金 日 成

キューバ共和国環境保護委員会委員長との談話
−1988年10月17日− 
 
 私は、あなたと久しぶりに再会できたことを非常にうれしく思い、あなたのわが国訪問を熱烈に歓迎します。

 フィデル・カストロ同志とラウル・カストロ同志のあたたかい伝言をいただき、謝意を表します。

 親しい兄弟であり友人であるフィデル・カストロ同志がお元気だそうでなによりです。心からフィデル・カストロ同志の健康を祈ります。

 私は、キューバの党と政府が革命的立場と社会主義の原則をゆるぎなく守っていることを高く評価し、キューバの同志たちに深い敬意を表します。

 いま、社会主義諸国が、革命的立場と社会主義の原則を守ることは極めて重要な問題となっています。帝国主義者は、一部の社会主義国の経済発展速度がにぶっている弱点を利用して、社会主義を崩壊させようと悪辣に策動しており、我々が革命的立場と社会主義の原則を放棄することを望んでいます。我々は、革命的立場と社会主義の原則をいささかもゆるがせにしてはならず、いかなる状況のもとでも一貫して堅持しなければなりません。

 もちろん、社会主義建設の過程では、さまざまな難関が横たわるものです。そうであるほど、革命的立場と社会主義の原則を堅持しなければなりません。それでこそ、帝国主義者のあらゆる妨害策動を粉砕し、社会主義を成功裏に建設することができます。

 数か月前、わが国を訪問したアメリカ共産党書記長は、私に、今後、社会主義はどうなるだろうかと問いました。

 私は彼に、社会主義を建設する過程には難関がありうる、しかし社会主義の旗はあくまで守られるだろう、社会主義社会は人民大衆のための社会であり、資本主義とは比べようもなくすぐれた社会だ、アメリカはいくら富裕な国であっても腐り切っている、アメリカには麻薬中毒者やエイズ患者が多く、浮浪者も多い、あなたはアメリカ人だから誰よりもそれをよく知っているはずだ、アメリカには多くの財産をもって裕福な暮らしをしている人もいるが、金がなくて貧しい暮らしをしている人のほうが多いではないかと言いました。

 社会主義・共産主義社会を建設するためには、二つの要塞、すなわち、思想的要塞と物質的要塞を占領しなければなりません。この二つのうち、思想的要塞の占領に第一義的な力を入れて人々を共産主義的人間に改造しなければなりません。人間がすべてを決定します。物質的富がいくら大量に生産されても、人々の思想が変質すれば、社会主義・共産主義を成功裏に建設することができません。

 一部の社会主義国では、思想的要塞の占領に力を入れないので、社会主義が満足に建設されていません。いうまでもなく、社会の全構成員を共産主義的革命家に教育改造するのは難しいことです。しかし、社会主義・共産主義社会を建設するためには、必ず社会の全構成員を共産主義的革命家に教育改造しなければなりません。我々は社会の全構成員が、金のためではなく社会と集団のために働くよう教育しています。社会の全構成員が社会と集団のために働くようになれば、その過程で金も生まれるものです。

 我々は、アジアにおいて、革命的立場と社会主義の原則を確固と守っています。

 私はわが国の幹部たちに、革命的原則をかたく守るよう常々強調しています。我々は抗日武装闘争のとき、幾多の試練をへました。そのたびに、我々は、ひきょう者去らば去れ、われらは赤旗守るという革命歌をうたいながら、革命的原則を守って屈することなく闘いました。

 現在、帝国主義者の圧力と妨害策動が間断なくつづいているなかでも、我々は変わることなく革命的原則を守っており、社会主義建設を力強く推進しています。もちろん、経済、技術の面で帝国主義者は我々より多少先んじています。しかし我々は、彼らに依存することなく、自分の力で経済と技術を発展させています。経済と技術を発展させるのは人民大衆です。我々は、人民大衆の知恵と力に依拠して国の経済と技術を発展させ、革命を前進させています。

 我々はアメリカ帝国主義者とじかに対峙していますが、ひきつづき革命の旗を高くかかけて前進し、社会主義の原則をゆるぎなく堅持するでしょう。フィデル・カストロ同志にこのことを伝えてください。

