金 日 成

船舶工業の発展で提起される諸問題について
―船舶工業部門の幹部協議会でおこなった演説― 
1988年7月11日 

 きょうの協議会では、船舶工業の発展で提起される諸問題について述べようと思います。

 わが国は3面が海に囲まれている海洋国であるので、船舶工業を発展させることが極めて重要です。船舶工業を発展させてこそ、水産業と海運業を発展させ、国防力を強化することもできます。アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者が、わが国を侵略しようと機会をうかがっている現状にあって、我々は船舶工業を発展させて大型の軍艦も多く建造しなければなりません。

 船舶工業を発展させれば、船を建造して輸出し、多くの外貨を獲得することもできます。船を立派に建造すれば、輸出はいくらでもできます。いま、わが国から船を買いたいという国が少なくありません。

 このたび、モンゴルを訪問しての帰途、ハバロフスクに立ち寄ってソ連の中央と極東地方の代表と会い、両国間で提起される経済問題を協議しましたが、彼らは、わが国から船を多く購入したいと望んでいました。それで、なぜ船を自国で建造せず、購入しようとするのかと問うと、極東地方は寒くて船の建造が難しいとのことでした。ソ連の極東地方はとても寒いので、1年のうち屋外作業ができる期間は数カ月しかなりませんが、わが国はそうではありません。わが国では12月と1月、2月が冬で、3月と4月、5月が春、6月と7月、8月が夏、9月と10月、11月が秋なので、3月から11月までの9カ月間はいくらでも屋外作業をすることができます。最近、総理が東南アジア諸国を歴訪してきましたが、それらの国でも漁船や貨物船の需要が多く、わが国から買いたいといっているそうです。

 わが国には、多くの船が建造できる基地もしっかり整っています。南浦造船所連合企業所、咸興造船所連合企業所、元山造船所、新浦造船所など、大きな造船所だけでも7個もあります。わが国のように大きくもない国が、大きな造船所を7個ももっているというのはたいしたものです。

 しかし、わが国では大きな造船所をもっていながら、船をそれほど建造していません。我々が立派な造船所を多くもっていながら、これまで船をそれほど建造して売ることができなかったのは、幹部が船舶工業の発展をはかる明確な案をもたず、造船をさかんにして輸出するための対外活動をおろそかにしたことが主な原因です。

 我々は、船舶工業を発展させてより多くの船を建造する積極的な対策を立てなければなりません。

 何よりもまず、造船に必要な艤装品を国産化する運動を力強く展開すべきです。

 船を多く建造するためには、なんとしてでも艤装品を国産化しなければなりません。現在、咸北造船所連合企業所や南浦造船所連合企業所のような大きな造船所で船が多く建造されないのは、艤装品がないからです。3750トン級の漁船をとってみても、それに設置するエンジンはあっても、艤装品がないので、年に数隻しか建造できないありさまです。艤装品のために船の建造が思うようにいかないにもかかわらず、船舶工業部門の幹部は艤装品の問題を解決するために努力せず、なんの対策も立てていません。艤装品の問題を解決せずには、船を多く建造することも、外貨を多く獲得することもできません。国産の艤装品を用いて建造した船を輸出してこそ、多くの外貨を獲得することができるのであって、いまのように艤装品を輸入に依存しては多くの外貨を獲得することができません。現在、輸入した艤装品で船を建造しているので、事実上、鋼板代と労賃しかまかなえない計算になります。咸北造船所連合企業所のような大きな造船所が大型貨物船などを建造できず、切断した鋼板を溶接して小さな引船をつくって輸出するというのは全く恥ずかしい話です。艤装品までいっさい国産化して建造した船を輸出しなくては、外貨を多く獲得して大型船舶の建造に必要な装備を購入することもできません。

