金 日 成

咸鏡北道党委員会に提起されるいくつかの課題について
咸鏡北道党委員会拡大総会でおこなった演説 
−1992年9月4日− 


 私はきょうの咸鏡(ハムギョン)北道党委員会拡大総会で、道党委員会が重点をおくべきいくつかの課題について述べようと思います。

 咸鏡北道党委員会は、道党責任書記が新たに赴任して以来、多くの仕事をなし遂げました。道党委員会の指導のもとに、農業部門では緑の革命を力強くくりひろげて新しい多収穫品種を多く得ることにより、農業生産に画期的な転換をもたらし、食糧問題を円滑に解決できる展望を開きました。私はこれを非常に満足に思い、道党委員会と道内の各級党組織、道党責任書記をはじめ、道党委員会の委員、道内の農業部門の科学者、技術者とすべての農業勤労者に感謝を送ります。

 咸鏡北道は、工業部門でも多くの仕事をなし遂げました。城津製鋼連合企業所では、高圧管職場の建設を完成して操業し、清津製鋼所では炉を現代化し、茂山鉱山連合企業所では鉄精鉱の生産を正常化し、金策製鉄連合企業所でも多くの仕事をなし遂げました。私はこれについても満足に思い、当該の工場・企業所の党組織と活動家、すべての従業員に感謝を送ります。

 咸鏡北道党委員会に提起される最も重要な課題は、思想革命を力強くくりひろげて道内のすべての党員と勤労者を思想的にしっかり準備させることです。

 我が党が示した社会主義・共産主義建設の総路線は、人民政権を強化し、その機能と役割をたえず高めると同時に、思想、技術、文化の3大革命を遂行することです。私はすでに久しい前に、人民政権に3大革命をプラスすれば共産主義になるという定義を示しました。人民政権をたえず強化すると同時に3大革命を力強くくりひろげ、人間と自然と社会を共産主義の要求どおり改造してこそ、社会主義・共産主義を建設することができます。

 我が党の総路線を貫徹するには、思想革命を確固と優先させ、活発に展開していくことが極めて重要です。私がいつも強調していることですが、思想革命を確固と優先させてこそ、技術革命と文化革命はもちろん、他のすべての活動もスムーズにはこびます。

 特に、咸鏡北道は、他の道より資本主義の影響を受けやすい状況のもとで社会主義を建設しているので、思想革命を優先させて道内のすべての党員と勤労者を我が党のチュチェ思想で武装させ、思想的防御陣を強固にはりめぐらすことに大きな力を入れるべきです。

 咸鏡北道は、社会主義を建設する途中で資本主義が復活した国と国境を接しており、海をはさんで日本と対峙しているので、他の道よりブルジョア思想の浸透を余計受けるおそれがあります。

 咸鏡北道では羅津(ラジン)−先鋒(ソンボン)地区を自由経済貿易地帯にすることになっているので、今後、資本主義国の人の往来が頻繁になる事情からしても道内の党員と勤労者にたいする思想教育を強化しなければなりません。道内の党員と勤労者を思想的にしっかりそなえさせなければ、かれらが資本主義国の人と接触する過程でブルジョア思想におかされる恐れがあります。

 咸鏡北道では、南朝鮮かいらいが、中国の延辺地域をつうじて我々の内部に「自由化」の風を吹きこもうと策動していることと関連しても、道内の党員と勤労者にたいする思想教育に格別な関心を払わなければなりません。いま南朝鮮かいらいは、延辺朝鮮族自治州に割りこみ、そこに住む朝鮮人のあいだに「自由化」の風を吹きこんだ後、かれらをつうじて咸鏡北道を瓦解させようとしています。我が国を訪問した中国の延吉に住む老革命家とその子女に会って聞いた話ですが、いま南朝鮮かいらいは、中国に住む朝鮮人を思想的に瓦解させようとさまざまな策動をしているとのことでした。咸鏡北道は、外国と国境を接している地域に腐敗したブルジョア思想が浸透するおそれがあることを一時も忘れず、思想革命の強化に第一義的な力を入れるべきです。

