金 日 成

自由、平和の新しい世界のために
列国議会同盟第85回総会開幕会議でおこなった演説
−1991年4月29日−


 尊敬する列国議会同盟評議会議長先生!

 尊敬する代表のみなさん

 きょう、我が国の首都平壌(ピョンヤン)で列国議会同盟第85回総会が開催されたことは、朝鮮人民にとって大きな喜びであります。

 私は、会議に出席した世界各国の国会代表と国際機構の代表、外国の賓客のみなさんを心から歓迎します。

 今回の総会は、世界各国の国会間の理解を厚くして協力を発展させ、朝鮮人民と世界各国人民間の友好と連帯を強めるうえで重要な契機となるでしょう。

 私は列国議会同盟第85回総会が代表のみなさんの誠意ある努力によって上程された議題を成功裏に討議し、立派な結実をもたらすよう望みます。

 尊敬する代表のみなさん!

 各国において国会は国家の最高立法機関であり、民主政治を実現すべき使命と責任を担っています。民主主義は、人民の自主的権利を擁護する国家政治の基本理念となるのみでなく、諸国間の平等と協力を保障する世界政治の共通の理念とならなければなりません。国家の対外政策は対内政策の延長であり、したがって、個々の国の民主化と国際社会の民主化は互いに密接に関連しています。自国の民主政治の発展のために献身している国会議員は、世界政治の民主化にも極力寄与することにより、現代の政治家としての責任と役割を果たさなければなりません。

 いまから100余年前、平和と協力の崇高な目的を実現するために創設された列国議会同盟は、これまで世界の平和を守り、諸国と諸人民間の友好と協力を発展させるのに寄与してきました。時代の発展と歴史の前進にともない、世界政治舞台における列国議会同盟の任務と責任はさらに重くなっています。

 こんにち、人類は歴史発展の新たな転機を迎えています。幾千年も持続してきた支配と従属の古い時代は終わり、すべての国、すべての民族が自己の運命を自主的に切り開いていく新しい時代が開かれています。歴史の流れをいっそう力強くおし進めて自由、平和の新しい世界を建設するのは、現段階において人類共同の課題となっています。

 人類のめざす新しい世界を建設するためには、政治、経済、文化の各分野で不平等な旧国際秩序をうちこわし、公正な新国際秩序を樹立しなければなりません。世界には大きい国と小さい国はあっても、地位の高い国と低い国はありえず、発達した民族と未発達の民族はあっても、支配する民族と支配される民族の区別はあってはなりません。すべての国と民族は、国際社会の同等の構成員として、自主的で平等な権利をもっています。国際関係ではいかなる特権や専横も許容してはならず、相互尊重と内政不干渉、平等と互恵の原則にもとづいて諸国間の友好と協力を積極的に発展させなければなりません。

 平和は人類共通の念願であり、諸国人民は平和が保障される状況下でのみ自主的な新しい生活を創造することができます。現在、平和を脅かす根源は、他国と他民族の自主性を踏みにじり、他人を支配しようとする誤った思想と政策にあります。平和を守るためには、すべての国と民族が自主性を堅持し、力の政策に反対すべきであり、侵略と戦争を防ぐ国際的な共同闘争を力強く展開しなければなりません。

 軍縮を実現し、核兵器をはじめ大量殺人兵器を撤廃することは、現在、平和を保障するうえで最も緊切な問題となっています。こんにち、地球上に蓄積されているおびただしい量の核兵器は、人類の生存そのものを脅かしています。人類が創造した科学技術の貴重な成果と社会的財貨を人類の福祉と発展に利用せず、人類の生存を脅かす侵略と戦争手段の製造に利用するのは許しがたいことです。核兵器の実験と製造を禁止し、現有の核兵器を削減し、ひいてはすべての核兵器を廃絶しなければなりません。

 核兵器の脅威を恒常的に受けている朝鮮人民は、核兵器の廃絶を民族の運命にかかわる切実な要求として提起しています。我々は、朝鮮半島を非核地帯・平和地帯にすることを強く主張し、軍縮を実現し、非核地帯・平和地帯を設置するための世界各国人民の平和運動を積極的に支持しています。

 自由、平和の新しい世界を建設するのは、時代の熟成した要請であります。こんにちにいたって支配と従属、侵略と戦争は誰にも利益を与えることができず、諸国人民がともに自主的に発展し、ともに平和に生きることのみが、人類の進むべき正しい道です。歴史の前進過程に紆余曲折はありえますが、自主・平和勢力は日ましに成長し強化され、新世界の創造をめざす正義の偉業は必ず勝利するでしょう。

