金 日 成

現段階における政務院の中心的課題について
 朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・政務院合同会議でおこなった演説
−1992年12月14日− 


 今回の中央人民委員会・政務院合同会議では、新たに組織された政務院の中心的課題について述べることにします。

 現段階において我が党と共和国政府と人民に提起される最も重要な課題は、我々の社会主義偉業を固守し、成功裏に前進させることです。

 いま帝国主義者と反動派は、社会主義の砦である我が共和国を孤立させ、我々の社会主義偉業を抹殺しようと策動しています。帝国主義者の目的は、我々の首を絞め、我が国をも、「自由化」の風にわざわいされて窮地に陥った旧ソ連や東欧諸国のように変えることにあります。しかし、それは決して実現されません。かれらが、いくら圧力をかけ孤立・封鎖策動を強化しても、我々は絶対に動揺せず、後退もしないでしょう。我々は、帝国主義者と反動派の反共和国・反社会主義策動を粉砕して人民大衆中心の朝鮮式社会主義を固守し、さらに発展させていくでしょう。

 社会主義偉業を固守するためには、社会主義建設を力強くおし進めて、我が国の社会主義の優越性をさらに発揚しなければなりません。

 社会主義経済建設では、営農実績を上げる問題と工業部門の生産を正常化する問題、対外経済関係を発展させる問題、基本建設に力を入れる問題、この4つの問題が最も重要です。今後、政務院は、この4つの問題に重点をおいて活動すべきです。

 政務院がその任務を円滑に遂行するには、総理が、副総理との活動、委員長、部長との活動を正しくおこなわなければなりません。このことは、前総理にも再三強調しました。いかなる問題であれ、対人活動を着実におこなって人々を奮起させることなしには順調にいきません。独不将軍という言葉がありますが、これはひとりでは将軍になれないという意味です。祖国解放戦争(朝鮮戦争)のとき、ある軍団長が対人活動はおろか官僚主義の度が過ぎるので、「独不将軍」と漢字で書いて送ったことがあります。もちろん、軍隊は命令によって動きますが、だからといって軍人を思想的に啓発せず押しつけるだけの命令一点張りでは立派に戦うことができません。経済活動にしても同じです。総理をはじめ、責任幹部が対人活動を正しくおこなって、一人が十人、十人が百人、百人が千人、千人が一万人を動かすというやり方で、すべての活動家と勤労者を奮起させ、かれらに革命と建設の主人としての責任と役割を果たさせてこそ、経済活動が順調にいくのです。新任の総理はこれを肝に銘じ、対人活動に力を入れなければなりません。

 政務院は経済活動の指導においてなによりもまず、営農実績を上げることに大きな力を入れなければなりません。

 営農実績を上げることは、最も重要な問題です。

 昔から農は国の大本といわれてきました。社会主義建設で農業を立派に営むことが極めて重要であるため、私は早くから「米はすなわち社会主義である」というスローガンを示しました。こんにち、我が国の社会主義の優越性を高く発揚するにも、営農実績を上げて、まず人民の食糧問題を円滑に解決しなければなりません。我々が営農実績を上げて人民に満ちたりた食生活をさせれば、他の問題は円滑に解決することができ、帝国主義者がいくら我々の内部を切り崩そうと謀っても恐れることはありません。

 幹部がその気になって努力しさえすれば、十分営農実績を上げることができます。

 我々には、我が国の実情に即した科学的な農法である主体的農法があります。私は、1970年代のはじめから農業部門を直接指導しながら農業問題についていろいろと研究し、その過程で主体的農法を創造しました。私は、主体的農法を科学的に実証するために試験を重ねました。7号農場や農業科学院でも試験し、文徳(ムンドク)郡、粛川(スクチョン)郡、安岳(アンアク)郡、信川(シンチョン)郡、載寧(チェリョン)郡など各郡の協同農場でも試験しました。こうした過程を通じて、主体的農法どおりにすれば高い収穫をおさめることができるということが立証されました。