 キューバの共産主義者は、ラテンアメリカで革命的原則を守り、社会主義を断固守っています。

 フィデル・カストロ同志は、物質的刺激のみを優先させて金しか知らない社会主義を建設してはならないとし、人民を革命的に教育する立派な政策を実施しています。

 私は最近、キューバのスポーツマンにおこなったフィデル・カストロ同志の演説文を読みました。フィデル・カストロ同志はその演説で、キューバのスポーツマンがソウル・オリンピックに参加してメダルを受けたとすれば、それは金メダルでなく泥メダルになったであろうと述べています。一部の社会主義国のスポーツマンは、ソウル・オリンピックに参加していくつかのメダルを受けました。しかし、フィデル・カストロ同志がいみじくも表現したように、そのメダルは泥メダルにすぎません。彼らは、メダルはいくつか受けましたが、革命的原則と信義に背いたため気がとがめるでしょう。

 先日、私はある国の人たちと会った席で、キューバのスポーツマンにおこなったフィデル・カストロ同志の演説の内容を話しました。

 我々が革命的立場と社会主義の原則をゆるぎなく守りとおすならば、革命途上のすべての国の労働者階級と人民に大きな力と勇気を与え、社会主義偉業は必ず勝利するでしょう。

 いま敵は、我々の祖国統一偉業を妨げようとあらゆる策動を弄しています。敵がいくら策動しても、朝鮮人民は動揺することなく祖国統一のために力強く闘いつづけるでしょう。

 いま南朝鮮人民も祖国統一をめざす闘いを力強く繰り広げています。南朝鮮人民の反米闘争気運は以前より高まっています。

 昨日も南朝鮮のソウルでは、市民と米兵のあいだに衝突が起こりました。それは、酒に酔った三人の米兵が通りがかりのタクシーをむやみに止めて踏んだり蹴ったりの乱暴をはたらいたことからはじまりました。米兵は、抗議する運転手に集団暴行を加えました。現場でそれを目撃した200余名の市民が運転手に加勢しました。すると、40余名の米兵が襲いかかり、結局200余名のソウル市民と40余名の米兵とのあいだの大乱闘になりました。以前は、ソウル市民がこのようにアメリカ人に真っ向から刃向かうようなことはありませんでした。かつて南朝鮮人民のあいだには、崇米・恐米思想が濃厚でした。言いかえれば、アメリカを恐れ、「解放者」、「援助者」として崇拝していました。しかし、いま南朝鮮人民は、アメリカを恐れ崇拝するのでなく反対しており、アメリカを「解放者」、「援助者」とみなすのでなく侵略者、略奪者とみなして糾弾しています。いま南朝鮮では崇米・恐米思想が消えつつありますが、それは非常によいことです。南朝鮮人民のあいだに過去40年間もくすぶっていた問題がいま結着しつつあります。

 アメリカ帝国主義者と南朝鮮当局者は、日ましに高まる人民の反米・反「政府」闘争の勢いにろうばいし、人民へのファッショ的弾圧を強化しています。しかし、いかなる弾圧によっても、日を追って強化される南朝鮮人民の革命的進出を阻むことはできないでしょう。

 最近、南朝鮮「大統領」は、私に会うため平壌を訪れる意向を表明しました。

 南朝鮮当局者が統一問題を解決しようという立場に立ち、明確な統一方案をもって我々を訪ねてくると言うなら、会うつもりです。南朝鮮当局者が平壌に来て我々に会うつもりなら、明確な統一方案をもってくるべきであって、手ぶらで来ては何の意味もありません。南朝鮮当局者が観光客のように平壌に来て冷麺でも食べていくつもりなら、来る必要はありません。

 数日前、我々は祖国平和統一委員会の名で声明を発表し、南朝鮮「大統領」が平壌訪問の意向を表明したことに対して回答を与えました。祖国平和統一委員会は声明を通じて、南朝鮮「大統領」が最高位級会談のために平壌に来るといったのは歓迎すべきことである、最高位級会談では不可侵宣言も採択し、統一国家の連邦政府樹立の問題と、その実現のための平和統一委員会などの創設問題も協議し、解決すべきである、そのためにはまず、最高位級会談が立派な結実をもたらしうる条件をつくり、好ましい雰囲気をつくらなければならないと指摘しました。