 我々が思想革命を確固と優先させなければ、我が国の社会主義制度を固守することも、社会主義・共産主義建設の偉業を成功裏に遂行することもできません。我が党が思想革命を第一義とし、その遂行にひきつづき大きな力を入れている理由はまさにここにあるのです。

 思想革命の遂行で最も重要なのは、個人主義、利己主義に反対してたたかうことです。

 社会主義社会において、個人主義、利己主義は資本主義を助長する病菌にひとしいものです。個人主義、利己主義がはびこると、資本主義が復活するようになります。いま、一部の国では、人々が利己主義に毒され、金しか知らない人間になりさがっており、教員まで授業が終わると、金もうけのため市場に出かけて商売をしているそうです。外国に行ってきた活動家は、口をそろえて我が国がいちばんで、我が党の政策が最も正しいといっています。人間が金銭の味をしめると革命精神を発揮することも、革命的信義を守ることもできず、最後には国を売り渡すようにまでなります。ですから党組織は、人々が個人主義、利己主義の思想に毒されないよう、教育活動に力をそそがなければなりません。

 咸鏡北道党委員会は、羅津−先鋒地区を自由経済貿易地帯にすることと関連して、その地域の住民にたいする思想教育に特に大きな力をそそぐべきです。その地区に住む人々の教育に綿密に取り組み、かれらが絶対に資本主義の病菌におかされないようにすべきです。羅津−先鋒地区の住民にたいする思想教育を強化すると同時に、その地区で働くサービス部門の従事者も正しく教育して、かれらが外国人と接触する過程で資本主義の毒素におかされたり、思想的に変質したりしないようにすべきです。

 道党委員会は、党員と勤労者のあいだにあらわれる個人主義的、利己主義的行為にたいしては、それがたとえ些細なものであっても、そのつど批判しなければなりません。それを放任しておくなら、資本主義の病菌におかされ、恐ろしい泥沼にのめりこむことになります。

 党組織は、党員と勤労者のあいだで個人主義、利己主義に反対して強く闘争すると同時に、集団主義精神で武装させる教育を強化すべきです。

 集団主義は「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というスローガンのもとに、助け導き合う共産主義者の気高い精神です。党組織は、党員と勤労者のあいだで集団主義教育を着実におこなって、かれらが、社会と集団、祖国と人民のため献身的に奉仕するようにすべきです。党員と勤労者を集団主義精神で武装させるには、チュチェ思想教育と共産主義教育を正しくおこなわなければなりません。こうしてこそ、人々が、個人主義、利己主義に反対し、社会と集団の利益のため、誰もがひとしく自由で平等に暮らす社会主義・共産主義を建設するため積極的にたたかうチュチェ型の革命家になることができます。

 思想革命の遂行においては、インテリとの活動を正しくおこなうことが大切です。

 インテリは、労働者、農民とともに、革命と建設において重要な役割を果たします。インテリなくしては、文化的な社会を建設することができず、人民大衆の底知れない創造力を強く発揮させることも、自然を征服する事業を成功裏に進めることもできません。

 革命と建設におけるインテリの役割が重要であるため、我が党は党を創立するとき党のマークにハンマーと鎌とともにインテリを象徴する筆を印し、新しいインテリを数多く育成する一方、古くからのインテリを革命化、労働者階級化して、人民に忠実に奉仕する真の労働者階級のインテリ、熱烈な革命家に鍛えることに大きな力を入れました。党のマークにインテリを象徴する筆を印した党は、世界で我が党しかありません。我々が、党のマークに筆を印したのは至極正当なことです。これについては外国人も指摘しています。

 社会主義・共産主義社会を建設するには、全社会をインテリ化しなければなりません。それで私は、『社会主義教育にかんするテーゼ』で、全社会をインテリ化する問題を重要な課題としてうちだしたのです。

