金 正 日

新しい革命文学の建設について
朝鮮作家同盟中央委員会委員長との談話 
−1966年2月7日− 


 きょうも金日成同志は、抗日革命闘争当時を回想して貴重な話を聞かせてくれましたが、作家同盟委員長も大きな衝撃を受けたものと思います。

 金日成同志が、ここに出かけてきて作家たちと席をともにするようになってからもう半月ほどになります。金日成同志が作家たちを身近に招き、毎日5、6時間も時間をさいて、抗日革命闘争の時期に直接体験し目撃した事実をもって朝鮮革命の歴史的根源と長期かつ苦難にみちた闘争史について語ったのは今度がはじめてです。解放直後、幾人かの作家にせがまれて1日か2日、晩方の時間をさいたことはありますが、今回のように多くの時間をさいて革命闘争史と抗日革命闘争期の歴史的事実を詳しく聞かせてくれたとはありませんでした。

 金日成同志は今回、党中央委員会政治委員会が金日成同志の健康を気遣って、休息をとるようはからった措置によってここに来たのです。ところが、金日成同志は休息も後まわしにし、作家たちを呼んで貴重な教えを述べています。これは、作家たちにとって無上の光栄です。

 作家たちは、金日成同志がなんのために休息も後まわしにし、貴重な時間をさいて抗日革命闘争当時の話をしてくれたのかを明確に知るべきです。これを知らなければ、作家たちが金日成同志から千金に価する貴重な話を聞かせてもらった意味がありません。わたしがきょう、作家同盟委員長に会ったのも、作家たちに金日成同志の今回の教えの真髄を明確に認識させ、金日成同志の意図どおりわが国の文学建設に新たな転換をもたらすためです。

 金日成同志が、半世紀にわたる革命活動史の軌跡を一つひとつたどりながら、直接体験した歴史的事実について語ってくれた話は、新しい革命文学を建設するうえでまことに重要な意義をもっています。

 「新しい革命文学を建設しよう!」、まさに、これがこんにち、わが国の文学が堅持していくべき戦闘的スローガンです。

 我々は、新しい革命文学を建設しなければなりません。我々の言う新しい革命文学とは、名実ともに領袖を形象化した文学を意味します。

 新しい革命文学を建設するのは、朝鮮革命のこんにち的要請です。

 こんにち我々には、すでに樹立された社会主義制度をいっそう強固にし、共和国北半部において社会主義建設を促進し、南朝鮮からアメリカ帝国主義を駆逐して祖国の自主的平和統一を実現すべき栄誉ある重大な任務が提起されています。我々に提起されているこの重大な任務は、人民がすべて金日成同志の革命思想で武装し、金日成同志のまわりに一心同体となって団結してこそ成功裏に遂行することができます。そのためには、党員と勤労者に金日成同志の偉大さと高邁な風格を認識させ、かれらが金日成同志の革命偉業に忠実であるようにしなければなりません。

 文学作品を通じて人民を金日成同志の革命思想で武装させ、金日成同志のまわりにかたく団結させることは、新しい革命文学の建設なくしては不可能です。革命文学は人びとに革命的世界観を確立させ、かれらを革命家に育てあげるうえで非常に重要な働きをします。

 新しい革命文学を建設するには、キーポイントを正確にとらえることが重要です。
 どんな活動であれ、そこには核心があり、キーポイントがあるものです。そのキーポイントを正しく探しだし、しっかりとらえるところに成功の秘訣があります。我々は、新しい革命文学の建設においてキーポイントとなる問題をしっかりとらえ、その解決に大きな力をそそぐべきです。新しい革命文学の建設においてキーポイントを解くためには、社会主義リアリズム文学の発展歴史から慎重に検討、総括してみる必要があるようです。

 わたしはいま、社会主義リアリズム文学の歩んできた道について多くのことを考えています。党性を生命とする社会主義リアリズム文学がその使命を果たすうえで根本的なポイントを見落としていることはないか、もし、見落としていることがあるなら、それを探しだして革命文学を新たに発展させていくべきではないか、ということを考えています。

