金 正 日

税制の最終的廃止に関するわが党の人民的施策について
金日成総合大学学生への談話 
−1962年1月13日− 

 金日成同志は歴史的な第4回党大会の報告で、わが国で近い将来に税制を最終的に廃止するという綱領的課題を提示しました。

 近い将来に農業現物税をはじめ、税制を最終的に廃止するというわが党の方針には、人民を旧社会の遺物から解放し、彼らにより幸せで文化的な生活をさせようという、金日成同志の大いなる愛情と恩恵が込められています。

 みなさんは、税制を最終的に廃止するというわが党の方針が人民生活においてもつ意義を十分に理解し、それを原理的に深く把握するために努力しなければなりません。

 かつて、搾取社会で暮した人々は、租税が勤労者をいかに過酷に搾取する道具であったかをよく知っているでしょうが、社会主義制度のもとで暮らしている我々学生は、租税の略奪的性格についてよく知りません。搾取社会の租税制度には、人々の恨みが根深くこもっています。

 租税は、社会が階級に分化し、国家が生まれて以来数千年もの間、勤労者を収奪する手段として利用されてきました。搾取社会において支配階級は、国家権力を利用して住民に租税の負担を強い、その収入で支配機構の維持費をまかないました。支配層は国家権力を握っているので、租税を人民に強いることができたのです。これまで租税といえば、決まって国家権力と結びつけて考えるのが一つの慣例となっています。

 従来の財政理論も、ほとんどが租税問題を国家の存在と結びつけて展開しています。租税の発生も国家の発生と結びつけて説明しており、租税の性格も国家の階級的性格にもとづいて規定しており、租税の本質も、国家が国民所得を再分配して国家の運営に必要な費用を得るための経済的手段であると論じています。

 国家財政収入の源泉となる租税を国家の存在、その機能と結びつけて説明しているのは、もちろん正しいとみなすべきでしょう。しかし、この場合も、国家が住民から租税を徴収する経済的基礎について十分に説明する必要があります。これまでの財政理論は、これにしかるべき関心を払わなかったようです。

 租税について正しく理解させるには、租税問題を国家とともに、生産手段に対する私的所有制とも結びつけて十分に説明しなければなりません。そうしてこそ、人民大衆の恨みがこもっている租税の略奪的性格とその役割を十分に解明することができるのです。

 生産手段の私的所有にもとづいている国家は、みずからの経済活動による収入だけでは必要な経費をまかなうことができません。反面、企業家や個人は、義務としてみずからの所得の一部を国家に納付しなければならない経済的根拠がありません。そのため、国家は、権力を利用し、強制的な方法で住民から国家の維持に必要な経費を徴収するようになるのです。

 租税は、私的所有に依拠している搾取社会に固有な経済的事象です。国家が生産手段の集団的所有、社会的所有にもとづいているなら、国家と社会の運営に必要な資金を租税という手段を利用しなくても、国家所有の企業から得ることができるはずです。生産手段の私的所有制は、租税が生じる経済的基礎だと言えます。

 租税を国家の存在とともに、私的所有制とも結びつけて考察してこそ、租税廃止の問題も正しく説明することができるのです。

 国家は、資本主義が社会主義へ移行した後も長い間存続します。租税を主に国家の存在と結びつけて説明すると、租税廃止の問題はかなり長い間解決できないことになります。そうすると、租税に対する人民の積もり積もった恨みは、いつになったら解消するのか見当がつかなくなります。我々は、租税の問題をこのように処理するわけにはいきません。

 租税制度の廃止は、人民大衆の志向と要求を実現するうえで重要な意義をもっています。人民大衆の念願どおりに租税制度を廃止するには、租税を国家とともに、生産手段の私的所有制とも結びつけて考察しなければなりません。そうしてこそ、労働者階級の党が政権を握って私的所有制を一掃した後、すぐに租税問題を最終的に解決する課題を日程にのぼらせることができるのです。

 わが党と人民政権は、税金のない世の中で暮らしてみたいという人民の願いをかなえるため、解放後すぐに日本帝国主義の略奪的な植民地的租税制度を一掃し、人民的かつ民主的な税制を樹立しました。新しい税制は、破壊された経済を復興、発展させ、人民生活を均等に向上させるうえで一定の役割を果たしました。

 これまで共和国政府は、国家の税収を国の経済・文化建設のための補充的な資金源、人民の生活水準の格差を調整するための補助的な手段として利用してきました。人民政権は、旧社会の遺物である税金を利用して、自立的民族経済の基盤構築に必要な資金の需要を追加的に充足するとともに、都市と農村で生産関係の社会主義的改造を促進し、人民の生活を等しく向上させました。

 革命と建設の実践的経験からしても、生産関係の社会主義的改造が完成した新たな歴史的環境からしても、わが国の税制の展望について正しく理解することはきわめて重要です。そうしてこそ、旧社会の遺物としての税制の性格に即して税金問題を正しく解決することができるのです。

 わが国の税制は、新しい人民的な税制として革命と建設の推進に立派に奉仕してきましたが、それはあくまでも旧社会の遺物であって、社会主義社会に固有のものではありません。生産関係の社会主義的改造が完成して生産手段の私的所有がなくなったのですから、その産物としての税金と税制が存続しなければならない社会的基礎は消滅しました。そのうえ、朝鮮人民は金日成同志の革命思想が全面的に具現されているすぐれた社会主義制度のもとで暮らしており、国家は、労働者、農民をはじめ、勤労人民の物質・文化生活を全的に責任をもって保障しています。

