金 日 成

中央人民委員会と政務院の活動方向について
 朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会第9期第1回会議、
政務院第9期第1回全員会議でおこなった演説
−1990年5月28日− 


 私は、共和国政府が新たに組織されてからはじめて開かれる今回の中央人民委員会と政務院全員会議で、中央人民委員会と政務院の今後の活動方向について述べようと思います。

 中央人民委員会は、国家主権の最高指導機関であり、政務院と各地方政権機関の活動を指導し監督する権限と義務を担っています。

 これからは、たびたび中央人民委員会を開き、政務院の活動報告と道人民委員会をはじめ、各地方人民委員会の活動報告も受けようと思います。政務院の活動報告は、政務院の責任幹部からも受け、政務院の各委員会、部の責任幹部からも受けることができるでしょう。中央人民委員会は、1か月に1回開くのがよいと思います。今後、中央人民委員会を正常に運営して、新たに選挙された第9期中央人民委員会が名実ともに中央主権機関としての使命と役割をまっとうできるようにしなければなりません。

 人民政権がその使命を果たすためには、中央人民委員会の機能を強化するとともに、各地方人民委員会の役割を強めなければなりません。

 道人民委員会は、道の主人です。いま、道人民委員会の委員長は道党責任書記が兼任していますが、道党責任書記は道人民委員会を正しく運営しなければなりません。道人民委員会は、道行政・経済指導委員会の活動報告や各郡人民委員会の活動報告も受けなければなりません。

 政務院は、中央人民委員会が任命したメンバーで組織された国家の行政的執行機関です。政務院は特に、経済司令部としての機能を果たさなければなりません。

 政務院は今後、中央人民委員会とは別個に、政務院全員会議をたびたび開き、経済活動を手配すべきことは手配し、総括すべきことは総括すべきです。中央人民委員会と政務院の合同会議を開く必要があるときには合同会議を開こうと思います。

 現在、政務院は、経済司令部としての機能を円満に遂行していません。政務院は、国家の経済活動全般を直接手配し実行すべきであり、すべての経済機関の活動を監督、統制しなければなりません。

 政務院が経済司令部としての機能を正しく遂行するためには、国家計画委員会の役割を強めなければなりません。

 国家計画委員会は、政務院の作戦局ともいえます。人民軍の作戦局が作戦計画を立ててその実行を掌握、推進するように、国家計画委員会は党の政策と方針にもとづいて人民経済計画を立て、それが必ず実行されるよう掌握、督促し、推進すべきです。いまは国家計画委員会が計画を立てるだけで、その実行を正しく掌握、推進しないのが欠点です。

 国家計画委員会の役割を強めるため、このたび副総理を兼ねた同家計画委員会委員長を新たに任命しました。国家計画委員会委員長は、政務院の参謀長であり、作戦局長です。国家計画委員会委員長は、人民経済計画の実行と関連して政務院の各委員長、部長から活動報告を受けることができます。

 国家計画委員会が作成して下達した人民経済計画は、政務院の各委員会、部と連合企業所が無条件実行し、各道行政・経済指導委員会も確実に実行しなければなりません。人民経済のすべての部門、すべての単位で国家計画を正しく実行するよう、政務院が厳しく監督、統制し、各級人民委員会も責任をもって援助すべきです。

 共和国政府の活動方向については、すでに施政演説で明示しました。きょうは、今後重点的にとらえていくべきいくつかの経済課題について述べることにします。

 なによりもまず、我が党の農業第一主義の方針を貫徹しなければなりません。

 人民生活で最も重要なのは食糧問題であり、この問題の解決で基本は農業を立派に営んで穀物を多く生産することです。昔から、農業は国の大本といわれていますが、これは食糧問題を解決する農業が極めて重要であることをいう言葉です。農業は、昔もいまも依然として重要な問題として提起されており、今後もそうだと思います。

 我々は、久しい前から「米はすなわち社会主義である」というスローガンを示して食糧問題を解決するために努力してきたし、いまは、「米はすなわち共産主義である」というスローガンのもとに、食糧問題で共産主義的原則を実現するために努力しています。人民にみちたりた食生活をさせずには社会主義建設を成功裏に推進することはできず、食糧問題を満足に解決せずには社会主義・共産主義を建設したとはいえません。