 我々は、主体的農法どおりに農業を立派に営める物質的・技術的土台も築きあげました。主体的農法どおりに農業を営むうえで最も大切なのは、用水、種子、肥料の3大要素です。そのうち、用水と種子の問題は解決されたといえます。用水の問題を解決するのは最もむずかしいことですが、我が国では田畑をうるおす潅漑工事がかなりおこなわれました。貯水池や水路もたくさん建設されました。あとは、甕津(オンジン)地区の水路工事とクァイル郡の水路工事さえ完成させれば、主な水路工事は完了することになります。畑地潅漑ももう少しで終わります。種子の問題も、我が国の農学者が新しい多収穫品種をつくりだし、外国からも優良品種を入手したりして基本的に解決されました。稲の品種のなかでは、「平壌15号」がすぐれています。「平壌15号」を植えて肥培管理に力を入れれば、ヘクタール当たり10トン以上収穫することができます。トウモロコシも、ヘクタール当たり10トン以上収穫できる優良品種が少なくありません。

 これから解決すべき重要な問題は、肥料です。この問題も、生産土台が築かれているので十分解決することができます。国内で窒素肥料を180万トン生産すれば、果樹園を含めてすべての田畑に十分に施すことができますが、それだけの生産能力はすでに造成されています。窒素肥料の生産能力は、全部で200万トン以上になります。すでに、年に180万トンの窒素肥料を生産した経験もあります。

 肥料はすなわち米です。農村に肥料さえ十分に供給すれば、どこでも籾米とトウモロコシをヘクタール当たり8トン以上収穫し、うまくすれば10トン以上も収穫することができます。籾米とトウモロコシをヘクタール当たり8トンと見積もっても1000万トン以上の穀物生産が可能です。我々が展望計画として達成すべき穀物生産目標は1500万トンですが、さしあたっては1000万トンの目標をかかげて奮闘すべきです。

 1000万トンの穀物を生産すれば、食糧を除いても数百万トンを家畜の飼料にまわし、多量の穀物を備蓄することができます。

 化学工業部門では、来年、180万トンの窒素肥料を必ず生産し、外国からは50万トンを輸入すべきです。今年の末までに窒素肥料を全量輸入することになっていますが、まだ未輸入の分があるとのことです。残りの量を来年の2月16日までに取り寄せるべきです。

 農業生産でヘクタール当たりの収量を高めるには、窒素肥料とともに、燐酸肥料、カリ肥料・珪素肥料、マグネシウム肥料、硼酸亜鉛肥料などの各種肥料を適切に配合して施さなければなりません。主体的農法どおりに施肥するには、窒素肥料100キログラムにたいして燐酸肥料は120キログラム施さなければなりません。燐酸肥料は多く施すほど効果があります。

 来年は150万トンの燐酸肥料を生産すべきです。

 鉱業部、化学工業部など燐酸肥料の生産を担当した部門では、積極的な増産対策を立てるべきです。これとともに、道党責任書記が燐酸肥料の生産に深い関心を払わなければなりません。道党責任書記は、道人民委員長として、道内の経済活動を掌握して指導すべき責任を担っています。道党責任書記は、燐酸肥料と各種微量要素肥料を計画どおり生産するため努力しなければなりません。

 燐酸肥料を増産するには、燐灰石と硫酸の供給対策を立てなければなりません。石灰芒硝を大量に生産して処理すれば、硫酸だけでなく、苛性ソーダや石膏の生産も可能です。鉱業部では、石灰芒硝鉱山の開発を急ぐべきです。

 カリ肥料は国内での生産量が少ないので、輸入すべきです。カリ肥料輸入の課題はすでに分担されています。各委員会、部は、それぞれ割り当てられた量を適時に責任をもって輸入しなければなりません。

 1000万トンの穀物を生産するには、各道が責任をもって農業を営まなければなりません。特に、我が国の穀倉地帯である黄海南道、平安南道、平安北道が農業にカを入れて穀物生産を画期的に増やさなければなりません。