 幹部が努力さえすれば、艤装品の国産化は十分可能です。近代的な機械設備は製作できるのに、艤装品一つつくれないというのは論外です。

 造船に必要な艤装品などは、船舶工業部と機械工業部の幹部がその気になって仕事の手配さえ綿密にすれば、いくらでも国内で生産することができます。党中央委員会経済計画部と政務院、国家計画委員会、船舶工業部の責任幹部は、船の建造にどんな艤装品が必要であり、どれはどの工場に、どれはどの工場にそれぞれ生産させるのがよいかを具体的に協議して艤装品の種類とそれが生産できる機械工場を指定した後、それらの工場の支配人か技師長、必要な場合は職場長まで呼んで艤装品を見せ、いつまでいくら生産せよと明確な課題を与えるべきです。

 艤装品生産の課題は新たに与えるのですから、分担された工場、企業所には艤装品職場を設けさせるのがよいでしょう。艤装品職場を設けるのに必要な工作機械はすべて提供すべきです。

 造船に必要な艤装品のうち、多くは必要でなかったり、国産化しにくいものは、船を輸出して得る外貨の一部を支出して、外国から買い入れるようにすべきです。

 船舶工業部門の責任幹部は、艤装品を生産提供する対策を立てず、船を何隻建造せよと押しつけるだけでは船の建造が不可能であることを肝に銘じ、艤装品を生産する対策をしっかり立てなければなりません。

 造船に必要な艤装品を国産化するためには、機関本位主義をなくさなければなりません。艤装品の生産は船舶工業部の担当だからと、機械工業部や他の委員会が我関せずといった態度をとってはならず、同種の艤装品を造船所ごとに生産させてもなりません。

 いま機械工業部門にはなわばり主義が甚だしく、機械工場ごとになわばり主義に走って必要な製品を自家生産するので、その質が向上しません。

 鋳物についても同じことがいえます。私は以前から、鋳造品の生産を専門化するよう強調してきました。機械工業部門が私の指示どおり鋳造品生産基地を一定の地域か単位に完備して必要な鋳造品をそこで専門に生産させていたなら、その生産性と質がかなり向上しているはずです。しかし、幹部は、鋳造品の生産を専門化するという党の方針を満足に実行していません。わが国の機械工場を見学した外国人も、鋳物職場を工場ごとにもっていることについて指摘しています。最近、わが国を訪問したヨーロッパのある国の会社の社員は、自分の会社には多くの機械工場があるが、鋳造品は1個所で専門に生産しているので生産性も高く質も高い、ところが朝鮮では機械工場ごとに鋳物職場がある、これでは生産性も製品の質も低下するといったそうです。

 メッキにしても同じです。わが国には多くの機械工場がありますが、充実したメッキ工場はなく、機械工場でそれぞれメッキをするので質が保障されていません。私は以前、中国を訪問したとき、ハルビンのメッキ工場を見学したことがあります。それは小さい工場で、大部分が女性労働者でしたが、メッキを専門にしているので、質は非常に高いものでした。工場の支配人は、自分の工場ではハルビン市内で依頼されるメッキはもちろん、遠く離れた地方の注文まで受けているというのでした。専門のメッキ工場を完備して専門化することについては、党中央委員会政治局会議でも強調し、経済部門責任幹部協議会でも一再ならず強調しました。ところが、幹部はいまなお私が与えた課題を実行していません。これ一つを見ても、機関本位主義がいかに甚だしいかがよくわかります。

 メッキを専門化してその技術を高め、メッキに必要な原料も節約しなければなりません。メッキ基地は、軍需工業部門に一つ、機械工業部と船舶工業部に一つずつ設けるのがよいでしょう。全国的にメッキ職場を数個所完備しておけば、メッキの需要をみたすことができるでしょう。

 これを機に、機械工業部門では、鋳物とメッキの専門化に一大転換をもたらすべきです。

 造船に必要な同種の艤装品は、民需用と軍需用に分けて別々につくらせるのではなく、一つの工場に民需用も軍需用も生産させるべきです。

 幹部のあいだで事大主義と民族虚無主義を一掃しなければなりません。我々が自力で何かをつくりだすためには、大国や発達した国に頼ろうとする事大主義と、自力では近代的なものがつくれないと思う民族虚無主義をなくさなければなりません。一部の人の頭にはいまなお、発達した国に頼ろうとする事大主義と、自民族を見くだす虚無主義が残っています。事大主義と民族虚無主義に陥ると、自力で十分つくれるものもつくろうとしなくなります。事大主義と民族虚無主義に陥れば、おろか者になります。