 こんにち、多くの国が用水問題で農業を失敗させており、世界的に食糧危機は日を追って深刻さを増しています。食糧問題は、今後さらに重大になるものと思います。国連食糧農業機関は、世界的に人口はひきつづき増加しているが、食糧生産はそれに応じて増大する見込みがないと悲観しています。こういうときに、我々が営農実績をあげて食糧問題を円滑に解決すれば、世界の人民にチュチェ思想を具現した我が国社会主義制度の優越性をいっそう明白に示すことができます。

 農業を立派に営んで食糧問題を円滑に解決することは、祖国統一偉業の実現においても重要な意義をもちます。人民がみちたりた食生活をし幸福に暮らせるようになれば、南朝鮮人民の闘争を鼓舞し、祖国統一を早めることができます。

 我が党の農業第一主義の方針を貫徹して、農業生産を画期的に向上させるべきです。

 穀物生産の増大をはかるためには、耕地面積を拡張しなければなりません。

 現在、我が国の水田面積は60万ヘクタール弱ですが、海面干拓をさらにおこなって水田面積を第1段階では60万ヘクタール、次の段階では65万ヘクタールに拡張すべきです。黄海南道の竜媒(リョンメ)島干拓地を開拓すれば少なからぬ水田が得られるとのことですが、それを早急に開拓すべきです。

 トウモロコシ畑の面積も拡張すべきです。トウモロコシ畑の面積を70万ヘクタールに拡張する課題はすでに私が示しましたが、奮闘して来年には70万ヘクタールに達するようにすべきです。

 耕地面積の拡張とともに、耕地整理にも力を入れるべきです。

 穀物生産の増大をはかるためにはまた、国家的に大きな力を入れて立派に建設した潅漑施設を効果的に利用し、主体的農法の要求どおり農業を集約化して単位当たりの収量をあげなければなりません。

 我々は西海閘門を建設したのち、水路工事を少なからず進めました。特に昨年と今年、国家的な投資を集中して西海地区の各道で大規模の水路工事をたくさんおこないました。

 平安北道では、泰川(テチョン)発電所貯水池の水を博川(パクチョン)、雲田(ウンジョン)、定州(チョンジュ)、郭山(クァクサン)一帯に引く水路工事をし、平安南道では西海閘門の水を甑山(チュンサン)郡まで引く水路工事をし、黄海北道では南江の水をミル平野へ引く水路工事をおこないました。黄海南道では3つの大きな水路工事をおこないましたが、一つは西海閘門の水を信川(シンチョン)地区をへて碧城(ピョクソン)、康翎(カンリョン)島、甕津(オンジン)地区に引くものであり、他の一つは西海閘門の水を長寿湖(チャンスホ)に導入するものであり、いま一つは礼成(レソン)江の水を延白(ヨンペク)平野に引くものです。これから殷栗(インリュル)地区にまでのびる水路工事をもう一つ進める予定です。平壌市では力浦(リョクポ)区域と中和(チュンファ)郡、祥原(サンウォン)郡に大同江の水を引く水路工事をしました。

 西海地区の各道に建設した水路は規模が非常に大きなものです。礼成江の水を延白平野に引く水路工事をとってみても、礼成江の流れを変えるにひとしいものです。このように膨大な規模の水路工事は、団結した人民があり、強固な自立的経済土台が築かれている我が国でのみ可能なことであって、他の国では思いもよらないことでしょう。

 西海地区に大きな水路が数多く建設され、西海閘門は穀物生産の増大に大きく寄与できるようになりました。これから西海地区の各道では、稲作に必要な用水を十分に利用することができるでしょう。

 稲作では、用水の問題を解決することがなによりも重要です。私が常にいっていることですが、稲づくりはすなわち水づくりです。私が長いあいだ農業部門を指導する過程で得た経験によると、ヘクタールあたり1トンの肥料をほどこして水を十分に供給すれば、籾米10トンの生産は問題なく、うまくいけば11トンの生産も可能です。これまでは用水不足のため、稲作でしかるべき営農実績をあげることができませんでしたが、用水の問題が解決された以上、稲作で十分好成績をおさめることができます。用水が足りなくて籾米をヘクタール当たり4、5トンしか生産できなかった延白平野でしたが、これからはヘクタールあたり10トンは問題なく生産できるでしょう。