 現在、我々は160余万のインテリ大集団を擁していますが、解放直後はインテリがわずかしかいませんでした。当時は、大学を創設しようにも教員になれる人がいませんでした。それで、南朝鮮のインテリを招いてきたのですが、当時、姜永昌(カンヨンチャン)、盧太石(ロテソク)、金斗三(キムドゥサム)同志をはじめ、多くのインテリが来ました。私は、かれらをあたたかく包容して大事に育てました。そして、かれらを我が国で初めて創立された金日成総合大学に送り、若いインテリを多く育てる任務を与えました。解放後に育てたインテリをもとにして数多くの大学を設け、いまでは160余万のインテリ大集団を擁するまでになりました。

 インテリとの活動を正しくおこなってかれらの役割をさらに高めることが極めて重要であるため、今後、平壌で朝鮮知識人大会を盛大に催してインテリを鼓舞し、かれらが党と領袖、祖国と人民、社会と集団に献身的に奉仕できるようにしたいと考えています。

 党組織は、インテリとの活動の重要性を明確に認識し、インテリの革命化、労働者階級化にひきつづき大きな力を入れ、かれらが社会主義・共産主義建設のために献身できるようにすべきです。

 党員と勤労者のあいだで革命伝統教育を強化するのは、思想革命の遂行において極めて重要な問題として提起されます。

 咸鏡北道には、党員と勤労者のあいだで革命伝統教育を強化するのに有利な条件がととのっています。咸鏡北道には、抗日革命闘争期の革命戦跡地と史跡地が多くあります。私は平安南道で生まれましたが、革命闘争は多くの場合、咸鏡北道と中国の東北地方でくりひろげました。そのため、咸鏡北道の方言もかなり知っています。咸鏡北道は、中国の東北地方と豆満江をひかえているので、抗日遊撃隊小部隊の活動地域とならなかったところがありません。穏城郡(オンソン)、茂山(ムサン)郡、延社郡(ヨンサ)、セッピョル郡、先鋒郡など豆満江沿岸の郡はいうまでもなく、清津市と金策市をはじめ他の地帯にも、抗日遊撃隊の小部隊と工作員がたびたびやって来て活動しました。これは、咸鏡北道一帯で発見されたスローガンを記した樹木を見るだけでもよくわかります。私も抗日革命闘争の時期、穏城地区をはじめ、咸鏡北道に幾度も来たことがあります。咸鏡北道では革命伝統教育に有利な条件を利用して、党員と勤労者のあいだで革命伝統教育を生々しい資料をもって着実におこなうことにより、かれらが党の唯一思想体系を確立し、いかなる風が吹き荒れようと微動だにしない不撓不屈の革命精神を身につけるようにすべきです。

 思想革命を成功裏に遂行するには、党を強化しなければなりません。こうしてこそ、党員と勤労者を思想的にしっかり準備させて革命の主体を強化し、我々が血をもって獲得した革命の獲得物である社会主義を固守し、社会主義・共産主義偉業を立派に実現することができます。歴史の教訓は、党が弱体化すれば革命の主体を強化できず、革命と建設を台無しにするのはもちろん、社会主義の旗を最後まで固守することができなくなることを示しています。70余年のあいだ社会主義を建設してきたソ連が一朝にして崩壊し、東欧社会主義諸国で資本主義が復活することになったのは、革命の裏切り者によって党が弱体化し指導力を失ったからです。

 我々は、党をさらに強化し、その指導的役割を高め、いかなる環境と状況のもとでも社会主義の革命的原則を守り、社会主義・共産主義偉業を最後まで完成しなければなりません。

 党を強化するうえで最も重要なのは、党細胞を強化することです。党の強化において各級党委員会をしっかりかため、その役割を高めることも重要ですが、さらに重要なのは細胞を強化することです。

