金 正 日

人民軍の党組織と政治機関の役割を高めるために
朝鮮労働党中央委員会組織指導部および朝鮮人民軍総政治局の活動家との談話 
−1969年1月19日− 


 最近開かれた人民軍党委員会総会は、人民軍内に党の唯一思想体系を確立し、人民軍にたいする党の指導を確固と保障し軍隊の戦闘力を強化するうえできわめて重要な意義をもちます。

 人民軍党委員会総会では、これまで民族保衛省の責任ある地位に居座っていた軍閥官僚主義者の犯した罪業とその重大さが深刻に暴露批判されました。これまで軍閥官僚主義者は、人民軍にたいする党の指導を弱めて人民軍を特殊化し、党の軍事路線と戦略的・戦術的方針を思想的に受けとめ貫徹しませんでした。こうして、人民軍の強化発展に大きな弊害を及ぼしました。

 金日成同志は、軍閥官僚主義者が及ぼした弊害の後遺症を早急に取り除き人民軍の戦闘準備と戦闘力を強化するためには、なによりもまず、党組織と政治機関の機能と役割を高めると同時に党中央委員会の組織指導部が人民軍内の党組織と政治機関にたいする指導を正しくおこなわなければならないと述べています。

 これまで軍閥官僚主義者が犯した罪業のなかでもっとも重大なのは、人民軍内の党組織と政治機関の機能を麻痺させ、人民軍にたいする党の指導を弱めたことです。

 党の指導は、革命武力の建設で提起されるもっとも根本的な問題です。革命軍隊にとって党の指導は、生命にひとしいものです。わが党の指導をぬきにしては、人民軍を革命の頼もしい防衛者、一当百の革命武力に強化発展させることはできません。

 わが党は、朝鮮革命の参謀部であり、朝鮮人民を勝利に導く指導的力量です。我々の社会では、すべての社会・政治組織が党の指導のもとに活動しており、ほかならぬ党の指導によって革命闘争と建設事業の勝利と成果が確固と裏打ちされています。これは、人民軍だからといって例外にはなりません。人民軍は、金日成同志によって開拓され導かれるわが党の革命偉業を武力で擁護防衛し、党の軍事路線を貫徹すべき使命を担っている朝鮮労働党の革命的武装力です。人民軍は、党と領袖の指導に忠実に従わなければならず、そうしてこそ、自己の崇高な使命と本分をまっとうすることができます。

 人民軍にたいする党の指導は、軍隊内の党組織と政治機関を通じて実現されます。ところが、軍閥官僚主義者は、あれこれの方法で党組織と政治機関の機能を弱め、軍人のあいだで政治・思想活動がまともにできないように妨げました。かれらは、職権を乱用して党組織と政治機関を無視し、活動において専横と独断をふるいました。人民軍での重要な政治的・軍事的問題は、すべで党委員会で討議することになっていますが、軍閥官僚主義者はこの秩序を無視して幹部をやたらに処罰し免職し、戦闘準備にかんする党の方針を自分勝手にひっくり返すようなことをしました。軍閥官僚主義者がいかに党組織を無視して専横をほしいままにしたかは、党会議で司令官に結論権を与え、政治部が党政治活動にたいする通報を参謀部を通じておこなうように強要した事実からしてもよくわかります。かれらは、党組織と政治機関を掌握してぎゅうじったばかりでなく、総政治局が党中央委員会の当該部署と連係を保てないようにし、党中央委員会の指導と統制を拒みました。

 軍閥官僚主義者のこうした行為は、人民軍を個人の玩弄物にし、わが党を武装解除しようとする反党的行為です。これは以前、人民軍隊は「統一戦線の軍隊」になるべきだといって、軍隊を党の指導から離脱させて、かれらの卑劣な政治的野望の達成に利用しようとした反党反革命分派分子の罪業となんら変わるところがありません。

 軍閥官僚主義者の軍事万能主義は結局、人民軍内での党の政治活動を甚だしく弱化させ、党の軍事路線の着実な貫徹を妨げ、軍民関係をそこなう結果をもたらしました。

 わが党の革命的武装力である人民軍内でこのような重大な欠陥があらわれたのは、党組織と政治機関が無気力になったところに主な原因があります。これまで、人民軍内の党組織と政治機関は権力におさえつけられ、軍閥官僚主義者が党の路線と政策に反する行動をしでいるのをじかに見ながらも、原則的な闘争を展開しませんでした。もし、党組織と政治機関が、その指導的機能を高め、党員の党性を強めて、不健全で非党的な思想要素とのたたかいを強力に展開していたなら、軍閥官僚主義は増長しなかったはずです。我々は、人民軍内の党の政治活動にあらわれた欠陥から深刻な教訓をくみ取り、それを一日も早く是正しなければなりません。

