金正日「建築芸術論」−2 建築と創作

2 建築は、朝鮮式に創造すべきである


 社会的・歴史的産物としての建築は、社会的および階級的性格とともに民族的性格をおびる。超階級的な建築がないように、超民族的な建築もない。建築が民族的性格をおびる以上、各国、各民族は、自国の具体的実情と民族的特性に合った建築を創造する。

 我々は、建築を朝鮮式に創造すべきである。

 建築を朝鮮式に創造するというのは、建築創造において主体性を確立するということである。つまり、我が国の実情と自然地理的条件および気候条件、朝鮮人民の生活感情と習慣、好みに合う建築を創造するということである。

 朝鮮式の建築は、すなわちチュチェ建築である。自国の革命の利益と自国人民の志向と要求にかなった建築を創造することは、チュチェ建築の創作で堅持すべき重要な原則である。

 建築は、革命と建設の要求を反映し、革命と建設の要求は建築創造の基礎となる。革命と建設は、民族国家を単位にしておこなわれるため、国ごとの革命任務や社会発展水準、それに社会的要求も異なるだけでなく、一国内でも革命の段階によって提起される課題が異なる。

 相異なる革命任務と社会発展水準は、建築創造分野に異なった要求を提起する。工業の発達していない国では、自立的民族工業の土台を築く工業建設に力を入れることが重要な要求となり、人民生活の豊かでない国では、軽工業や住宅、公共文化厚生施設の建設に関心を払うことが重要な要求となる。個々の国では、革命と建設の要求にもとづいて、建築創造の総体的方向と段階別の目標が示され、対象が定められ、創作の原則と方途が明らかにされる。建築は自国の革命発展と建設の推進に積極的に奉仕し、またその前提となる。

 建築は、自国の自然地理的条件を反映する。そもそも建築は、外気の影響から人間の生命を守るために創造されてきた。それゆえ、外気の条件は建築の形態と規模、構造を特徴づける重要な要因となる。自然地理的環境は、建築の本質的属性である実用性と造形芸術性を条件づけ、規制する。自然地理的条件が正確に反映されれば、建築の実用性と造形芸術性はさらに保証されるようになる。

 それぞれの国と地域の自然地理的条件である気候条件、地質条件は同一でない。多湿でむし暑い国もあれば、寒くて乾燥した国もあり、山の多い国、平地の多い国もある。さまざまな自然地理的条件にぴったりした唯一の建築などはありえない。雨や雪の多い国や寒くて風の強い国などでは屋根を適切に形成し、壁の構造をそれに合わせて解決しなければ、実用性を保障することができず、山岳の多い地域では建築をそれとよく調和させなければ、造形芸術性を高めることができない。建築物が自国の自然地理的条件に合わせて創造されているかどうかは、建築が自国流であるかどうかを規定する重要な徴表の一つとなる。

 古くから朝鮮は、山紫水明の錦繍江山として広く知られてきた。我々は天下第一江山の朝鮮に、美しい建物を建て、立派な都市を建設して、地上の楽園を築かなければならない。

 建築は人民の生活習慣と生活感情、思想的・美学的要求と趣味を反映する。人間が一定の社会的集団をなして暮らす過程で民族が形成され、各民族はその固有な生活習慣と生活様式をもつようになる。生活習慣と生活様式は、徹底して民族性と階級性をおび、人間の思想・意識の影響を受ける。民族と階級によって生活習慣と生活様式は異なる。生活様式は、時代と社会制度の特徴を明瞭にあらわす。

 建築は実用性を有するがゆえに、その国の民族と階級の生活習慣と生活様式を反映する。労働者階級の建築は、すべての勤労者が国の主人となってともに働き、むつまじく暮らす社会主義制度にもとづいた新しい生活方式を反映し、ブルジョア的建築は他人を食いものにする弱肉強食の法則と、他人はどうなろうと自分だけよい暮らしをすればよいという極端な利己主義にもとづいた搾取社会のブルジョア的生活様式を反映する。