 社会主義リアリズム文学は、歴史舞台に登場した当初から労働者階級と運命をともにしてきました。社会主義リアリズム文学の歴史的使命は、まさに、社会主義・共産主義をめざす労働者階級の革命偉業の遂行へと人民大衆を奮い立たせるところにあります。労働者階級の革命偉業が従来の闘争と区別される最も本質的な特徴は、それが労働者階級の領袖によって開拓され、指導されるところにあります。労働者階級の革命偉業は、とりもなおさず領袖の偉業です。領袖は、革命の最高頭脳、最高指導者として、労働者階級の革命偉業の遂行において決定的な役割を果たします。労働者階級の革命偉業の遂行において領袖が絶対的地位を占め、決定的な役割を果たすのですから、その偉業の遂行に寄与する社会主義リアリズム文学も当然、領袖にかんする問題を第一の中心的問題として提起し、正しく解決していくべきでしょう。労働者階級の領袖を形象化するのは、社会主義リアリズム文学の運命を左右する根本的問題です。ところが、社会主義リアリズム文学の歩んできた道をふりかえってみると、このキーポイントを見落としていることがわかります。

 社会主義リアリズム文学建設の過程で、労働者階級の領袖を形象化した作品がいくらか創作されていますが、いまだに領袖の形象創造は、文学の核心、基本としてとらえられていません。こうした状態では、社会主義リアリズム文学が時代と歴史にたいする自己の使命をまっとうすることができず、文学を主体性の確立した新しい型の革命文学に健全に発展させていくことができません。我々は、新しい革命文学、領袖を形象化する新しい型の革命文学の建設において、まさに、これまで社会主義リアリズム文学が見落としていたこのキーポイントを探しだし、しっかりとらえていくことに第一義的な注目を払うべきです。

 もちろん、わが国で領袖の形象化に寄与した革命文学の歴史を虚無的に評価してはなりません。領袖の形象化問題は、こんにちになってはじめて提起されたのではありません。

 わが国で領袖を形象化した革命文学は、早くも抗日革命闘争の時期から創作されはじめました。解放前に人民のあいだで創造され伝承されてきた金日成将軍にまつわる革命的伝説は、領袖の形象化に寄与した革命文学建設の貴い基礎となります。まだ、すべて発掘されていないのが問題であって、抗日革命歌謡や民間でうたわれていた歌のなかにも、金日成将軍をたたえた作品は多いものと思います。

 解放直後には、金日成同志を形象化した作品が数多く創作されました。奪われた祖国を取りもどし、新しい祖国建設の喜びを与えてくれた金日成同志への燃えるような欽慕の念をおさえることができなかった作家、芸術家は、革命頌歌『金日成将軍の歌』と長編叙事詩『白頭山』、多幕戯曲『雷鳴』『白頭山』、小説『凱旋』『血路』など各種形態の多くの文学作品を創作して、領袖を形象化した革命文学建設の誇らしい第一歩を踏みだしました。革命頌歌『金日成将軍の歌』はこんにち、朝鮮人民ばかりでなく世界の革命的人民のあいだで広くうたわれている名作であり、長編叙事詩『白頭山』も思想的内容と、芸術的形象化の水準において遜色のない傑作です。

 その後にも、歌詞『金日成元帥にささげる歌』、叙事詩『密林の歴史』、小説『歴史』『万景台』な、金日成同志を形象化した作品が数多く創作されました。最近創作された戯曲『祖国の山河に霧は晴れて』も金日成同志を形象化した立派な作品です。

 金日成同志を形象化した文学・芸術作品は、歌や詩、小説、演劇分野ばかりでなく、美術分野でもかなり創作されました。特に、人民に広く知られている油絵『普天堡ののろし』は、金日成同志を形象化した代表的な美術作品として誇ることができます。

 領袖の形象創造において達成したこれらの成果は、金日成同志への朝鮮人民と作家、芸術家の熱烈な欽慕と忠誠心が生んだ貴い結実です。

 金日成同志を形象化した文学・芸術作品の創作において朝鮮文学が達成した成果は大きいものですがまだ欠点も少なくありません。

 いままで領袖の形象化に寄与した革命文学作品の創作活動は、組織的に、計画的にではなく、分散的に、自然発生的に進められています。文学部門をとってみても、領袖を形象化した文学作品の創作活動は作家同盟の中心的課題となっておらず、したがって、同盟はこの活動を目的意識的に掌握していません。領袖を形象化する新しい革命文学の建設は、たんなる自覚や自然発生性にまかせてはなりません。

 領袖を形象化した文学作品で金日成同志の偉大さを立派に描き出していません。作家が金日成同志の偉大さを立派に形象化できないのは、金日成同志の偉大さについてよく知らないためです。