 来年の営農に必要な肥料を各道に一律に配分せず、まず黄海南道と平安南道、平安北道に集中的に供給すべきです。この3つの道には、水田とトウモロコシ畑に窒素肥料をヘクタール当たり800キログラム施せるように供給しなければなりません。平安南道の農業は確実性があるのですから、ヘクタール当たり800キログラムの窒素肥料を施せば、この道では穀物を計画どおり生産できると思います。黄海南道でも、安岳郡、信川郡、載寧郡でヘクタール当たり8トンの穀物を生産した経験があるので、ヘクタール当たり800キログラムの窒素肥料を施せば8トンの穀物は十分に生産できます。平安北道でも自信をもって取り組むべきです。咸鏡北道穏城郡王在山協同農場とセッピョル郡農圃協同農場の今年の営農経験は、気温の低い北部地帯でも、窒素肥料と燐酸肥料、カリ肥料を十分に施すならば、ヘクタール当たり8トン以上の籾米とトウモロコシを生産できることを示しています。我が国の最北端にある王在山協同農場と農圃協同農場でヘクタール当たり8トンの穀物を生産しているのに、平安北道で同じ量を生産できない理由はありません。

 黄海南道と平安南道、平安北道に窒素肥料を計画どおり供給するには、都合50万トンが必要です。国内での窒素肥料の生産量にかかわりなく、輸入する窒素肥料は黄海南道と平安南道、平安北道に供給すべきです。黄海南道の野菜畑と果樹園に施す肥料は、国家の配分基準に従って供給することにし、クァイル郡は平壌市の果物供給基地なので、肥料供給に格別の関心を払わなければなりません。

 農村に揚水用の電力を円滑に供給すべきです。

 電力不足だからといって、揚水用の電力を十分に供給しないようなことがあってはなりません。工業部門に多少支障があっても、農村に必要な揚水用の電力は必ず供給すべきです。電力供給では、揚水用電力の優先供給原則を守るべきです。

 黄海南道は我が国の電力供給システムで末端単位となっているので、他の道に比べていっそう電力が不足しています。黄海南道の揚水用電力を解決するには、海州火力発電所を建設しなければならないのですが、建設が計画どおりに進められていません。なんとしても海州火力発電所の建設を早急に終えるべきです。

 農村にトラックとトラクターを提供して、農作業の機械化水準を高めなければなりません。

 農村にトラックとトラクターを提供してこそ、肥料などの営農物資をそのつど運搬し、耕転としろかきを適時にすることができます。

 いま一部の協同農場では、トラックが足りなくてトラクターで遠いところから肥料を運搬しています。いつだったか平原郡元和(ウォンファ)里に行ったことがありますが、そのとき平原郡党責任書記は、郡内の協同農場では肥料を適時に運搬できなくて苦労している、甑山(チュンサン)郡に隣接する協同農場では、トラクターで漁波(オパ)駅まで来て肥料を運び出しているが、1日に1往復しかできない、と言うのでした。トラクターで遠くから肥料を運ぶので多量の燃料油が消費され、トラクターもいたんで耕転としろかきに支障をきたしています。

 協同農場で稼働するトラクターが少なくて、しろかきを先行できないことを今年、痛感させられました。田植えどきに青山協同農場、玉桃(オクト)協同農場、箴津(チャムジン)協同農場と温泉郡内の協同農場を見てまわったところ、しろかきが満足にできなかったため、栄養冷床苗と現代苗を移植した水田には浮いている苗がかなりありました。私は以前から、機械で田植えをするからには、しろかきを一週間先行させるよう強調してきました。主体的農法どおりにしろかきを一週間先行させ、水田の泥が沈殿してから田植えをすれば苗が浮きません。ところが、しろかきをしたばかりのどろどろした水田にすぐ田植えをするので、苗がうまくささらず浮いてしまうのです。しろかきを一週間先行きせずに田植えをするのは、苗を水田に播くようなものです。苗が耕土にうまくささらないと、苗立ちの期日が長くなります。そうなると枝分かれの時機を逸して満足な分けつができなくなり、結局、収穫高が落ちることになります。