 現在、北と南のあいだには、するどい対決状態が持続しており、和解と信頼の雰囲気がつくりだされていません。南朝鮮当局者は、我々を標的にした大規模の軍事演習をたえず強行しており、ひきつづき軍事力を増強して情勢を緊張させています。南朝鮮当局者が我々と対座して会談をするためには、懐にかくしている刃物をすてるべきであり、我々に対する敵対行動を中止すべきです。懐に刃物をかくしもっていては、向かい合って会談をしても無意味です。

 最高位級会談の条件を整え、好ましい雰囲気をつくりだすためには、北南高位級政治・軍事会談を開き、北南間の緊張を緩和する問題、言いかえれば、大規模の軍事演習を中止し、北と南の兵力を縮小し、南朝鮮からアメリカ軍と核兵器を撤収させる問題など軍事的問題を協議し解決しなければなりません。また、板門店で進行中の双方の国会議員の接触を早急にしめくくり、北南国会連席会議を開いて不可侵に関する問題を解決し、緊張緩和の突破口を開かなければなりません。

 最高位級会談の好ましい雰囲気をつくりだすためには、南朝鮮の「国家保安法」を撤廃しなければなりません。南朝鮮の「国家保安法」は、反人民的で反統一的で反共的なファッショ悪法です。いま南朝鮮では、統一を望む人民の闘いを「国家保安法」にひっかけて過酷に弾圧しています。南朝鮮当局者は、青年学生が我々のチュチェ思想を研究、普及するからと、彼らを「国家保安法」にひっかけて刑罰を加えています。「国家保安法」を存続させては、最高位級会談はおろか、南朝鮮当局者自身が平壌に来ることも、我々と会うこともできません。南朝鮮の「国家保安法」は、共和国北半部を「反国家団体」と規定し、南朝鮮の人たちが北半部の人たちと接触したり行き来すれば厳罰に処せられることになっています。したがって、南朝鮮「大統領」も我々に会おうと平壌に来た場合、「国家保安法」によって逮捕されなければなりません。

 南朝鮮当局者が私に会いに平壌に来るというのは、祖国統一問題を解決するためでなく、世界の人民を欺瞞するためです。南朝鮮当局者は、あたかも自分が祖国統一問題に関心でもあるかのように、対話だのなんだのと人民を愚弄しています。一部の社会主義国にも、南朝鮮当局者のこの欺瞞宣伝に乗せられている人たちがいないわけではありません。

 敵は「二つの朝鮮」をつくりあげるため「クロス承認」戦術を執拗に追求しています。敵の「クロス承認」戦術は、朝鮮を永久に二分しようとする狡猾な術策です。わが国が二つに分かれれば、南朝鮮は永久にアメリカの植民地としてありつづけるでしょう。我々は、南朝鮮がアメリカの永久の植民地になるのを絶対に許すことができません。

 もちろん、祖国統一をめざす朝鮮人民の闘いは困難で長期性をおびるでしょう。しかし、アメリカ軍は南朝鮮に長期間居座りつづけることができません。南朝鮮に駐留しているアメリカ軍は4万余名ですが、南朝鮮の人口は4千万名を超えます。南朝鮮人民は祖国の統一を望み、アメリカ軍に反対しています。4万余名のアメリカ軍が4千万を超える南朝鮮人民に勝てるはずはありません。南朝鮮人民だけでなく、全朝鮮人民が祖国統一の実現をめざして闘っているのですから、勝利は我々のものであり、祖国統一偉業は必ずなし遂げられるでしょう。

 あなたのこのたびのわが国訪問は、我々両国人民間の友好関係の強化発展に寄与するでしょう。あなたのようなキューバの革命家が、わが国をたびたび訪ねてくれるよう望みます。

 私は、両国が革命的立場と社会主義の原則をゆるぎなく守り、社会主義を固守するために最後までともに闘うものと確信します。

 帰国されましたら、フィデル・カストロ同志とラウル・カストロ同志をはじめ、貴国の指導幹部の皆さんに私のあいさつを伝えてください。そして、キューバ人民への朝鮮人民の革命的あいさつも伝えてください。
出典:『金日成著作集』41巻 

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