 なによりもまず、軍隊内の党組織と政治機関を、党の路線と政策を立派に擁護、貫徹する生気にみちた戦闘的で活力のある組織にしなければなりません。

 党委員会をしっかりとかため、その機能と役割を高めるべきです。

 党委員会は、当該単位で党の路線と政策を実行する活動を組織指導する集団的指導機関です。

 金日成同志は、人民軍内で特定の人の独断専行を防ぎ、軍事・政治幹部の党生活にたいする指導を強化するため、すでに十余年前に党委員会制度を全般的に設ける措置をとりました。ところが、ここ数年間、軍閥官僚主義者の専横によって、党委員会はその機能と役割を満足に果たすことができませんでした。人民軍では、党の唯一思想体系の確立した党性の強い活動家で各級党委員会をしっかりとかため、党委員会の集団的指導機能を早急に回復しなければなりません。

 わが党は、各級党委員会の集団指導を通じて革命と建設にたいする指導を実現します。党中央委員会から基層党組織にいたるまで、各級党組織は例外なく集団指導の原則にもとづいて運営され、各部門の活動は、すべて当該単位の党委員会の集団指導のもとにおこなわれます。人民軍でも当該党委員会で各時期に提起される重要な政治的・軍事的課題を実行するための方向と方途を集団的に討議決定し、それに従って、軍事幹部は軍事的課題を、政治幹部は政治的課題を受け持って実行し、その結果にたいし党委員会に責任を負うようにしなければなりません。人民軍内にこのような規律を確立しなければなりません。

 党員が党生活にまじめに参加するよう指導と統制を強めるのは、党組織の基本的任務です。党員の党生活を強化するためには、すべての党員が党規約に明記されている義務をまじめに実行するようにしなければなりません。党規約には、党組織生活にたいする原則的な問題がすべて明記されています。役職には高低の差がありますが、党生活ではそのような差がありえず、誰もがみな同等な権利と義務をもって党生活に参加しなければなりません。党生活の規範は、社会の党組織であれ、軍隊の党組織であれ、みな同じです。ところが、これまで人民軍では軍隊の特殊性を云々して、少なからぬ将校、将官が党生活にまともに参加せず、党生活に二重規律が許されていました。これは、党会議で自己の上官を批判できなくした事実をみてもよくわかります。

 将校を批判できなくしたのは、決して、かれらのためになりません。心から将校を大事にし愛するならば、党生活にたいする要求の度合を強め、かれらを強い批判のなかで鍛えなければなりません。人間は、教育と統制を受けなければ変質するものです。以前、少なからぬ活動家は党の教育と統制の外にあったため、思想的に立ち後れ、たかぶって甚だしい官僚主義者になり、しまいには重大な過ちを犯すようになりました。

 いま将校のほとんどは、長期間軍務に服し、祖国解放戦争の時期に勇敢に戦ったわが党の貴い中核であり、人民軍隊の根幹です。人民軍内の党組織は、将校の党生活指導に力を入れ、かれらが自分自身をたえず鍛えて、強い党性と革命性をもって革命の花をひきつづき咲かせていくようにしなければなりません。

 人民軍内の政治機関の役割を高め、政治活動を決定的に強めなければなりません。

 革命軍隊の威力は、政治的・思想的優位性にあります。革命軍隊が帝国主義国家の軍隊と戦って勝利するのは、軍事技術的な優勢のためではなく、軍人が高度の政治的・思想的自覚をもって犠牲的に戦うからです。軍事活動に政治活動を優先させ、軍人を政治的、思想的にしっかりと準備させ、全軍を党に忠実な戦闘隊伍にするのは、金日成同志がうちだした革命武力建設の根本原則です。

 いま人民軍の幹部のあいだには、軍閥官僚主義者の影響を受けて、軍事命令であればすべてのことが可能であるかのように考え、党の政治活動を軽視する傾向が少なくありませんがそうした間違った観点からまず是正しなければなりません。軍事指揮官が政治活動を正しく進めてこそ、部隊の戦闘力が強まるということを正しく認識して政治活動家を積極的に援助し軍事課題の遂行で常に政治活動を優先させるために努力するようにしなければなりません。