 営農物資の運搬に必要なトラックを提供し、トラクターで営農物資を運搬することがないようにすべきです。来年度からは、トラクターを農作業にのみ利用することにすべきです。そうしてこそ、営農実績を上げることができます。これからは、トラクターが協同農場の区域から40キロ以上出ることのないように統制すべきです。

 協同農場での営農物資の運搬には、「勝利58」トラックが最適です。このトラックは、ガソリンを使わず、メタンガスやオガタンのような代用燃料を利用することができます。それゆえ、各協同農場に「勝利58」トラックを提供すれば、営農物資をそのつど運搬できるだけでなく、燃料油もかなり節約できます。

 来年には、「勝利58」トラックを量産して協同農場に提供すべきです。

 協同農場にトラクターも多く提供すべきです。農村にあるトラクターがすべてフル稼働すれば、しろかきに支障はありませんが、現在は故障して稼働できないトラクターが少なくありません。そして、しろかきに限らず、他の農作業もすべて機械化しなければならないので、多くのトラクターが必要です。政務院は、トラクター工場の能力に合わせて生産を綿密に手配りし、トラクターの生産台数を毎年増やさなければなりません。

 トラクターを農村に提供すると同時に、現有のトラクターを修理、整備してフル稼働させるべきです。いまから始めて来年3月まで3か月半のあいだに、修理すべきものは修理し、部品をかえるべきものはかえるなど、全国的にトラクターの修理に取り組むべきです。政務院は、北中(プクチュン)機械連合企業所では何台、楽元(ラクウォン)機械連合企業所では何台と、工場、企業所別にトラクターの修理を具体的に分担すべきです。機械工場の少ない道のトラクターは、機械工場の多い道が担当して修理し、黄海南道のトラクターは、平壌市と南浦市が修理してやるべきです。こうして来年の3月末までにトラクターの修理、整備を完了すれば、しろかきを一週間先行させることができます。

 農村にトラクター用の燃料油を十分に供給しなければなりません。来年度のトラクター用燃料油は烽火化学工場が無条件生産すべきです。営農は、時機を逸してはならぬ仕事なのですから、烽火化学工場で生産される燃料油は先に農村に供給し、あとの分を他の部門に供給することにすべきです。

 ビニールシートの問題は供給対策を立てたとのことですから、ふれないことにします。

 政務院ではきょうの午後に協議会を開き、肥料の生産と輸入、配分の問題、トラクターの修理と燃料油の供給問題など営農で提起される問題を具体的に討議して対策案を提出すべきです。

 農薬の問題も十分に討議すべきです。協同農場に農薬を十分に供給するのは極めて重要なことです。新興(シンフン)化学連合企業所のトレボン工場でまだ試製品ができていないのなら、トレボンの生産問題についても十分に討議すべきです。農薬は、国内で生産できるものは生産し、必要ならば輸入もすべきです。

 野菜の生産を増やすべきです。

 今年は、秋の野菜を大量に生産してキムチ用の野菜を十分に供給しました。一人当たり平壌市では118キログラム、黄海南道では150キログラム以上供給しました。キムチ用野菜の供給では黄海南道が上の成績でした。キムチ用野菜を十分に供給したので人民が喜んでおり、よい反響を呼んでいます。昔から朝鮮人は、キムチ漬けを非常に重視しました。ことわざにもキムチは半ば食糧というのがあります。人民は、キムチを漬け込む時期をキムチ漬けの季節と言っています。

 今後、キムチ用野菜の供給量をさらに増やすべきです。人口一人当たり、少なくとも150キログラムは供給すべきです。今年のキムチ用野菜の供給について住民から大根の量が少ないという意見が提起されましたが、大根の比率を多少高めなければなりません。私の考えでは、人口一人当たり150キロラムを供給する場合、白菜は110キログラム、大根は40キログラムにするのがよさそうです。大根は体にもよいものです。