 私はわが国を早く工業国に発展させるため、戦争真っ最中の1952年に牡丹峰地下劇場で科学者大会を招集し、その後、全国の科学者をすべて網羅して科学院を創立しました。私は科学者を信頼し、彼らの力と知恵に依拠して国の工業化をはかる課題を示しました。ところが科学院のある科学者は、巻尺もつくれないわが国がどうやって近代的な工業を建設するのかと異議を唱えました。もちろん、当時のわが国の状況では、巻尺をつくるのも容易なことではありませんでした。それから数年後、私は香山に医療機器工場を新設し、そこの労働者、技術者に、いまわが国のある科学者は巻尺一つつくれないといっているが、これは朝鮮人をひどく見くだす態度ではないか、この工場で巻尺をつくってみるようにといいました。そして、見本として巻尺を渡しました。そのとき、外国人から贈られた安全かみそりも渡し、それもつくってみるようにといいました。その後、妙香山医療機器工場では良質の巻尺をつくり、安全かみそりも申し分なくつくりだしました。国産の、巻尺は質がよいので外国にまで輸出しています。

 いま、その工場では、歯科医が利用する治療設備をはじめ、各種の医療機器をつくっていますが、それらの治療設備は性能がすぐれています。現在、郡人民病院で使っている歯科治療設備はほとんど妙香山医療機器工場の製品です。

 すべての部門で、大国や発達した国に頼ろうとする事大主義と、自民族を見くだす民族虚無主義に反対する闘争を力強く展開しなければなりません。

 エンジンの生産を増やすべきです。造船に必要なエンジンはなんとしてでも国産化しなければなりません。

 8月8日工場のエンジン生産能力を向上させるべきです。8月8日工場は、戦後から現在までエンジンを生産してきた工場なので、基礎もあり技術陣もそろっています。ですから、そこのエンジン生産能力をさらに向上させるのがよいと思います。

 8月8日工場は戦後、エンジンを生産するために設けた工場です。停戦後、私は鄭準沢、鄭日竜同志などの経済幹部を伴って外国を訪問したことがあります。そのとき、私は鄭日竜同志にその国の関係者と漁船納入問題を相談させることにして地方参観に出かけました。地方参観から帰って鄭日竜同志に漁船を何隻提供してもらえるのかと問うと、トロール漁船を4隻提供してくれるといっているが、それも数年後のことだとのことでした。祖国解放戦争の時期、漁船がことごとく破壊されていたので、トロール漁船4隻では人民に魚を供給することができませんでした。それで機械工業部門の幹部と、自力で焼玉エンジンが生産できるかを協議してみると、いくらでも生産できるとのことでした。それで、我々は8月8日工場に焼玉エンジンを生産させました。そして、その焼玉エンジンで建造したアンコウ網漁船をはじめ、各種の漁船でイシモチやサバ漁をして人民に供給しました。当時はわが国では鋼板が不足していたので、鋼板ではなく木造の漁船を建造しました。その後、外国製のディーゼルエンジンを模倣して400馬力のディーゼルエンジンを製作しました。

 現在の8月8日工場のエンジン生産能力では、造船に必要なエンジンの需要をみたすことができません。今回、8月8日工場のエンジン生産能力の拡張案を見ましたが、適切な見積もりがなされていないようです。もちろん、8月8日工場で小型エンジンと大型エンジンのいずれも生産できるというなら、そこで小型エンジンまで生産させることもできます。しかし、8月8日工場では100馬力のような小型エンジンではなく、大型エンジンだけを生産させるのが合理的です。8月8日工場はエンジン生産の経験を積んでいるのですから、1000馬力か、それ以上の大型エンジンの生産にあたらせるべきです。この工場では、1万4000トン級貨物船と2万トン級貨物船の建造に必要な大型エンジンも生産すべきです。2万トン級貨物船も建造しなければならないので、それに必要なエンジンも生産すべきです。

