金正日「建築芸術論」−2 建築と創作

4 建築創造において、民族的特性と現代性を
正しく結合させるべきである


 新しい社会、新しい時代、新しい生活は、必ずそれにふさわしい新しい建築を要求する。これは建築発展の合法則的過程である。

 新しい時代が求める新しい建築は、民族的特性と現代性を具現した建築である。

 人民大衆が歴史と社会の主人として登場した新しい社会が樹立されたからといって、建築創造分野で旧社会の遺物である民族建築遺産を完全に無視してはならず、反対に、一民族が一つの領土内で暮らす過程で歴史的に形成され強固になった、その生活習慣と生活感情、趣味などが建築にもられているからといって、新しい時代の要求に背を向け、民族建築遺産だけを踏襲してもならない。

 民族固有の生活習慣と生活感情、趣味などが相対的強固性をおびるように、建築の民族的特性も相対的強固性をもつ。

 建築創造において、民族的特性を生かしながら現代性を具現してこそ、人民に好まれ、時代の要請にかなった建築を創造することができる。

 民族的特性と現代性の結合は、新しい時代、新しい生活の要求に即したチュチェ建築の創造において堅持すべき根本原則である。

 民族的特性は、民族建築の特性を条件づけ、その気品と形式を規定する。

 建築は内容と形式の統一によってなされるため、建築の民族的特性もやはり内容と形式の統一によってなされる。建築において内容をぬきにした民族的特性はありえず、民族的特性と無関係の形式はありえない。建築における民族的特性は、主に形式を通じて反映され、民族的形式は民族的特性を表現する。

 建築における民族的特性は、歴史的具体性をおびる。建築の民族的特性は相対的強固性をおびながらも、時代の変化、発展にともなってたえず変化し、新しいものによって補われる。時代が変われば民族の思想・感情、生活方式、美的情緒や趣味など、民族的特性をなすすべての要素が変化、発展し、よりすぐれた特性が新しく形成される。

 建築で民族的特性を立派に生かすためには、民族建築に固有な意義のある特性を保存しながら、新しい時代の要請に即して改造し、発展させなければならない。

 建築の民族的特性は、階級的性格をおびる。搾取社会においても建築の創造者は人民大衆であるため、建築の民族的特性は人民大衆によって形成され、継承、発展する。

 現代性は、現代建築の特性を条件づけ、規定する。

 新しい時代の人間の要求を反映し、かれらの現代的美感、現代文明生活に合わせて創造された建築が、まさに現代性を具現した建築、現代建築である。

 現代性もやはり、建築の内容と形式の統一のなかで形成される性質である。

 建築において現代性を具現する問題は、人民大衆が歴史の自主的な主体として登場した新しい時代の高さで建築の時代的特性と価値を評価し、規定する問題である。

 チュチェ建築の現代性は、新しい時代の人間の要求を全面的に反映し、具現した現代性である。

 建築の現代性は、民族的特性にもとづいている。民族的特性を離れた現代的建築などありえず、またあってはならない。民族的特性を生かした現代的建築であってこそ、真に現代性の具現された建築、現代的な建築といえる。

 チュチェ建築を創造するためには、民族的特性と現代性を正しく結びつけなければならない。これは、チュチェ建築本来の要求であり、その発展の合法則的要求でもある。チュチェ建築は本質上、民族の好みにも合い、人民大衆の現代的美感にも合う建築である。チュチェ建築は、自民族の生活感情と生活習慣、豊かさと多様さを増す人民大衆の生活上の要求と時代の要請を反映する過程を通じてたえず変化、発展する。

 民族建築の遺産を正しく継承することは、民族的特性を生かすうえで極めて重要な意義を有する。社会主義的・共産主義的建築は、全くのゼロから新しく創造されるのでなく、前時代の民族建築遺産の正しい継承によって創造され、発展するのである。すべての民族は、同じ地域、同じ領土、同じ国で長いあいだ暮らしながら自民族の生活習慣、思想・感情、美的情緒と趣味に合った固有な建築を創造し、民族建築のすぐれた伝統を築いた。民族建築の遺産は民族の貴い財宝であり、建築を自分の方式で創造するための強固な資産である。

 民族建築の伝統を正しく継承、発展させなければ、民族建築遺産のうち現在にいたっても自国人民に支持され愛されている民族建築の優秀性を継承、発展させ、民族的特性を生かして主体的な建築を成功裏に創造することはできない。

