金 正 日

政治担当副中隊長の任務
朝鮮人民軍第109軍部隊の政治担当副中隊長との談話
-1968年3月13日-


 私はきょう、あなたと会った機会に、政治担当副中隊長の活動について少し話しておこうと思います。

 中隊は人民軍の基本戦闘単位です。中隊を強化することは、人民軍全体を強化する起点となります。したがって、人民軍の基本戦闘単位である中隊に対し政治的責任を負っている政治担当副中隊長の位置は極めて重要です。

 中隊の活動が順調に進められるかどうかは政治担当副中隊長に大きくかかっています。政治担当副中隊長が軍人に、金日成同志の教えと党の政策をその都度浸透させ、中隊の党組織を巧みに動かし、政治活動を活発に行えば、すべての軍人を金日成同志に限りなく忠実な革命戦士に育て上げ、中隊に課された軍事任務を成功裏に遂行することができます。政治活動が正しく行われれば、人民軍はいかなる侵略者をもゆうに打倒できる不敗の革命武力にいっそう強化されるでしょう。

 政治担当副中隊長は、中隊の軍人を金日成同志の革命戦士に育て、中隊に課された軍事任務の遂行を政治的に保障するためにたたかう職業的な革命家、政治活動家です。政治担当副中隊長は座っているときも、立っているときも、歩いているときも、さらには食事をするときにも、常に政治活動について考え、いつどこにあっても政治活動をしなければなりません。

 政治活動は、思想意識をもった人間との活動です。政治活動は、本質において人間の思想を啓発する活動です。例えていうならば、電気が近代産業の動力であるなら、政治活動は人間の革命的熱意を呼び起こす動力であるといえます。政治活動なくしては、人々を革命闘争に立ち上がらせることができません。政治担当副中隊長は政治活動をすべてに活動に先行させ、いつどこにあっても政治活動を着実に行わなければなりません。

 ところが、一部の政治担当副中隊長は自分が立つべき位置さえもわきまえていません。ある政治担当副中隊長は、中隊長や小隊長と一緒に隊伍の前で「突撃」の命令を下しており、またある政治担当副中隊長は四六時中、事務室で文書整理にかかりきりになっています。このような人たちは政治担当副中隊長というよりは、「補助中隊長」「補助小隊長」というべきでしょう。

 それでは、政治担当副中隊長はどのような位置に立って活動すべきでしょうか。中隊が上級から攻撃の戦闘任務を受けたなら、中隊長は戦闘の手配をし、政治担当副中隊長は軍人の中に入って政治活動をすべきです。すなわち、中隊長は戦闘任務を把握し、状況を判断し、決断を下して戦闘命令を出し、政治担当副中隊長は軍人に攻撃戦闘の目的と意義をしっかりと認識させ、党と領袖のために、祖国と人民のために無比の勇敢さと大胆さを発揮して偉勲を立てようと扇動しなければなりません。軍人のいるところでは、軍事指揮官の号令が響きわたるように、金日成同志の教えと党の政策を解説する政治担当副中隊長の声が朗々と響きわたらなければなりません。

 政治担当副中隊長が政治活動を着実に進めるためには、常に軍人のなかに入らなければなりません。軍人のなかに入るのは、政治担当副中隊長の活動において第一の工程といえます。軍人のなかに入ってこそ、彼らの心情を理解し、その特性に合って政治活動をすることができます。

 軍人のなかに入れということは、軍人と同じかまの飯を食べ、一緒に生活しながら彼らを深く理解し、それに合わせてさまざまな形式と方法で政治活動を根気よく行えということです。

 ところが一部の政治活動家は、軍人のなかに入るようにと言われたからといって、終日、軍人と一緒に訓練をして帰ってきます。これでは兵士のそばにいただけであって、兵士のなかに入ったとはいえません。軍人のなかに入れというのは、彼らと一緒に訓練をせよということではありません。

 軍隊の政治活動家は、抗日遊撃隊の政治指導員の活動方法に学ぶべきです。

   抗日遊撃隊の政治指導員は金日成同志から教えられたとおり、隊員と一緒に行軍をし、戦闘も行い、彼らと食事や休息をともにしながら政治活動を行いました。彼らは、隊員を集団的に教育する必要がある場合は、会議や学習、講習、集団談話などを行い、個別的に教育する必要がある場合は、一緒に行軍しながら話し合いました。隊員に演説の仕方も教え、学習の内容も解説し、寝所をともにして欠点を一つ一つ諭しました。その過程で彼らは、隊員の故郷や年齢、生活経歴、性格、趣味から、思想意識水準、自分の武器に対する精通度にいたるまで、すべてを手にとるように知るようになったのです。抗日遊撃隊員の政治指導員は自分の手のうちのように隊員をよく知っていたので、彼らの特性に合わせて政治活動を積極的に繰り広げることができました。彼らは、対象の準備程度と特性に合わせてさまざまな形式と方法で政治活動を進めることによって、常に活動で大きな成果をおさめることができました。

