金 日 成

       幹部の革命性、党性、労働者階級性
      人民性を高めて党の軽工業革命方針を実行しよう
朝鮮労働党中央委員会第6期第16回総会での結語
−1989年6月7〜9日−


 今回の党中央委員会第6期第16回総会では、党の軽工業革命方針を実行し、一般消費物資の生産に新たな転換をもたらす問題について討議しました。

 党中央委員会総会で軽工業をさらに発展させる問題を討議、決定したのは時宜にかなったことだと考えます。

 我が国の軽工業は高い発展段階に達しており、今後の展望も大きく開かれています。報告でも指摘されましたが、我が党はこれまで軽工業を発展させるために多くの努力を払ってきました。

 もともと、我が国の経済的基盤は、非常に貧弱なものでした。日本帝国主義植民地支配に災いされて、解放後、我が国には重工業部門の工場はもとより、軽工業部門の工場もわずかしかありませんでした。当時、我が国にあった工場はいまでも数えあげることができます。平壌(ピョンヤン)には穀物加工工場、新義州(シンイジュ)には製紙工場、満浦(マンポ)には製材工場、降仙(カンソン)には製鋼所、南浦(ナンポ)には製錬所、興南(フンナム)には肥料工場、金策(キムチェク)には製鋼所、清津(チョンジン)には製鉄所、吉州(キルジュ)にはパルプ工場がありました。解放前に日本人が多少建設した軽工業部門の工場があるとすれば、紡織工場がいくつかありますが、それも南朝鮮のソウル、仁川(インチョン)、釜山(プサン)などでした。かれらは我が国から多くの軽工業原料を略奪し、朝鮮人民が日常的に使う消費財もすべて本国で生産したものを持ち込んで売りつけました。鉛筆にしても、我が国の黒鉛と木材を略奪し、日本で加工したものを朝鮮にもってきて売りました。

 国が解放されてから、数百万名もの非識字者をなくそうとしてみると、鉛筆と用紙が必要になりました。それで、我々は1946年に、北朝鮮臨時人民委員会の初の会議の議案として鉛筆生産の問題を討議しました。我々はまた、人民の衣料問題を解決するため紡織工場を建設することを決心し、外国から設備を購入して平壌に紡織工場を建設しはじめました。事実上、我が国の軽工業は解放後ゼロから出発しました。我々が、なにもない状態で軽工業を創設している最中に戦争になりました。アメリカ帝国主義が起こした戦争のため、国のすべてのものが破壊されてしまいました。

 戦後、我々は、廃墟のなかから軽工業を創設しなおさなければなりませんでした。我々は、自力更生、刻苦奮闘の革命精神をもって、難関を克服しながら数多くの近代的な軽工業部門の工場を建設しました。いま我が国には、紡織工場、製靴工場、皮革工場、合成皮革工場、穀物加工工場、小麦粉加工工場をはじめ、軽工業部門の工場がたくさんあり、その生産能力もたいへんなものです。現在の軽工業部門の工場を十分に稼働させれば、人民になにうらやむことのない生活をさせることができます。ところが、これらの工場をフル稼働させていません。

 近代的な軽工業部門の工場を多くもっていながら、一般消費財を満足に生産できないのは、電力と資材の不足や条件の不備のためでは決してありません。問題は、党および国家経済機関の幹部に革命性、党性、労働者階級性、人民性が欠けているところにあります。党および国家経済機関の幹部は、人民に奉仕する人民の忠僕にならなければなりません。幹部は、いかにすれば人民によい暮らしをさせることができるかということを、いつも考えなければなりません。ところがいま、幹部は人民生活に関心を払っておらず、人民によい暮らしをさせるために主人らしく働いていません。

 幹部には、経済建設を立派に進めてすべての人が能力に応じて働き必要に応じて分配を受ける共産主義的原則を一日も早く実現しようという意欲が欠けています。共産主義を建設しようという意欲が欠けている人は革命家とはいえません。革命を忌避するのは、修正主義の表現です。

 党の軽工業革命方針を円滑に実行するか否かは結局、幹部の革命性、党性、労働者階級性、人民性を高める問題にかかっているといえます。すべての幹部は、強い革命性、党性、労働者階級性、人民性をもって、党の軽工業革命方針を実行し、一般消費財の生産に新たな転換をもたらさなければなりません。

