金 日 成

水産物の生産を増やして人民の食生活を向上させよう
 ―水産部門の責任幹部協議会でおこなった演説―
1991年12月3日 

 水産物の生産問題について以前はしばしば討議しましたが、ここ数年間はできませんでした。それで、今回咸鏡南道に来た機会に、咸鏡南道水産総局をはじめ水産部門の実態を調べ、水産物の生産を増やす対策を立てるため、きょう水産部門の責任幹部に集まってもらいました。

 水産物の生産を増やして人民に魚類と海藻類を十分に供給するのは、社会主義の目標を達成するうえで極めて重要な意義をもちます。社会主義の目標は、全人民が白米の飯に肉汁を食べ、絹の服を着て瓦ぶきの家に住めるようにすることです。私は、外国人から朝鮮が達成すべき社会主義の目標について聞かれると、全人民が貧富の差なく、誰もが白米の飯に肉汁を食べ、絹の服を着て瓦ぶきの家に住めるようにすることだと答えています。我々がかかげた社会主義の目標は、人民の生活水準をかつての中産階級のレベルに引き上げることです。過去、わが国の中農の生活水準は、日に3度のご飯が食べられるぐらいのものでしたが、いまの朝鮮人民の生活水準は過去の中農より高いといえます。しかし我々は、いまなお人民に肉類や水産物を十分に供給していません。私は何としても、農業実績を上げて人民に肉類を1日100グラムは供給しようと思います。今年は協同農場の作柄が比較的良好なので、豚をかなり飼育できるようになりました。これから、魚類をはじめ、水産物まで十分に供給すれば、社会主義の目標達成に一大転換がもたらされるようになるでしょう。

 水産物を大量に生産して供給すれば、人民の食生活を豊かにし、子どもの背を伸ばし丈夫に育てることができます。育ちさかりの子どもが、魚類をはじめ、蛋白質の多い食物を十分に取れば、背が早く伸び、骨格も丈夫になります。

 私は以前、全国学生少年の芸術公演をたびたび見ましたが、新浦から来た生徒たちが背もいちばん高く骨格もがっちりしていました。男子はもとより、女子生徒も、他の地方から来た生徒に比べて新浦から来た生徒がずっと大きいようでした。

 新浦で育った生徒がほかの地方の生徒より背が高く骨格ががっちりしているのは、魚をたくさん食べているからです。

 子どもは、発育するとき必要な栄養素を十分に含んだ食物を満足に食べられなければ背が伸びません。かつて抗日武装闘争の時期、少年中隊の隊員のほとんどは背が低いほうでした。彼らは幼いころ、よく食べられずに育ち、少年中隊に入隊したのちにも満足に食べられなかったので、背が伸びなかったのです。

 以前、万景台革命学院の新入生のなかにも背の低い生徒がかなりいましたが、それも、育ちさかりに満足に食べられなかったからです。彼らは、学院に入学して給食条件がよくなると、体も丈夫になり背も伸びました。

 わが国では、子どもがこの世に生まれれば国家が責任をもって、託児所と幼稚園、学校で養育しているのですから、幹部は育ちゆく子どもを大きく、丈夫に育てなければなりません。もし、育ちゆく子どもを丈夫に育てられなければ、そういう人は人民の忠僕としての本分を果たしていないことになるばかりか、人民に罪を犯すことになります。

 ところがいま、幹部たちは、子どもと勤労者に魚をはじめ、水産物を満足に供給していません。ここ数年間、水産物の生産が増えていませんが、その責任は水産部門の幹部にあります。以前、ほかの幹部が水産委員会委員長を務めていたときは、水産物の生産がひきつづき上昇し、漁獲量が年に150万トン以上になるときも少なくありませんでした。

