだてるうえで最も大きな作用をする。一つの対象、一つの建築立体空間において建築スタイルを統一しなければ、建築的ニュアンスが違ってくる。これは建築創造において雑な様式を生む原因となる。建築スタイルを統一しなければ、背広に冠といった建築様式が生まれかねない。そうなれば、建築の民族性も階級性もなくなってどっちつかずの建築となり、それがどの時代の創造物であるかもわからなくなる。建築創造において雑な様式は禁物である。

 建築スタイルを統一させることは、建築の思想性・芸術性と調和を保障するための重要な要求となる。

 建築物のスタイルは、情緒的で独特なニュアンスと趣によって生活を充足させ、人々に強い印象を与える。人々が建築物を見て、独特な趣がある、特色があるというのは、建築物のスタイルをさして言うことである。建築ではスタイルが明確であるほど、人間の生活上の要求と志向の本質をさらに生き生きとあらわす。独特なニュアンスと趣のない建築物は好評を得ることができない。建築創造ではスタイルをいかに生かすかによって、その質が左右される。スタイルの特徴によって、建築は静的なものと動的なもの、軽快なものと重厚なもの、壮大なもの、明朗なもの、優雅なものといった造形的な情緒と印象、便利なもの、安全なもの、快適なもの、奥ゆかしいものといった生活的な情緒と、穏やかなもの、冷たいもの、暖かいもの、さわやかなものといった感覚的な情緒を表現する。建築物に表現される多様な心理的・情緒的感触は、建築形成要素である点、線、面、立体と、それぞれの造形手段と手法の造形的特徴を対象の使命と目的に応じて適用するときに生まれる。建築物のスタイルは造形芸術性を豊かにし、多様にする要因である。

 建築創造におけるスタイルは、人々の生活上の要求と志向にかなったものでなければならない。建築物のスタイルは、建築家の主観的な趣味によってとらえられるものではなく、自分の頭の中で考え出すこともできない。建築家の創作上の個性も、生活にもとづいてその特徴を繊細かつ鮮明に生かすことであらわれなければならない。

 建築家が独特なスタイルをとらえるためには、生活のなかに深く入って、人間の自主的で創造的な生活上の要求と志向を深く把握し、そのなかから先進的で革命的で典型的なものを選りすぐることに相応の関心を払わなければならない。建築家は、人間の自主的で創造的な生活上の要求と志向からにじみでる情緒的ニュアンスと趣を正しくとらえ、それで建築形象を全般的に調和させてこそ、スタイルの統一を保障することができる。生活にもとづいたスタイルは、建築家によって鮮明に生き生きと生かされてはじめて強固なものとなる。

 スタイルは、建築物の実用的機能と教育的目的にかなったものでなければならない。建築物のスタイルを生かすのは、奇をてらうためではなく、建築物の思想的内容をリアルに反映し、実用的機能と教育的意義を高めるためである。建築創造において奇をてらうことにのみ偏って思想的・芸術的および実用的合理性を正しく解決しなければ、スタイルも立派に生かすことができなくなる。建築家は、人間の自主的で創造的な生活上の要求と志向を通じて認識される社会生活の本質を正しく反映できる形成体系を探求してこそ、それに即して情緒的ニュアンスと独特な趣がにじみでるようにスタイルを統一させることができる。

 スタイルは、建築物の使命を正しく表現し、発展する時代の要請と人民の好みにも合うものでなければならない。個々の建築物は類型ごとにそれぞれ自己の使命をもっているため、その使命が個々の建築物に正しく表現されなければならない。個々の建築物がもっている使命を離れては、スタイルが独自のものとして定着することはできない。建築創造においてはあくまでも、建築物の類型による形成上の要求に即して独特な情緒的ニュアンスと趣があらわれるようにスタイルの問題を解決しなければならない。

 機能が似通っている建築物の場合にも、それが置かれる位置と、その建築物が果たす社会的役割によってそれぞれ違った独特なニュアンスがあらわれるようにすべきである。

 建築家は、スタイルを正しく生かすことに細心の注意を払うとともに、発展する時代の要請に即して新しく特色のあるスタイルを探求し、自国人民の情緒と好みに合った現代的で民族的な情趣に富むスタイルを探しだして完成させなければならない。

 錯覚の矯正に力を入れるべきである。錯覚現象は主として視覚の特性と光線の屈折によって生じる。錯覚現象の特性を正確に把握し、それに即した設計技法を探しだして適用してこそ、立派な建築形態を創造することができる。

 対照と尺度性をはじめ、一連の調和手法は、錯覚現象の特性にもとづいて発生し、発展してきた。調和手法は、錯覚現象にもとづいて探求されたものである。錯覚現象をいかに利用するかによって、どんな設計技法を用いるかが決まる。したがって、建築形成において錯覚現象は、設計技法を律する重要な前提条件となる。

 建築家は、建築形態の構成で生じる錯覚現象を具体的に研究し、それを対象の性格に即して巧みに利用すべきである。

 建築物は時空的な特性をもっているので、建築形成において調和を上手にはかるためには、時間による建築物の造形的効果を高めることに深い関心を払わなければならない。

 人の移動によって違ったものに見える造形的効果は、時間の流れとともに人の頭に一つのイメージとして収束され、それにもとづいて建築物の質を総合的に評価することになる。遠くから建築物に接近するにつれ、建築物の輪郭線の造形的効果から建築の細部要素の造形的効果、仕上げ建材の質感的効果が生き生きと感じられ、その建築物の規模もしだいに大きく感じられる。それゆえ、近距離、中距離、遠距離の造形的効果を正確に考慮して、多くの人の目によく見える所に主要視点を定め、遠近距離による建築物の造形的効果を高めるようにし、それに即して新しい設計技法を探求すべきである。時間的持続性を利用して重要対象をさらに強調して引き立て、移動過程で造形的感触の変化をもたらす設計技法を探求すべきである。

 地上での視点の移動にともなう時間性は、新しい設計技法を生み、斬新で特色のある建築物を創造できるようにする。視点が高くなるほど、個別的な建築物は都市の構成要素となって点と線、面、立体の調和のとれた配置、自然の起伏と緑地、建築物屈曲の相互関係、道路網の造形的処理、都市中心部のコンストラクションなど都市の総合的な造形的効果があらわれる。したがって、建築物の平面輪郭を選定するときは、生活機能的側面にのみ偏らず、平面輪郭形態の造形的効果と都市の全般的な平面構成体系の造形的効果を高めることにも関心を払わなければならない。

 科学技術が急速に発展し、多様な交通・運輸機材が開発されているこんにちの現実は、人の移動の特性とそれにともなう空間と造形的変化の特性をよく知り、現代的美感に即して造形的効果を高めることを切実に求めている。建築家は、建築形成において時間性による造形的効果をさらに高めるため、新しい設計技法を積極的に探求しなければならない。

 運輸手段が急速に発達した現代にいたって、建築形成における時間性の役割はさらに大きくなっており、視点の範囲を拡大することが求められている。建築形成において建築物の造形的効果を高めるためには、視点の移動を十分に考慮しなければならない。建築家にたいし、建築形成試案の作成段階で現実的条件を正確に考慮して透視図を描くよう要求する意図はまさにここにある。透視図を描くのは、主要視点からの写実的な透視効果を見るのが目的である。建築家は、透視図をただきれいなものとして描こうとばかりせず、実際に存在しうる視点と視覚距離で描く気風を立て、より現実性のある設計を作成すべきである。

出典:金正日選集 11巻


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