  キムチ用野菜を十分に供給するとともに、野菜を四季にわたって切らさず供給すべきです。特に平壌市で、春、夏、秋、冬と季節別の野菜を切らさず供給することが大切です。

 人民に野菜を四季にわたって供給するには、野菜温室の建設に積極的に取り組み、温室野菜づくりを上手にしなければなりません。野菜温室を上手に運営すれば、春、夏、秋はもちろん、冬にもキュウリやトマトをはじめ、いろいろな野菜を多く生産することができます。

 温室野菜づくりは、人民軍軍人が上手にやっています。みなさんも温室野菜づくりの科学映画を見て知っているでしょうが、ある人民軍部隊ではあちこちに太陽熱を利用する温室を建てて野菜をつくっています。かれらが建てた温室には長さが600メートルのものもあります。太陽熱を利用して温めた空気と水を循環させれば、冬季にも温室の温度が保てるので、そういう温室では四季にわたって野菜の栽培が可能です。この部隊では、温室野菜づくりをはじめて以来、四季を通じて野菜を切らすことがないそうです。冬季にも、キュウリ、トマトなどの新鮮な果菜を食べています。

 みなさんは、人民軍軍人が建てた野菜温室を見学し、方式講習をおこなってその経験を全国に一般化すべきです。

 太陽熱を利用する野菜温室は、平地よりも、斜面を削り山裾にそって長く建てるのが合理的です。平壌市でも、祥原(サンウォン)郡をはじめ、山をひかえている地帯では野菜温室を平地ではなく斜面に建てるべきです。

 果物生産の増大をはかるべきです。

 人民に野菜とともに果物も供給しなければなりません。果物生産を増やして人民に供給し、特に平壌市民に果物を切らさず供給しなければなりません。

 私は、平壌市民に果物を供給するために政務院がクァイル郡果樹総合農場を積極的に援助するよう強調してきました。特に昨年からは、平壌市内の事務員がクァイル郡果樹総合農場に行って金曜労働をし、潅漑工事も援助し、平壌市から下肥も運んでやるようにはからいました。その結果、今年、この農場の果物生産が増大して、平壌市民に以前より多くの果物が供給できるようになりました。

 私は今後、平壌市民に毎日2個の果物を食べさせる考えです。そのためには、年に18万トンの果物が必要です。平壌市の果物供給基地であるクァイル郡果樹総合農場と国営平壌果樹農場、国営黄州果樹農場の果樹栽培面積は合計1万へタタールぐらいですから、ヘクタール当たり20トンの果物を生産すれば20万トンになります。20万トンなら、平壌市民に毎日2個供給してもあまるでしょう。

 平壌市では、クァイル郡果樹総合農場と国営平壌果樹農場、国営黄州果樹農場を各面から援助し、果物を年に20万トン生産できるようにすべきです。平壌市では、果樹農場に下肥も運び出し、労働支援もし、潅水システムの導入も援助しなければなりません。果樹園に潅水をすれば、収量が増えるだけでなく、果物の味もよくなるとのことです。平壌市には動員できる労力源が多いのですから、果樹農場への労働支援を積極的にすべきです。

 畜産業を発展させて肉と卵の増産をはかるべきです。

 私が畜産業を直接指導したときには、肉を思いどおり商店で買えたし、卵も切らすことがありませんでしたが、いまはそうでありません。

 我々は、なんとしても畜産業を発展させて、人民に肉や卵を十分に供給しなければなりません。

 我々がこれまで築いた畜産基地は大きなものです。平壌市を見ても、食肉生産基地としては1万トン能力の平壌養豚工場、5000トン能力の斗団(トゥダン)アヒル飼養工場、5000トン能力の龍城養鶏工場があり、卵の生産基地としては1億個能力の万景台養鶏工場、5000万個能力の西浦(ソポ)養鶏工場、5000万個能力の下堂(ハダン)養鶏工場があります。平壌市には、10万トン能力の配合飼料工場もあります。平壌市では、現有の畜産基地を効果的に利用するだけでも、市民に肉や卵を切らさず供給することができます。飼料を十分に提供して、養豚工場、養鶏工場、アヒル飼養工場の生産を正常化すべきです。