 住宅のオンドル暖房方式は床に座る朝鮮人の習慣によって発生、発展し、ペチカ暖房方式は椅子を使う西洋人の習慣によって発生、発展した。

 建築創造は、自国にしっかり足をすえ、自国人民の力と知恵、技術に依拠しておこない、人民大衆の生活を十分に考慮しなければならない。

 チュチェ建築は、自民族と自国人民の生活習慣、生活感情、生活様式を反映する。自国の革命と建設の要求、自民族と自国人民の生活感情と美感、自国の具体的実情と自然地理的条件に即して創造された建築がチュチェ建築である。

 朝鮮式の建築を創造するためには、なによりも建築創造において民族的形式に社会主義的内容をもらなければならない。形式が民族的で内容が社会主義的なところに、チュチェ建築の重要な特徴がある。

 建築の社会主義的内容は、すなわち建築にたいする勤労人民大衆の要求である。労働者階級の建築は人民大衆のための建築であるため、建築にたいする労働者階級の要求は人民大衆の要求として提起される。社会主義的内容の構成要素はすべて、自国や自民族の特性に合ってこそ真実のものとなる。建築にたいする勤労人民大衆の要求は、民族的特性を基礎とする。社会主義的内容は民族性をおびるため、その実現方式と手段としての形式も民族性をおびる。労働者階級の建築の形式と内容は、ともに民族性をおびる。建築に民族的形式と社会主義的内容をもりこむことは、自分の方式で建築を創造するという労働者階級の建築創造の原則と要求に全的に合致し、それを成功裏に解決する重要な方途となる。建築において民族的形式に社会主義的内容を完璧にもりこめば、自民族と人民大衆に喜ばれる建築を創造し、建築を主体的に発展させることができる。

 建築に社会主義的内容を具現するうえで重要なことは、なによりも建築家が革命的な世界観で武装し、建築創造において人民的な立場を堅持することである。それは、建築の社会主義的内容をなす構成要素がすべて建築家によって選択され、建築にもりこまれるからである。建築家は、主体的な建築思想と理論で武装し、高い科学技術知識と芸術的才能を身につけてこそ、建築に社会主義的内容を立派に具現することができる。いかに客観的な現実生活の要求が革命的で多様であるとしても、建築家の思想的立場が確固たるものでなく、政治的見識と準備程度が高くなければ、建築に社会主義的内容を具現することはできなくなる。

 建築に社会主義的内容を具現するうえで重要なことはまた、建築の内容的構成要素の相互関係を適切に解決することである。建築の内容的構成要素のうちどれ一つも完全に無視してはならず、絶対化してもならない。建築の生活機能的合理性、構造的合理性、思想性・芸術性を建築物の使命に即して生かしていかなければならない。

 建築に社会主義的内容を具現するうえで、建築の内容的構成要素を均等割りにしようとしてもいけない。建築対象の使命によって、記念塔のごとき建造物は思想的内容を基本にして創造すべきである。

 自国人民の生活習慣と生活上の要求に合い、かれらに最大限の便宜がはかれるように建築空間を形成することは、建築に社会主義的内容を具現するための基本的要求である。建築は人間の生活・活動空間を創造し、合理的な生活機能的条件を保障することによって物質的実用性を高め、人民に立派な生活条件をもたらすことを基本的目的とする。

 建築空間を人間の生活と活動に便利にととのえ、空間を合理的に配置し、その相互関係を正確に解決し、衛生的環境を十分に保障することは、建築空間の形成において極めて重要な問題として提起される。

 建築空間の合理的な生活機能の解決は、人々に革命と建設により積極的に寄与することのできる物質的条件を保障することになり、かれらの生活に便利さをもたらすことになる。

 生活機能の問題を合理的に解決するには、人間の生活を具体的に研究し、生活上の諸問題を総合的に考慮すべきである。いいかえれば、建築空間の大きさを生活と活動に便利に定め、家具や設備の大きさも行動の手順や動作にかなうように定め、人々の衛生的側面を考慮して公害防止対策を立て、具体的な社会的条件や建設条件などさまざまな制約条件を考慮し、生活機能空間を処理しなければならない。

