金 正 日

アメリカ帝国主義の戦争挑発策動に対処して
万全の戦闘動員準備をととのえよう
朝鮮労働党中央委員会宣伝一扇動部、軍事部の活動家との談話 
−1968年2月2日− 


 いま、わが国の情勢は、アメリカ帝国主義の武装情報収集艦プエブロ号事件を契機に極度に緊張しています。

 周知のように、この1月23日、勇敢な人民軍海兵は、わが国の領海に侵入してスパイ行為を働いたアメリカ帝国主義の武装情報収集艦プエブロ号を拿捕し、搭乗していた80余名の侵略寧を生け捕りにしました。これは、わが国の自主権を横暴に侵害したアメリカ帝国主義侵略者にたいする当然の懲罰であります。

 アメリカ帝国主義者が武装情報収集艦をわが国の領海に深く侵入させてスパイ行為を働いたのは、共和国の尊厳と自主権にたいする乱暴な蹂躙行為であり、朝鮮で新たな戦争を挑発しようとする計画的な侵略策動の一環です。共和国政府はこの27日の声明で、アメリカ帝国主義のこのような露骨な侵略行為をきびしく弾劾し、武装情報収集艦を拿捕した人民軍の自衛的措置の正当性と朝鮮人民の確固たる立場をせん明しました。いま、社会主義諸国をはじめ、世界各国の人民と広範な社会世論は、アメリカ帝国主義者の挑発策動を糾弾しており、我々の確固たる立場と態度に全面的な支持を表明しています。

 いま、アメリカ帝国主義者は、かれらの犯罪行為を合理化しようとあらゆる策動を弄しています。かれらは、プエブロ号が公海上で拿捕されたの、スパイ行為を働いたことはないのと、破廉恥きわまりない作り事を仕組んでいます。しかし、アメリカ帝国主義は、いかなる口実と術策をもってしても、かれらの犯罪的な侵略行為をおおいかくすことも、公正な世界世論をあざむくこともできません。すでに、新聞、通信、放送を通じて広く報道されたように、プエブロ号の船長自身が記者会見で、プエブロ号がわが国の領海深く侵入しスパイ行為を働いて拿捕されたということと、そのスパイ行為は朝鮮にたいする露骨な侵略行為であり、国際法を蹂躙した犯罪行為であることを自白しています。プエブロ号に搭乗していた他の将校たちも、わが国にたいして敵対的なスパイ行為を働いた事実をすべて自白しています。

 アメリカは当然、わが国にたいして犯罪的なスパイ行為を働いたことを率直に認め、朝鮮人民に謝罪すべきです。にもかかわらず、アメリカ帝国主義者はその過ちを謝罪するのでなく、かえって盗人猛々しいという言葉どおり、我々にたいし「報復措置」をとると威嚇しており、我々を屈服させようとおろかに策動しています。かれらはいま、南朝鮮とわが国の東海に原子力空母をはじめ、大機動艦隊とおびただしい兵力を引き入れて戦争態勢をととのえており、共和国北半部を侵攻すると公言しています。アメリカ帝国主義者の共和国にたいする狂気じみた新たな戦争挑発策動によって、わが国の情勢はますます緊張の度を加えており、戦争があす起にるかあさって起こるかわからない危険な事態が生じています。アメリカ帝国主義が、かれらの恥と惨敗を挽回しようと無分別に狂奔している現状のもとで我々はいかなる状況にも対処できるよう緊張した動員態勢を堅持すべきであり、敵が襲いかかってくれば直ちに立ち向かってたたかえるよう、万全の準備をととのえなければなりません。

 戦争に対処する準備においてなによりも重要なのは、政治的・思想的準備をしっかりととのえることです。

 戦争の運命を決定するのは、ある種の兵器や軍事技術ではなく、戦争に参加する人たちの思想的自覚と準備程度です。我々は、全人民と人民軍を戦争にたいする革命的観点と必勝の信念で武装させ、党の呼びかけがあればいつでも社会主義祖国と革命の獲得物を守る聖なる戦いにこぞって立ち上がれるようにすべきです。

 我々は、戦争を望みはしないが、戦争が起こるのを恐れてはならず、帝国主義者が我々を併呑しようとかかってくるならば立ち向かって最後まで戦う覚悟をもたなければなりません。戦争を恐れるのは、修正主義です。いま修正主義者は、戦争が起こればすべてが破壊され、人類が滅亡するといって戦争恐怖症と厭戦思想をまき散らしており、帝国主義にたいする幻想をいだいて、アメリカ帝国主義に頭を下げています。我々は、戦争恐怖症と厭戦思想を断固排撃し、修正主義的な思想要素が我々の内部に浸透できないように、党員と勤労者を革命的に教育すべきです。