 平壌市では来年、2億個の卵を生産しなければなりません。第1段階として、来年は各養鶏工場の生産を正常化して2億個の卵を生産し、今後、肉や卵の生産を増大させる方途を研究して活動をくりひろげなければなりません。

 養蚕に力を入れるべきです。

 この9月にあった今年の営農総括会議でも強調したことですが、養蚕で実績を上げるには、シロバナサクラタデをたくさん植えなければなりません。シロバナサクラタデを多く植え、それを桑葉と混ぜてカイコに与えれば、同じ量の桑葉でより多くの繭を生産することができます。桑葉とシロバナサクラタデを7対3の割合でカイコに与えるのか効果的だとのことです。5対5の割合にしてもさしつかえないといっていますが、それはまだ確実性がありません。桑葉とシロバナサクラタデを7対3の割合でカイコに与えれば繭の生産を増やすことができます。シロバナサクラタデをたくさん植えて繭を増産すれば、多額の外貨が獲得できます。

 シロバナサクラタデを植える運動を大々的に展開すべきです。シロバナサクラタデは、桑の木のあいだに植えても大丈夫です。桑の木は密植すべきですが、密植していない桑畑には、桑の木のあいだにシロバナサクラタデをたくさん植えるべきです。

 慈江(チャガン)道では肥料と農薬の不足で繭の増産に支障をきたしているとのことですが、繭の輸出で得た外貨で肥料と農薬を買い入れればよいでしょう。幹部は、難問をなんとしても自力で解決しようと考えるべきであって、国家に頼ろうとばかりしてはなりません。いま幹部が難問を自力で解決しようと努力せず、国家にばかり依存して椀をこまぬいているのが大きな病弊です。工場、企業所の生産が正常化されていないのも、まさに幹部のこのような病弊と関連しています。我々が多くもない耕地をもって自活していくためには、穀物生産に肥料と農薬を優先的にふり向けなければならないのですから、養蚕業部門では、国家にのみ依存しようとせず、自力で外貨を獲得して肥料や農薬を買い入れ、繭を増産するために努力すべきです。

 道党責任書記は、養蚕を重要な課題の一つとし、繭の増産を正しく指導しなければなりません。

 次に、工業部門の生産正常化に力を入れるべきです。

 我々がすでに造成した工業生産能力は大きなものです。それを効果的に利用するならば、生産を著しく増大し、人民に裕福な暮らしをさせることができます。ところがいま、人民経済の多くの部門では生産が正常化されていません。その主たる原因は、幹部が経済活動に献身しないところにあります。幹部がその気になって経済組織活動に取り組むならば、生産の正常化は十分可能です。

 人民経済各部門の生産を正常化するためには、石炭工業を決定的にもりたてなければなりません。生産の正常化で基本となるのは、石炭生産を増大することです。石炭さえあれば、電気や鋼材、セメントが生産され、人民経済各部門の生産を正常化することができます。石炭工業部門ではすでに指示したとおり、石炭生産計画を遂行するために奮闘しなければなりません。

 石炭問題が解決されなくては生産を正常化することができないので、生産正常化の問題は石炭生産をもりたてたのち具体的に討議することにしましょう。今後、石炭生産に必要な設備、資材の供給問題でうやむやな態度をとる人にたいしては法的に追及すべきです。

 次に、対外経済関係の発展に力を入れるべきです。

 国の経済を発展させるには、貿易を活発にし、経済合作や合弁もしなければなりません。だからといって、幹部が経済を資本主義的方法で運営しようとしてはなりません。経済分野に資本主義的方法を取り入れるのは、結局破滅の道です。

 我々が外国との合弁や合作をする基本目的は、外国の技術と資金を利用するところにあります。それゆえ、外国との合弁、合作は、相手国に技術と資金を提供させ、企業管理は我々の方式でおこない、できるだけ多くの利潤を得る原則を守らなければなりません。