 いまは魚族資源が減少したため漁獲量を増やせないというのは、口実にすぎません。一部の魚族資源が減少しているなら、そのかわり資源の多い魚を捕ればよいはずです。データによると、朝鮮西海の魚族資源は安定した状態にあるとのことです。水産部門の責任幹部が仕事の手配を的確にすれば、西海でも漁獲量を増やすことができます。現在、外国の漁船が西海で魚をたくさん捕っていくとのことです。外国の漁船が西海にきて魚を捕っていくのを見ても、魚族資源がなくて漁獲ができないというのはもってのほかです。

 水産部門に燃料油が円滑に供給されないので漁獲高を増やせないというのも口実にすぎません。燃料油がなくても漁獲は可能です。燃料油がない場合は、櫓こぎ舟で小規模漁業をすればよいのです。小規模漁業をさかんにしても多くの魚を捕ることができます。

 昨日の朝、麻田の沿岸にカモメが群がっているので、軍人たちに袋建網を張るようにといいました。彼らが小舟を出して袋建網を一つ張ったところ200キログラムほどの魚が捕れました。その後、袋建網を4つもってきて麻田海水浴場のそばにまた張らせたところ、別の魚は除いてハタハタだけでも800キログラムほど捕れました。

 小規模漁業は、小さい網と櫓こぎ舟さえあれば十分可能です。

 小規模漁業をすれば一晩で数百キログラムの魚を捕ることができます。咸鏡南道で小規模漁業をして咸興市の労働者に魚を供給すれば、たいへん喜ばれるでしょう。海に面しているわが国で、人民に魚を満足に供給できないというのは論外です。

 いま、わが国で漁獲量が多くないのは、水産部門の幹部が仕事に熱心でないからです。水産部門の幹部は、毎月国家から給料をもらい食糧の供給を受けて、何の心配もなく安楽な暮らしをしているため、漁獲量を増やすため懸命に努力していません。

 おそらく、南朝鮮の漁民が、こちらの水産部門従事者のように漁業を営んではみんな飢え死にしてしまうでしょう。南朝鮮の漁民は、魚を捕らなければ生計を立てることができません。彼らは魚を捕らなければ、子どもを学校にやることもできず、妻が病気で寝こんでも薬を使うこともできないので、どんな悪条件のもとでも海に出て魚を捕ります、彼らは、生きるために釣りをしてでも魚を捕ります。ところがわが国では、水産部門従事者が魚を捕らなくても子どもを無料で勉強させ、一銭の金もかけずに治療を受けており、久しい前から税金という言葉すら知らずに心配のない生活をしています。わが国でも、水産部門従事者が魚を捕らなければ生活できないようにすれば、誰もが精を出して働くようになるでしょう。だからといって、我々が資本主義社会でのように、金銭めあてに人びとを働かせるわけにはいきません。東欧諸国の社会主義が崩壊したのは、人びとが熱心に働くように思想を啓発し経済組織活動を綿密にするのでなく、資本主義的方法を取り入れたからです。我々は、資本主義的方法を取り入れるのでなく、社会主義的方法を具現し、世界で最もすばらしいわが国の社会主義制度の優越性を高く発揮させなければなりません。社会主義制度の優越性を高く発揮させるためには、すべての人が主人としての態度でまじめに働き、各自に課された革命課題を責任をもって遂行するようにしなければなりません。

 水産部門では、1人当たり1日に150グラムの魚がゆきわたるようにすべきです。人民に魚類を十分に供給するには、1人当たり1日に200グラムは保障しなければなりません。

 水産部門では、海藻も多く生産して、人口1人当たり1日に乾物で50グラムはゆきわたるようにすべきです。今年数十万トンもの海藻を収穫したとはいえ、乾物で計算すればわずかなものにすぎません。

 水産部門で人口1人当たり1日に魚類は150グラム、海藻は乾物で50グラムゆきわたるようにすれば、人民の食生活がいちだんと向上するのみか、育ちゆく子どもの背もはるかに伸びることでしょう。