 党は、党組織の有機的結合体であり、党細胞は我が党の末端基層組織です。人体が細胞でなりたっているように、党も党細胞で構成されています。人体をなす細胞が丈夫で円滑に活動してこそ人間が健康であるのと同様、党も党細胞が健全でその機能と役割を円滑に遂行してこそ強化されます。党内に資本主義の病菌が浸透しないようにするためにも、党細胞を強化しなければなりません。それゆえ、党組織は党細胞の強化に深い関心を払うべきです。

 これと同時に、党員と勤労者の党組織生活と勤労者団体組織生活を強化すべきです。党員と勤労者の組織生活を強化することは、党を強化する根本的保障の一つです。党細胞を構成している党員と、党の外郭団体である勤労者団体組織に網羅されている勤労者が、思想的に健全で組織生活に忠実であれば、党が強固な大衆的基盤のうえで戦闘力のある党に強化され、発展することができます。党組織は、党細胞に党員の党生活を正しく指導させる一方、各級勤労者団体組織が同盟員の組織生活に綿密に取り組むようにすべきです。

 社労青は社労青員の組織生活、職業同盟は職業同盟員の組織生活、農業勤労者同盟は農業勤労者同盟員の組織生活、女性同盟は女性同盟員の組織生活にしっかり取り組んで、すべての同盟員を党のまわりにかたく結集し、かれらが党の路線と政策を擁護、実行するため積極的にたたかうようにしなければなりません。勤労者団体組織は、同盟員を組織生活をつうじて革命的に鍛え、資本主義に反対し、社会主義・共産主義を擁護する思想で武装させるべきです。そうして、同盟員が資本主義に反対し、社会主義・共産主義建設のため断固たたかい、いかなる資本主義の病菌にもおかされないようにすべきです。私がきょう、みなさんに重点的に強調したいのは、ほかならぬこのことです。我々が党を強化し、党員と勤労者の組織生活を強化してすべての党員と勤労者を思想的にしっかり準備させれば、資本主義の病菌が浸透するとしても恐れることはありません。すべての党員と勤労者が思想的にしっかり準備されていれば、資本主義国の人々と接触してもおじけることがなく、一部の国が資本主義に進んでも恐れることはありません。我々は資本主義の病菌の浸透を警戒すべきですが、恐れる必要はありません。革命的意志が強ければ資本主義の病菌は浸透できません。みなさんは、革命映画『朝鮮の星』で、私が病気の朴素心(パクソシム)を訪ねていく場面を見たと思いますが、健康な人には病菌もよりつけないものです。朴素心は、私に『資本論』の手引きとなって解説してくれた忘れがたい人です。かれは、日本で大学を卒業し、新聞や雑誌に多くの文章も載せました。かれとは、しばらくのあいだ同宿しながらマルクス・レーニン主義を探究し、その過程で人間的にもとても親密になりました。その後、かれは結核にかかりました。現在は抗生剤が発展していて結核などはそれほどの病気と思いませんが、当時はこの病気にかかると、手当てもできず死んだものです。そのため、人々は結核を恐れ、その病気にかかった人を避けました。朴素心が結核にかかった後、卡倫地方に送って病気の治療にあたらせましたが、かれは人里離れたところで自炊し、魚釣りなどをしなから療養しました。私が所用のため長春へ発つとき、車光秀(チャングァンス)同志に朴素心を見舞うよう頼みました。かれは、行くと返事はしたものの、途中で人から引き止められたからといって、朴素心に会わずに帰ってきました。そのとき、私は非常に不愉快な思いをしました。私は、同志との信義を守るためなら病気もなにものぞ、心がしっかりしていれば病気もよりつけないものだと思い、朴素心を訪ねて行きました。かれは、私と握手もしようとせず、帰ってくれといいましたが、私はかれと一緒にご飯も食べ、一晩泊まりました。それでも、私は結核にかかりませんでした。

 人体が健康であればいかなる病菌も浸透できないのと同じように、思想が健全であれば資本主義の病菌がいくら浸透しようとしてもできません。それゆえ、我々は、党員と勤労者を我が党の革命思想、チュチェ思想で武装させ、いかなる不純な思想も浸透できないように強固な防御陣をはらなければなりません。

