金 正 日

新しい時代は新しい思想を求める
金日成総合大学学生への談話 
−1963年7月19日− 

 今日、哲学科目の学科討論が活発におこなわれました。

 ある人は、エンゲルスの著作『マルクスの墓前でおこなった弔辞』にもとづき、人類の思想史発展に寄与したマルクスの業績を評価しました。彼はマルクスの思想的業績を高く評価し、マルクスが死去した後、彼が発見した原理を変化した条件と環境に即して適用し発展させた人はいたが、誰も新しい原理を発見することはできなかったと述べました。これは、いまなお一部の人が教条主義的な思考方式から抜け出していないことを示しています。

 マルクスは、唯物史観を創始して人類社会発展の法則を明らかにし、剰余価値学説を創始して資本主義社会の経済的運動法則を解明しました。唯物史観と剰余価値学説の発見は、人類の思想史発展に寄与したマルクスの2大発見だと言えます。

 エンゲルスは、人類史の発展法則を発見したマルクスの功績を高く評価し、それを生物界の発展法則を発見したダーウィンの功績と比較しました。エンゲルスのこうした評価にはある程度妥当性があります。しかし、ダーウィンの進化論やマルクスの唯物史観をこれ以上発展させる余地がない完全無欠なものとして評価するわけにはいきません。

 思想・理論は、歴史的に発展します。思想・理論は、新しい命題によって補充されることもあれば、原理的な面で根本的な革新がもたらされることもあります。

 原理的な面における根本的革新はいつでも可能だというわけではありません。レーニンは、マルクスの学説を帝国主義時代の新たな歴史的条件に即して発展させ、新しい命題によってマルクス主義の宝庫を豊かにしましたが、原理そのものを根本的に革新することはできませんでした。それは、マルクスとレーニンが資本主義発展の相異なる段階で活動したとはいえ、ともに資本主義時代に生き、活動したからです。レーニンはマルクスが発見した原理を一つも捨てず、また、それに新たな原理を加えもしませんでした。ただ、レーニンは、マルクス主義を帝国主義時代の歴史的条件に即して新たな段階へと引き上げたと言えます。

 金日成同志の革命思想は、単にマルクス・レーニン主義を新しい理論によって補充した思想ではありません。それは、原理的な面で根本的な革新をもたらし、それにもとづいて新たに展開され体系化された独創的な思想です。

 金日成同志の革命思想は、我々の時代の労働者階級の指導理念であり、マルクスとレーニンの段階を越えた新しく独創的な偉大な思想です。

 思想が占める歴史的地位は、それがいかなる時代の要求を反映しており、いかなる新しい内容を盛り込んでいるかによって規定されます。

 新しい時代は、新しい思想を求めます。

 金日成同志の革命思想は、我々の時代の要求を反映して生まれた新しい指導理念です。金日成同志が述べているように、こんにちの我々の時代は、資本主義時代でも帝国主義時代でもなく、世界的規模で資本主義と帝国主義が滅亡し、社会主義と共産主義が勝利している歴史の新時代です。

 金日成同志は、労働者階級の革命思想の発展に根本的な転換をもたらした新しく独創的な思想を創始することにより、人類の思想発展に実に偉大な貢献をなしました。

 エンゲルスはマルクスの2大発見について指摘し、こういったことは生涯に一つ発見したとしても大したことだと言えると述べました。マルクスは、弁証法的唯物論の原理にもとづいてこれを発見しました。しかし、弁証法的唯物論の発見を全的にマルクスの功績とみなすわけにはいきません。エンゲルスがそれをマルクスの功績としなかったのは一理あると言えます。

 実際、マルクスは、ヘーゲルの弁証法とフォイエルバッハの唯物論を有機的に結びつけて弁証法的唯物論を打ち出したのです。マルクスが弁証法的唯物論の原理を示して世界観の根本原理を全的に新たに確立したと見るより、それを社会歴史と資本主義社会の経済生活に適用して唯物史観と剰余価値学説を創始したと見るのが妥当だと思います。

 金日成同志の革命思想の創始は、マルクス主義の創始とは全く異なります。金日成同志の革命思想の創始は、以前の思想家の科学的発見とは比すべくもない偉大な発見です。

 金日成同志は、新しい歴史的時代、我々の時代の要求を反映した革命思想を創始し、それにもとづいて革命と建設に関する理論全般を新たな高い境地に引き上げたのです。

 我々は、教条主義・事大主義的思考方式から断固抜け出し、チュチェの世界観的立場に立ってすべての問題を金日成同志の革命思想にもとづいて新たに研究すべきです。

 我々は、金日成同志の革命思想こそは新しい時代を代表する偉大な思想であるという、確固たる信念をもたなければなりません。

出典:『金正日選集』増補版1



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