 100馬力エンジンと200馬力エンジンを8月8日工場に生産させない場合は、水産委員会管下の焼玉エンジン工場で生産させるべきです。100馬力と200馬力のエンジンは、主に小規模漁業の漁船に必要なものですから、水産委員会管下の焼玉エンジン工場で生産させるのが合理的です。焼玉エンジンを生産する工場に設計文書と必要な工作機械だけ補充すれば、100馬力エンジンはいくらでも生産できます。

 水産委員会管下の焼玉エンジン工場は、東海岸にもあり西海岸にもあります。西海岸では、南浦船舶修理工場で焼玉エンジンを生産しているので、その工場に100馬力とか200馬力のエンジンを生産する課題を与えることができるでしょう。

 清津機械工場にもエンジンを生産させることができます。すでに、その工場で補助エンジンを生産しているので、少々肉づけをすればエンジンの生産は可能です。船舶工業部門では、清津機械工場でのエンジン生産案を立てるべきです。

 エンジンを各地で生産するからと、それをあまり分散させてはいけません。エンジンの質を高めるためには、生産を専門化しなければなりません。エンジン生産を分散させると、その質を高めることができませんが、いくつかの工場に専門に生産させれば、質を高めることができます。

 これから新たに生産する大型エンジンは、外国から設計図を買い入れて生産するのがよいでしょう。我々が船を多く建造するためには、新型のエンジンを生産しなければなりませんが、それを国内で開発するより外国の設計図を買い入れて生産するほうが早いでしょう。エンジンを自力で設計して生産するためには、多くの試験段階をへなければならないので、時日が長くかかります。新しい設計図を買い入れるまでは、いま生産しているエンジンの生産をつづけ、新しい設計図が手に入れば、それで新型エンジンを生産すべきです。

 エンジン生産の問題については、当該幹部がなお具体的に検討してみるべきです。明確なエンジン生産対策を立てず、旧式エンジンを大量生産しては役に立ちません。

 これから8月8日工場には、何馬力エンジンを何台、どの工場には何馬力のエンジンを何台生産させるかを具体的に見積もり、改めて定めるのがよいと思います。

 造船を専門化すべきです。漁船と貨物船とでは、特性にそれぞれ違いがあるので、造船を専門化しなくては質を高めることができません。これからは、漁船を専門とする造船所と貨物船を専門とする造船所を別々に定め、漁船を建造するところではそれだけをつくらせ、貨物船を建造するところではそれだけをつくらせるべきです。

 漁船の建造では、波の荒いときでも出漁できる大型漁船を多く建造することが重要です。波が荒いときでも出漁できる大型漁船を多くつくれば、冬季にかぎらず夏季の漁獲でも成果をあげることができます。波の荒いとき、出漁できない小型漁船では、冬季にメンタイ漁も思うようにできません。メンタイは、冬になると2カ月ほどわが国の沿海に群をなして押し寄せるので、そのときに出漁して漁獲しなければなりません。ところが、そのころは風が強く海が荒れるので、小型漁船はそれほど出漁できません。小型漁船だけでは、わが国の沿海に押し寄せるメンタイをそれほど捕れずに逃がしてしまいます。波が少し高くなっても出漁できない小型漁船をいくら建造したところで、労働力を浪費するだけでそれほどの利益はありません。ですから、船舶工業部門では、何トン級の漁船を何隻建造すべきかを明確に見積もり、それにもとづいて建造しなければなりません。

 485トン級の漁船は、建造すべきではありません。この漁船は漁獲には難がありませんが、波に耐えられないのが欠陥です。485トン級の漁船は、冬に出漁できる日がそれほどありません。現在の450〜485トン級の漁船は出漁日が60%しかならないそうです。出漁日が60%なら、1カ月に17、8日出漁する計算になりますが、私にはそれより少ないように思えます。以前、私が漁獲作業状況を直接掌握していたときに見ると、あるときには波のために幾日間も連日出漁できないありさまでした。

 600トン級の漁船も新しく建造する必要はありません。600トン級の漁船も大波には耐えられないので漁獲が思うようにできません。600トン級の漁船は現在のものだけを利用し、以後は建造しないことです。