 民族建築の遺産の正しい継承、発展においては、主体性の原則、階級性の原則と歴史主義的原則を守ることが大切である。

 なによりも、主体性の原則を厳守すべきである。民族建築遺産の継承において主体性の原則は、自主的で創造的な立場で民族建築の遺産を分析、評価し、批判的に継承、発展させることを求める。

 民族建築遺産の継承において主体的立場を堅持してこそ、事大主義と民族虚無主義、復古主義を排し、自国の建築遺産を基本としてそれを正しく分析、評価し、すぐれた進歩的なものを見いだし、自民族と自国人民の志向と利益、現代の要請に即して、継承、発展させることができる。

 歴史主義的原則と階級性の原則を守らなければならない。歴史主義的原則は、民族建築遺産をその時代の社会的・歴史的環境と結びつけて研究し、考察することを求め、階級性の原則は労働者階級の利益を基準にして建築遺産を分析、評価し、それに即して継承、発展させることを求める。歴史主義的原則と階級性の原則は、建築遺産の古くて反動的なものと、進歩的で人民的なものを正確に識別できるようにし、それを新しい時代の要請と労働者階級の要求に即して改造し、発展させることを可能にする。

 民族建築遺産は人民大衆によって創造されたものであり、これには当代の社会制度と人々の政治・経済・文化生活と生活習慣が反映されており、人民の固有な情緒と趣味、才能がこもっている。祖先の創造した建築遺産のなかには、古くて反動的なものもあれば、進歩的で人民的なものもある。民族建築遺産から進歩的で人民的なものと、古くて反動的なものを正確に識別して、古くて反動的なものは捨て去り、進歩的で人民的なものを生かすべきである。民族建築遺産のうち、進歩的で人民的なものであっても、それはあくまでも、その時代の水準で評価したものであるため、こんにちの建築にそのまま適合するものではなく、前時代の社会的・歴史的条件とその創造者の世界観の制約性のため、現代の要求と労働者階級の要求に合うものでもない。民族建築遺産のうち、進歩的で人民的なものを継承する場合にも、それを現代の美感と革命の要求に即して批判的に継承、発展させなければならない。

 民族建築の遺産を継承、発展させるということは、過去のある時期の建築遺産ではなく、長い歴史を経てこんにちにいたるまで保存されてきた建築遺産のうち、社会主義的建築創造のために意義があり、価値のあるものを継承、発展させるということである。民族的な建築伝統は固定不変のものではなく、その持ち味を保持しながら時代の要請に適応して変化、発展し、新しいものの摂取と改造を前提とする。これまで継承されてきた民族的な建築伝統は、人民大衆が自主的で創造的な生活を切り開く過程で生みだした価値ある建築構造構成要素と固有の装飾である。建築の民族的特性はその内容と形式の統一によってなされ、歴史的に形成され、継承、発展する。いかなる時代であれ、人々は社会的要求と自己の生活様式、生活感情に合わせて自国の自然地理的および気候・風土的特性を考慮して、各種の建設材料と発達した技術を取り入れ、より新しい建築物を創造してきた。建築は、自国の過去の民族建築をそのまま踏襲するのでなく、発展する時代の要請と科学技術に即応してたえず改造、変革され、外国の建築創作の成果を取り入れながら創造され、発展する。

 民族建築の伝統は、かつて建築創作において祖先がなし遂げた成果だけでなく、人類がなし遂げた成果を自民族の特性に即して取り入れ、民族建築を創造する過程で蓄積した貴い経験の結晶である。しかし、以前の建築伝統と建築創造経験がいかに優秀で、立派なものであっても、その継承にあたっては、その社会の階級的および歴史的制約性をまず考察しなければならず、人民大衆が歴史の自主的な主体として登場した現時代の高さで正しく分析し、批判的に継承、発展させなければならない。これが民族建築の遺産を継承、発展させる最も正しい方途である。一部の建築家のあいだには、人民的で先進的な要素は、以前搾取階級の使用していた宮殿や寺院のような大建築物にはなく、人民が自分の生活のために直接建設した住宅だけにあるかのように考える偏向と、これとは正反対に考える偏向があらわれている。過去の建築遺産のうち、人間生活の家父長的な条件のもとで生まれたものだけを人民的なものと認めるなら、建築の健全な発展があたかも人民大衆の創造的労働以外のなにものかによって生まれたかのような認識を与え、建築史の発展における人民的なものの役割をあいまいにする結果をまねくことになる。反対に、貧者の使用した住宅は建築的価値がないため継承すべき民族的特性がないとし、支配階級の所有物であった寺院や宮殿、客舎、楼閣のような建築物にのみ民族的なものを求めようとするなら、民族建築遺産の幅が狭くなり、矮小化され、人民的で先進的なものを全面的に見いだすことができなくなる。建築遺産のうち、人民的で先進的なものは、人民大衆の使用した平凡で質素な住宅にもあり、宮殿や寺院といった大建築物にもある。宮殿や寺院などの大建築物はすべて、人民の創造的な労働と知恵と才能によって創造されたものであるため、それには人民の生活的および美的要求と志向、才能、貴重な経験がこもっている。