 咸鏡北道党委員会は、道党総会を開き、思想革命を成功裏に遂行する問題を討議するのがよいでしょう。

 咸鏡北道に提起される重要な課題は次に、営農実績を上げることです。人民の宿望をかなえるためには、なによりも営農実績を上げなければなりません。白米の飯に肉汁を食べ、絹の服を着て瓦ぶきの家に住みたいというのは、昔からの朝鮮人民の宿願でした。朝鮮人民のこの宿願を我々の時代にかなえてやらなければなりません。

 咸鏡北道が営農実績を上げれば、人民のこの願いを他に先がけて実現することができます。咸鏡北道の人々は、抗日革命闘争の時期、革命闘争にも多く参加し、革命家も多く育てたのですから、白米の飯に肉汁を食べ、絹の服を着て瓦ぶきの家に住みたいという願いも他に先がけて実現しなければなりません。咸鏡北道には、王在山(ワンジェサン)や柳多(リュダ)島をはじめ、革命史跡地と戦跡地がたくさんあります。王在山と柳多島は、抗日革命闘争の時期、私が来て活動したところです。咸鏡北道は、日本帝国主義を敗北させる最後の攻撃作戦を展開するとき、朝鮮人民革命軍部隊とソ連軍が共同で歴史的な上陸作戦を敢行したところです。朝鮮人民革命軍がソ連軍と共同で上陸作戦を展開したとき、私の伝令であった金鳳錫(キムボンソク)同志もこれに参加し、連絡任務を遂行して帰隊する途中、敵弾に倒れました。かれは、祖国解放の前日である1945年8月14日の夕方に戦死しました。

 咸鏡北道はすでに基礎をきずいておいたので、その気になって取り組むなら、十分営農実績を上げることができます。このたび咸鏡北道に来ていちばんうれしかったのは、営農実績を上げて穀物を自給自足できる土台をきずきあげたことです。以前は、咸鏡北道のヘクタール当たり穀物収量についての明確な基礎データがなかったので、穀物生産課題を明確に与えることができませんでしたが、これからは確信をもって課題を明確に与えることができるようになりました。

 咸鏡北道にも営農実績を上げている農場が少なくありません。今年予想されるヘクタール当たりの収量をみると、穏城郡王在山協同農場では籾米が8.5トン・トウモロコシが11.3トン、セッピョル郡農圃(ノンポ)協同農場では籾米が8トン142キログラム、トウモロコシが9トン490キログラム、会寧(ヘリョン)市仁渓(インゲ)協同農場では籾米が8.1トン、トウモロコシが6トン、鏡城(キョンソン)郡上温堡(サンオンポ)協同農場では籾米が5.1トン、トウモロコシが8トンだとのことです。金策市湖通(ホトン)協同農場で予想されるトウモロコシのヘクタール当たり収量は8トンだといいます。

 今年、肥料さえ十分に生産、供給していたなら、全般的な営農実績が上がっていたはずです。咸鏡北道で肥料を十分に生産、供給できなかった責任は、恩徳(ウンドク)郡党委員会と7月7日連合企業所にあります。7月7日連合企業所が、肥料を十分に生産していたなら、ヘクタール当たり800キログラムはほどこせたはずです。肥料をヘクタール当たり800キログラムほどこせば、1対10の原則で穀物を8トン収穫できます。穀物は、肥料をほどこしただけ収穫できるものです。だからこそ、肥料はすなわち米であるというのです。トウモロコシは一代雑種の種子を用い、潅水施設をととのえて十分に給水し、肥料をバランスよく十分にほどこせば、どこでも多収穫が得られます。トウモロコシづくりでは、種子と用水、肥料、この3つの条件さえよくととのえれば、ヘクタール当たり8トンどころか10トン以上生産できます。