 60万ヘクタールの水田でヘクタール当たり10トンの籾米を生産するとすれば600万トンになり、ヘクタール当たり8トンとしても480万トンが生産されます。ヘクタール当たり平野部の水田で10〜11トン、山間部の水田で7〜8トンの籾米を生産すれば、全国的には500万トンになります。500万トンの籾米を生産すれば、人民に白米のご飯を食べさせることができます。人民に白米のご飯を食べさせるのが私の構想ですから、500万トンの籾米を生産するために奮闘しなければなりません。

 稲作で成果をおさめるためには、苗を丈夫に育てなければなりません。

 平壌市と平安南道の協同農場を調べてみたところによると、いま稲荷の発育状態がかんばしくありません。平壌市と平安南道の各協同農場が稲苗をよく育てることができなかったのは、畑冷床苗を導入せず水田冷床苗にしたのが原因です。水田冷床苗の場合は、今年のように春の気候が寒いと冷害をこうむって苗が十分に育ちません。水田で冷床苗を育てるのは、水苗を育てるのと同じことです。水苗を育てては稲作で満足な収穫が得られません。

 稲苗を丈夫に育てるには、畑冷床苗を導入すべきです。畑冷床苗を導入すれば5月初旬には苗が十分に育つので、田植えを終えてからでも苗床にトウモロコシ栄養ポット苗を移植することができます。これからはできるだけ畑冷床苗を多く導入すべきです。

 トウモロコシの栽培でもやはり水を十分に供給することが重要です。トウモロコシ栽培では、水と肥料、一代雑種の種子、この3つの要素を十分に保障すれば収穂高をあげることができます。

 データによると、トウモロコシの雄花穂が出るとき水分が85%要求されますが、水分が満足に補給されずトウモロコシの葉が一日間しおれるだけでも、収量が10%も減少するとのことです。私はこのデータにもとづいて試験してみました。トウモロコシの雄花穂が出る時期に、一方の畑には85%の水分を、他の畑には60%の水分を供給したところ、ヘクタール当たりの収量にかなりの差がありました。前者の畑ではヘクタール当たり10トンのトウモロコシを収穫しましたが、後者の畑ではヘクタール当たりの収量が10%も落ちました。トウモロコシ畑に潅水をすれば、ヘクタール当たり8トンの収穫が可能であり、うまくいけば10トン以上も収穫できます。トウモロコシの栽培では、このように用水の問題が重要であるため、私は今年、50万ヘクタールのトウモロコシ畑に降雨式潅水方式を導入する課題を与えました。

 現在までトウモロコシ畑に降雨式潅水方式を導入した面積と、すでに散水式潅水方式が導入されている面積を合わせれば、畑地潅漑面積が49万3716ヘクタールになるとのことですが、降雨式潅水方式を7000ヘクタールの畑にさらに導入して、年内にトウモロコシ畑の潅漑面積が50万ヘクタールに達するようにすべきです。

 トウモロコシ畑の潅漑面積が50万ヘクタールになれば、ヘクタール当たりの収量を8トンとみても400万トンのトウモロコシを生産することができます。うまくいけばヘクタール当たり10トンも可能ですから、500万トン生産できます。トウモロコシの生産を昨年より増やせるかどうかは、トウモロコシ畑の潅漑面積を50万ヘクタールに拡張できるかどうかにかかっています。

 各道党責任書記は、トウモロコシ栽培での増産の余地が潅水の導入にあることを肝に銘じ、道にもどれば降雨式潅水工事の進行状況を具体的に調べ、1ヘクタールでも余計に導入するために努力すべきです。