 最近、一部の国の人たちは、朝鮮で戦争が起きてはたいへんだと言って、我々にプエブロ号をおとなしく引き渡してやるのがよいと「勧告」しています。これは、アメリカ帝国主義者に譲歩せよということですが、我々は絶対にそうすることはできません。アメリカ帝国主義にたいする譲歩は、すなわち屈従であり、投降を意味します。人民軍がプエブロ号をアメリカの沖合で拿捕したわけではなく、わが国の領海に侵入してスパイ行為を働いているところを拿捕したのですから、我々がかれらに譲歩することもなく懇請することもありません。もし、我々が譲歩してプエブロ号を引き渡すならば、敵の前に膝を屈することになり、かれらの侵略行為と謀略的な反共和国騒動を正当化することになるでしょう。そうなれば、アメリカ帝国主義は我々を見くびって、いっそう傲慢無礼に行動するでしょう。

 アメリカ帝国主義者にたいする我々の立場と態度は明白であり、確固たるものです。共和国の自主権を侵害し、わが国の領海に侵入してスパイ行為を働いた者は、誰を問わずわが国の法によって処理されるべきです。これは、誰も否定することのできないわが共和国の自主的権利です。金日成同志は、もし、アメリカ帝国主義者がかれらの過ちを謝罪せず、とんでもない口実をもつけて我々に「報復」をするなら、我々も報復し、敵が全面戦争を起こせば、我々も全面戦争でこたえるであろうと述べています。

 党組織と人民軍隊内の政治機関は、党員と勤労者、人民軍軍人に、現情勢とアメリカ帝国主義の戦争挑発策動にたいするわが党の原則的立場について明確に認識させるべきです。そして、人びとを革命的な戦争観点で武装させ、仇敵、アメリカ帝国主義者にたいする敵愾心を高め、敵が襲いかかってくれば、すべての人が決然と戦いに立ち上がるようにすべきです。

 全人民と人民軍軍人が、必勝の信念をいだくようにすべきです。

 いま、アメリカ帝国主義者は、我々に「報復」をすると大口をたたいて狂奔していますが、それは虚勢にすぎません。アメリカ帝国主義は決して無敵の存在ではありません。アメリカ帝国主義は、先の朝鮮戦争で、かれらの侵略性と悪辣さのみでなく、脆弱性をも如実にさらけだしました。朝鮮人民は、先の祖国解放戦争で、世界「最強」を誇っていたアメリカ帝国主義侵略軍を打ち破り、英雄的朝鮮人民の不敗の威力を遺憾なく示威し、アメリカ帝国主義の「強大さ」の神話をうちくだき、アメリカ帝国主義に下り坂を歩ませる端緒を開きました。こんにち、朝鮮人民の力は、かつての祖国解放戦争当時とは比べようもなく強大になりました。我々には、百戦百勝の鋼鉄の統帥者である金日成同志の賢明な指導があり、党と領袖のまわりに一枚岩のように団結した人民の力があり、必勝不敗の革命的武装力と自立的民族経済の強固な土台があります。我々は、全党員と勤労者、人民軍軍人を勝利の確信と不屈の闘志で武装させ、もし敵が襲いかかってくるならば、こぞって立ち上がり、金日成同志の賢明な指導を受けるチュチェ朝鮮の栄誉をかけて、侵略者を見事に撃滅できるようにすべきです。

 現情勢に対処して、青年をしっかり準備させることが、特に重要です。すべての青年が李寿福英雄のように、党と領袖のために、祖国と人民のためにためらうことなく生命を賭して戦えるよう、政治的、思想的にしっかり準備させるべきです。近ごろ、多くの青年や大学生が人民軍に入隊し銃をとることを嘆願していますが、これは、党と領袖にたいする高い忠誠心と愛国的献身性のあらわれとして、非常に好ましいことです。我々は、青年が祖国防衛の先頭に立つだけでなく、経済建設と国防建設に青春の知恵とエネルギーをつくして、戦争に対処する物質的準備をととのえる面でも先頭に立つようにすべきです。

 軍隊と人民を戦争に対処できるよう準備させるうえで、抗日武装闘争と祖国解放戦争の経験を学ばせることが重要です。

 金日成同志は、解放後、党内に潜入していた反党分派分子が人民を抗日武装闘争の経験で教育しなかったため、先の祖国解放戦争の戦略的後退の時期、多くの人が戦いもせずに敵に逮捕され、痛ましい犠牲にならなければならなかったとし、当時の苦い教訓を忘れてはならないと切々と述べています。抗日武装闘争と祖国解放戦争は、強大な日本帝国主義とアメリカ帝国主義に抗して戦った類例のない困難な革命戦争であり、闘争の過程には紆余曲折もあり胸の痛む犠牲も少なくありませんでした。しかしその過程で、我々はかけがえのない貴重な経験と教訓を得ました。抗日武装闘争と祖国解放戦争の経験には、近代的な兵器と最新技術で武装した強大な敵を政治的・思想的優位と戦術的優勢をもってうちまかした金日成同志の独創的で革命的な軍事思想と戦法が全面的に具現されています。抗日武装闘争と祖国解放戦争の経験を深く研究し体得してこそ、金日成同志の卓抜な軍事思想と戦法で武装することができ、いかに困難で複雑な状況にあっても信念を失わず、敵とあくまで戦って勝利することができます。