 こんにち、朝鮮人民は、金日成同志がもたらしてくれた先進的な社会主義制度のもとで、高い革命的覚悟と自発的熱意をもって国家と社会の主人としての義務を果たしています。

 わが国には自立的民族経済の強固な土台が築かれており、それにもとづいて財政基盤も日増しに強固になっています。これは、国家の膨大な資金の需要を全的に人民経済の内部蓄積によってまかなえるようにする物質的裏付けとなります。

 金日成同志は、社会主義革命が勝利した後、わが国にもたらされた社会的・経済的条件を深く分析したうえで、税金のない世の中で暮らしてみたいという朝鮮人民の長年の念願を実現させるため、第4回党大会の報告で税制廃止に関する綱領的課題を提示したのです。

 税制を最終的に廃止するためには、その準備を着実におこなわなければなりません。

 数千年の歴史的根源をもっている租税を完全になくし、人民をあらゆる税負担から永久に解放する歴史的変革は、何の準備もなしにおこなうことはできません。

 税制の最終的廃止の政治的意義を明確に認識することが何よりも重要です。

 税制を完全に廃止することは、人民に搾取と抑圧がないだけでなく、税金もない社会主義の地上の楽園で、より裕福で幸せな生活をさせるための重大な政治的事業です。

 社会主義制度が樹立されると、人民大衆は搾取と抑圧から解放されます。しかし、社会主義制度が確立された後も旧社会の遺物は残るので、それを最終的に一掃することが切実な課題として提起されます。

 わが党は、旧社会の遺物をを一掃するたたかいを展開するうえで、税制の廃止に大きな意義を付与しています。人々の恨みがこもっている税制をなくせば、幸せな生活への人民大衆の長年の念願を実現するうえで新たな前進を遂げ、社会主義制度の優越性の牽引力をいっそう強めることができます。ですから、税制の最終的廃止の政治的意義を明確に認識し、人民大衆の長年の宿願を実現するためのたたかいにこぞって立ち上がらなければなりません。

 税金廃止のための物質的裏付けをしっかり整えるべきです。

 税制を完全になくすためには、国の経済と財政の基盤をかためなければなりません。朝鮮人民は、党の賢明な指導のもとに、自力更生の革命精神を発揮して自立的民族経済建設路線を立派に貫徹し、歴史に類を見ない短期間に民族経済の自立的土台を築きました。

 こんにち、わが国の工業は、みずからの強固な重工業基地と軽工業基地を持つ自立的な工業となり、農業は水利化と電化が基本的に実現し、機械化を推進する先進的な農業となりました。

 わが国に自立的民族経済の土台が築かれ、財政の基盤がかためられた結果、人民経済の内部蓄積によって国家の収入を十分に保障し、住民階層間の生活水準の格差をかなり縮めることができる物質的条件が整いました。わが国の国家予算で税金が占める割合は、1949年には24.5%でしたが、1960年には2.1%に減りました。これは、社会主義経済建設をさらに強力に推進すれば、遠くない将来に増大する国の資金需要を社会主義経営の内部蓄積だけでも十分充足させることができることを示しています。我々は、第4回党大会が示した7カ年計画の基本課題を立派に遂行して、税制を完全に廃止するための現実的条件をしっかり整えていかなければなりません。

 近い将来に税制を完全に廃止するためには、住民の税負担を系統的に軽減しなければなりません。

 条件が整い、可能性が生じ次第住民の税負担を軽減することは、税制を廃止するための重要な準備活動となります。

 税制の最終的廃止を一挙におこなうか徐々におこなうかは、国によって異なるでしょう。

 過去に資本主義の発展段階を正常に経ておらず、労働者階級と農民との生活水準の格差が大きい国々では、すべての住民の税金を一挙に廃止することは難しいでしょう。特に、かつて植民地・半封建社会であったうえに、労働者階級と農民との階級的差異が残っているわが国では、農民の税負担を先になくすべきです。そうしてこそ、都市と農村間の格差を縮め、農民の生活水準を労働者階級の生活水準に引き上げる一助となるでしょう。

 農民の税負担をなくすには、条件の熟成程度に応じて農業現物税を減らす必要があります。わが党と共和国政府は、数度にわたって農民の現物税の負担を軽減しました。これまで、わが党と共和国政府が農業現物税の賦課率を系統的にさげたのは、農民を税負担から最終的に解放するために講じた賢明な措置でした。

 我々は、今後、わが国で農業現物税を永久に廃止し、ひいては、所得税、地方自治税まで完全に廃止して、税金のない世の中で幸せに暮らしてみたいという人民の念願を必ず実現しなければなりません。

出典:『金正日選集』増補版1


<参考> 金日成主席は1961年9月11日、朝鮮労働党第4回大会でおこなった中央委員会の活動報告−第2体系「偉大な展望」で、次のように述べています。
 
 「我が党は今後短期間のうちに、住民の税金を廃止する予定です。
 現在、我が国では、国家予算歳入の多くの部分が社会主義的国営企業所の蓄積で確保されており、住民からの税収入はほんのわずかな比重を占めているにすぎません。経済、文化の建設に必要な資金を国家蓄積だけで十分まかなっていける現状では、税金の全廃を日程にのせることが可能になりました。
 我々は労働者、事務員の所得税と農民の現物税をなくすことによって、旧社会の遺物である租税制度を最終的になくして勤労者をいっさいの税負担から完全に解放し、かれらの実質所得をいっそう増大させるでしょう。これは、勤労者の福祉増進を自己の活動の法則とする共産主義者の党によってのみ実現できるものであり、勤労人民自身が国の主人となった社会主義制度のもとにおいてのみ可能なことであります」


ページのトップ


inserted by FC2 system