 耕地面積が限られている我が国では、農業にしっかり取り組まなければなりません。人口は毎年増えるのに、農業にしっかり取り組まなければ、人民の食糧をまかなうことができません。幹部は仕事に欲がなくてはなりません。トウモロコシ畑に降雨式潅水を導入するのに多少資材がかかるからとわずらわしく思わず、より多くのトウモロコシ畑に降雨式潅水を導入するために努力すべきです。

 水源から遠くて条件の不利な小区画の畑にも降雨式潅水を導入すべきです。小区画の畑に降雨式潅水を導入しては採算がとれないと考えるのは間違いです。小区画の畑に潅水をしなければ、ヘクタール当たり2トン程度のトウモロコシしか収穫できませんが、それでは労力費も償えません。けれども、潅水をすれば小区画の畑でもヘクタール当たり8トンの収穫を得ることができます。ヘクタール当たり8トンなら、潅水の導入にかかった資材代を償っても余ります。耕地が少ない我が国では、降雨式潅水を導入してでも穀物の収量を高めれば、割りが合うことになります。トウモロコシ畑への降雨式潅水の導入に必要な設備と資材を供給しなければなりません。国家計画委員会が設備と資材供給の計画化を39万ヘクタール分しかしなかったので、設備と資材が満足に提供されていないとのことですが、それは誤りです。当該部門では、トウモロコシ畑の潅漑を50万ヘクタール導入するのに必要なレーンガンとホースなどの設備と資材を供給しなければなりません。

 今後、トウモロコシ畑の面積を70万ヘクタールに拡張し、そのすべてに潅水システムを確立すべきです。そうすれば、トウモロコシを560万トン生産することができます。

 農村に肥料を十分に供給すべきです。

 今年から農村での用水問題は全般的に円滑に解決されることになるので、田畑の施肥量を増やせばそれだけ穀物を多く生産することができます。稲とトウモロコシはヘクタール当たりの施肥量が800キログラムなら8トン、900キログラムなら9トン、1トンなら10トンの収穫が得られます。施肥量と穀物生産量の比率は狂いなく1対10です。

 肥料生産の増大をはかって、すべての田畑にヘクタール当たり窒素肥料1トン、燐酸肥料1.2トン、カリ肥料200キログラムをほどこし、珪素肥料とマグネシウム肥料も十分にほどこすべきです。

 肥料生産を増やして今年度の営農に必要な肥料を適時に農村に供給し、来年からは肥料の輸入をやめるべきです。そのためには、いまから肥料生産を増やす対策をしっかり立てなければなりません。

 来年度の営農に必要な燐酸肥料も国内で生産すべきです。燐は農作物の光合成で極めて重要な作用をするので、穀物生産を増やすには必ず田畑に燐酸肥料をほどこさなければなりません。日照率の低い東海岸地方では、他の地方より多くの燐酸肥料をほどこさなければなりません。

 来年度の営農に必要な燐酸肥料を国内生産でまかなうためには、外国から高品位の燐灰石を多少輸入しなければなりません。燐灰石は、我が国に近い東南アジア諸国から輸入することもできるし、我が国と友好関係にある中近東諸国から輸入することもできます。外国から燐灰石を輸入してでも、燐酸肥料を大量に生産して田畑に十分にほどこすべきです。

 田畑に肥料を十分にほどこし、水を十分に供給すれば、穀物のヘクタール当たり収量が著しく高まり、穀物生産に大きな前進がもたらされるでしょう。今後、水田面積は、65万ヘクタール、トウモロコシ畑の面積は70万ヘクタールに拡張し、肥料と水を十分に供給すれば、籾米520万トン、トウモロコシ560万トン、合わせて1000万トン以上の穀物生産が可能です。主体的農法の要求どおり集約化の水準を高めれば、現在の耕地だけでも1000万トンの穀物を十分生産することができます。穀物を1000万トン生産すれば、食糧をとっておき、家畜用飼料として300万トンをまわしても、多量の穀物を備蓄することができます。今年度は穀物生産を増やす運動を力強く展開しなければなりません。

