金正日「建築芸術論」−2 建築と創作

5 建築の質と経済性を高めなければならない


 建築物の質は、その物質的・実用的および思想的・芸術的価値の総体である。建築物の質は、その内容的構成要素の統一によってなりたち、その使命と目的によって規制され、その価値と形象化水準を総体的に特徴づける。建築物の質は、その時代の社会的・政治的理念と階級的立場、支配的な思想と建築家の創作的資質によって決まり、評価される。

 搾取社会では、建築が搾取階級の利益と要求を充足させ、人民大衆を抑圧し搾取する手段として利用されるため、その質は必然的に反動的な性格をおびる。しかし、我々の社会では、建築が人民大衆の利益を中心にすえて、かれらの自主的で創造的な生活上の要求と志向にそって創造されるため、その質は、革命的な性格をおびる。チュチェ建築の質は、搾取社会で創造された建築の質とは比べようもなく高い。

 チュチェ建築は高い質を求める。チュチェ建築において質を高めるということは、人民大衆の要求に即した建築、すなわち、人民大衆に便利で、こぎれいで、美しく、堅固な建築を創造するということである。

 建築設計の質を高めなければならない。建築設計の質は、建築の質を高める前提である。建築設計は、主体的な建築創作原則と形成方法にもとづいておこなわなければならない。主体的な建築の創作原則と形成方法は、斬新で独創的で人民的な建築を創造できるようにし、その質の向上を保障する。

 建設材料の質を高めなければならない。建築設計の質がいくら高くても、建材の質が高くなければ立派な建築物を創造することはできない。建材は建設の運命を左右する。建材がなくては建設を成功裏におこなうことができず、良質の建材を使ってこそ建築物の質を高めることができる。建材の質は建築物の質を高める重要な手段である。

 施工の質を高めなければならない。施工の質は建築物の質を決めるバロメーターであり、建築物の質は施工の質によって保証される。建築設計の質が高く、良質の建設材料を使うとしても、施工が杜撰であれば建築物の質を高めることはできない。建設者は建築家の創作意図を明確に知って、施工段階でそれを正確に実現し、施工の技術工程と規定を厳守しなければならない。

 建築設計図は党の建築構想を実現するための作戦図であり、完成された設計図は法的文書である。建設速度を高めるからといって設計にあったものを省いてはならず、資材を節約するからといって施工の技術工程と規定に違反してもならない。施工の技術工程と規定は、長年の科学研究と施工の経験にもとづいて検証されたものであるため、厳格に守らなければならない。

 建築家は設計だけでなく施工にまで責任をもつ主人としての立場から、技術専門家、建設者との協力を強化し、党の建築構想を立派に実現しなければならない。

 建築設備の質を高めなければならない。新しい現代的な建築設備を適用することは、現代建築物の質を高めるための重要な要求である。建築設計と建設材料、施工の質がいかにすぐれているとしても、建築設備が立ち後れていては建築物の質を高めることはできない。

 建築家は、名作創作のために鋭意努力すべきである。建築芸術において名作とは、人民の高い生活上の要求と文化的・情操的要求をみたせる時代のモデルとして立派に創造された建築物をいう。いいかえれば、そこに住み、働き、休息する人民の物質的・精神的な生活上の要求を満足させ、喜びと楽しみを覚えさせる建築創造物であってこそ、名作といえる。建築家が苦心を重ね、情熱を傾けて創造した建築物であっても、それを利用する人民に満足を与えることのできない建築物は名作といえない。外観は立派でかなりの好感を与えても、実際の生活と活動に不便な建築物は、人民に好まれない。建築の内容的構成要素のうち、なにか一つでも不備なものがあれば、その建築物は名作とはいえない。

 名作創作においては、建築家自身の高度の創作的情熱と建築的才能も大切であるが、建築部門の幹部が創作された建築設計を正しく評価し、長所と短所を明確に指摘し、設計に反映された新しい芽を生かして名作として完成されるように援助することがさらに重要である。

 建築家は、党と人民にたいする任務と責任を深く自覚し、高度の創作的情熱をもって自己の知恵と才能を余すところなく発揮し、党の主体的な創作原則と形成理論にもとづき、党の建築構想を高い水準で実現することによって、よりすぐれた名作を創作すべきである。