 生活機能の問題の正しい解決において重要なことは、建築家が豊かな科学知識と高い技術を身につけることである。人間の動作とその曲線を正確に見積もるには人体についての知識が必要であり、人間の心理的特性を正確に反映するには、心理学の知識が必要である。部屋の大きさを定めるには規模計画論の知識が必要であり、建築空間の衛生的合理性を解決するには、環境工学、生態学、気象学、照明学、音響学、熱工学、換気学など各分野の科学知識を身につけ、それを実現させる技術手段について知らなければならない。建築家は各分野の科学技術知識と科学技術の発展趨勢を知り、各種の技術手段を統一的に利用できる知識と能力をもっていなければならない。

 生活機能が単一で独立的である場合は、空間構成も単純で形態構成も明確であるが、生活機能が複雑でからみ合っているときは、空間構成や形態構成も複雑になる。

 建築家は、自民族の生活上の特性をよく知り、建築空間を便利で実用的なものにすることに深い注意を払うべきである。

 建築空間を人民に便利に構成するうえで重要なことは、人間の健康増進と生活条件に即して衛生的に最上の生活環境をもたらすことである。そのような建築空間をつくるには、建築空間に快適さをもたらさなければならない。建築空間の快適さをもたらすためには、空間内に合理的な温度と湿度、風速を保障し、いつも快い環境で働き生活できるようにすることが大切である。

 快適な衛生的環境をつくるうえで暑気と寒気の防止対策を講じ、それに適した建設材料を適用する方法も重要であるが、有害な自然気候現象から人間を保護する生活空間を創造し、環境を改造することにとどまらず、近代的な建築設備を適用して、最上の生活環境を人工的につくることがより重要である。近代的な建築設備が広範に適用されている状況のもとで、合理的な人工気候環境に適した建築空間の規模の選定と質的向上をめざす新しい建築空間創造法を探究すべきである。

 生活機能的要求を立派に解決することは、建築空間で暮らす人間の生活様式の形成に少なからぬ影響を与える。高尚かつ文化的で革命的な社会主義的生活様式は、それに適した建築空間を求め、建築空間の合理的解決は、社会主義的生活様式の確立に影響を与える。

 建築空間の生活機能問題の解決においてはまた、人間が生活を質素に、きちょうめんで文化的に、現代的に築いていく習慣をつけるように建築空間をととのえることが大切である。

 真に人民に奉仕する建築物を創造するには、生活機能的合理性を保障すると同時に、芸術的に洗練させなければならない。すぐれた建築様式は、生活機能的要求だけでなく、人間の美的要求も充足させる。建築物は日常生活と密着していて人間の精神生活に影響を及ぼすため、建築家は建築様式の創造において生活機能の解決にのみ偏らず、人々の美的要求の充足にも相応の関心を向けるべきである。

 建築物の生活機能は変化、発展する。社会主義社会では、日を追って向上する人民の生活が、建築の生活機能の問題により新しく高い要求を提起する。チュチェ建築の創造においては、向上する人民の生活上の要求を敏感にとらえて充足させることができるように、建築の生活機能の問題を解決しなければならない。既存の建築物は重力構造体と建築形態を変えることができないため、室内の構造を高まる生活機能的要求に合わせて変え、科学技術の発展にもとづいて室内の装備と技術設備をたえず入れ替えて室内の生活環境を現代的にととのえるべきである。