 畜産業の発展をはかるべきです。

 トウモロコシ300万トンを家畜用飼料にすれば、食肉と卵を大量に生産することができます。トウモロコシを飼料にして豚肉を生産すれば、その比率は4対1であり、アヒル肉と鶏肉の場合はそれより多く生産できるので、トウモロコシ300万トンを家畜用飼料にまわせば豚肉、アヒル肉、鶏肉を合わせて約100万トンは生産することができます。1年に100万トンの食肉を生産すれば、人口一人当たり1日100グラム以上供給することができます。そうすれば、一所帯を5人としても所帯ごとに1日500グラム以上の食肉がゆき渡ります。我々は100万トンの食肉生産目標を立てて、その実現に向けて努力すべきです。

 穀物を増産して農民に食糧を十分に供給すれば、農家でもいまより多くの食肉を生産することができます。農民家族に一人当たり年に300キログラムの食糧を供給すれば、農村で豚を多く飼うでしょう。農民が豚を多く飼えば、食肉生産を増やせるばかりでなく、堆肥も多く出るので、営農実績をさらにあげることもできます。

 カボチャは、格好の家畜飼料です。農村でカボチャづくり運動を大々的に展開し、家畜飼料の問題を解決しなければなりません。

 畜産業を発展させるためには、山を効果的に利用しなければなりません。我が国は、国土のほぼ80%が山地なので、山を効果的に利用すれば、羊、ヤギなどの家畜を多く飼うことができます。

 野菜と果物の生産を増やすべきです。

 果物を多く生産するためには、果樹栽培面積を拡張しなければなりません。現在の果樹栽培面積は約18万ヘクタールですが、さらに2万ヘクタールを造成して20万ヘクタールにすべきです。現在の18万ヘクタールの果樹園は、そのほとんどが党中央委員会常務委員会北青(プクチョン)拡大会議以後に丘陵地帯を開拓して造成したものです。

 我が国には、果樹園をつくれるところがまだ少なくありません。平壌市の周辺にしても果樹が植えられる小山が少なくありません。我々が決心して取り組むならば、果樹栽培面積を20万ヘクタールに拡張することは十分可能です。

 果樹栽培面積を20万ヘクタールに拡張し、ヘクタール当たり20トンの果物を生産する運動を展開すべきです。果樹に肥料を適切にほどこし、水を十分に供給して肥培管理を丹念にすれば、ヘクタール当たり20トンの果物を生産することができます。果樹園には、ヘクタール当たり1トンの窒素肥料をほどこすべきです。

 果樹栽培面積を20万ヘクタールに拡張し、果物のヘクタール当たり収量を20トンに高めれば、年に400万トン生産することができます。400万トンなら、人口一人当たり200キログラムの果物がゆき渡りますが、そうなれば、人民は果物を切らさず食べることができます。

 これからは、果物を多く輸出しないことです。幹部は果物を輸出して外貨を獲得しようとせず、果物の生産を増やして子供や人民に供給するために努力すべきです。

 農業第一主義の方針を貫徹するうえで、政務院の委員長、部長と道党責任書記の責任は重大です。特に道党責任書記は、道の主人であるだけに、道内の農業について深く研究し、責任ある指導をすべきです。工業知識のない幹部が工場へ出かけるのをためらうように、農業知識に欠けた道党責任書記は農村に出向くのをためらっているとのことですが、そんな必要はありません。農業というのは、なにもむずかしいものではありません。私は農民ではありませんが、たびたび農村に出かけて指導するうちに農業について詳しく知るようになりました。道党責任書記は思いきって農村に出かけ、農民から学びながら農業を着実に指導すべきです。

 幹部が決心して取り組み、農業第一主義の方針を貫徹すれば、人民に白米のご飯と肉汁を食べさせ、野菜と果物も十分に供給することができます。そうなれば、物質生活分野で我々にこれ以上欲しいものはなくなるでしょう。今後、軽工業革命を遂行して衣料問題を解決し、都市と農村に住宅をたくさん建設すれば、遠からずして白米のご飯に肉汁を食べ、絹の服を着てかわら家で暮らそうという朝鮮人民の願いはかなえられるでしょう。こうなれば、全社会のチュチェ思想化をめざす朝鮮人民のたたかいで大きな前進が遂げられ、チュチェ思想にもとづいて進む我が国は、社会主義模範の国としてさらに光り輝くでしょう。