 咸鏡北道では、年に60万トンの穀物を生産すべきです。

 これはむずかしいことではありません。トウモロコシをヘクタール当たり10トン収穫すれば、それだけでもほとんど60万トンになります。トウモロコシをヘクタール当たり10トン生産するのが不可能であるとしても、8トンは生産できるでしょう。咸鏡北道では、トウモロコシをヘクタール当たり8トン生産しても大きな成果です。ヘクタール当たりトウモロコシは8トン、籾米も8トン収穫すれば、それだけでも60万トン以上になります。咸鏡北道で籾米とトウモロコシを合わせて60万トン以上生産すれば、50万トンは食糧として消費し、残りは家畜飼料にして食肉を生産することができます。咸鏡北道には、養鶏工場、アヒル飼養工場、養豚工場など、食肉生産基地がしっかりしているので、穀物を60万トン以上生産して飼料さえ充足できれば、食肉生産は十分可能です。そうなれば、咸鏡北道は道内の人民に白米の飯に肉汁を他に先がけて食べさせることができます。

 現在、我が国で実施している食糧供給制度はじつにすばらしいものです。誰にもひとしく、生まれてから死ぬまで国家から食糧が供給されています。我々は、世界のどこにもない、最もすぐれたこの食糧供給制度を絶対になくしてはなりません。

 咸鏡北道で来年60万トンの穀物を生産するためには、7月7日連合企業所がなんとしても窒素肥料を15万トン生産して供給しなければなりません。

 咸鏡北道に提起される重要な課題は次に、工業部門での生産を正常化することです。

 なによりも石炭生産の正常化に大きな力をそそぐべきです。咸鏡北道の工業部門に提起される最も重要な課題は、1にも2にも3にも石炭の増産です。石炭生産を増大してこそ、火力発電所をフル稼働させて電力の需要を満たし、化学工業部門をはじめ、他の部門での生産も正常化することができます。咸鏡北道は、道に提起される基本課題が1にも2にも3にも石炭の増産であることを肝に銘じ、これに大きな力をそそぐべきです。

 咸鏡北道には、膨大な石炭が埋蔵されています。いま咸鏡北道では石炭の山に座って、石炭不足に悩まされているありさまです。咸鏡北道は年間1200万トンの石炭生産目標をたてて奮闘し、1995年までは年に1000万トンずつ生産しなければなりません。

 石炭生産を増やすには、坑道を恒久化する必要があります。咸鏡北道内の炭鉱は地圧が強いので、坑道を恒久化しなければ石炭生産を増やすことができません。そのため、私はすでに久しい前に、咸鏡北道内の炭鉱を恒久化するよう強調しました。しかし、咸鏡北道はこの課題を満足に実行していません。咸鏡北道内の党組織、特に炭鉱党組織は、炭鉱労働者のなかに入って組織・政治活動を力強くくりひろげ、坑道を恒久化する作業を推進すると同時に、石炭生産の速やかな増大をはかるべきです。

 電力生産にも力をそそぐべきです。咸鏡北道には、大規模の工場、企業所が多いので、電力不足をきたしています。咸鏡北道では現在の発電所をフル稼働させる一方、新しい発電所を建設しなければなりません。

 6月16日火力発電所をはじめ、現在の発電所をフル稼働させる万全の対策を講じるべきです。6月16日火力発電所をフル稼働させるには、重油を輸入しなければなりません。

 咸鏡北道の電力不足を解消するには、火力発電所をさらに建設しなければなりません。咸鏡北道は、水力資源に恵まれていません。水力発電所の建設が可能なところは漁郎(オラン)川以外にはありませんが、そこに発電所を建設するとしても、せいぜい10万KWほどの電力しか生産できません。ですから、金策地区に10万KW能力の火力発電所を早急に建設しなければなりません。

 金属工業にもひきつづき大きな力をそそぐべきです。

 咸鏡北道は、我が国屈指の鋼鉄生産基地です。咸鏡北道で鋼鉄が生産されてこそ、国の全般的経済を発展させることができます。ところが現在、咸鏡北道内の金属工場で鋼鉄生産が円滑にいかないので、人民経済の発展に少なからぬ支障を与えています。咸鏡北道は道内の金属工場で生産の波動をなくし、生産を正常化するために積極的な努力を傾けなければなりません。

