「舞踊芸術論」−4 舞踊表記
 
4 舞踊表記法をさらに完成し、広く利用すべきである


 新しくつくられた舞踊表記法は、その科学性と大衆性ゆえに舞踊芸術の発展に広く利用できる。しかし、この舞踊表記法が、科学性と大衆性において完全無欠なものだとは言えない。この舞踊表記法は、従来の舞踊表記法の欠点を補い、科学性と大衆性を保障してはいるが、それは絶対的なものではない。まだ、表記符号とその結合方式を、科学的、理論的に体系化し、さらに大衆化し、舞踊譜を作成するうえで解決すべき問題がないとは言えない。

 舞踊表記法の科学性と大衆性は、それを舞踊芸術の発展をはかる実際の活動に広く利用してこそ検証される。いくら立派な科学的発明であっても、実用性に富んでいれば導入されるが、それに欠けていれば導入されない。実用性に欠けて導入されないということは、科学性と大衆性が保障されていないことを意味する。

 新しい舞踊表記法は、まだ舞踊芸術の発展をはかる実際の活動に広く利用されていない。せいぜい既存の舞踊作品を本にして出版するのに利用されるくらいで、舞踊家のあいだでの作品の創作や形象化、普及には、広く利用されていないのが現状である。新しい舞踊表記法が舞踊家に広く利用されないのは、科学性と大衆性を保障するうえで解決すべき問題があることを示している。新しい科学的発明は、一朝一夕に完成されるのではなく、長いあいだ実際の活動に利用しながら、欠点を探し出して是正し、発展させる過程で完成される。新しい舞踊表記法も、舞踊芸術の発展をはかる実際の活動に広く利用しながら欠点を探し出して是正し、さらに完成しなければならない。

 新しい舞踊表記法は、踊りの動作の構成要素とその結合方式をより深く解明し、表記方法をさらに簡便にして、科学性と大衆性を高い水準で保障しなければならない。特に、個性的で特色のある動作の表記を簡略化して、舞踊作品の創作と形象化に利用するのに便利なようにすべきである。

 新しい舞踊表記法を利用するのに便利なようにさらに完成させるには、舞踊表記法を研究する専門家と舞踊芸術部門関係者の責任感と役割を高める必要がある。

 舞踊表記法をさらに完成させる作業の主人は、あくまでも舞踊表記法を研究する専門家である。舞踊表記法の研究者は、主人としての立場と態度を堅持して、研究活動を深め舞踊芸術の発展をはかる実際の活動に利用するのに便利なように新しい舞踊表記法をさらに完成させるべきである。舞踊表記法の研究者と舞踊芸術部門関係者は、この舞踊表記法を完成されたものとみなして、その宣伝、普及にとどまることなく、原理的に掘りさげて欠点を探し出し、楽譜のように利用に便利なように発展させなければならない。舞踊表記法の研究者は、純然たる学術的研究に没頭するのでなく、舞踊芸術家や隣接部門の科学者との緊密な連係を保ち、舞踊作品を創作し普及する現実のなかに入って探究を深めるべきである。

 新しい舞踊表記法をさらに完成させるには、大衆の集団的知恵を引き出さなければならない。

 大衆の集団的知恵を引き出すのは、科学研究活動において、わが党が一貫して堅持している方針である。舞踊表記法の研究も一つの科学研究活動である以上、大衆の集団的知恵を十分に引き出さなければならない。大衆の集団的知恵を発揮させれば、舞踊表記法をさらに完成させるのに必要な立派な意見が多く出されるはずである。

 わが国には、舞踊芸術家が少なくない。中央の芸術団体には、いずれも舞踊創作家と舞踊手がおり、地方の各芸術団体にも少なからぬ舞踊手がいる。舞踊表記法を先に実践に広く利用するのは、ほかならぬ舞踊芸術家である。かれらは、舞踊表記法を実際に利用しなければならないので、それを利用に便利なように完成させることに誰よりも関心をもっている。舞踊芸術家の知恵を発揮させて、舞踊表記法を完成させるための立派な意見が多く出されるようにすべきである。

 舞踊表記法をさらに完成させるには、舞踊芸術サークル員の知恵も発揮させる必要がある。わが国では、大衆芸術を発展させる党の方針に従って、工場や企業所、協同農場などに芸術サークルが組織され、大衆芸術活動を広くくりひろげている。それらの芸術サークル員のなかには、舞踊に才能のある人が少なくない。

 かれらは、自分たちの思想・感情と生活を反映した舞踊作品を多数創作して広く公演している。舞踊に才能のある芸術サークル員の知恵を発揮させても、舞踊表記法の完成に必要な多くの意見が出されるはずである。