 建築創造において経済的効率を高めることは、建築物の質を高めるための必須の条件である。

 建築物の質は、経済的効率と密接なつながりをもっている。建築物と都市の建設には、莫大な資金と資材、労力を要する。建築創造において経済的効率を高めることは、少ない資金、資材、労力でより多く建設しながらも、建築物の質の向上をもたらす。

 建築創造において経済的効率を高める目的は、社会制度によって根本的に異なる。黄金万能の資本主義社会で建築の経済的効率を高める目的は、より多くの利潤を得て金融業者の腹を肥やすことにあるが、社会主義社会で経済的効率を高める目的は、すべての建築物の質を最高の水準で保障しながらも、資金と資材、労力を最大限に節約し、潜在力と可能性をことごとく引き出して、勤労人民大衆の物質・文化生活をより早く、より立派に向上させることにある。

 建築創造において経済的効率を高めるからといって、建築の質を落としてはならない。

 建築創造において経済的効率を高めるためには、資金と資材、労力を適材適所に合理的に配置して効果的に利用し、浪費をなくさなければならない。資金と資材、労力の浪費をなくすには、建築形成設計の段階から建築物にむだな空間を多くつくったり、不必要な装飾を雑多にほどこすことのないようにすべきである。そういうことをすると、建築物の平方メートル当たりの原価指数は高くなるわりに、かえって建築物の質は低下する。建築創作において不必要な空間をつくる傾向をなくし、建築設計を洗練させて建築物の質を高め、経済的効率も高めなければならない。

 建築家は容積平面計画の段階から、質と経済的効率をともに高める方向で頭を働かすべきである。建築物の容積平面計画は、生活機能的合理性を高い水準で保障し、むだな空間が生じないように集約的に作成するだけでなく、空間の利用率を高める方向で作成しなければならない。

 建築物の規模と建築空間を必要以上に大きくしたり、さほど重要でない部分に高価な建材を使って経済的効率を落とすようなことがあってはならない。建築家と建設者は、建築物の規模を大きくし、高級建材を使わなければ質が上がらないといった古い観念を捨て去り、生活機能に応じて規模を定め、安価な建材でも適材適所に使えば高級建材を使うより丈夫で造形芸術性の高い建築物を創造することができ、建築物の質と経済的効率をともに高めることができるという、正しい観点に立つべきである。

 建設を工業化、現代化しなければならない。建設の工業化、現代化は建築物の質と経済的効率を高める決定的保証であり、人民大衆中心の社会主義制度の本質的優越性から提起される重要な要求である。建設を工業化、現代化してこそ、良質の建築物をより少ない労力でより安く、より多く、より早く建設することができる。

 設計の要求どおり施工する規律を厳守してこそ、建築物の質を高め、資材と労力の浪費をなくすことができる。建築物の質は、資材と労力を多くかけなくては高められないものではない。資材や労力を少なくかけても、施工をじょうずにすれば建築物の質を十分高めることができる。

 経済的効率を高めるためには、不良施工、反復施工をなくさなければならない。そうすれば、資材と労力を節約し、経済的効率を高めながらも建築物の質を高めることができる。

 建設者の技術・技能水準に応じて作業を科学的に手配し、政治活動を先行させてかれらの政治的自覚と創造的情熱を最大限に発揮させるべきである。

 建築物の質を高めるためにはまた、資材と労力の余力を引き出すといって工事に必要な工程を省いたり、資材を勝手に代用することのないようにしなければならない。

 建設の段階で資材と労力の余力を引き出すためには、新しい先進技術を取り入れて、技術を革新しなければならない。

 建築物の質を向上させる問題と経済的効率を高める問題は、別個の問題ではなく相関している。建築物の質は経済的効率によって保証され、経済的効率は質の向上によってのみあらわれる。経済的効率は質を高めるための必須の条件である。

 建築家は、建築創作において質と経済性を高める方途を積極的に探しだし、少ない資材と労力をもって立派な建築物を創造し、チュチェ建築の優越性を余すところなく発揮させるべきである。

金正日選集 11巻

ページのトップ



inserted by FC2 system