 いま金日成同志を形象化した文学作品を見ると量的に少ないのはいうまでもなく、一部の作品を除いては全般的にその質が高くありません。作品の質的水準から見るとき文学は人間学であるため、領袖を形象化した文学作品は徹底した人間学の精粋とならなければなりません。領袖の形象化を主限とした革命文学が、量的にばかりでなく、質的にも相応の重みと権威をもって独自の領域をなすにはいまの状態ではだめです。

 新しい革命文学を建設するためには当然、領袖の形象創造を作家同盟の中心的課題とし、キーポイントとしてとらえて力強くおし進めなければなりません。

 領袖を形象化した革命文学が、文学全般において核心をなすには、文学建設において中心の位置を占め中枢的な役割を果たさなければなりません。我々は、こうした角度からわが国の文学が見落としている欠点を探しだし新しい革命文学を開拓すべきです。

 作家は、革命と時代が提起している緊切な要求をはっきり認識し、これに創作的知恵と精力をそそぐべきです。文学においても、これから前人未踏の道を歩むのだと考えるべきです。

 我々は、これまでの領袖の形象創造について慎重に総括し、この分野に根本的な転換をもたらさなければなりません。こういう意味から、今回、金日成同志が作家たちと交わした談話は、極めて重要な歴史的契機となります。

 金日成同志は今度、抗日革命闘争について話しましたが、作家たちは、これをたんなる抗日革命闘争の歴史としてのみ受けとめてはなりません。偉大な領袖金日成同志の革命闘争の歴史は、とりもなおさず、朝鮮革命が切り開かれ発展してきた歴史です。朝鮮革命は金日成同志によって起原が開かれ、金日成同志の指導のもとに勝利と栄光の道を歩んできました。金日成同志をぬきにした朝鮮革命はありえず、金日成同志の革命活動史をぬきにした朝鮮革命史は考えることができません。

 金日成同志こそは、人類史上かつてない偉大な革命歴史と業績を積みあげてきた、革命の卓越した指導者であり、真の共産主義的人間の風格を最上の高さで体現している偉大な革命家、偉大な人間の鑑です。作家のみなさんは、金日成同志の話を聞きながら、あまりにも感動し興奮して涙を流したとのことですが、察しがつきます。金日成同志が苦難の行軍について語ったとき、よほどのことでなかったら作家同盟委員長が、金日成同志に足を見せていただきたいなどということは言えなかったでしょう。金日成同志の身体には、いたるところ苦難の痕跡が歴然としています。

 金日成同志は今度、抗日革命闘争当時の話をしてくれましたが、実際上その当時、青年将軍として名をとどろかせた偉勲だけでも、金日成同志は、万古の伝説的英雄、革命の傑出した領袖として高くたたえられるに十分です。金日成同志がしてくれた話は、その一つ一つをすべてそのまま書き移しても立派な小説になり、詩になり、映画になるでしょう。

 金日成同志は今度、抗日革命闘争当時の歴史的事実を話しながら、本人の伝記を書いたり、本人を形象化しようとするのでなく、ただ、ある革命家を主人公にして小説を書くようにといいましたが、我々はこれについて深長に考えなければなりません。

 我々にはいま、革命闘争の教科書になるような文学・芸術作品がありません。人民の教科書になる革命闘争の歴史は、金日成同志の革命活動史しかありません。ですから、作家は、金日成同志の革命活動史を全面的に掘りさげて研究し、それを革命文学作品にすべきです。

 我々は領袖を形象化した新しい革命文学を、これまでのように断片的な内容の短い詩や短編小説のようなものを何編か書くといった創作の仕方ではなく、スケールの大きい大胆な作戦で、金日成同志の革命活動史の全貌がわかるように、偉大な思想家・理論家としての領袖、百戦百勝の鋼鉄の統帥者としての領袖、偉大な人間としての領袖を、全面的に掘りさげて形象化した革命的大作を数多く創作すべきです。金日成同志の偉大な形象を文学作品にもりこむのは、現代の機の熟した要求であり、朝鮮人民の一致した念願であるばかりか、新しい革命文学が遂行すべき使命と任務です。作家たちは、わが国の文学が遂行すべき使命と任務を明確に認識しなければなりません。それでこそ、作家たちは、自己に提起された責任重大な栄誉ある課題を立派に遂行していくことができます。