 人間の思想と感情、志向と要求は、常に具体的かつ現実的であるため、建築も現実的かつ具体的であるべきである。住宅にバス・ルームを設けておいてタオルかけやせっけんを置く台を設置しなかったり、居間を温水オンドルにしながら、暖かいところを好む老人と涼しいところを好む若い人の心情を考慮せずに温水管を設置するなら、さ細なことのようであっても、それは人民に大きな不便をきたす。だからといって、多くの人の枝葉末節にわたる要求まですべて解決することはできない。一つの建築空間で多くの人が生活し活動するのであるから、個々の要求をすべて解決することは不可能である。ドアの取っ手を一つとってみても、背丈の高い人は高めに、背丈の低い人は低めに付けることを求める。そういう要求をすべて満足させるには、一つのドアに十の取っ手を付けても足りないであろう。建築は人間の本質的で共通的な要求を反映しなければならない。

 建築は、自国人民、自民族の美的感情と美的趣味にも合うものでなければならない。

 建築芸術は、我々の時代の人民大衆の美的指向と要求に合ってこそ価値あるものとなる。

 人民大衆の美的指向と要求にかなった美を創造するためには、なによりも労働者階級の領袖に忠義をつくそうという我々の時代の人民の崇高な精神世界と、党の指導に従い、社会主義・共産主義の最終的勝利をめざして力強く前進する朝鮮人民の革命的気概、いかなる風が吹き荒れようとも革命の旗を高くかかげてひるむことなく前進する必勝の信念と不撓不屈の革命精神を反映しなければならない。

 社会主義的建築の美は、党と領袖、革命にたいする高い忠実性を第一の要求として提起している美である。社会主義的建築の美は、もっとも価値あり輝かしいものとなる。人民大衆は、党と領袖、革命にたいする忠実性を立派に反映している建築を最も美しく立派な建築とみなしている。

 人民大衆の美的指向と要求にかなった美を創造するためには、新しく独創的で特色のある建築様式を探求し、つくりだして、建築の造形芸術性を革新しなければならない。新しく独創的で特色のある建築形態を創造することは、陳腐で立ち後れたものを排し、常に新しく先進的なものを好む人民大衆の美的指向の反映であり、新しい時代の人間の現代的美感とますます豊かになる生活上の要求の反映である。

 自民族の美的感情に合った新しく特色のある建築を創造するためには、自然界の多様な形態と色彩、自然の造形的諸現象の美的性質を正確に認識し、それを建築に創造的に適用しなければならない。自然界の形態と自然の造形的諸形象は、人間に有益な存在に、人間の生活上の要求と美的指向にかなった建築形態の創造に必要な豊かな素材の源となる。自然界の形態と造形的諸形象の美的性質が人間の美的理想とかかわり、かれらに知覚されるとき、美的要求に合うものと認められる。建築家は自然界の形態と造形的形象を、自己の着想と構想の熟成に正しく利用しなければならない。

 人工的な形態も新しい建築形態の創造に積極的に活用しなければならない。人工的な形態は、客観的に存在しながら、人々に一定の美的・情緒的影響を及ぼす。人工的な形態は、人間の創造的労働によって創造されたものであり、それには人間の主観的意図と美的要求が反映されている。建築形態の構成において自然界の形態と人工的な形態を利用するからといって、生活機能と構造の合理性を考慮せず、そのとおり模倣してはならない。自然界の形態をそのとおり模倣すれば、生活機能の不合理性と建築形態の奇形性をもたらし、「自然主義的建築」と「有機体建築」に陥る。建築家は、チュチェ建築の創作原則と形成法にしっかり依拠し、人民の美的指向と現代的美感に合う、新しく独創的で特色のある建築を創造すべきである。

 建築物は便利であるだけでなく、堅固でなければならない。堅固性は建築物の寿命を保証する実際的条件であり、人間が安全な条件で生活し活動できる物質的保証をもたらす。建築物の堅固性は、構造の合理的な解決によってもたらされる。構造体は建築空間の形態を規定し、建築空間は構造体によって存在する。構造体なくしては建築空間が存在せず、建築形態も構成されない。構造体によって建築空間の形態が構成され、長いあいだ安全に維持される。構造体は建築物の骨格を構成し、構造の合理性はその骨格の寿命を保証する。