 金属工場の生産を正常化するには、茂山鉱山連合企業所で鉄精鉱を円滑に生産し、コークス用炭も切らさず供給しなければなりません。咸鏡北道では、自力で外貨を獲得してでもコークス用炭を買い入れ、金属工場に切らさず供給しなければなりません。

 咸鏡北道では、化学工業も発展させるべきです。そうしてこそ、化学繊維や紙など、化学製品を大量に生産して人民生活の向上をはかることができます。

 化成(ファソン)化学工場でトウモロコシの皮を原料にして紙とレーヨンパルプを生産する方法を開発したのはたいへんすばらしいことです。これを早速生産に導入することです。咸鏡北道ではトウモロコシを多く栽培しているので、紙とレーヨンパルプの生産に必要なトウモロコシの皮は充足できるでしょう。咸鏡北道では、トウモロコシの皮で紙とレーヨンパルプを生産する事業を強力に推進すべきです。

 建設にも大きな力をそそぐべきです。現在、咸鏡北道内の建設ははかばかしく進んでいませんが、建設陣容を強化してこれも力強く推進しなければなりません。咸鏡北道は、清津市を平壌市につぐ都市に立派にととのえるべきです。そのためには、清津市の建設を本格的におし進めなければなりません。

 羅津−先鋒地区の建設にも大きな力を入れるべきです。私は、羅津−先鋒地区を近代的に建設する構想を練っています。うまくすれば、今後約10年内に羅津−先鋒地区を立派に建設することができます。すでに羅津−先鋒地区の開発について公開しているのですから、この地区の建設に早く着手しなければなりません。いま外国人は、羅津−先鋒地区の建設進行状況を注視しています。

 羅津−先鋒地区の建設では、まずホテルから建て、その後に他のサービス施設をととのえるべきです。サービス施設の建設はそれほど手がかかりません。羅津−先鋒地区に来る外国人に野菜や肉類などをいつでも販売できるように温室と牧場をつくればすみます。国連開発計画が羅津−先鋒地区の建設に投資するといっていますが、要求どおり建設してやるべきです。その投資は国連開発計画がするとしても、建設に必要な労働力と技術者は我々が提供し、建設も我々が担当しなければなりません。

 羅津−先鋒地区の開発と関連して、空港と高速道路も建設すべきです。外国人は、飛行機や車を利用し、汽車を利用しようとはしません。今後、咸鏡北道には多くの外国人が往来することになるので、空港と高速道路を立派に建設しなければなりません。

 冠帽(クァンモ)地区に空港を新設すべきです。これに必要な労働力は咸鏡北道が保障し、セメントは人民軍が提供しなければなりません。冠帽地区の空港建設は来年からはじめるのかよいでしょう。

 冠帽地区と羅津−先鋒地区の空港建設と関連して、冠帽地区と清津市、羅津−先鋒地区と清津市を結ぶ高速道路を建設すべきです。まず清津市と冠帽地区を結ぶ高速道路を建設し、その後に清津市と羅津−先鋒地区を結ぶ高速道路を建設することです。そうすれば、外国人が飛行機で来て、清津市と羅津市のホテルを思いどおり利用することができます。やがては、中国の図們市と羅津市、会寧市と清津市を結ぶ高速道路も建設すべきです。

 郡の建設にも力を入れるべきです。今後、咸鏡北道の各郡では、野良にある住宅を取り壊して山のすそに移築しなければなりません。そうすれば、多くの耕地が得られます。各郡で住宅建設運動を広く展開して多くの住宅を建てれば、白米の飯に肉汁を食べ、絹の服を着て瓦ぶきの家に住みたいという朝鮮人民の願いをかなえることができます。

 都市と農村をきれいにととのえ、高速道路などを立派に建設すれば、資本主義との競争で勝利することができます。資本主義社会は、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる「富益富、貧益貧」の社会です。我が国は富める者も貧しき者もなく、すべての人が均等に暮らしているので、資本主義との競争で十分勝利することができます。

