「舞踊芸術論」−3 舞踊形象
 
3 舞踊手はアンサンブルを保たなければならない


 舞踊形象では、アンサンブルを保つことがきわめて重要である。

 舞踊のアンサンブルは、舞踊手の踊りの動作と構図の統一的な動きと組み方によってもたらされる。舞踊は、アンサンブルを保ち、芸術的形象が全一的に調和してこそ美しく見え、観客に感動を与えることができる。舞踊手の動作がまずかったり、動きの統一性が保たれなければ、視覚的な調和が崩れて見苦しくなり、思想性・芸術性も保つことができなくなる。群舞においてアンサンブルは、生命と言える。

 アンサンブルを保つうえで重要なのは、踊りの動作を一致させることである。舞踊形象では、踊りの動作が基本なので、それが一致しなくては、アンサンブルを保つことはできない。舞踊形象で踊りの動作を一致させるのは、アンサンブルを保つ重要な前提条件である。舞踊のアンサンブルは、舞踊手の動作がすべて一致するときに保たれる。

 舞踊手は、踊りのときに回転の動作を一致させなければならない。

 踊りの動作において回転の動作は、一つのテクニックである。回転の動作は、概して踊りの雰囲気を盛り上げる場面で多く用いられる。

 そのような場面で回転の動作を一致させれば、踊りの雰囲気を盛り上げ、他の動作をするのにも好ましい影響を与えることができる。

 回転の動作を一致させることができないと、他の動作をいくらうまくしても観客の印象に残らない。舞踊手が、回転の動作をするときには息を合わせ、中心を正確につかんで始めとテンポ、体の方向を一致させなければならない。複数の舞踊手が、回転の動作を一致させるというのは容易なことではない。その場で回るような回転の動作は、速度が速いので、回転の速度を一致させるのは容易でない。しかし、舞踊手は、訓練を重ねてそれに熟達し、おどるときには回転の動作を一致させなければならない。

 舞踊手は、踊りの構図を正しくとるべきである。踊りの構図は、踊りを演ずるときにアンサンブルを保つうえで重要な役割を果たす。

 踊りのときの構図は、生活の内容を造形的な形象で展開して見せる。

 踊りの構図は、振り付け師が創作の段階で人物の配置と隊形を視覚的な調和をなすようにうまく組むとともに、舞踊手が舞台でそれを正確に描きだしてこそ成り立つのである。踊りの構図は、舞踊手によってつくられるので、振り付け師が構図づくりをうまくしたとしても、舞踊手がおどるときにそれを正確に描きだせなければ功を奏しない。舞踊手は踊るとき、振り付け師が組んだ踊りの構図を正確に描きだしてこそ、アンサンブルを保ち、美しい造形的な形象をくりひろげることができる。舞踊手は、踊るときに踊りの隊形を正確に組み、間隔と列をよくととのえながら動作を一致させて、構図上のアンサンブルを保たなければならない。

 舞踊手相互の間隔と列をととのえるのは、アンサンブルを保つうえで、もっとも初歩的なことでありながらも、重要な問題である。

 舞踊手が相互間の間隔と列をととのえなければ、踊りの動作を一致させることはできず、舞台にととのったリズミカルな形象をくりひろげることもできない。舞踊手は終始、所定の間隔と列を保たなくてはならない。

 舞踊手がアンサンブルを保つためには、踊りの動作を伴奏に合わせなければならない。踊りは、音楽にのって展開されるので、おどるときのアンサンブルも音楽に合わせて保たれる。舞踊形象において、律動と音楽が合わなければ、アンサンブルは保たれない。

 舞踊手は、踊りの動作を音楽の拍子に合わせ、踊りの律動と伴奏を密着させるべきである。舞踊手が一つの拍子に従い息を合わせておどるなら、アンサンブルを保つことができる。

 舞踊手の舞踊形象を成功させるためには、舞踊指導員が訓練と演技指導に力を入れる必要がある。舞踊指導員は、個々の舞踊手の技量向上から舞踊形象のアンサンブルを保つ問題にいたるまで、舞踊形象創造の全過程を受け持って指導する。そのため、舞踊手が作品をどう形象化するかということは、舞踊指導員の役割に大きくかかっている。舞踊指導員は、任務の重要性と責任感を深く自覚し、舞踊手の訓練と作品形象の指導に力を入れるべきである。

 舞踊指導員は、形象指導案を具体的に立て、それにもとづいて舞踊手の訓練と演技指導をすべきである。舞踊指導員は、作品の内容と振り付け師の形象上の意図、舞踊手の準備程度と特性を十分に把握したうえで具体的な形象指導案を立て、訓練と演技指導を着実におこなうべきである。

 舞踊作品の形象は、作品を把握したうえで、踊りの動作に習熟する訓練からはじまる。舞踊指導員は、訓練の体系と方法を確立し、それにもとづいて舞踊手の踊りの動作の習熟と演技水準の向上をはかる訓練を十分に指導すべきである。