 140トン級漁船の建造計画も取り消すべきです。200馬力エンジンを200台生産して140トン級の漁船を建造するといっていますが、私の考えではその必要はないようです。いまはもうアンコウ網漁船のような小型漁船で漁獲するような時期ではありません。140トン級の漁船は近海での漁獲はできますが、それは建網による漁獲にも及びません。数日前、人民軍軍人が建網で魚を捕っていると聞いて、建網にかかった魚を丸ごと持ってこさせましたが、たいしたものでした。建網に入ったもののなかには、ホッケ、ニシン、タコをはじめ、さまざまな魚がありました。もちろん、漁獲には140トン級のような小型漁船も必要ですが、それは現在もっているものだけでも少なくないので、それ以上建造する必要はありません。

 漁船を新しく建造するからには、波が荒くても出漁して漁獲ができる大型漁船を建造するのが有利です。3750トン級と1000トン級の漁船なら、波の荒い日にも出漁することができます。これまでの実績を見ても、3750トン級と1000トン級の漁船は、波の荒いときでも毎日出漁しました。しかし、3750トン級の漁船は、漁船としては大きすぎる感があります。3750トン級の漁船は船内に冷凍設備や魚粉加工設備などを備えるので大きく建造していますが、そうする必要はありません。漁船に各種の加工設備をすえると、複雑であるだけで、利用価値はあまりありません。3750トン級の漁船はもう建造しなくても大丈夫です。いま、3750トン級の漁船は少なくありませんが、それだけでも十分です。

 これからは、1000トン級の漁船を多く建造するのがよいでしょう。以前、水産部門の幹部は1000トン級の漁船は漁労作業に適していないといいましたが、実際に使ってみると結構使えます。経験によれば、漁労には漁獲して冷凍もできる1000トン級の漁船が適しています。現在、1000トン級の漁船はそれほど建造されていませんが、1000馬力エンジンを大量生産して1000トン級の漁船をさらに建造すべきです。1000トン級の漁船をさらに建造して数十隻ほど保有すれば、他の漁船はもう建造しなくてもすむでしょう。

 貨物船は2万トン級と1万4000トン級、5000トン級を適切に組み合わせて建造するのがよいでしょう。海運部門に大きさの違う各種の貨物船があれば、貨物の多いところには大型貨物船を送り、少ないところには小型貨物船を送って、貨物を適時に輸送することができます。貨物船は貨物を満載しなければならないので、貨物が少ないところに大型貨物船を送ると、他の貨物を積むときまで待機しなければなりません。大型貨物船に貨物を満載せずに運航すると、燃料油の浪費が多くなり、輸送費が高くつきます。ですから、2万トン級と1万4000トン級、5000トン級の貨物船をそれぞれ何隻ずつ建造するかを具体的に見積もらず、ただどういう貨物船を何隻建造せよと頭ごなしに押しつけてはなりません。今後、2万トン級、1万4000トン級、5000トン級の貨物船を何隻ずつ建造するかは、船舶工業部門の幹部が海運部門、貿易部門の幹部と共同で見積もるのがよいと思います。いまではもう幹部が多年間の海運経験を積んでいるので、どんな船がどれくらい必要なのかよくわかっているはずです。

 これから、国内で船を利用する貨物は主に球団鉱と丸太ですが、それに必要な貨物船はさほどのものではないでしょう。球団鉱を船便で東海岸地区から西海岸地区へ運ぶには距離がそれほど遠くないので、2万トン級の貨物船が6隻ぐらいあれば間に合うでしょう。2万トン級の貨物船が6隻あれば、2隻は貨物を積み、2隻は貨物を積んで運航し、2隻は貨物を積みに来るというふうに利用することができます。丸太を東海岸地区から西海岸地区へ運ぶのにも、2万トン級貨物船2隻なら十分です。1年間に東海岸地区から西海岸地区へ運ぶ丸太の量はそれほど多くありません。丸太を1カ月に約3万立方メートル運んでも、10カ月なら30万立方メートル運べるので、2万トン級の貨物船2隻で1カ月に1回ずつ往復させてもすむでしょう。船に貨物を積んで咸鏡北道から南浦まで行くには1週間ぐらいかかるので、1カ月に1回は十分往復できます。