 対外経済関係を発展させるには、信用を守らなければなりません。信用を失えば、外国との貿易も、合弁、合作もできません。

 こんにち対外貿易を発展させるうえで重要な問題は、変化した環境に対応して、資本主義市場を相手に貿易ができる有能な貿易実務家を多数養成することです。

 我々はこれまで社会主義市場を基本にして貿易を発展させてきましたが、いまは社会主義市場がなくなったも同然です。ソ連が崩壊して資本主義が復活し、東欧社会主義諸国も崩壊して資本主義の道を歩んでいます。したがって、我々は社会主義市場を基本対象としていた貿易政策を、資本主義市場を対象とする貿易政策に切りかえなければなりません。我々は、ためらうことなく資本主義市場に進出して貿易を発展させなければなりません。そのためには、資本主義諸国との貿易が上手にできる貿易実務家を多く必要とします。

 対外経済関係を発展させるには、幹部が積極的に活動しなければなりません。腕をこまぬいて合弁、合作の相手が訪ねてくるのを待っていたり、社会主義市場がなくなったと落胆するだけでは、いつになっても対外経済関係を発展させることができません。

 幹部が積極的に活動すれば、多種多様な製品を生産して輸出することができます。機械工業部門では、工作機械や工具、ベアリングなどをいくらでも輸出することができます。オートメ化水準の高い工作機械でないと輸出できないかのように考えるのは間違いです。我が国でいま生産されている工作機械を買いたいという国が少なくありません。我が国には大きな工作機械工場がいくつもあり、立派なベアリング工場と工具工場もあるのですから、工作機械、ベアリング、工具などを大量に生産して輸出すれば、外貨が獲得できるだけでなく、鋼材を買い入れて生産の正常化をはかることもできます。

 軽工業部門では、陶磁器などを大量に輸出することができます。我が国は昔から陶芸が発達していました。いまは日本の陶磁器がすぐれているといいますが、日本人は壬辰祖国戦争(文禄・慶長の役)のとき、我が国の陶工を強制的に連行して陶芸を発展させはじめたとのことです。

 2月10日工場は、立派なブリキ板工場です。この工場の生産能力は3万トンですが、錫や素材を買い入れ、ブリキ板を生産して輸出すれば、多額の外貨が獲得できるし、生産を正常化することができます。2月10日工場の生産を正常化するならば、プルトップ缶の生産に必要なブリキ板は十分間に合わせることができます。平城合成皮革工場も立派な工場です。この工場に原料を提供して稼働させ、生産品の一部を輸出して必要な原料を輸入すれば、外貨を獲得し、生産も正常化することができます。

 幹部が自力更生の革命精神を高く発揮して国内の潜在力を大いに引きだすとともに、貿易を発展させて、生産品を輸出して必要な原料を購入し、外国との合弁、合作を発展させるならば、十分生産を正常化することができます。

 次に、基本建設を活発に進めるべきです。

 政務院は、現在進行中の金剛山発電所(現在の安辺青年発電所)をはじめ、各発電所の建設と開発すべき対象の建設を早急に完了する積極的な対策を立てるべきです。

 原子力発電所を建設すべきです。我が国では水力発電所と火力発電所を建設するだけでは、電力問題を円滑に解決することができません。電力問題を将来を見通して解決するには、原子力発電所を建設する方向をとらなければなりません。

 以前ソ連から原子力発電所の設備を取り寄せることが予定されていましたが、ソ連が崩壊しロシアからそれを入手する見込みがなくなった状況下で、他の国から取り寄せなければなりません。

 席島(ソクト)港を大きく建設すべきです。そうしてこそ、20万トン級の大型タンカーで石油を運搬することができます。将来、この地区に約500万トン能力の石油精製工場を建設することを念頭におくべきです。