 我々は祖先の建てた宮殿や寺院、人民が利用しようと建てた質素な住宅からも民族的特性を見いだすべきである。

 民族建築遺産の継承、発展において重要なことはまた、生活機能的合理性と構造的合理性、造形芸術性が有機的に統一した建築様式を掘り起こすことである。建築の民族的特性を掘り起こすには、造形芸術的側面だけに偏らず、生活機能的合理性と構造的合理性を総合的に、統一的に、深く研究し分析すべきである。換言すれば、自国の自然地理的および気候的条件と、人民の生活様式と生活感情にかなった建築物の配置と空間の解決、生活機能の解決、力学的特性を正しく利用した構造の解決、人民の美的要求と好みに合った多様で豊かな調和手法と、こまやかで洗練された建築細部の処理、建築の様相と巧みな建築技巧などを深く掘り起こすべきである。

 民族建築遺産の継承、発展において、二つの偏向を厳に警戒すべきである。その一つは復古主義であり、いま一つは民族虚無主義である。復古主義は建築の階級的性格と社会的性格を無視し、過去のものを一概によいものとし、民族虚無主義は自国のものは一概に悪く、外国のものを無条件によいといってあがめ、賛美する。民族建築遺産の継承、発展において復古主義を許せば、過去の古くて立ち後れたもろもろの建築術が復活し、社会主義的・共産主義的建築創造で労働者階級的線があいまいになり、革命的な建築創造が不可能になる。反対に、民族虚無主義を許せば、外国の建築を崇拝し、自国の実情に合おうと合うまいと関係なく機械的に模倣し、結局は事大主義、教条主義に陥り、建築創造において主体性を失うことになる。もちろん外国の建築にもすぐれたものがあり、取り入れる価値のある技術もある。外国の建築様式がすぐれ、建築技術が進んでいるものであっても、自国の実情に合うかどうかを検討し、それを批判的に取り入れなければならない。

 我が国の建築伝統を継承、発展させるうえで特に重要なことは、解放後、党と領袖の賢明な指導のもとに創造された主体的な建築伝統を継承、発展させることである。金日成同志は、抗日革命闘争の時期、主体的な建築思想を創始し、解放後、革命の各段階でそれを立派に具現し、数知れないすぐれた建築物を完成させて建築発展史上、例のない成果をなし遂げ、チュチェ建築の誇らしい伝統を築きあげた。これは過去、我が国の祖先が建築分野で達成した成果とは比べるべくもない偉大な功績である。我々は、金日成同志によって築かれたチュチェ建築の伝統を立派に継承し、いっそう豊かなものにしなければならない。

 民族建築の様式を立派に生かさなければならない。民族建築の様式を生かしていく過程は、とりもなおさず民族的特性を生かしていく過程である。

 民族建築の様式は、長い歴史的過程を通じて形成され強固になったものであり、それには、その民族固有の心理的・情緒的特徴と生活習慣、生活感情、技術と才能が集中的に反映されている。

 自民族の創造した貴重な建築遺産を新しい時代の要請、変化した人民大衆の生活上の要求に即して改造し発展させてこそ、民族的で現代的な建築を創造することができる。

 民族建築の様式を生かすことは、我が国のように新たに建設をはじめる国の場合、なおさら重要な問題として提起される。我が国は、3年間の祖国解放戦争(朝鮮戦争)の時期、アメリカ帝国主義の野蛮行為によって、解放後、汗水流して建設したものはいうに及ばず、祖先の創造したすべてのものを焼き払われ、破壊され、廃墟のなかから建設をやり直したのである。