 軽工業の発展に転換をもたらすためには、なによりも現在の軽工業部門工場の生産を正常化しなければなりません。

 我々には、軽工業を発展させることのできる多くの潜在力があります。我々が余力と可能性を引きだして経済管理をきちょうめんにするなら、既設の軽工業部門工場をすべて稼働させることができます。

 軽工業発展についての我が党の政策は明確に立てられています。幹部が身を入れて革命的に働き、責任をもって経済組織活動をするなら、軽工業をすみやかに発展させ、人民によい暮らしをさせることができます。

 軽工業部門工場の生産を正常化するためには、電力問題の解決をはからなければなりません。

 幹部が革命的に取り組むなら、電力不足の解消は十分可能です。今回、討議されたように、2.8ビナロン連合企業所も電力を十分に供給してフル稼働させることができます。現在、興南肥料連合企業所の水電解工程で使用している電力だけでも膨大な量です。この企業所の水電解工程をなくし、そこに使っていた電力を2.8ビナロン連合企業所にまわせば、2.8ビナロン連合企業所の生産を正常化することができます。2.8ビナロン連合企業所で必要とするメタノールは、今後、順川(スンチョン)ビナロン連合企業所で生産して供給すればよいでしょう。それで、私は今回、興南肥料連合企業所の水電解工程をなくし、そこに使っていた電力を2.8ビナロン連合企業所に回す問題を討議するようにと言ったのです。この問題を討議した結果を聴取してみると、そういう措置を講ずれば2.8ビナロン連合企業所をフル稼働させることができるだけでなく、そこで生産される塩化ビニールを輸出して20万トンの化学肥料を買い入れることができるとのことです。つまり、2.8ビナロン連合企業所をフル稼働させれば、ビナロンをはじめ、各種の化学製品を大量に生産しながら、肥料問題も解決できるという結論が出たわけです。

 興南肥料連合企業所では水電解工程をなくすかわりに、粉炭のガス化を早急に推進して肥料を生産すべきです。

 幹部が努力すれば、地方産業工場に必要な電力も自給することができます。地方産業工場の電力消費量はわずかなものです。ですから、地方産業工場の操業に必要な電力は、水車式発電所を建設すれば解決することができます。我々は、既に水車式発電所を建設して電力を生産する措置を講じ、それについての方式講習もおこないました。各地方でこの方式の発電所を建設すれば、地方産業工場をフル稼働させることができます。

 軽工業の発展に転換をもたらすためには、軽工業部門の工場を現代化し、生産能力を新たに造成しなければなりません。

 我々は今回の総会で、軽工業をいちだんと発展させる高い目標を示しました。党が示した目標は少々困難なものですが、すべての人が決心して取り組めば十分達成することができます。我々は、なんとしてでもここ数年内に、この目標を必ず達成しなければなりません。

 今回の総会が示した目標を達成するためには、軽工業部門の工場を近代的に改造し、同時に新しい工場をさらに建設しなければなりません。

 軽工業部門の工場を現代化すべきです。現代は、科学と技術の時代です。軽工業部門の工場を現代化、科学化せずには、生産のすみやかな増大も、製品の質の向上も不可能です。軽工業部門では、技術革新運動を積極的にくりひろげ、現在の工場を近代的に改造すべきです。軽工業部門では、人民経済を主体化、現代化、科学化する党の方針を立派に実行すべきです。

 軽工業部門では現在の工場を現代化すると同時に、生産能力を新たに造成しなければなりません。現在の軽工業部門の工場だけでは、軽工業部門に提起されている高い目標を達成することはできません。

 軽工業部門では、包装革命も起こすべきです。

 商品の質を高めるうえでは、包装を上手にすることが非常に重要です。軽工業部門では、ビール缶や段ボール箱など各種の包装容器を大量に生産することです。

 最近、国産のビール缶を見ましたが、申し分ないものでした。今後、プルトップ缶を大量に生産するためには、ブリキ板の生産をすみやかに増大させる対策を講じなければなりません。いま幹部が主人としての役割を果たせないので、金策製鉄連合企業所の冷間圧延鋼板生産設備とブリキ板生産設備が正常に稼働しておらず、2月10日工場も円滑な操業がなされていません。既設のブリキ板工場をフル稼働させるだけでも、年間数万トンのブリキ板を生産することができますが、それだけの量なら数億個のプルトップ缶が生産できます。今後、冷間圧延鋼板とブリキ板、缶の生産能力を高め、プルトップ缶を10億個以上生産すべきです。