 次に、貿易第一主義の方針を貫徹しなければなりません。

 貿易を発展させることは、社会主義経済建設の促進において極めて重要な意義をもちます。我が国は大きくもない国なので、自分に必要な各種の原料や燃料、資材をすべて国内で解決することは不可能です。我が国にないか少ないものは、外国から輸入し、そのかわり我が国に多いものは輸出すべきです。そうしてこそ、国の経済を速やかに発展させることができます。

 我々はこれまで、自力で国防工業を建設するために力を入れたので、輸出工業の発展をはかることができませんでした。我々は今後、輸出工業の発展に大きな力をそそいで各種の輸出品生産を決定的に増大させ、対外貿易を積極的に発展させなければなりません。

 中国、ソ連との貿易に力を入れるべきです。

 中国との貿易では、我が国のセメントと無煙炭、磁鉄精鉱を輸出し、そのかわり原油とコークス用炭を輸入することに重点をおくべきです。ソ連とその他の国から原油を輸入する対策も講じるべきです。

 輸出品の種類を増やし、輸出市場を拡大すべきです。

 我々は、これまで東欧社会主義諸国との貿易をさかんにしてきました。しかしこんにち、東欧諸国が資本主義の方向に進んでいる状況下にあって、以前のように、それらの国との貿易を基本にすることはできません。これからは東欧諸国との貿易をつづける一方、東南アジア諸国とアラブ諸国など他の国との貿易の発展により大きな力を入れるべきです。

 そういう国との貿易を発展させるためには、それらの国の市況をよく知り、それに適応して輪出品生産を増やさなければなりません。東南アジア諸国の場合、大企業はそれほどなく、大部分が中小規模の個人企業です。東南アジア諸国に進出して外貨を多く獲得するためには、加工工業を発展させて個人企業体の要望するさまざまな加工製品を多く輸出しなければなりません。

 マグネシア・クリンカーなどにしても、そのままではなく、耐火レンガをつくって輸出すべきです。マグネシア・クリンカーで耐火レンガをつくって輸出することについては以前から強調してきましたが、いまなお満足に実行されていません。我が国には、マグネサイトや藍晶石など耐火レンガの原料が大量に埋蔵されています。幹部が決心して取り組むならば、各種の耐火レンガをいくらでも生産することができます。

 耐火レンガを生産する国が少ないので、その需要は相当なものです。以前、私はある国の大統領と話し合ったことがあります。かれは、自分の国では耐火レンガを西ドイツから買い入れているが、朝鮮が耐火レンガを生産して売ってくれれば、今後は西ドイツではなく朝鮮から輸入したいとのことでした。我々が耐火レンガを大量に生産すれば、アジアとアフリカの市場に進出して多くの外貨を得ることができます。

 鉛、亜鉛もそのままではなく、トタン板やバッテリー、光明丹などをつくって輸出すべきです。

 政務院の委員長、部長と各道党責任書記は、党の貿易第一主義の方針に立脚して奮闘し、輸出を決定的に増やさなければなりません。国内で急を要するからと、輸出するものをしないようではいけません。輸出を多くしてこそ、我々に必要な生ゴム、塩、繊維、油、錫などを多く買い入れることができます。我々は、なんとしてでも輸出を増大させ、生産の正常化に必要な原料、資材を輸入して工場をフルに稼働させ、生活必需品を十分に生産して人民に供給しなければなりません。

 対外貿易を発展させて外貨を多く獲得するためには、外貨獲得基地を強固に築かなければなりません。

 外貨獲得基地を強固に築くことなしには多額の外貨を獲得することができず、我々が示した輸出目標を達成することもできません。基本建設を促進して外貨獲得基地の構築に大きな力をそそがなければなりません。

 なによりまず、現在進行中の順川(スンチョン)ビナロン連合企業所と沙里院(サリウォン)カリ肥料連合企業所の建設、10月9日鋼鉄総合工場の建設を早急に終え、石灰芒硝鉱山の開発と両江道の銅鉱山開発、端川(タンチョン)地区の建設をはじめ、多額の外貨が獲得できる重要対象の建設に拍車をかけるべきです。