 舞踊指導員は、舞踊手の訓練を段階別、部分別に、科学的に指導すべきである。一回の訓練の量が多すぎると、舞踊手がそれを消化することができない。舞踊指導員は、舞踊手が踊りの動作を消化できるように、段階別、部分別の訓練を綿密に組む必要がある。

 そうして、舞踊手が、踊りの動作をせん滅戦の方法で一つずつ完成していくようにすべきである。舞踊指導員は、舞踊手が腕や脚の細やかな動作まで一つずつ完成していくように、訓練を細かく指導すべきである。

 舞踊の訓練は、形象化の作業が終わって公演に入ってからもつづけなければならない。舞踊作品の創作は作品を舞台に乗せることによって完了するが、舞踊手の舞踊形象は、公演舞台に立つたびにつづけられる。舞踊指導員は、作品を形象化して舞台にのせることにとどまらず、舞踊形象のレベルを高める訓練をつづけるべきである。そうしてこそ、舞台公演におけるアンバランスをなくし、つねに思想性・芸術性を十分に保つことができる。

 舞踊指導員は、舞踊手の訓練を伴奏に合わせて指導すべきである。

 そうしてこそ、指導が科学的なものになり、舞踊手が伴奏に習熟し、音楽に合わせてより上手な踊りを演じることができる。舞踊指導員が作品を形象化するための訓練を指導するときには、管弦楽の伴奏に合わせてすべきである。

 舞踊指導員は、舞踊手の個別指導に力を入れるべきである。

 舞踊手にたいする個別指導は、舞踊指導員の重要な任務の一つである。舞踊手の個別指導に力を注いでこそ、かれらの芸術的技量を高め、レベルの高い独舞家を育てあげることができる。舞踊手の技量を高め、レベルの高い独舞家を多数養成すれば、舞踊作品を高い思想的・芸術的レベルで立派に形象化することができる。

 すぐれた舞踊形象は、それに参加する舞踊手の高い芸術的技量によってもたらされる。舞踊手の基礎がしっかりしており、技量が高ければ、作品に示された多様な踊りのリズムとテクニックを立派にこなし、アンサンブルも保つことができる。

 舞踊指導員が個別指導に力を入れて、舞踊手の芸術的技量を高め、独舞家を多数養成するのは、多様な舞踊形象を創造する重要な条件となる。舞踊作品の形象においては、独舞を組み合わせたり、技量の高い舞踊手を軸にして舞踊形象の調和を多様にするのが望ましい。集団的に形象化する踊りに独舞を組み合わせたり、技量の高い舞踊手を軸にすれば、踊りの進行に多様な変化と起伏をもたせ、幅と深みのある形象を創造することができる。集団的に形象化する踊りに技量の高い舞踊手を軸とし、それを中心にすべての舞踊手の律動を一致させるなら、形象の統一的な調和をより十分に保障することができる。

 舞踊の形象化では、技量の高い舞踊手や独舞家が重要な役割を果たすので、舞踊指導員は、技量の向上をはかる個別指導に力を注ぐべきである。

 舞踊指導員が舞踊手の訓練と演技の指導を正しくおこなうためには、政治的および芸術的資質を高めなければならない。

 舞踊指導員は、舞踊手との活動を正しくできる政治的資質をそなえるべきである。

 舞踊指導員が舞踊手を訓練してかれらの技量を高め、すぐれた舞踊作品をつくりだすのは、単なる技術実務的な活動ではない。

 舞踊手を育て、アンサンブルをなすすぐれた舞踊作品をつくりだす作業は、舞踊手との活動を正しくおこなうことからはじめるべきである。舞踊指導員は、舞踊手のあいだで政治活動を活発に展開して、かれらを党と領袖に忠誠をつくすように教育するとともに、舞踊作品の創作活動でかれらの思想・意志の統一をはからなければならない。舞踊創作スタッフの思想・意志の統一は、律動形象のアンサンブルを保つうえで重要な作用をする。舞踊手を一つの思想、意志で団結させる活動は、舞踊指導員の高い政治的資質を求める。舞踊指導員は、金日成同志の教示とわが党の政策で武装し、革命的な活動方法と人民的な活動作風を身につけ、舞踊手との活動、対人活動を正しくおこなわなければならない。

 舞踊指導員は、芸術的資質も高めなければならない。

 舞踊指導員の芸術的資質を高めなくては、舞踊手の技量を高めることはできず、舞踊創作活動を正しく指導することもできない。

 舞踊指導員が独舞家の技量を身につけることなしには、決して独舞家を育てることができず、豊富な舞台創造の経験なくしては、舞台形象の創造を正しく指導することはできない。舞踊指導員は、舞踊芸術にかんする理論学習を強化し、基礎動作の訓練を根気よくおこなうべきである。そして、みずからを政治的、思想的に、技術、実務的にしっかり準備しなければならない。





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