 新しい世界を創造する共同偉業の勝利の保障は、世界各国人民の団結と協力にあります。自主的な国会の国際的協議の中心である列国議会同盟は、自主性にもとづいて国際社会の民主化を実現し、世界の平和と安全を守ることに注意を払い、諸人民間の団結と協力の発展に寄与すべきでしょう。我が共和国が国際関係分野で一貫して堅持している自主、平和、親善の理念は、列国議会同盟の理念と一致しています。我が共和国は今後、列国議会同盟との連係と協力をさらに強化し、自由、平和の新しい世界を創造する人類共同の偉業に忠実であるでしょう。

 代表のみなさん!

 こんにち朝鮮人民は、人間の自主性が完全に実現される真の人民の社会を建設し、祖国の自主的平和統一をなし遂げるためにたたかっています。

 我が国家の政治哲学は、あらゆるものを人間を中心にすえて考え、すべてが人間に奉仕することを要求するチュチェ思想です。朝鮮人民はチュチェ思想の旗のもとに一心団結してたたかうことにより、最も困難な状況と環境のもとでも人民が社会の真の主人となり、社会のすべてのものが人民に奉仕する人間中心の社会主義を建設することができました。我が国社会の民主主義的性格は、すべての人が国家の主人として完全に平等な政治的権利を行使し、健全かつ安定した物質・文化生活をひとしく享受しており、同志的愛情と信義にもとづいて助け導きあいながら共同の目的のためにともに努力し、ともに発展していくことに明白に表現されています。

 自己の正当な偉業にたいする高い誇りと自負をいだいている朝鮮人民は、自己の信念に従い自分の力で人間の理想社会を最後まで建設していくでしょう。

 朝鮮の統一を実現するのは、朝鮮民族の死活の要求であり、国際政治で解決がまたれる重要な問題の一つです。

 朝鮮人民は長い歴史とすぐれた文化伝統をもち、代々一つの国土で暮らしてきた単一民族です。朝鮮民族が現代にいたって二つに分かれて暮らさなければならないいかなる内部的要因もありません。我が国は第2次世界大戦の敗戦国ではなく、朝鮮人民は長期間にわたる民族解放闘争を通じてファシズムの撃滅に寄与した人民です。にもかかわらず我が国は戦後、朝鮮民族の意思に反して北と南に二分され、民族の分裂はこんにちまでつづいています。これは、朝鮮人民にはかり知れない不幸と苦痛を与えているばかりでなく、アジア地域に不安定で危険な情勢をつくりだす根源の一つとなっています。朝鮮の統一問題は、民族的自主性の見地からしても、アジアと世界平和偉業の見地からしても、一日も早く解決すべき切実な課題となっています。

 我々は祖国統一の問題を解決するうえで、北と南が共同で合意し宣言した自主、平和統一、民族大団結の三大原則を一貫して堅持しており、この原則を具現して1つの民族、1つの国家、2つの体制、2つの政府にもとづく連邦制方式で国の統一を実現することを主張しています。我々はこれが、統一した一つの民族として自主的に発展しようとする朝鮮民族の念願と、自主、平和の時代的要請にかない、北と南に異なる思想と体制が存在している実状下で国の統一を平和的に実現する最も現実的な方途であると考えます。

 朝鮮民族の統一意志はすでに分断の障壁を越えて一つに融合しており、朝鮮は一つであるという民族的信念はくじきがたいものとなっています。我々は、全民族の高揚した統一気運に合わせて北南間の対話を積極的に発展させ、統一の途上に横たわる障害を取り除くために全力をつくすでしょう。

 国際政治において正義と民主主義を重んじるこんにちの政治家は、他国人民の不幸と苦痛に無関心であってはならず、民族の運命にかかわる国際的問題が正しく解決されるよう協力すべきでしょう。我々は朝鮮問題に責任のある関係諸国はもとより、世界各国の国会と政治家が朝鮮の統一問題に深い関心を払い、この問題の正しい解決のために積極的に協力してくれることを期待します。

 代表のみなさんは朝鮮人民の大事な賓客です。朝鮮人民はいたるところであなた方をあたたかく迎え、熱烈に歓迎するでしょう。

 私はみなさんが我が国に滞在するあいだ、楽しく有益な日々を送り、また今後の正義の活動で成果をおさめるよう望みます。

 感謝します。

出典:「金日成著作集」43巻


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