 政治担当副中隊長は抗日遊撃隊の政治指導員の模範に見習って軍人を深く理解し、その準備程度と特性に合わせて政治活動を力強く繰り広げるべきです。

 対人活動は困難かつ複雑な活動です。機械は標準操作法の要求どおりに動かせばそれですみますが、思想意識をもった人間との活動はそういうわけにはいきません。

 政治活動家はすべての問題を、あらわれた現象だけでなく細部にわたって見るべきであり、格式や枠にとらわれることなく、生き生きとした政治活動ができるようでなければなりません。例えば、厳寒の中で火器操作訓練が行われるとき、ある軍人が手袋をぬぎ、素手で火砲を操作したとすれば、さぞかし冷たかっただろうと考えるだけでなく、手袋をはめずに訓練をした彼の心のうちを読み取らなければなりません。彼は動作を正確かつ敏速にするために、手が凍るのも我慢して、素手のまま訓練をしたに違いありません。政治担当副中隊長は休憩時間に彼と向かい合って座り、こんなに寒いのになぜ手袋をはめないで訓練をするのか、手が凍えなかったのかと聞きながら、ごく自然に対話を進めることができるでしょう。政治担当副中隊長は休憩している軍人たちに、彼が素手のまま訓練したのは余り感心したことではない。しかし、きょうの訓練で大きな成果を得るために、手が凍えるのも我慢しながら訓練をしたその熱意と誠実さは非常にとうといものである、と高く評価してやるべきです。そうすれば、ほかの軍人たちはみずからを省みるようになり、訓練を形式的にした兵士は良心の呵責を受けるでしょう。

  政治担当副中隊長はその機を逸することなく、すべての軍人の胸を打つ解説を行うべきです。そうすれば、だれを問わずすべての軍人が訓練に誠実に参加するようになるでしょう。政治活動はこのように時と場所を選ばず、具体的な事実をもって生き生きと行うべきです。格式や枠にとらわれない内容のある政治活動は、ただああしろ、こうしろと10回、100回、一般的に強調したり演説するよりも、はるかに大きな力を発揮するものです。

 政治担当副中隊長は正しい活動作風を身につけなければなりません。

  活動家にとって、活動作風は活動方法に劣らず重要です。ところが、今一部の政治担当副中隊長は政治活動家としての気高い品性を身につけていません。一部の人は自分を特殊な存在であるかのように考えて軍人たちの意見に耳を傾けず、自分の主張を押し通そうとし、また一部の人は自分の性格にかこつけて軍人に冷たく、気難しくあたっています。このような政治活動家は軍人大衆から尊敬されません。

 政治担当副中隊長は常におおよう、かつ寛容であるべきです。

  政治担当副中隊長は言動において常に素朴で謙虚であるべきであり、軍人とともに歌を歌い、踊りも踊るようでなければなりません。それでこそ、軍人はいつ何どきでも政治担当副中隊長を訪ねてきて、自分の考えていることや困っていることを包み隠さず話すようになります。

 政治担当副中隊長は親身になって兵士に接しなければなりません。

  軍人が提起する問題であれば、それが取るに足りないことであっても最後まで聞いて心から理解し、解決すべきことは必ず解決してやるべきです。その場で答えることのできない問題については、もう少し考えてみようと言っておき、後で必ず解答を与えるようにすべきです。そうしなければ、軍人は政治担当副中隊長を心から信頼し、慕うようになりません。

 政治担当副中隊長は革命的同志愛が強くなければなりません。

  私はいつか、ある政治担当副中隊長についての話を聞いたことがあります。彼が訓練場から中隊に帰り、食堂へ行ったときは夜も更けていたそうです。食卓に向かった彼は、おぼろ豆腐を目にして食堂の当番に、それを飯ごうに入れて温めてくれと言いました。彼はおぼろ豆腐が冷めないように飯ごうを包み、峠の向こうの軍医所に行きました。政治担当副中隊長は、数日前に軍医所に入院したある軍人の好物がおぼろ豆腐であることを知り、彼にそれを食べさせようと、訓練場から夜遅く帰って疲れた身であるにもかかわらず、再び吹雪の夜道を歩いて行ったのです。軍医所に到着した彼は、当の軍人がおぼろ豆腐を食べ終えるのを見届けてから中隊に帰ってきたそうです。このように、政治担当副中隊長は軍人を愛する母親にならなければなりません。そうすれば、軍人は、政治担当副中隊長を心から信頼し、慕うようになります。

 政治活動家は軍事にも精通していなければなりません。軍事を知らずしては、政治活動を正しく行うことができません。政治担当副中隊長は軍事知識を習得するために、小隊長や中隊長に劣らず積極的に努力しなければなりません。

 政治活動家は党生活に誠実に参加し、学習も根気よく行い、活動を通じて鍛え、多くの経験を積むべきです。

 これからは、我々が代を継いで革命を進めなければなりません。あなたは父親の代を継いで、祖国を統一する闘いの先頭に立つべきです。

出典:「金正日選集」 1巻

ページのトップ


inserted by FC2 system