 党組織は、抗日パルチザン参加者の戦闘回想記や祖国解放戦争の経験資料をもって教育活動を強化し、党員と勤労者、人民軍軍人に抗日武装闘争と祖国解放戦争の貴い闘争経験を深く習得させるべきです。

 他国にたいする不意の侵攻は、帝国主義者が戦争を起こすときの常套手段です。これは、世界戦争の歴史がよく物語っています。日本帝国主義者の起こした太平洋戦争がそうであり、ソ連にたいするファシスト・ドイツの侵攻がまたそうでした。アメリカ帝国主義者が李承晩一味をそそのかして朝鮮戦争を起こしたときも、共和国北半部を一気に占領しようと不意に侵攻しました。戦争で不意打ちにあうのはたいへん危険です。準備態勢もととのっていないときに不意の攻撃にあうと、最初の一撃で甚だしい被害をこうむって混乱に陥り、まともに戦えもせずに敗れるようなことになります。強大さを誇る軍隊が油断して戦闘準備をおろそかにしていて、敵の不意の攻撃を受けて敗北した実例は少なくありません。

 我々は、狡猾で悪辣なアメリカ帝国主義者が、共和国北半部の地域を不意に攻撃しかねないということを片時も忘れてはならず、それに対処できるよう万端の戦闘動員準備をととのえるべきです。

 人民軍軍人は、高度の警戒心をもって敵の一挙一動をするどく注視し、敵がいつ、どこから侵入してきても直ちに反撃を加えられるよう戦闘態勢をととのえているべきです。

 労働者、農民をはじめ、全人民は、片手には銃を片手には鎌とハンマーをとり、生産と建設を力強くおし進めながら工場と農村、都市と村落をかたく守るべきです。そして、敵が襲いかかってくれば、いたるところで侵略者を撃滅できるよう万全の軍事的準備をととのえるべきです。党組織は特に、労農赤衛隊の隊列をかため、軍事訓練を強化し、労農赤衛隊が人民軍隊の頼もしい予備隊としての使命と役割を果たせるように準備させるべきです。

 防御工事に力を入れるべきです。防御工事に力を入れて防御施設を強固に構築しておけば、少数の兵力をもっても多くの敵を掃滅し、敵の打撃から人員と兵器、戦闘技術機材を頼もしく守ることができます。前線地帯や海岸線はもちろん、後方の重要軍事要衝に防御施設をしっかり構築し、敵が、空、陸、海のどこから侵入してもすべて掃滅できるようにすべきです。

 敵の不意打ちから人民を保護する対策を講じるべきです。

 先の祖国解放戦争当時、アメリカ帝国主義侵略者は、わが国の都市と農村の平和的な住民地帯に無差別爆撃を加えて廃墟と化し、幼児や老人、婦女をとわず、罪なき人民を手当たりしだいに虐殺しました。アメリカ帝国主義者は、人間の初歩的な良心も道徳もない残忍非道な野蛮人です。いま、敵がわが国のどの港湾都市を爆撃するだの、どの地域に打撃を加えるだのと騒ぎ立て、狂奔している状況にあって、我々は、ありうる敵の無差別爆撃や砲撃から人民が被害をこうむらないよう前もって対策を講じるべきです。町や村に防空壕などの待避施設を新設すべきものは新設し、補修すべきものは早急に補修すべきです。対空監視や警報信号体系を立て、待避訓練や灯火管制訓練も計画的におこない、有事のさいには、すべての人が迅速かつ秩序正しく行動できるようにすべきです。老人や幼児など、有事のさいに都市に残らなくてもよい人は、安全地帯に疎開させる対策も前もって講じるのがよいでしょう。

 戦時の状況のもとでも工場、企業所が、生産をつづけられるよう万全の準備をととのえることが重要です。戦争の勝敗は、前線と後方の物質的需要を円滑に保障できるか、否かに大きくかかっています。人民経済の各部門で増産と節約闘争を強化し、鋼材と石炭、食糧など各種戦略物資の予備をたくさん備蓄し、戦争が起きても生産がつづけられるよう、戦時生産の準備をととのえるべきです。敵機の爆撃や艦砲射撃によって工場が破壊されないよう防備対策を綿密に立て、特に重要な機械設備や施設が被害をこうむらないよう深い注意を払うべきです。工場の建物は破壊されても、機械設備さえ無事であれば生産は保障することができます。戦時に人民生活に必要な必需品を保障するうえで地方産業工場は重要な役割を果たします。ですから、地方産業工場の戦時生産保障対策をしっかりと立てるようにすべきです。