 次に、当面のいくつかの経済課題について述べることにします。

 電力工業と鉄道運輸の発展に大きな力をそそがなければなりません。

 私がかねがね言っていることですが、電力工業と鉄道運輸は人民経済の先行者です。電力工業と鉄道運輸が先行しなければ、人民経済各部門の生産を伸ばすことができません。

 いま経済活動の最大のネックは電力問題です。我々が造成した発電能力は少ないものではありませんが、近年、日照りつづきで、水力発電所が能力どおり電力を生産していません。そのため電力不足をきたし、工場、企業所の生産を正常化できないありさまです。電力不足を解消せずには、いくら工場を建てても用をなしません。

 電力問題を解決するためには発電能力をさらに造成し、すべての部門で節電運動を積極的に展開しなければなりません。

 最近開かれた中央人民委員会では、第3次7か年計画期間に数百万KWの発電能力をさらに造成することを決定しました。大規模の水力発電所を建設する一方、大衆的運動で中小規模の水力発電所を多く建設すれば、数百万KWの水力発電能力を造成することができます。そして、既に討議されたとおり、金策市、安州(アンジュ)市、咸興(ハムフン)市、新義州市、江界(カンゲ)市、南浦市千里馬(チョンリマ)区域、煕川(ヒチョン)市、平城(ピョンソン)市、安州地区、海州(ヘジュ)市、東平壌に火力発電所を新たに建設し、現在の火力発電所の能力を高めれば、火力発電能力も数百万KW造成することができます。

 全党、全国、全人民が取り組んで水力発電所と火力発電所の建設を力強く促進すべきです。現在進行中の金剛(クムガン)山発電所(現在の安辺(アンビョン)青年発電所)と煕川発電所の建設に力を集中して早く終えるべきです。水力発電所と火力発電所の対象別建設期限は発表ずみの中央人民委員会の決定書に明示されているので、改めて言及しないことにします。

 水力発電所と火力発電所の建設を計画どおりに推進するためには、発電機をはじめ、発電設備とボイラーを適時に製作して提供しなければなりません。

 75トンボイラーを多く製作して、新しく建設する火力発電所に設置すべきです。火力発電所に210トンポイラーを設置するとよいのですが、そうするには高圧管をはじめ、各種の資材を外国から購入しなければなりません。けれども、75トンボイラーの製作では問題になることがありません。75トンボイラーは、国内の資材でも十分製作できます。

 75トンボイラーは、低カロリー炭を燃料に利用できるので有利です。新しく建設する火力発電所には、できるだけ低カロリー炭を用いるボイラーを設置すべきです。高カロリー炭を用いるボイラーを設置すると、燃料の供給が円滑にいかず、発電所を満足に稼働させることができません。75トンボイラーを3基か4基設置するとなると建物は多少大きくなりますが、5万KWの発電機を稼働させて電力を生産することができます。

 大安(テアン)重機連合企業所に鋼材を供給して75トンボイラーをたくさん製作させるべきです。大安重機連合企業所では、発電機やタービンなどの発電設備とボイラーの製作を基本とすべきです。

 いま沙里院(サリウォン)機械工場で35トンボイラーを製作しているとのことですが、それを製作すれば黒鉛状無煙炭を用いる小規模の火力発電所を建設することができます。

 原子力発電所も建設すべきです。原子力発電所の設備をある一つの国に依存して解決しようとしてはなりません。原子力発電所設備の購入問題は、ほかの国とも交渉すべきです。

 鉄道の重量化を実現するために積極的に努力すべきです。いまに電力不足が解消されて生産が正常化されれば、鉄道輸送のネックがいっそう著しくなるでしょう。ですから、いまから事前対策を立てておくべきです。

 我々は、解放直後から現在にいたる期間、鉄道輸送問題と関連して3回にわたって難関をへました。最初の難関は、解放直後の機関士の不足でした。当時、我が国には、機関士が数名しかいませんでした。そのため、列車を満足に運行させることができませんでした。解放後、鉄道輸送部門では金会日(キムフェイル)運動が展開されましたが、この運動を通じて鉄道の貨物輸送量を著しく増やし、機関士も多く育てました。こうして、解放直後、難題となった機関士の問題を解決し、鉄道輸送を一定の軌道にのせました。

