金 正 日

社会主義計画経済の優越性を発揮させることについて
金日成総合大学学生への談話 
−1961年5月8日− 

 わたしは今日、社会主義的計画経済の優越性とそれを発揮させるうえで提起されるいくつかの問題について述べたいと思います。




 社会主義経済は、国のすべての経済生活が計画的におこなわれ、人民経済の各部門が計画的に動いて発展する計画経済です。

 ブルジョア御用学者は、資本主義利潤経済の「優越性」を唱え、あたかも社会主義計画経済は生産力を発展させるうえで何らかの「制約」があるかのように喧伝しています。しかし、帝国主義反動勢力がいくら欺瞞宣伝に狂奔しても、社会主義計画経済の真の優越性を覆い隠すことはできません。社会主義計画経済は、資本主義市場経済に比すべくもなくすぐれています。

 社会主義計画経済の重要な優越性は、経済が生産の直接の担当者である勤労人民大衆に奉仕するという点にあります。

 社会主義社会では、勤労人民大衆が生産の主人であり、経済は勤労人民大衆に奉仕します。経済が人民大衆に奉仕するというのは、搾取がなく、勤労人民大衆自身が物質的富の享有者になることを意味します。

 元来、労働する人に労働の結実がいきわたる社会が公正ですぐれた社会です。資本主義利潤経済では創造された富が働かない資本家に占有されますが、社会主義計画経済では、労働の結実がそれを直接創造する人民大衆にいきわたります。これは、社会主義計画経済が人民的性格を帯びていることを意味します。社会主義社会で生産が勤労者の福祉増進に従い、人民生活を向上させるためのさまざまな施策が実施されていることは、社会主義計画経済の人民的性格を明確に示しています。社会主義計画経済のこのような優越性を反映して社会主義基本経済法則が作用します。

 社会主義計画経済の優越性は、経済が急テンポで発展するというところにあります。

 社会主義社会において経済発展の主な推進力は、祖国と人民のため、社会と集団のため、自分自身の幸福のためにすべてをささげて働く勤労者の高い革命的熱意です。平壌紡織機械製作所の場合も、労働者が工場の主人であるという高い自覚をもち、革命的熱意と創造的積極性を発揮して働いているので、生産が絶えず増大しています。社会主義社会では、勤労者自身が社会と経済の主人なので、自発的熱意と創意性を発揮して働くのです。勤労人民大衆の高い革命的熱意は、社会主義経済を急テンポで発展させる最も重要な要因です。

 社会主義計画経済では、人民経済の計画的・均衡的発展法則の要求どおりに、経済発展において計画性と均衡性が確実に保障されます。社会主義社会では、国家の経済組織者としての機能によって人民経済がバランスよく発展し、社会的労働が合理的に利用されるので、経済が急テンポで発展します。

 社会主義的生産関係が技術発展の道を大きく開くので労働生産性が絶えず高まり、それにもとづいて経済が急テンポで発展します。これは、社会主義経済発展の合法則性です。

 社会主義経済が急テンポで発展することは、わが国の経済建設の歴史がよく示しています。わが国では、解放後から1960年までの15年の間に3年間の戦争と2度の復興期を経ながらも、1960年の工業生産は解放前の1944年に比べて7.6倍に増えました。第1次5カ年計画の期間にはチョンリマ(千里馬)運動の炎が燃え上がり、社会主義建設のすべての部門で一大飛躍を遂げました。

 経済活動で人々が互いに助け合い、導き合う同志的協力関係が支配するのも、社会主義計画経済の重要な優越性です。

 社会主義計画経済では、勤労者間の同志的協力関係のなかで分業と協業が合理的に組織されています。社会主義計画経済で、罰金や違約金などの経済的テコを利用して契約規律を守るよう企業を統制しているとはいえ、社会主義企業間の分業と協業の組織で基本は同志的協力と支援の関係です。社会主義企業間の分業と協業の組織では、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という共産主義的原則が作用します。

 資本主義利潤経済に対する社会主義計画経済の優越性は、個人主義に対する集団主義の優越性です。資本主義利潤経済が個人主義にもとづいているなら、社会主義計画経済は集団主義にもとづいています。資本主義経済が人間の社会的本性と対立しているなら、社会主義計画経済は社会的人間本来の要求を反映しています。

 資本主義利潤経済に対する社会主義計画経済の優越性を理解するうえで、発達した資本主義諸国の生産力の発展水準と一部の社会主義国の生産力の発展水準の差についても正しく認識する必要があります。

 ある人は、現在、アメリカをはじめ、一部の発達した資本主義国の生産力の発展水準は社会主義諸国に比べて高いと言えるが、このような事実を前に社会主義計画経済の優越性をどう説明するのか、という問題を提起しています。

 我々は、生産力の発展水準によって社会主義計画経済がすぐれているか、資本主義利潤経済がすぐれているかを評価しようとしてはなりません。生産力の発展を問題にして社会主義経済と資本主義経済を比較する場合も、具体的な歴史的条件と結びつけて分析、評価しなければなりません。アメリカやイギリスなど発達した資本主義諸国を見ると、これらの国は工業発展の長い歴史をもっており、2度の世界大戦の期間にもさほど被害を被りませんでした。特にアメリカは、本土が世界大戦の戦場とならなかったので、本土の経済は戦禍を被りませんでした。しかし、わが国をはじめ、社会主義諸国の経済建設の歴史は非常に浅く、旧社会から引き継いだこれといった経済的基盤もありません。わが国は、日本帝国主義から植民地的跛行性と奇形性を帯びた立ち後れた経済を引き継がされたうえに、それさえも3年間の戦争によってことごとく破壊されたため、戦後、廃墟のなかから経済建設を新しく始めなければなりませんでした。わが国は解放後、こんにちに至るまで16年になりますが、経済建設に力を入れることができた期間は10年にもなりません。資本主義諸国の数世紀にわたる工業発展の歴史に比べると、わが国の社会主義経済建設の歴史は一瞬に過ぎません。