 このたび金日成同志は、人民軍内の党の政治活動を強化するため連隊まで政治委員制を設ける措置を講じました。これは、政治機関の権威を高め党の政治活動を強化して党の軍事路線と方針を正確に貫徹できるようにしたきわめて正しい措置です。

 人民軍の幹部・に政治委員制にたいする正しい認識をもたせることが必要です。一部の指揮官のなかには、現在の政治部長や政治担当副連隊長はなにをする人で、政治委員はなにをする人なのかと聞く人がいるそうですが、政治部長、政治担当副連隊長と政治委員はそれぞれ任務と役割が異なります。政治部長や政治担当副連隊長は、党活動家、政治活動家ですが党の代表ではありません。しかし、政治委員は部隊に派遣された党の代表です。政治委員は、当該部隊の党および政治責任者として指揮官の活動を党的に政治的に保障する任務を担っています。これとともに政治委員は、軍事指揮官が党の路線と政策に反する結論や命令をくだすときには、それを拒否し阻止する権限ももっています。これが政治委員制の重要な特徴だといえます。

 軍事指揮官と政治活動家は、金日成同志が人民軍に政治委員制を連隊まで設ける措置を講じた目的と意図を明確に認識し、それに即応して活動することにより、政治委員制の優位性が遺憾なく発揮されるようにすべきです。

 人民軍を政治的、思想的に強化するうえで基本は、党の唯一思想体系を確立することです。

 人民軍で党の唯一思想体系を確立するのは、ここ数年間、軍閥官僚主義者が党の政治活動を弱化させ、党の唯一思想体系に反する行動を少なからず働いた状況のもとでいっそう切実な問題として提起されます。

 党の唯一思想体系を確立するためにはなによりもまず、すべての軍人をわが党の革命思想で武装させなければなりません。わが党の革命思想は、ほかならぬ金日成同志の革命思想であり、それは朝鮮革命の唯一の指導思想です。軍人が金日成同志の革命思想で武装しなければ、不健全な思想が侵食して思想的に変質し、革命にあくまで忠実であることができません。

 軍人のあいだで唯一思想教育を強化し、すべての軍人に金日成同志の革命思想以外には、いかなる思想も受け付けないという確固たる観点をもたせなければなりません。軍人が金日成同志の革命思想を確固とした信念とするとき、金日成同志の思想と意図どおり思考し行動することができ、いかに困難で複雑な状況のもとでも党の路線と政策を擁護、貫徹するために断固たたかうことができます。

 軍人に金日成同志の教えと党の政策をそのつど伝達する体系をうち立てなければなりません。軍人が金日成同志の教えと党の政策を明確に知らなくては、それを正しく貫徹することも、党の思想に反する傾向とたたかうこともできません。現在、人民軍内には、金日成同志の教示録音と教示文献、党中央委員会の決定、指示の伝達体系が確立されていません。金日成同志の教示録音の伝達を例にとってみても、その聴取対象を階級によって決めるので、連隊長はそれを聴取していますが、政治担当副連隊長は聴けないそうです。これもやはり軍事第一主義のあらわれであり、きわめて間違っています。連隊長が知らなければならない教示内容を政治担当副連隊長が知ってはいけないという理由はありません。

 金日成同志の教示録音の聴取対象を階級によってではなく、職務によって決め、党中央委員会の決定や指示も機密に属さない内容は部隊に下達して軍人に伝達させるべきです。そうしてこそ、軍人が党の要求と国情をよく知り、軍事任務も立派に遂行することができます。

 党と領袖を政治的、思想的に、生命を賭して擁護、防衛するのは、人民軍の栄誉ある任務です。人民軍では「偉大な領袖金日成同志を首班とする党中央委員会を死守しよう!」というスローガンを高くかかげ、全軍を党と領袖のまわりにかたく団結させ、金日成同志の唯一的指導のもとに全軍が一体となって行動する指揮体系を確立すべきです。

 軍人のあいだで党政策教育と革命伝統教育、階級的教育と社会主義的愛国主義教育、共産主義教育を正しくおこない、すべての軍人が革命軍隊の軍人らしい風格を身につけるようにすべきです。

 人民軍内に革命的学習気風を確立しなければなりません。いまわが党は、全党が学習し、全人民が学習し、全軍が学習しよう、というスローガンをかかげ、すべての人が学習することを求めています。学習はすべての軍人がすべきですが、特に将校は人一倍しなければなりません。将校が学習に励んでこそ、自分自身をわが党の革命思想で武装できるばかりでなく、軍人のあいだで党政策の宣伝者、教育者としての役割を正しく果たすことができます。