 戦後の復興建設が終わって国の経済が発展するようになると、鉄道輸送がまた緊張をきたすようになりました。これが2度目の難関でした。そのとき幹部のあいだに、鉄道輸送問題を解決するための対策として2つの意見が提起されました。その1つは複線の鉄道を建設しようという意見であり、もう1つは鉄道を電化しようという意見でした。鉄道をもう一本敷設するというのは決して口でいうほど簡単なことではありません。我が国には山と川が多いので、鉄道を敷設するとなると多くのトンネルを掘らなければならず、橋梁をはじめ、いろいろな構築物を建設しなければなりません。平壌から陽徳(ヤンドク)をへて羅津(ラジン)まで複線鉄道を敷設するとなると、トンネルだけでも数百も貫通させなければならないので、長い日時を要します。日本帝国主義支配当時、平壌−元山(ウォンサン)間の鉄道を建設するのにおよそ15年かかったといいます。複線鉄道を敷設するとしても、蒸気機関車では鉄道輸送のネックを解消することができません。それで、我々は鉄道を電化することにしました。

 鉄道の電化には電気機関車が必要ですが、我々はそれをつくれませんでした。我々は、是が非でも自力で電気機関車をつくることを決心し、労働者たちにアピールしました。労働者たちは党の呼びかけにこたえ自力更生、刻苦奮闘の革命精神を発揮して、自力で電気機関車を立派につくりだしました。最近、『赤旗』という長編小説を読んだのですが、そこには我が国の労働者が幾多の難関を克服し、自力で電気機関車をつくりだした歴史的な事実がありのままに描き出されていました。労働者が自力でつくりだした電気機関車の「赤旗(ブルグンギ)」という名は私が命名したものです。電気機関車の設計をした人はのちに労働英雄称号を受けましたが、いまも鉄道運輸部門で立派に働いていると聞いています。

 こうして、我々は、鉄道の電化を実現して鉄道輸送のネックを解消し、人民経済の輸送需要を充足させました。

 社会主義建設がより高い段階にいたり、経済の規模がいっそう大きくなるにつれ、鉄道が電化された状況でも再び鉄道輸送がネックになってきました。我々が、この3度目の難関を克服する方途を討議するとき、幹部たちから複線鉄道を敷設しようという意見が再び提起されました。しかし、トンネル工事だけでも5、6年はかけなければならないので、鉄道を複線にする方法では当座の鉄道輸送のネックは解消できない状態でした。私はどうすれば鉄道輸送問題を早急に解決できるかを考えた末に、100トン積み貨車をつくって鉄道の重量化を促進する課題を示しました。

 鉄道を重量化すれば、複線鉄道を敷設しなくても鉄道輸送のネックを解消することが可能でした。30トン積みや60トン積みの貨車で列車を編成しては、一度に1800〜2000トン程度の貨物しか輸送できませんが、鉄道の重量化を実現して100トン積み貨車で列車を編成すれば、一度に5000トン以上の貨物を輸送することができます。

 鉄道の重量化は、さほどむずかしいことでもありません。8軸電気機関車と100トン積み貨車をつくり、線路を重量レールに替え、鉄橋を一部補強すればよいのです。

 鉄道の重量化を実現するのは、現在の輸送のネックを解消するもっとも合理的な方途です。ところが幹部は、党の鉄道重量化の方針を実行するため懸命に努力していません。鉄道運輸部門に毎月1万トンの鋼材を提供すれば、重量貨車を大量に生産できるはずですが、鋼材の提供が満足になされていません。そのため、いまなお重量貨車はいくらも編成されていないとのことです。鉄道運輸部門に鋼材を円滑に提供し、鉄道の重量化を積極的に推進すべきです。

 輸送問題の円滑な解決漣はかるためには、鉄道の重量化を実現すると同時に、鉄道と自動車の連携輸送を発展させなければなりません。そのためには、「自主(チャジュ)」号トラックの生産を増大させなければなりません。「自主」号トラックを大量生産して提供すれば、炭鉱で採炭ずみの石炭をそのつど鉄道駅まで運び出すことができます。

 勝利(スンリ)自動車総合工場では「自主」号エンジンの生産能力をさらに向上させたのですから、鋼材を円滑に提供して「自主」号エンジンと「自主」号トラックを大量に生産させるべきです。

 重要プロジェクトの建設を促進すべきです。

 重要プロジェクトの建設で最も重要なのは、順川ビナロン連合企業所の建設を早く完成することです。この建設では、第1段階でビナロン5万トンとメタノール7万トンの生産能力を造成し、第2段階ではビナロン10万トンと塩化ビニール25万トン、苛性ソーダ25万トン、窒素肥料90万トン、メタノール15万トンの生産能力を造成し、第3段階ではカーバイド100万トンの生産能力を造成すべきです。