 党・政権機関や科学・教育・文化機関を安全地帯に移す疎開計画を綿密に立て、機関、企業所が候補地の建設に力を入れるようにすべきです。

 現情勢と関連して、勤労者のあいだであれこれの偏向があらわれないよう、教育活動に力を入れるべきです。

 近ごろ、ごく部分的ではあっても、戦争が起こればすべて破壊されてしまうから家財道具など不必要だといって家具を売り払う人もあらわれ、避難しようと荷造りをするなど大騒ぎをする人がいるそうです。教育活動をおろそかにすると、情勢が緊張し複雑なときに政治的準備のできていない人のあいだに、恐れをなして、あわてふためいたり、動揺する傾向があらわれかねません。いま敵は、我々の内部にひそんでいる階級の敵をそそのかし民心を混乱させようとあらゆる破壊策動を働いており、さまざまな流言飛語を流しています。

 各級党組織は、教育活動を強化し、党員と勤労者が高い政治的自覚をもってあらゆる現象に対応し、異質的な要素にたいしてはそのつど問題視すべきです。

 現情勢は、いつにもまして革命的な規律と秩序をうち立てることを求めています。各部門、各単位で気を引き締め、戦闘的に働き生活し、安易で無規律な傾向があらわれないようにすべきです。特に、幹部と勤労者のあいだで、戦争に対処する準備をするからといって生産と建設に力を入れなかったり、うわついてまともに働かない傾向があらわれないようにすべきです。

 金日成同志は、明朝、直ちに戦争が起こるとしても、今夜の12時までは建設をつづけなければならないと述べています。戦争が起こって破壊されるのを恐れ建設を積極的におし進めないのは、革命的戦争観点が確立しておらず、勝利の信念に欠けている表現です。我々は、党員と勤労者をして情勢が緊張すればするほど、いっそう奮起し、戦闘的に働き生活し、課された革命課題を2倍、3倍と超過遂行し、生産と建設で新たな高揚を起こすようにすべきです。

 アメリカ帝国主義者を世界人民から孤立させ、世界の世論を我々に有利にするための対外宣伝と対外活動を強化すべきです。

 いま、アメリカ帝国主義は、御用宣伝手段を総動員して途方もないデマ宣伝に狂奔する一方、プエブロ号事件を国連に持ちこんで、かれらの侵略的犯罪行為を正当化しようとやっきになっています。我々は、プエブロ号事件の真相とかれらのでっちあげを科学的な根拠をもって明らかにし、アメリカ帝国主義の横暴きわまる侵略性と狡猾さを世界の面前で徹底的に暴露すべきです。そうしてこそ、アメリカ帝国主義者を窮地に追い込み、かれらの傲慢な鼻柱をへし折ることができます。新聞、通信、放送などの出版報道部門と対外活動部門では、スパイ行為を働いて拿捕されたプエブロ号の乗組員の自白の内容とわが国の自主権を侵害した事実を示す証拠資料をもって大々的な宣伝キャンペーンを展開すべきです。対外宣伝では、プエブロ号事件に限らず、アメリカ帝国主義がわが国で歴史的に強行してきた犯罪的な侵略行為と、特に、先の祖国解放戦争のときの天人ともに激怒する蛮行の資料をもって、アメリカ帝国主義の罪業を全面的に暴露することによって、世界の人民にアメリカ帝国主義の侵略的本性と残忍性をはっきり認識させるべきです。

 こんにちのわが国の現実は、金日成同志が示した経済建設と国防建設の並進路線と、人民軍の幹部化、現代化、全人民の武装化、全国土要塞化の方針がいかに賢明で正当であるかをいま一度明らかに実証しています。こんにちわが党が、アメリカ帝国主義の脅迫にも微動だにせず、革命的原則を堅持することができるのは、これまで金日成同志の賢明な指導のもとに刻苦奮闘し、自力で祖国の安全と社会主義の獲得物を守りぬく強力な国防力を築きあげたからです。もし、我々が他国の力を頼りにして自己の力を養わなかったなら、こんにちのような重大な事態に直面して敵に強硬な態度で立ち向かうことができないのはもちろん、きわめて困難な境遇におかれているはずです。我々は高い誇りと自負をもって、党の自衛的軍事路線をひきつづき立派に貫徹し、国防力をさらに強化し、敵があえて襲いかかってくるなら勇敢に戦い、英雄的朝鮮人民の不敗の力をいま一度、全世界に誇示すべきです。

 出典:『金正日選集』1巻


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