 金日成同志は、我が国のすべての都市を朝鮮の都市、三千里錦の山河にふさわしい美しい都市に建設するという雄大な構想を示し、民族建築を極力生かすと同時に、現代的な朝鮮式の建築を合理的に組み合わせて都市を建設するよう指導した。都市の形成で重要な役割を果たす位置に伝統的な朝鮮式の建築を配置するようにし、比例、色彩、尺度など、すべての調和手段を朝鮮人の美的感情と好みに合わせて解決するよう指導した。

 金日成同志の賢明な指導によって、革命の首都、平壌には、首都の建築形成で重点的役割を果たす位置に伝統的な朝鮮式建築の人民文化宮殿、平壌大劇場、玉流館が建設されて大同江と普通江の周辺に民族的香りがただようようになり、それらの建物を頂点とする三角形の幾何学的中心でもあり都市建築形成上の中心に位置する南山丘に、壮大な朝鮮式建築の人民大学習堂が建設され、都市全般に民族的色彩がより鮮明になった。金日成同志はまた、祖先の英知と才能が秘められている民族建築の遺産を大切にし、都市形成に積極的に取り入れるよう指導した。平壌市をはじめ、我が国の都市建設の歴史は極めて浅いにもかかわらず、古い歴史を秘めた都市という感じを強く与える理由はまさにここにある。

 時代の変化によって変わる人民の生活感情と生活習慣は、あくまでも過去のものを土台にしているため、新しい時代の建築芸術も過去のもの、民族建築の遺産を継承してこそ民族的特性を立派に生かすことができる。

 過去のものを土台にするからといって、それをそのまま取り入れてはならない。

 建築創作において民族的特性を生かすからといって現代性を無視すれば、復古主義的誤りを犯し、結局は人民に悪影響を及ぼすことになる。

 民族建築遺産のうち、進歩的なものと退廃的なもの、人民的なものと反動的なものを識別するのは、人間の思想・意識であり、世界観である。民族建築の遺産にたいする正しい立場と態度をもって労働者階級的線を明確にするためには、労働者階級の革命思想で武装しなければならない。

 現代的な建築は新しい時代、新しい生活の要求を反映しなければならないため、建築創造の各分野で革命を起こすことを求める。

 建築創造分野で現代性を具現する過程は、古くて反動的なものをすべて一掃し、新しいものを創造し、発展させていく過程である。

 新しい時代、新しい生活が求める新しい建築様式を探求し、創造すれば、建築を人民大衆の生活感情と生活習慣、新しい社会主義的生活様式に適応させて発展させることができる。

 建築設計革命、家具革命をはじめ、建築創造の各分野で革命を起こすことは、新しい建築様式を探求し、創造する基本的保証となる。

 建築芸術水準をさらに高めるべきである。

 建築芸術水準は、民族建築遺産のよいものと悪いもの、すぐれたものと立ち後れたもの、進歩的なものと陳腐なものを正確に識別できるようにする。自国のものを頭から否定する民族虚無主義や、それをすべてよいものとし、なんの考慮もなく取り入れようとする復古主義的誤りは、建築芸術水準が低いことにも起因する。自国の建築芸術水準を高めなければ、祖先の創造した建築遺産を正しく評価し、立派に継承、発展させることができない。

 人民大衆の自主的で創造的な生活上の要求を固有な民族的形式で反映することは、民族的特性を生かすうえで、特に重要な意義を有する。

 建築創造において民族的特性を生かすということは、自民族に好まれ、その生活感情と情緒に合う形式を創造するということである。

 人間は一定の時代と民族の枠内で暮らす過程で、その時代の特徴と自民族の特性を体現し、それは生活のなかで固着し、民族独自の生活上の要求としてあらわれるようになる。

 勤労人民大衆が自主的に、創造的に生きることを求める我々の時代、チュチェ時代は、古い時代とは本質的に異なる新しい時代である。この新しい時代に生きる人民大衆は、建築芸術にさらに新しい生活上の要求を提起する。人民大衆が自主的に、創造的に生きるのに必要な物質的・精神的要求を充足させるよう建築を解決することは、チュチェ時代が建築に提起する要求のうち最も本質的な要求である。生活は具体性をおびるため、人民の生活上の要求は国ごと、民族ごとに異なる。人民の現代的美感と生活習慣、生活感情もまちまちであり、建築に直接影響を及ぼす社会制度、生産力の発展程度、科学技術の発展水準、自然地理的条件など、どれ一つとして同じものはない。我々の時代に創造される建築は当然、自民族の生活上の要求と種々の条件に合わなければならない。自主的で創造的な生活を志向する人民大衆の生活上の要求にかなった建築は当然、民族的形式で創造されなければならない。