 金日成同志はこのたび、政治幹部であれ、軍事幹部であれ、大学卒業者であれ、未卒業者であれ、人民軍内のすべての幹部を党が催す1か月講習体系に参加させて学習するようにする措置を講じました。これは、人民軍の幹部にたいする大きな配慮です。1か月講習を立派におこなって、人民軍のすべての幹部がそれに必ず参加するようにし、かれらが講習を通じて党の路線と政策を深く学習し、思想鍛練も積むようにすべきです。

 ブルジョア思想、修正主義思想、事大主義、教条主義をはじめ、不健全な思想要素との闘争を強めて、人民軍内で党の唯一思想体系に反する傾向があらわれないようにすべきです。金日成同志の教えと党の政策を受けとめ、貫徹するうえで無条件性に欠けた傾向、党組織生活をいやがり、軍事規律を守らない自由主義的傾向、命令と号令で下部の人をおさえつける軍閥主義的で、官僚主義的な傾向などはすべて、古い思想のあらわれです。こうしたものがはびこれば、人民軍の強化発展に大きな害毒を及ぼすようになります。

 軍閥官僚主義者が及ぼした害毒を一掃するたたかいを強力に展開しなければなりません。

 軍閥官僚主義者は除去されましたが、かれらが軍隊内に及ぼした害毒は残っています。軍閥主義者が、はびこらせた命令主義、軍事万能主義、官僚主義とのたたかいを強くくりひろげなくては、人民軍の政治的・思想的優位性を高く発揮させることはできません。

 軍閥官僚主義の害毒を一掃するたたかいを正しく進めるためには、軍閥官僚主義者の犯した罪業を軍隊の幹部に明確に知らせなければなりません。軍閥官僚主義者が犯した罪業をことごとくあばきだし、その重大さと悪影響を認識させてこそ、かつて軍閥官僚主義者に盲従した人も正気に返り、自分の過ちを深く反省し、他の人も教訓をくみ取るようになります。

 金日成同志は、軍閥官僚主義の害毒を一掃するたたかいは批判を基本にすべきであり、行政的方法で人びとをみだりに処罰してはならないと述べました。軍閥官僚主義者の犯した罪業は重大ですが、かれらは人びとをかきあつめて分派行動をとるようなことはしませんでした。軍閥官僚主義者に追従して過ちを犯した人を見ると、かれらは軍閥官僚主義者が権力をふるって専横をほしいままにするので、こわくて盲従したり、かれらに倣って官僚主義をふるったのです。そのため、金日成同志は今回の人民軍党委員会総会で暴露、批判された軍閥官僚主義は、1956年8月の分派と性格が異なっていると述べました。

 軍閥官僚主義の害毒を一掃する思想闘争では民主主義を大いに発揚すべきです。欠陥のある人にたいしては、将校であれ将官であれ、誰をとわず党的原則できびしく批判すべきです。

 軍閥官僚主義の害毒を一掃する思想闘争で総政治局の活動家が模範を示し、先頭に立つべきです。総政治局には、軍閥官僚主義者がまき散らした思想的毒素がかなり残っています。これまで総政治局の少なからぬ人は、党性も、原則性もなく、明き盲になって軍閥官僚主義者のちょうちん持ちの役をつとめました。そのため、人民軍内の党の政治活動全般に大きな害悪を及ぼしました。

 総政治局は、人民軍内の党の政治活動を統一的におこなう任務を受け持っており、人民軍の党の政治活動にたいし党中央委員会に責任を負っています。総政治局の活動家は、総政治局の位置と任務の重要性を常に肝に銘じ、自己の活動を責任をもっておこなうべきです。

 総政治局ではさしあたり、人民軍党委員会第4期第4回総会の文献討議に綿密に取り組むべきです。人民軍党委員会総会での金日成同志の教えの内容を幹部と党員にしっかり認識させ、それにもとづいて各党組織が討議を実質的におこなうよう指導すべきです。

 総政治局の活動家は、今回の人民軍党委員会総会で暴露、批判された欠陥をすみやかに正し、古い枠から脱して活動を活発に展開すべきです。


 (注)「1956年8月の分派」については、次の著作を参照してください。

 ☆『朝鮮労働党は栄えある「トゥ・ドゥ」の伝統を継承したチュチェ型の革命的党である』

 ☆『金日成主席革命活動史』 「分派分子の一掃と反革命とのたたかい」

 ☆金日成主席『回顧録 世紀とともに』 「注釈 −第8巻:第22・23・24章−」



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