 新しい舞踊表記法をさらに完成させるとともに、それを広く利用すべきである。舞踊表記法をつくる目的は、それを利用して舞踊芸術を発展させることにある。いくら立派な表記法をつくったとしても、利用しなければなんの役にも立たない。舞踊表記法を広く利用すれば、その過程で欠点を探し出し、さらに完成させる作業もより円滑に運ばれる。

 舞踊表記法は、舞踊芸術家が大いに利用すべきである。舞踊表記法は、舞踊作品を創作し普及する科学的な手段である。舞踊芸術家は、舞踊表記法を利用して、舞踊作品の創作と形象化、普及を科学的におこなうべきである。

 振り付け師は、舞踊表記法を利用して舞踊作品を創作すべきである。

 そうすれば、創作活動を現在のような手工業的な方法ではなく、科学的な方法で進めることができる。振り付け師が創作した舞踊作品を表記法に従って舞踊譜に記録すれば、舞踊指導員と舞踊手の形象化作業にも舞踊譜を利用させることができる。振り付け師は、創作された舞踊作品を舞踊指導員や舞踊手に伝授するのでなく、舞踊譜に記録すべきである。

 舞踊指導員と舞踊手は、舞踊作品の形象化に舞踊譜を利用すべきである。舞踊指導員と舞踊手は、舞踊譜によって作品の内容と形象上の要求を把握し、形象化の作業を進めるべきである。そうすれば、舞踊指導員と舞踊手の形象化作業はいっそう創造的なものになる。

 芸術サークル員も舞踊表記法を大いに利用すべきである。そうすれば、舞踊作品の形象化にも好都合である。

 舞踊芸術家と芸術サークル員のあいだに舞踊表記法を広く普及すべきである。そうしてこそ、かれらが、表記法を習得し利用することができる。

 舞踊表記法を舞踊芸術家と芸術サークル員に広く普及する手配を綿密におこなうべきである。かれらが舞踊表記法を早く習得して利用できるように、普及活動を計画的に進める必要がある。舞踊芸術部門の活動家は、表記法の教科書や参考書などもつくり、さまざまな形式と方法で芸術家と芸術サークル員に舞踊表記法を普及すべきである。舞踊芸術家と芸術サークル員は、自習によっても舞踊表記法を学ぶべきである。今後、舞踊表記法が楽譜のように完成されれば、学校で育ちゆく新しい世代に楽譜と同じように舞踊表記法を教えることができる。学校で舞踊表記法を教えるようになれば、勤労者の文化・知識水準を高め、舞踊芸術を大衆的にいっそう力強く発展させることができる。

 舞踊芸術部門では、舞踊表記法を利用して既存の舞踊作品を本にして出版することにも力を入れるべきである。舞踊作品を本にして出版すれば、芸術家と芸術サークル員が習得するのにも、それを保存するのにも好都合である。

 舞踊芸術部門では、これまでの成果を踏まえて、発展する現実の要求に即して舞踊芸術をさらに発展させなければならない。

 舞踊芸術部門では、舞踊芸術を理論的に体系化することに力を注ぐべきである。舞踊芸術を理論的に体系化するのは、それを科学的な土台のうえで発展させる重要な裏付けである。舞踊芸術を理論的に体系化してこそ、舞踊芸術部門の活動家が、舞踊芸術にかんする科学的な知識を習得し、それにもとづいて舞踊芸術の創作活動を力強く進めることができる。

 舞踊芸術を理論的に体系化するには、基礎的な概念とカテゴリーを科学的に規定する必要がある。基礎的な概念とカテゴリーを科学的に規定するのは、舞踊芸術を理論的に体系化するための先決条件である。基礎的な概念とカテゴリーを正確に規定しなくては、舞踊芸術を理論的に体系化し、科学的に発展させることができない。舞踊芸術には、科学的に解明し規定すべき基礎的な概念とカテゴリーが少なくない。舞踊芸術部門では、踊りの動作をはじめ、舞踊言語の要素とその形象原理をさらに科学的に解明し、該当する概念とカテゴリーを正確に規定すべきである。そうして、舞踊芸術をより科学的な理論にもとづいて発展させなければならない。

 すぐれた舞踊芸術作品をより多く創作すべきである。

 すぐれた舞踊芸術作品を創作するのは、こんにち舞踊芸術部門に提起されている重要な課題である。すぐれた舞踊芸術作品を多く創作してこそ、舞踊芸術を発展させ、人民の文化・情操生活に役立てることができる。

 舞踊芸術部門の創作家と芸術家は、創作的情熱を燃やし、党と領袖のまわりにかたく団結してチュチェの革命偉業を完成するために奮闘している朝鮮人民の気高い思想・感情と、誇りある幸せな生活を芸術的リズムによって立派に形象化した多様な形式の舞踊芸術作品をより多く創作すべきである。そうして舞踊芸術が、社会主義的芸術の開花をもたらし、人民の文化・情操生活をいっそう豊かなものにするのに、大いに寄与できるようにしなければならない。





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