 村落や都市の構造体は骨格の役割を果たし、村落と都市全般の様相と風格を特徴づけるだけでなく、その寿命を保証する。村落と都市の構造体は地域の分割と中心部の形成、街路網の造成と建築物の配置、公園、遊園地の配置、園林の造成を包括する。

 建築物の構造体は、生活機能の合理性と密接なつながりがあり、相互作用しながら発展する。建築物の構造体は建設材料によって多様に解決され、たえず発展する新しい建設材料の適用によってより新しく発展する。はじめは木材、石材、土、石灰のような天然材を適用して建築物の構造体が解決されたが、鉄材、セメント、コンクリート、板ガラスなどの開発にともない、建築物の構造構成と建築形態は多様なものになった。こんにちでは立体トラス構造、シェル構造、線構造などの新しい構造体が開発され、生活機能的要求に必要な大空間も柱なしに自由に形成できるようになった。これは、これまでの図式化された建築形態から脱し、多様な建築形態が創造できる科学技術的な可能性がもたらされたことを意味する。

 建築物の構造形態は、構造力学的要求のみならず、人間の美学的要求を充足できるように構成されなければならない。そうしなければ構造主義的な傾向に陥ることになる。構造主義の反動的本質は、建築物の構造が立派に解決されれば、自然に美しくなるとして、建築の思想性・芸術性を除去しようとするところにある。

 建築物の外形構成で重要なのは、構成体系と構造体系を明確に生かすことである。そうしなければ現代性を保障することができないばかりか、構造表現のリアリティーと論理性を失い、膨大な資材と労働力を浪費する結果をまねく。建築家が建築形態を多様化するからといって、構造の構成体系に全く合わない外殻を用いることを厳に警戒しなければならない。

 建築物の構造解決で経済的効率を高めることが重要である。建設費用総額のうち建築物の構造費は多くの比率を占めるので、構造の安全性を保障するからといって必要以上の構造上の予備をつくるなどという資材浪費を未然に防ぐことに留意すべきである。

 建築家は堅固で安全で経済的であり、しかも建設速度を速められる構造体の研究に大きな力を注ぐべきである。これと同時に、現代的な構造の組み立てが可能な進んだ施工法を探しだし、丈夫で軽く、形態を思いどおりに形成できる材料や耐火・防腐に有利な新しい構造材料をより多く開発すべきである。

 朝鮮式建築を創造するキーポイントは、我が国のものに精通することである。

 我が国のものに精通することなしには、民族的プライドと革命的自負をもって建築創造で革命的熱意と創造的積極性を十分に発揮することも、建築創造におけるすべての問題を国の実情に即して解決し、人民の要求にかなった建築を創造することもできない。我が国のものに精通するうえで基本となるのは、あくまでも我が党の政策である。我が党の政策は建築創造の基準であり、尺度である。我が党の政策には、社会主義・共産主義建設の総路線から社会主義経済建設の基本路線、工業政策、基本建設政策、農業政策にいたるまですべてが包括されている。我が党の政策には、革命と建設の要求と朝鮮人民の志向、我が国の具体的現実が集中的に反映されている。建築は、革命と建設に寄与することを基本使命としているため、党政策に依拠してこそ建築創造の方向を正しく定め、創作の原則と方途を正確に立てることができる。したがって、建築家は党の政策に精通するために努力すべきである。党の政策に精通することは、建築創造を成功へと導く力の源である。党の政策に精通してこそ、建築創造の過程でいかに困難で複雑な問題が提起されても、革命と建設の要求に即して科学的に解決する正しい方途を見いだし、党の意図どおり能動的に処理することができる。党の政策に精通すれば、建築創造をいかなる偏向も犯すことなく進めることができるが、党政策にうとければ正否を見きわめることができず、点一つ、線一つ思いどおり描くことができない。党の政策にうとい建築家は目の見えない「建築家」である。そういう建築家は、事大主義、教条主義、復古主義に走るようになる。