 私がきょう提示した、人口1人当たり1日に魚類150グラム、乾物の海藻50グラムを供給する目標は、すべての人に実数で供給される量です。この供給量には、輸出する水産物や目減りの分量などを含ませてはいけません。水産物供給目標にそれらを含めるなら、人民に実際に供給される量が少なくなるので、そうしてはなりません。私が定めた目標は、商店で各所帯に実際に供給する魚類と海藻の量です。

 わが国の人口には人民軍軍人も含まれているので、軍人にも魚類と海藻が十分にゆきわたるようにすべきです。人民軍軍人には、魚類と海藻を優先的に供給しなければなりません。

 水産物生産計画を正しく下達すべきです。そうしてこそ、水産部門の従事者が発奮して、水産物の増産をはかるために奮闘します。

 現在、水産物生産計画が正しく与えられていません。水産部門では、漁獲計画を従業員数によってではなく、出漁して直接漁獲作業にあたる漁労工の数によって与えています。そのため、水産部門の従業員1人当たりの漁獲高が少なく、小規模漁業と浅海養殖がおろそかにされています。

 今年の咸鏡南道の水産部門従業員1人当たりの漁獲計画は10トンにもなりませんが、これは漁獲計画の与え方が間違っていることを示しています。国家計画委員会の活動家は下部に出向き、実情を正確に調べたうえで計画を立てず、下部から提出される資料にもとづいて作成するので、漁獲計画が正しく立てられていません。水産部門従業員1人当たりの漁獲高が年に10トン程度では、人民に魚類を十分に供給することができません。我々が人民に魚類を十分に供給するには、水産部門従業員1人当たりの年間漁獲高が15トンにはならなければなりません。

 水産部門従業員1人当たりの漁獲高が年間15トンになれば、そのうちの一部を輸出して燃料油と漁具を買い入れても、人民に魚類を十分に供給することができます。それゆえ、水産部門の漁獲計画は、従業員1人当たり年間15トンの漁獲高を基準にして与えるべきです。ただし、この数字には、魚類だけを含ませ、ほかのものは含ませてはなりません。水産部門では、このように目標を立てて漁獲に励まなければなりません。来年、咸鏡南道では、54万6000トンの漁獲目標を立て、海に面している咸鏡北道と江原道、平安南道、平安北道、黄海南道でも、従業員1人当たりの年間漁獲高を15トンと見積もって漁獲計画を作成しなければなりません。

 海藻生産計画も水産部門の従業員数を基準にして立てるべきです。水産部門の従業員1人当たり海藻生産計画をどれくらいにするかということは、当該部門の活動家が十分に討議して定めるべきです。

 水産部門では、水産物の増産で提起される問題を自力で解決していかなければなりません。言いかえれば、水産総局や各管理局が企業管理を合理化して自活することを心がけるべきです。

 私がきょうの協議会で特に強調したいのは、まさにこの問題です。水産部門では、燃料油が不足すれば魚を輸出して燃料油を買い入れ、魚を捕らなければなりません。そして、自力で、漁船も修理すべきものは修理し、漁網など不足する漁具や資材もまかなわなければなりません。もちろん、水産部門に必要なものは国家からも補助すべきです。しかし水産部門では、国家にばかり依存しようとせず、現在の漁具や漁船をよく整備しその利用率を高めて、水産物の増産に励まなければなりません。

 水産部門では、燃料油がない、漁具がないとぐちばかりいわず、提起される問題を自力で解決する原則を貫くことにより、水産物の生産に画期的な転換をもたらすべきです。

 きょう水産部門に提示した課題の遂行状況は、来年私が直接総括することにします。そのときは、水産部門の責任幹部が、私から課題を与えられたとおり魚類と海藻を供給したという報告をしなければなりません。

 水産委員会委員長と咸鏡南道水産総局長が、水産部門のすべての活動家と従業員を奮起させて私から課題を与えられたとおり魚類と海藻を生産して人民に供給すると決意したのは結構なことです。来年からは、人民に水産物を切らさず供給するよう期待します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』43巻 

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