 今後、沙里院カリ肥料連合企業所でカリ長石を処理して得られるアルミナでアルミニウムとその加工品を生産して輸出すれば、数億ドルの外貨を獲得することができ、そのかすではセメントを生産して輸出することができます。そして、10月9日鋼鉄総合工場の建設を完成すれば、そこで生産される鉄鋼材を輸出して多くの外貨を獲得することができます。石灰芒硝鉱山を早く開発して石膏を生産すれば、石膏ボードなどいろいろな建材をつくって外貨を獲得することができます。加工品をつくって輸出せず、原料を輸出しては外貨を多く獲得することができません。我々は今後、工作機械をはじめ、機械製品と各種の加工品を多く輸出する方向に進むべきです。

 外貨獲得目標の達成いかんは、その基地をどう築くかにかかっています。ところが現在、政務院の責任幹部をはじめ幹部は、外貨獲得基地構築のために奮励努力していません。外貨獲得基地の構築に力を入れ、なんとしてでも1988年の中央人民委員会第8期第21回会議で決定された外貨獲得目標を達成しなければなりません。

 外貨獲得目標は多少力に余るものではありますが、幹部が自信をもち革命的に取り組んで努力するなら十分遂行できます。「党が決心すれば我々は実行する」は、立派なスローガンです。幹部は、党が示したスローガンをとなえるだけでなく、そのとおり生活し努力しなければなりません。

 幹部は、中央人民委員会で決定された外貨獲得計画の是非を論じることなく、無条件実行すべきです。政務院の責任幹部は、外貨獲得展望計画にもとづいて輸出額を増大させるための仕事の手配と指揮を適確におこなうべきです。政務院の委員長、部長は、自分の部門の外貨獲得課題を遂行するため積極的に努力し、各道党責任書記は自道がより多くの外貨を稼ぐ方途について頭を働かせるべきです。

 次に、軽工業に力を入れるべきです。

 我々は党中央委員会第6期第17回総会で、今年織物を大量に生産して人民に供給する決定を採択しました。

 党中央委員会総会で人民のための立派な決定を採択しましたが、化学工業部がビナロンとスフなどの繊維を計画どおり生産、供給しなかったので、それが正しく実行されていません。順川ビナロン連合企業所と2.8ビナロン連合企業所のビナロン生産が正常化されないので、紡織工場に繊維が満足に供給されていません。

 ビナロンが計画どおり生産されないのは、幹部が党の政策を実行するため一生懸命に努力しないためです。いま幹部は、党中央委員会総会の決定が実行されていないことに心を痛めておらず、条件の不備にかこつけて難問を解決するため積極的に努力していません。少なからぬ幹部は、難問を自分の力で解決しようとせず、上部で解決してくれれば実行し、そうでなければ実行しないといった態度をとっています。

 検察機関も自己の役目を満足に果たしていません。党の経済政策が実行されないことについて法的に問題視したたかうべきなのですが、検察機関ではそうしていません。中央人民委員会は、検察機関の役割を強め、党政策実行についての監督、統制をさらに強化しなければなりません。

 幹部は、みずからを革命化、労働者階級化し、人民性を高めて、今年、人民に約束したとおり織物、履物などの一般消費物資を大量に生産して供給すべきです。現在・ビナロン、スフが満足に生産されていないので、その生産を正常化する対策から立てるべきです。

 次に、すべての部門で生産を正常化するために努力しなければなりません。我々がすでに築いた経済的土台が効果を発揮できるようにするためには、生産の正常化に大きな力をそそがなければなりません。

 なによりも、電力生産に力を入れるべきです。

 最近は、雨が多く降ったので、電力生産が多少上昇しています。火力発電所への要件保障を十分にすれば、より多くの電力を生産することができます。ところが、幹部は火力発電所に関心を払っていません。以前、当該幹部が北倉(プクチャン)火力発電連合企業所に補修用資材を適時に提供しなかったので批判されたことがありますが、いまだにそういう欠陥が繰り返されています。北倉火力発電連合企業所に補修用資材を十分に供給して設備を適時に整備、補修し、発電機をすべて稼働させるようにすべきです。道党責任書記は、道の主人なのですから、北倉火力発電連合企業所の発電機を全部稼働させる対策を講じるべきです。