 党の政策に精通することは、革命と建設の要求にそった建築を創造するためにも、党の政策を擁護するためにも必要である。

 戦争後、レンガ一枚まともなものがなかった困難な時期、建設部門の責任ある地位に潜入していた反党・反革命分派分子は、朝鮮の具体的な現実と人民の要求、民族的特性を無視して、我が国の実情に合わない外国の設計基準と規定を教条主義的に取り入れ、建築創造にはかり知れない弊害を及ぼした。当時、建築家たちが党政策に精通していたなら、反党・反革命分派分子の策動をそのつど粉砕し、莫大な資材と資金、労働力を浪費するという重大な結果をまねくことはなかったであろう。

 党政策に精通し、その要求を建築に反映するために努力するのは、建築家の基本的な創作姿勢である。このような創作姿勢をもった建築家は、いかに難しい対象をまかされても党の要求どおり創作する。建築家は、その部門の党政策を深く研究し、それにもとづいて建築創造にたずさわる気風を確立すべきである。

 すべての建築家は、不滅のチュチェ思想とそれを具現した我が党の路線と政策で武装し、金日成同志と我が党の主体的建築思想と理論を全面的に、深く学習してそれを血とし肉とし、建築創造の唯一の指針としなければならない。

 建築家が自国の歴史と地理、経済と文化、自国人民の生活習慣に精通するのは、建築を自国の方式で創造するための必須の要求である。自国の歴史と地理、経済と文化は民族的自負とプライドを生む基礎であり、民族的自負とプライドは建築を自国の方式で開花させる下地である。自分の国、自国のものがいちばんであるということを胸の底に刻みつけた建築家は、他人のものに好奇の目を向けたり真似ようとはせず、もっぱら自国人民に喜ばれる建築創造のためにたゆまず努力する。

 建築は、自国のものを基礎にして創造されなければならない。自国に建てられなかった建築物を自国のものとはいえず、自力で自国に建てた建築物を外国のものとはいえない。建築はあくまでも、自国に自国人民の力と自国の経済力によって創造されなければならない。自国の地は建築物が根を下ろす基礎であり、自国人民の力と経済力は、建築物を建てる精神的・物質的手段である。自国の地理と経済発展の程度を把握してこそ、国土計画、都市計画、農村建設計画を科学的に、現実的に作成することができ、産業地区をバランスよく配置し、建築創造の方向と対象を正確に定めることもできる。

 自国の歴史や文化にも精通しなければならない。朝鮮人民は古くから、勇敢で聡明で英知に富んでいた。朝鮮人民は、5千年の長い歳月、侵略者との不屈の戦いを展開して祖国を守りとおし、熱烈な祖国愛と勇敢性、不屈の気概を全世界に誇示した。また、古代から燦然たる民族文化を創造し、科学と技術を発展させた。我が国の祖先は7世紀前半期に既に、世界に広く知れた天文台である瞻星台(チョムソンデ)を建てて気象学や天文学を発展させ、世界初の金属活字をつくって発展させた。建築術、冶金術、製陶技術は、三国時代から世界に名声を博していた。こんにち、我が国では党の賢明な指導のもとに、文学と芸術、スポーツ、建築をはじめ、文化の各分野が急速な発展を遂げて燦然たる開花期を迎えている。我が国の芸術は「世界最高峰の芸術」として名声を博し、我が国は「建築の国」「創造の国」として名をとどろかせている。

 我が国の建築家は、朝鮮民族第一主義の精神と自力更生の革命精神を強く発揮し、全社会のチュチェ思想化偉業に積極的に寄与する朝鮮式の建築を立派に創造し、我々の時代をチュチェ建築の全盛期として人類史に記録し、人類建築芸術の宝庫を豊かにすることに貢献しなければならない。

金正日選集 11巻

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