 順川ビナロン連合企業所でのカーバイド生産を正常化することが極めて重要です。ビナロン生産に必要なカーバイドを円滑に供給するためには、予備カーバイト炉を建設しなければなりません。予備のカーバイド炉をもっていて、炉のどれかが故障したときにはそれを休止させて予備の炉を稼働させるべきです。そして、補修作業班を組織して故障したカーバイド炉をただちに補修させるようにすれば、生産を正常化することができます。

 順川ビナロン連合企業所では、ガス清浄工程の建設を早急に終えてメタノールを生産し、苛性ソーダ工場も早く建設すべきです。

 沙里院カリ肥料連合企業所の建設に力を入れるべきです。この建設では正すべき問題があります。沙里院カリ肥料連合企業所に設置する回転炉の長さがあまり長いようです。これは外国のものを見て設計したものですが、長さが184メートルもあります。回転炉をそんな長さにするのを見ると、技術者たちの工学知識レベルがうかがわれます。回転炉が長ければそれだけ炉の操作がむずかしくなるのは理の当然です。200メートル近い回転炉をまんべんなく加熱して回転させようとすれば簡単にはいかないはずです。けれども、いまはもう設計と基礎工事を終え、1基は組み立ての段階にあるのですから、現在建設中のものはそのまま建設すべきです。あとの炉は十分に研究して長さを短くすべきです。

 200万トン能力の製鋼工場を建設すべきです。

 我々が新しい製鋼工場を建設して生産を伸ばせば、国内の鋼材需要をみたすと同時に、外国に輸出することもできます。先ごろ我が国を訪問したある国の大統領は、鋼材さえ提供してくれるなら原油はいくらでも提供すると言っていました。その国に10万トンの鋼材を輸出すれば、30万トンの原油を輸入することができます。鋼材を大量に生産すれば、ほかの国にも輸出することができます。

 200万トン能力の製鋼工場の建設と運営に支障がないようにするためには、南浦市千里馬区域に建設中の10万KW能力の火力発電所を早く竣工させなければなりません。

 茂山(ムサン)鉱山連合企業所の拡張工事にも力を入れるべきです。

 農業生産を高めるために努力しなければなりません。

 農業生産を増大させるためには、水利化を高い水準で完成し、耕地整理に力を入れて農作業の機械化の実現に努めなければなりません。そうすれば、ヘクタールあたりの穀物収量を著しく高めることができ、現在の耕地でも1000万トン以上の穀物を生産することができます。

 稲作では、用水の問題を解決することが最も重要です。稲づくりはつまるところ水づくりだともいえます。

 我が国で用水がいちばん不足しているのは黄海(ファンヘ)南道です。黄海南道は肥沃な延白(ヨンペク)平野をかかえています。我が国で有数の平野としては湖南(ホナム)平野、ヨルトウ三千里(サムチョンリ)が原、載寧(チェリョン)平野、延白平野が教えられます。ところで、いまヨルトウ三千里が原と載寧平野ではヘクタールあたり8、9トンの籾米を生産していますが、延白平野ではそれほどの収穫をあげていません。延白平野で籾米のヘクタールあたり収量が増えない原因はほかでもなく、給水が十分でないところにあります。我が国で稲の分けつ期と幼穂分花期は大体、6月と7月です。この時期に昼と夜の水田の水温に大きな差がなければ、稲の枝分かれが多くなりません。ところが、延白平野は暖地なので昼間に上がった水温が夜間にもさほど下がりません。夜間の水温を下げるためには、水田から温まった水を抜き、冷たい水と入れかえなければなりません。水田の水を入れかえずに、昼間に温まった水をそのままたたえておくと、それはあたかも真夏のさかりに綿の布団をかぶって寝るようなものです。ところが、黄海南道では用水が十分でないので、水田の水をそのつど入れかえることができないありさまです。ですから稲作がうまくいくはずがありません。