 我々は、領袖を形象化した新しい革命文学の建設をこれ以上遅らせてはならず、また、次代にまかせるわけにもいきません。作家同盟は、これから綿密な計画と作戦を練り、領袖の形象創造を同盟の第一の基本課題とし、これを力強くおし進めなければなりません。

 領袖を形象化した革命文学作品を創作することは、極めて深長かつ責任ある活動です。これは、欲望だけでは遂行することができません。領袖を形象化した革命的大作を創作するためには、一定の準備段階が必要です。すべての作家に、はじめから大作を書けということはできません。これから2、3年間は、詩や短編小説などを創作しながら、領袖の形象創造の経験と知識を蓄積するのがよさそうです。この期間に領袖の形象創造の活動体系を正しく確立し作家陣容をかため、いろいろな創作条件もととのえるべきです。このようにしたあと、しだいにスケールを大きくして、金日成同志の風格と業績を大叙事詩的画幅として形象化する、本格的で積極的な創作戦闘を展開しなければなりません。スケールを大きくして大作を書くからといって、伝記風に書いたり、年代記や一代記のように書こうとしてはなりません。金日成同志の偉大な革命活動史と不滅の革命業績、高邁な徳性をいくつかの長編小説にすべでもりこむことはできません。

 金日成同志の革命活動史を文学作品に全面的に掘りさげて形象化するためには、どんな形式と方法でするのがよいかという問題を研究してみるべきです。わたしももっと研究してみますが、作家同盟委員長も、この問題について作家、評論家と慎重に討議してみるのがよいでしょう。

 領袖を形象化した新しい革命文学を建設するためには、この活動にたいする整然とした指導体系を確立しなければなりません。

 領袖の形象を創造することは、党の唯一的な指導のもとに目的意識的で組織的な仕事にすべきです。党の唯一的な指導によってのみ、この仕事は目的意識的で組織的な活動になり、確固たる目標とはっきりした展望のもとに迫力をもって展開されることができます。作家同盟は、これから領袖の形象創造にかかわるすべての重要な問題を党に報告し、党の唯一的な指示と結論に従って処理する厳格な規律を確立しなければなりません。

 新しい革命文学を建設するためには、作家陣容をしっかりかためるべきです。

 領袖を形象化するのは、高い世界観と実力を要するむずかしい創作活動です。政治的、思想的にしっかり準備され、創作的才能のある作家でなくては、領袖の形象創造を成功裏におこなうことができません。作家同盟ではいまから、金日成同志を形象化した文学作品が書ける作家を積極的に育て、選抜すべきです。

 金日成同志を形象化した文学作品を書くには、創作技量の高い貫禄のある作家が中核となり、主動となるべきです。創作年限が長く、経験の多い、執筆能力のある古参の作家が領袖の形象を創造する革命文学の建設を先導すべきです。作家同盟委員長はこれまで主に農村を題材にした小説を多く書きましたが、これからは金日成同志を形象化した小説の創作で重要な役割を果たすべきです。作家同盟委員長は、自分が直接小説を書きながら、同盟全体の組織活動をゆるがせにせず、力強くおし進めなければなりません。

 領袖の形象創造を古い作家にのみまかせようとせず、若い世代の作家にも思いきってまかせ、かれらを将来を見通して育てなければなりません。

 新しい革命文学を建設するためには、創作集団を組織する必要があると思います。創作集団を組織すれば、これまで領袖の形象創造を分散的に、手工業的におこなってきた欠陥を正し、創作において集団的知恵を引き出して、作品の思想的・芸術的質を高めることができ、領袖の形象創造にたいする党の指導体系を整然と確立するためにもよいでしょう。作家同盟はこれから、領袖を形象化した革命文学作品を創作する創作集団を組織する問題を立案してみるのがよいでしょう。

 きょう、作家同盟委員長に会った機会にもう一度強調したいのは、このたびの金日成同志の歴史的な教えを契機に、領袖を形象化した新しい革命文学の建設に革命的な一大変革をもたらそうということです。

 作家同盟が、今度の金日成同志の教えを貫徹する対策を講じようと計画しているのは非常によいことです。作家同盟が、これからなすべきことは非常に膨大です。

 作家同盟委員長は、同盟の活動もし、作品も書かなくてはならないので、たいへん忙しいはずです。そうであるほど健康に気をつけるべきです。

 わたしは、今後、作家同盟の活動に大きな転換がもたらされるものと信じます。

 出典:『金正日選集』1巻


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