 平壌火力発電連合企業所に石炭を供給する炭鉱を指定したにもかかわらず、最近、石炭が満足に供給されないそうです。

 今後、各火力発電所に、補修用資材は1か月分、石炭は15日分を前もって供給することにすべきです。

 火力発電所に石炭を円滑に供給するためには、石炭生産を正常化しなければなりません。

 石炭生産を正常化するためには、炭鉱に資材と設備、キャップ・ランプ、小工具などを円滑に供給しなければなりません。私はこの問題についてたびたび強調していますが、炭鉱にたいする要件保障を円滑にしなければ、石炭生産がまた問題になるでしょう。

 炭鉱、鉱山には、3か月分の資材と部品を前もって供給しなければなりません。コンプレッサーは、大型のものばかりでなく、小型のものも生産して提供すべきです。現在、炭鉱に40立方メートルのコンプレッサーばかり提供するので、掘進切羽にそってコンプレッサーを移動させるのにかなりの時間がかかるそうです。10立方メートルコンプレッサーを多く提供すれば、移動に手間どることがありません。10立方メートルコンプレッサーを製造するのはむずかしいことでもありません。こうしてみると、幹部が下部の実状にうといようです。最近、10立方メートルコンプレッサーの生産を手配したとのことですが、それを多く生産して炭鉱に供給すべきです。

 日ましに増大する人民経済の動力需要を充足させるためには、発電所を大々的に建設しなければなりません。現在、進行中の発電所の建設を早急に終え、新しい水力発電所と火力発電所を建設すべきです。

 泰川発電所と渭原(イウォン)発電所の建設に拍車をかけて早く終えなければなりません。両発電所が完成すれば、大いに効果を発揮するでしょう。泰川発電所の建設は完成されたようなものです。いま少し努力すれば、発電所の建設を間もなく完成させることができます。泰川発電所が竣工すれば、約60万KWの電力が生産されます。

 泰川発電所の建設が終われば、煕川(ヒチョン)発電所の建設を本格的に進めるべきです。煕川発電所を建設すれば、約30万KWの電力を生産することができます。

 人民武力部の責任幹部にも話しましたが、人民軍は金剛山発電所の建設にひきつづき大きな力をそそがなければなりません。

 すでに建設ずみの閘門発電所に発電機をすべて設置すべきです。現在、烽火閘門発電所をはじめ、発電機を設置できずにいる閘門発電所が少なくありません。これらの発電所に発電機を全部据え付け、能力どおりの電力を生産しなければなりません。

 生産の正常化をはかるためには、鉄道輸送のネックを解消しなければなりません。

 鉄道輸送のネックを解消するためには、鉄道を重量化しなければなりません。鉄道の重量化を実現するためには、鉄道部門に毎月、1万トンの鋼材を提供して、8軸電気機関車と100トン積み貨車を量産させなければなりません。そして、重量レールを国内で生産する一方、外国からの輸入が可能であれば輸入するのも悪くありません。

 国家計画委員会では、生産担当の幹部が生産進行状況について毎日、報告を受け、提起される問題をそのつど解決して、人民経済のすべての部門で生産を正常化するようにしなければなりません。

 いま一度強調しますが、経済幹部は党の農業第一主義の方針と貿易第一主義の方針を貫徹し、軽工業を発展させて織物と履物の生産を増やし、すべての部門で生産を高い水準で正常化するため積極的に努力すべきです。

 政務院総理は、現行の生産問題と人民生活問題、展望計画の問題をともに掌握していくべきです。道の責任幹部は、道の経済発展計画を具体的に立て、それを遂行する活動を綿密に手配しなければなりません。

 幹部は革命発展の重要な時期に、党と人民の信任を得て選挙された革命の指揮メンバーです。私はすべての幹部が、党と人民のあつい信任と期待に背かず、強い革命精神と戦闘力をもって90年代の大進軍運動を責任をもって指揮するものと信じます。

出典:『金日成著作集』42巻


ページのトップ


inserted by FC2 system