 私の誕生80周年にさいし、世界各国から多くの党代表団が訪朝しました。東欧諸国と独立国家共同体諸国からも多くの党代表団が訪朝しました。そのとき訪朝した外国の党代表団が一堂に合して平壌宣言を採択しましたが、現在までその宣言を支持して署名した党は131にのぼります。平壌宣言の基本思想は、社会主義運動を再建し、社会主義の原則を守るため断固たたかおうということです。我々は、社会主義の原則を堅持しながら、資本主義との競争で必ず勝利しなければなりません。

 咸鏡北道の膨大な建設課題を成功裏に遂行するためには、建設陣容を補強しなければなりません。

 平壌市の建設に動員されている咸鏡北道の建設労働力は来年の10月までその場で働かなければならないのでそのままにしておき、3つの建設事業所を新たに設けるべきです。清津市と空港、高速道路の建設のためにも建設陣容を補充しなければなりません。2つの空港と高速道路を建設するには、それを担当する建設事業所が別個に1つなければなりません。空港と高速道路の建設は簡単なものではありません。

 私の考えでは、羅津−先鋒地区の建設を担当する建設事業所を早急に設けて建設に着手すべきだと思います。新設される建設事業所に設備と労働力を十分に提供すべきです。この建設事業所に必要な労働力は除隊軍人を送ることにしますが、そのほかに必要な労働力は道内の青壮年で補充することです。

 終わりに、咸鏡北道での外貨獲得問題について簡単に述べたいと思います。

 咸鏡北道が多くの外貨を獲得するには、山と海を効果的に利用しなければなりません。咸鏡北道は山が多く海に面しているので、山と海を効果的に利用することが大切です。昔から我々の祖先は、山をひかえているところでは山を効果的に利用し、海に面したところでは海を効果的に利用すべきだといってきました。咸鏡北道では、山と海を効果的に利用すれば多くの外貨を獲得することができます。

 山を利用して多くの外貨を獲得するには、山に工芸作物を栽培しなければなりません。咸鏡北道ではすでに山に工芸作物を栽培しはじめているので、可能なすべての山に栽培すべきです。

 山の利用で重要なのはまた、山によく育つ木を多く植えることです。山に育ちの早い広葉樹を多く植えれば、パルプの原料にも使い、家具や建設用としても利用することができます。植樹を大衆的な運動として力強く展開し、山に有用な木をより多く植えなければなりません。

 山を利用してカモシカを飼う運動も広く展開すべきです。

 咸鏡北道では、シロアンズや梨の木も多く植えるべきです。咸鏡北道ではシロアンズと梨がよく実るので、それを多く植えるのか有益です。シロアンズを大量に生産すれば、ジャムをつくって販売することができます。

 咸鏡北道が多くの外貨を獲得するには、海を効果的に利用しなければなりません。水産業を発展させて漁獲高を増やし、浅海養殖も大々的におこなわなければなりません。漁獲高を増やし浅海養殖を大々的におこなって水産物を大量に生産すれば、それを輸出して少なからぬ外貨を得ることができます。中国の延辺地方に水産物や水産物の缶詰などを売れば、先方から大豆やトウモロコシを買い入れることができるでしょう。水産物を生産して外貨を獲得する問題は、当該部門の活動家が集まってさらに討議するのがよいでしょう。

 咸鏡北道は、ロシアとの貿易も盛んにすべきです。そうすれば、原木とコークス用炭、原油を買い入れることができます。咸鏡北道には石油精製工場があるのですから、ロシアとの貿易を盛んにし、原油を輸入して加工することを考えるべきです。

 咸鏡北道に提起される課題は膨大なものです。私は、咸鏡北道内のすべての幹部と党員と勤労者が、道党委員会の指導のもとに奮闘して、きょう与えた課題を成功裏に遂行するものと確信します。

出典:『金日成著作集』43巻


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