 我々が原子力発電所を建設し、油田を開発して原油も生産することになれば、もう問題になることはなにもありません。そうなれば、我が国は富裕な社会主義国となるでしょう。ですから政務院の責任幹部は、自信をもってたえず前進することを考えなければなりません。

 生産正常化の問題をはじめ、人民経済各部門に提起される課題を成功裏に遂行するには、輸送のネックを解消しなければなりません。輸送はすなわち生産です。

 輸送のネックを解消することをむずかしく考える必要はありません。私が常々言っていることですが、輸送のネックを解消する重要な方途は、鉄道の重量化を実現することです。鉄道の重量化を実現すれば、線路を複線にしなくても現在のままでより多くの貨物を輸送することができます。

 鉄道を重量化するためには、鉄道部門に毎月1万〜1万5000トンの鋼材を提供しなければなりません。鉄道部門では、鋼材を輸入してでも鉄道の重量化を実現する運動を展開すべきです。

 自動車輸送では、代用燃料油を広く取り入れるべきです。

 我が国では、まだ石油が産出されないので、燃料油が不足しています。石油は自動車の燃料としてのみ使われるのではなく、工業部門でも多く使われます。化学工業の重要な原料であるナフサも原油から得られます。燃料油の事情が逼迫しているので、不足する自動車の燃料油を代用燃料で補充することを考えなければなりません。

 自動車の代用燃料としては、オガタンやメタンガスを使うことができます。私の考えでは、ディーゼル油を使う大型トラック以外の車はガソリンの代わりにオガタンやメタンガスを使うのがよいと思います。農業部門と地方産業部門、商業流通部門の「勝利58」トラックはすべて、オガタンやメタンガスを使うようにすべきです。

 終わりに、国防力の強化について述べましょう。

 いま敵は、我が国の社会主義を切り崩そうと経済的封鎖と思想的・文化的攻勢を強める一方、我々を軍事的に脅かしています。我々は、敵の侵略策動に対処して革命的警戒心をさらに高め、敵の侵略から革命の獲得物を守る万全の準備をととのえなければなりません。

 なによりもまず、我が党の全軍幹部化、全軍現代化、全民武装化、全国要塞化の方針をあくまで貫徹しなければなりません。全軍幹部化、全軍現代化は、人民軍と軍需工業部門の課題ですが、全民武装化、全国要塞化は、全人民の動員によって実行すべき課題です。

 我々が全人民を武装させ全国土を要塞化すれば、敵の侵攻があっても恐れることはありません。全国要塞化とは文字どおり、全国土を難攻不落の要塞にするということです。全国土を要塞化すれば、アメリカ帝国主義者と戦っても勝利することができます。我々はアメリカ帝国主義者に、攻撃するならしてみろと宣言しています。敵も我々を簡単には征服できないことを知っています。そのため、かれらはあえて攻撃できないのです。

 我々が党の軍事路線を貫いて全人民的防衛体制を強固に築いておけば、敵は我が国にたいする侵略的企図を実現することができません。最近、敵は南朝鮮に最新の大量殺りく兵器を持ち込んで我々を威嚇していますが、我々は恐れません。敵が我が国を侵略しようといかに策動しても、党と人民が一心団結し、強固な自衛的国防力をそなえた我が国の社会主義は不敗です。

 いま一度強調しますが、政務院の最も重要な課題は、1にも2にも3にも農業を立派に営むことです。農業に大きな力を入れて穀物生産を大幅に増やし、工業部門で生産の正常化をはかり、変化した環境に対応して対外経済関係を発展させ、基本建設に力を入れる課題を立派に実行するならば、我が国の社会主義の優越性をさらに発揚し、社会主義偉業を固守することができます。

 政務院では、きょうの合同会議で示された課題を実行するための討議を深めて実行対策を正しく立てなければなりません。

 私は、新たに組織された政務院が、党の意図どおり経済活動にたいする手配と指導を正しくおこない、社会主義建設に新たな転換をもたらすよう望みます。

出典:『金日成著作集』44巻

 (注) シロバナサクラタデ(白花桜蓼)
 

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