 黄海南道では、大同(テドン)江の水を田と畑に引く工事を力強く推進しなければなりません。

 トウモロコシの栽培でも水を十分に供給することが大切です。トウモロコシは、水と肥料、一代雑種の種子、この3つの要素を適切に運用すれば、ヘクタールあたり8トン、うまくすれば10トンも収穫することができます。我が国のトウモロコシ畑の面積は約70万ヘクタールですから、ヘクタールあたり10トンと見積もれば700万トン、ヘクタールあたり8トンと見積もっても600万トン近く生産することができます。トウモロコシの栽培では水の問題が重要であるため、トウモロコシ畑に散水式潅漑を大々的に導入するよう機会あるたびに強調してきましたが、その工事が活発に進められておらず、既設の散水式畑地潅漑システムも満足に利用されていません。トウモロコシ畑の潅漑を早く完成させるべきです。

 耕地整理に力を入れ、水田のあぜと畑の仕切りをなくし、水田の深耕に努めるべきです。

 私は久しい前から、水田を深く耕すよう強調してきました。このことは、載寧平野へ行っても、ヨルトウ三千里が原へ行っても指摘し、延白平野へ行っても指摘しました。ところが、いまなおよく実行に移されていません。

 協同農場で水田を深く耕せるようにするには、「豊年(プンニョン)」号トラクターを大量に生産して提供しなければなりません。「チョンリマ」号トラクターでは水田を深く耕すことができません。最近新たに開発された80馬力トラクターも大量生産するのがよいでしょう。

 海面干拓を強力に推進すべきです。これまではセメント不足のため、この工事を強力に推進することができませんでしたが、いまはセメントを供給できるめどがつきました。セメントさえあれば、函形部材をつくつて海面干拓を急テンポで進めることができます。海面干拓の地区外工事は人民軍に担当させ、地区内工事は干拓地建設総局に担当させるべきです。

 浅海養殖を大々的におこなうべきです。

 浅海養殖で成功すれば、人民の食生活に必要な蛋白質を自給することができます。コンブやイガイは健康食品です。コンブを大量に収穫すれば、外国に輸出して外貨も獲得できます。先ごろ開かれた中央人民委員会で決定されたとおり、各道が浅海養殖面積を計画どおり造成すべきです。

 対外輸出に力を入れるべきです。人民経済各部門で、党の輸出第一主義の方針を立派に実行し、輸出計画を無条件遂行しなければなりません。

 最後に、すべての幹部が、党の路線と政策の正当性にたいする確固たる信念をもって奮闘することについて述べておきます。

 幹部は、周辺諸国で実施されている政策にたいし、それになにか新しいものがあるのではなかろうかと気を引かれることのないようにすべきです。国によってその環境と具体的な実情はみな違います。個々の国の革命にたいしてはその国の党が責任を負うのであり、その国の具体的実情をよく知っているのもその国の党です。外国が改革や改編をするからと、我々もそれにならう必要はありません。我々には、改革すべきことも改編すべきこともありません。我々は社会主義を建設する過程で、正すべきことは、そのつどすべて正しました。我が党の路線と政策には誤ったことがなにもありません。これまで我々が示した路線と政策はすべて正しいものです。大切なのは、我々がかちえた革命の獲得物である社会主義制度をゆるぎなく守ることであり、我々の示した革命的路線と政策を首尾一貫実行していくことです。

 第6回党大会が示した全社会をチュチェ思想化するという路線は極めて正当な革命路線です。全社会のチュチェ思想化をあくまで実現することによってのみ、共産主義偉業を完成することができます。

 全社会をチュチェ思想化して共産主義社会を建設するためには、共産主義の2つの要塞、思想的・政治的要塞と物質的要塞をともに占領しなければなりません。この2つの要塞のうち、どちらか1つだけを占領しては共産主義社会を建設することができません。共産主義社会は物質的に豊かな社会であるのみでなく、全人民が共産主義思想と高い文化知識を身につけ、一人はみんなのために、みんなは一人のためにという集団主義の原則にもとづいて働き生活する社会です。したがって、共産主義社会を建設するためには、共産主義の思想的・政治的要塞を占領するための闘争と物質的要塞を占領するための闘争をともに力強く展開しなければなりません。

 我が党は、共産主義の思想的・政治的要塞と物質的要塞を成功裏に占領するため、人民政権の機能と役割を高めながら、思想、技術、文化の三大革命を遂行するという路線を一貫して堅持しています。レーニンはソビエト政権に電化をプラスすれば共産主義になるという思想を示しましたが、我々は、それをさらに発展させ、人民政権に三大革命をプラスすれば共産主義になるという思想を示しました。人民政権を強化し、思想、技術、文化の三大革命を力強く推進するのは、社会主義・共産主義建設における我が党の総路線です。我が党のこの路線は極めて明確かつ正確をものです。