 しかし、この短期間に工業生産総額を数倍に高めることができたのは、社会主義計画経済でなくては、とうてい考えられないことです。他の社会主義諸国の場合もわが国と似通っています。もし、わが国が資本主義諸国のように数世紀にわたって経済建設に力を入れていたなら、発達した国々の経済水準をはるかに上回っているはずです。我々は、社会主義計画経済が資本主義利潤経済に比べて断然すぐれているという確固たる信念をもつべきです。



 社会主義計画経済の優越性は、おのずと発揮されるのではありません。社会主義計画経済の優越性は、人々の積極的な活動によってのみ最大限に発揮されます。我々は、社会主義計画経済を固守し、その優越性を発揮させるため極力努力しなければなりません。

 革命の獲得物である社会主義的所有を強固にし発展させなければなりません。

 生産手段に対する社会主義的所有は、社会主義計画経済の基礎です。生産手段に対する社会主義的所有を固守し発展させてこそ、社会主義計画経済の優越性を発揮させることができるのです。社会主義的所有が崩れて個人所有が復活すれば、社会主義経済制度を守り抜くことも、社会主義計画経済を固守することもできません。社会主義革命において権力の問題とともに所有の問題の解決を重要な課題とする理由の一つがここにあるのです。

 いま、帝国主義反動勢力は社会主義制度を崩壊させるため、社会主義諸国に対して公然と侵略策動をおこなう一方、陰険で狡猾な切り崩し策動を繰り広げています。国内でも、失った旧制度を復活させようとする搾取階級の残存分子の策動が続いています。こうした状況のもとで、人民大衆が社会主義制度を守るために断固たたかわなければ、資本主義が復活する恐れがあります。我々は、政治的にプロレタリアート独裁政権を守り、経済的に生産手段の社会主義的所有を固守し発展させるために断固たたかわなければなりません。

 社会主義計画経済の優越性を発揮させるためには、社会主義制度の本性に即して経済管理を改善しなければなりません。

 経済管理の原則、システムと方法は、社会・経済制度と密接な関係にあります。社会・経済制度の本性によって経済管理の原則、システムと方法が規定され、経済管理の方法は経済制度に影響を及ぼします。

 いま、修正主義者は、資本主義的な企業管理方法に幻想を抱き、「企業自治」、物質的刺激第一といった資本主義的な企業管理方法を取り入れようと策動しています。経済は社会主義経済なのに、その管理は資本主義的におこなうということ自体が矛盾しています。

 社会主義経済は、社会主義制度の本性と社会主義経済法則の要求に即して指導、管理しなければなりません。そうしてこそ、社会主義経済制度を固守し、計画経済の優越性を全面的に発揮させることができるのです。

 経済管理を改善するうえで重要なのは、計画化を正しくおこなうことです。社会主義経済は計画経済なので、すべてが計画的におこなわれ計画的に動きます。計画化を正しくおこなって、社会主義経済法則の要求に即して経済を科学的に、合理的に管理、運営することができるのです。

 いま、修正主義者は、国の計画指標を減らし、企業が独自に計画を立て、生産物を処理できるようにしています。これは事実上、社会主義経済管理における計画化の放棄です。計画化を抜きにしては、社会主義計画経済に対する国家の指導、管理について語ることはできません。計画化を放棄し、企業の経営活動を自然の成り行きに任せてはなりません。

 全社会的規模で生産手段が社会化されている社会主義社会において、計画化は国家的な事業とならなければなりません。国家は、社会主義基本経済法則と人民経済の計画的・均衡的発展法則をはじめ、社会主義経済諸法則の要求、速度と均衡の相互関係に即して計画化を改善し、経済に対する国家の計画的な指導を強化しなければなりません。

 計画化を含めて社会主義計画経済を管理、運営するうえで重要なのは、国家の中央集権的指導と、地方と企業の創意性を正しく結びつけ、政治的・道徳的刺激と物質的刺激を正しく結びつける原則を守ることです。物質的刺激第一は、社会主義計画経済を資本主義利潤経済に転換させる道であり、社会主義計画経済の優越性を抹殺する道です。社会主義社会では、政治的・道徳的刺激を優先させ、それに物質的刺激を組み合わせる原則にもとづいて経済を管理、運営してこそ、社会主義計画経済の優越性を発揮させることができるのです。

 幹部の管理・運営水準と技術実務水準を高めるのは、社会主義計画経済の優越性を発揮させるための重要な要求です。幹部の水準が低く、社会主義経済法則の要求に即して社会主義計画経済を正しく管理、運営できなければ、その優越性を十分に発揮させることができません。いま、経済幹部の管理・運営水準と経済知識水準は発展する現実に追いついていません。経済の規模が拡大し、人民経済各部門間の生産と消費の連係が複雑になり、生産が複雑な技術工程になっている状況のもとで、幹部の経済知識水準と管理・運営水準が高くなければ、企業管理を円滑におこなうことができません。

 今後、国の経済を管理、運営する責任は我々大学生にあります。我々は、在学中にわが党の経済政策と専攻分野の経済知識をしっかり身につけ、生産実習を通じて経済の管理・運営に関する知識を学び、祖国の未来を担う民族幹部としてみずからを鍛えあげるべきです。
出典:『金正日選集』増補版1


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