 古くて立ち後れたものをすべて捨て去り、我々の時代、チュチェ時代の要求にかなった新しい建築、革新的な建築を創造しなければならない。

 建築創造において現代性を具現する過程は、人民の生活習慣と生活感情、美的要求を変化、発展する現実のなかで具体的に考察し、それに適した新しく特色のある建築を創造する過程である。チュチェ時代の人民大衆の生活上の要求をみたすためには、新しい形成手法をたえず創造しなければならない。

 もちろん、建築には歴史的に形成されてきたその民族に固有な構成形式がある。それが長い年月を経て磨きあげられたものであっても、理想的なものとして絶対化してはならない。旧時代にととのえられた構成形式は、その時代には完成されたものになりえても、変化した新しい時代になっては完成されたものにはなりえない。

 メーデー・スタジアムや東平壌大劇場の建築様式は、朝鮮式の建築様式を真似たものでもなければ、外国の建築様式を模倣したものでもない。それらの建築様式は、旧時代とは根本的に異なる新しいチュチェ時代の要請と、朝鮮人民の思想的・美学的要求、美しい自然地理的条件を反映している、完全に新しく独創的な建築様式である。そのため、これらの建築物は人民から愛され、時代の誇りとされているのである。

 現代科学技術の成果を建築に大いに取り入れることが大切である。

 建築創造における現代性の具現は、都市の形成から個別対象の建築にいたるまで、建築創造の各分野で一大飛躍、一大変革を求める。建設科学分野での新しい成果と進んだ経験を大々的に取り入れてこそ、この要求を円滑に解決することができる。建築科学分野での成果と経験は、建築創造分野で一大飛躍を起こす基礎となる。

 最新科学技術の成果を取り入れることなしには、建築家がいくら新しく現代的な設計を出しても、それは実現されない。新しい建設材料と構造図式がつくられ、施工技術が高度に発展すれば、建築家は自分の創作技量を思う存分発揮することができ、設計がいくら複雑で多様なものでも難なく実現することができる。建設科学技術の発展は、建築創造分野で一大革新を起こす物質的基礎をもたらす。

 こんにち我が国では、建築創造において民族的特性と現代性を正しく結びつけているため、建設される建築物がすべて、我々の時代の誇りとなっている。

 現代性の具現において、これまで建設された建築物にたいする正しい見解と観点をもつことが極めて重要である。一民族の悠久な歴史は、その民族の誇りとなる。民族建築は、民族の悠久な歴史を直観的に示すうえで大きな意義を有する。建築創作において現代性を具現するからといって、民族の悠久な歴史を示す建築物を現代的に改造してはならない。

 過去の建築物が時代遅れのものであるからといって、それを新しい時代の要請に合わせて改造するなら、時代感がわかず、歴史的深み、民族の悠久な歴史を示すことができず、民族的誇りと自負を高めるうえでも一定の妨げとなる。

 かつて一部の幹部は、建築における現代性の本質的要求を正しく認識しなかったため、平壌大劇場を現代風に改造することを主張した。かつて、朝鮮人民が汗水流して建てた建物をみだりに改築しては、当時の建築の発展相を理解することができず、時代感もわかない。平壌大劇場は1960年代初期の建物であり、当時の我が国の建築の発展相を示す代表的な建物である。このように、歴史的意義がある建築物を改造するのは、民族建築の伝統と革新の本質的要求にも反する。悠久な歴史は民族の誇りとなるだけに、旧時代の建築物は立派に保存しなければならない。旧時代の建築物があるからといって、現代性が具現できないわけではない。かえってそれがあってこそ、現代性がさらにきわだつのである。

 建築家は、民族的特性と現代性を正しく結びつけるという建築創作の原則と本質的内容、基本的要求を明確に知り、建築創造活動を力強く展開して、我が国の建築をより高い境地へ引き上げなければならない。

金正日選集 11巻

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