 我々は社会主義・共産主義建設において、チュチェ思想の旗を高くかかげ、思想、技術、文化の三大革命路線をひきつづき立派に貫かなければなりません。これにまさる旗、これにまさる路線はどこにも見出すことができません。こんにち、我が党が最も正しい指導思想をもち、最も正確な路線にもとづいて社会主義・共産主義への道を力強く前進しているのは、国際共産主義運動の発展において極めて重要な意義を有します。すべての幹部は、これについて高い誇りと自負をいだくべきであり、確固たる革命的信念をもってたたかうべきであります。

 革命と建設を成功裏に進めるためには、必ず党の指導を強化しなければなりません。

 党というのは、思想と理念の同じ人たちの政治組織です。党は革命を指導するために必要とされるのです。党の指導なしには、人民大衆を一つの力にかたく結集することも、革命を正しい道に導くこともできません。党の指導によってのみ、革命の勝利を保障することができるのです。ロシア革命も党の指導のもとに勝利し、中国革命も党の指導によって勝利することができました。我々が革命と建設で達成した輝かしい勝利も、党の指導をぬきにしては考えることができません。もしも、党の指導がなかったなら、我々がほぼ20年間、日本帝国主義者と戦って祖国を解放することはできなかったであろうし、3年間の祖国解放戦争(朝鮮戦争)で強大なアメリカ帝国主義侵略者を打ち負かすこともできなかったでしょう。いま、我々が進めている思想革命、技術革命、文化革命は、帝国主義に反対し民族の独立をなし遂げ、旧搾取制度をくつがえす闘争に劣らず困難な闘争です。社会主義のもとでも階級闘争はつづきます。党の指導をぬきにしては、思想革命、技術革命、文化革命を順調に遂行することも、社会主義建設を成功裏に推進することもできません。

 革命と建設にたいする党の指導を否認したり弱めたりするのは、革命を放棄するのと同じことです。社会主義の建設過程で党の指導を弱めるなら、帝国主義者の侵略とブルジョア思想の浸透は防ぎがたく、そうなれば結局、社会主義は崩壊することになります。すべての幹部は、革命と建設にたいする党の指導を強化することがいかに重要であるかをしっかり認議すべきです。

 革命と建設にたいする党の指導を強化するためには、なによりも党そのものを強化しなければならず、党のまわりに大衆をかたく結集しなければなりません。

 我が党は組織的、思想的に非常に強い党です。我が党のように強い党はありません。これは、我々の大きな誇りです。我々は、党を組織的、思想的にいっそう強化するため積極的に努力しなければなりません。

 党員と勤労者の組織・思想生活を強化することは、党を強化し、党のまわりに大衆をかたく結集するうえで極めて重要な意義をもちます。

 こんにち、我が国では、すべての人が一定の組織に加わって組織生活をしています。少年は少年団組織で、青年は社労青組織で、労働者は職業同盟組織で、農民は農業勤労者同盟組織で、そして女性は女性同盟組織で組織生活をし、党員は党組織で組織生活をしています。また、党員と勤労者の教育体系も整然とうち立てられており、幹部を教育する活動も制度化されています。すべての幹部が毎週土曜日に土曜学習と講演会に参加しており、毎年1か月間、義務的に養成機関で学んでいます。我々は、各種形態の教育網を通じて幹部と党員と勤労者を我が党の唯一思想であるチュチェ思想と共産主義思想で武装させています。そのため、我が国ではすべての人が呼吸をしても同じ呼吸をし、話すにしても同じように話しています。

 我々は、党員と勤労者の組織・思想生活をひきつづき強化すべきです。党員と勤労者がまっとうな組織・思想生活をしなければ、思想的に変質するようになります。すべての党員と勤労者が、組織生活にも学習にも熱心であるようにしなければなりません。

 特に、幹部は学習にいっそう励むべきです。幹部が思想革命を指導し、技術革命と文化革命も指導するには、人一倍多くの知識をもっていなければなりません。ところが、いま幹部は、多忙を口実に学習を怠っています。仕事が忙しくて学習できないというのは口実にすぎません。学習しようという熱意さえあれば、食事の時間を縮めてでも学習することができます。幹部は学習にたいする観点を正して地道に学習し、毎週の土曜学習と講演会にもれなく参加しなければなりません。また、人民大学習堂を利用して技術学習も大いにすべきです。

 我々は全人民に学習をさせようと、平壌市中心部のいちばんよい場所を残しておき、そこに人民大学習堂を建てさせました。人民大学習堂は朝鮮式にすばらしく建設されました。ここには現代科学技術書がたくさんあります。外国の科学技術書を翻訳、録音して備えてあるので、幹部が行けば録音講義をしてもらうこともできます。

 革命と建設にたいする党の指導を強化するうえでまた重要なのは、官僚主義的な古い活動方法を克服し、正しい大衆指導方法を確立することです。

 我が党が創造したチョンサンリ(青山里)方法は、党と大衆を遊離させる官僚主義を克服し、大衆の自発的熱意と創意を引きだして提起された革命課題を遂行せしめる、威力ある大衆指導方法です。チョンサンリ方法は、人間があらゆるものの主人であり、すべてを決定するというチュチェ思想の原理を具現しています。我が党は既に久しい前から、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法の要求どおり現地指導を強化しており、幹部が常に大衆のなかに入り、大衆と呼吸をともにし、大衆と同じ釜の飯を食べながら、大衆の意見を聞いて活動してきました。

 今年の初めに我が国を訪問したある国の外相と談話を交わしたとき、かれは、自分の国ではいま反官僚主義闘争をしている、これは金日成(キムイルソン)同志が、既に数十年前にやったことだが、自分の国ではいまになってはじめているというのでした。事実、我々が革命的大衆指導方法であるチョンサンリ方法を創造したのはいまから30年前のことです。大国の党だからとすべて賢明なわけではなく、また小国の党だからと、常に後ろに立たなければならないという法はありません。小国の党のほうが賢明でありうるのです。我が党の創造したチョンサンリ方法にまさる大衆指導方法はどこにも見出すことができません。幹部はこのことを明確に認識し、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法をひきつづき立派に具現していくべきです。

 社会主義経済は社会的所有にもとづく計画経済であるため、その管理においてもやはり党の集団指導が保障されなければなりません。

 我が党の創造したテアン(大安)の事業体系は、党の集団指導の原則を具現しているすぐれた共産主義的経済管理システムです。テアンの事業体系は、提起される問題を工場党委員会で集団的に討議、決定したのち、支配人は行政権をもってそれを実行し、党書記は政治的方法で党員と勤労者を奮い立たせ、技師長は参謀長として生産にたいする技術的指導を統一的にすることになっています。そして、職業同盟をはじめ勤労者団体組織は、党委員会の決定実行に大衆を奮い立たせるようになっています。じつにテアンの事業体系は、広く誇るに足るすぐれた経済管理システムです。

 現在、テアンの事業体系を具現するうえでの欠陥は、計画担当者が計画化を正しくおこなっていないことです。国家計画委員会の活動家も計画化を正しくおこなっておらず、地区計画委員会の活動家も計画化を円滑におこなっていません。国家計画委員会と地区計画委員会が直接相手にする計画単位が多いためなのかといえば、そうでもありません。国家計画委員会が直接相手とする計画単位は多いものではなく、地区計画委員会が相手とする計画単位もそれほどのものではありません。ところが、国家計画委員会と地区計画委員会の活動家は現地に出向かず、机に座って業務をとるので、計画化がうまくいかないのです。テアンの事業体系を経済管理に立派に具現するためには、計画化に決定的な改善をもたらさなければなりません。

 我々が経済指導と企業管理をテアンの事業体系どおりにさえすれば、社会主義建設を順調に進めることができます。

 いま帝国主義者は、開放政策を実施しないと我々を攻撃していますが、決して門戸を閉ざしているわけでもありません。我々は世界各国との経済・技術協力を発展させており、外国との合弁もさかんに進めています。要は門戸をどう開くかということです。みだりに門戸を開くからといってよいわけではありません。なんの考慮もなくむやみに門戸を開くと、蚊やキンバエが舞い込んできて被害を受けるようになります。我々は外国と交流もし、合弁もするとしても、蚊やキンバエが入ってこないように蚊帳をつってすべきです。

 我々はすべての分野で革命的立場を確固と守り、我が党の革命的路線を固守しなければなりません。いま一度強調しますが、党中央委員会指導機関のメンバーをはじめ、すべての幹部は、我が党の政策の正当性について確固たる信念をもち、全社会のチュチェ思想化の旗、三大革命の旗をひきつづき高くかかげ、党の指導を強化するという革命的原則を堅持し、チョンサンリ方法とテアンの事業体系を立派に具現していかなければなりません。

出典:「金日成著作集」42巻


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