 今後、貨物船は国内ではさほど必要でないでしょうが、対外貿易では多く要求されるでしょう。いまのところ、輸出入物資は多くないので、貨物船が多く要求されませんが、第3次7カ年計画の末になれば多く要求されるようになるでしょう。そのときになれば、セメントだけでも大量に輸出することになるでしょう。今後、セメントまで含めた輸出品を輸送するのにどういう貨物船が何隻必要なのかを具体的に見積もるべきです。どんな船が何隻必要かが具体的に見積もられれば、船用エンジンはそれに合わせて生産すればよいでしょう。

 造船用広幅鋼板の国産化をはかるべきです。造船用の鋼板を国産化しなければ、船を思うように建造することができず、建造した船を輸出してもそれほどの外貨を得ることができません。黄海製鉄連合企業所で造船用鋼板を生産する対策を立てるべきです。現在、黄海製鉄連合企業所で生産している厚板は熱処理に欠陥があって大型船の建造には利用できないそうですが、熱処理を上手にする対策を立てなければなりません。

 タンカーも建造すべきです。いま、原油は社会主義諸国から輸入していますが、これは重要な動力源であり、原料でもあるのですから、それらの国にのみ依存するのは不安定です。社会主義諸国にのみ依存していて、それらの国から円滑に輸入できなくなれば、生産と建設に大きな支障をきたすようになります。我々は、社会主義諸国から原油をひきつづき輸入する一方、他の国からも輸入しなければなりません。今後、国内で石油が産出されるようになるまでは、アジア諸国から毎年数百万トン輸入する計画です。

 しかし、アジア諸国から原油を輸入する場合、それを輸送するのが問題です。それらの国からわが国のタンカーで原油を輸送せず、外国のタンカーをチャーターして輸送するとなると、輸送費がかさみます。20万トン級のタンカーをチャーターして原油を1回輸送してくるのにほぼ200万ドルの運送費がかかるそうです。400万トンの原油を20万トン級タンカーで輸送するとすれば20回運航しなければならないので、運送費だけでもほぼ4000万ドルかかります。400万トンの原油をチャーター船で輸送するとなれば、4000万ドルを費やすことになります。

 アジア諸国から原油を輸入するためには、少なくとも3隻のタンカーが必要です。そうすれば、1隻は原油を運びに行き、もう1隻は原油を積んで祖国に向けて出発し、あとの1隻は原油を陸揚げするなり修理するなりすることができます。

 タンカーを2隻くらい自力で建造すべきです。船舶工業部門では、20万トン級タンカー建造用の船台を建設する一方、それをブロック建造方式でも建造してみるべきです。船舶工業部門では20万トン級タンカーをブロック建造方式で2年で建造するといっていますが、そうするのも悪くありません。ブロック建造方式で20万トン級タンカーの建造がうまくいかないかも知れませんが、失敗しても元々だと思って一度やってみるのも悪くありません。大型タンカーをブロック建造方式で建造するのを何も難しく考える必要はありません。

 自力でタンカーを建造するには時日がかかりますから、それまで腕をこまぬいているわけにはいきません。ですから、すでに計画されているとおり、タンカー購入の交渉も進めなければなりません。タンカーを購入する場合、何万トン級のものにするかということが問題です。一部の人は運営に便利な10万トン級のタンカーを購入しようといっています。もちろん運営に便利な点も考慮すべきですが、どういう船が輸送費の節減に有利であるのかも考慮しなければなりません。私の考えでは、10万トン級よりも20万トン級のタンカーを購入するほうがよさそうです。10万トン級のタンカーでは一度に10万トンの原油しか輸送できないので、ややもすれば石油精製工場に原油をそのつど供給できなくなるおそれがあります。石油精製工場に原油を切らさず供給するには、10万トン級のタンカーが数隻は必要でしょう。20万トン級タンカーの価格は、10万トン級タンカーに比べてそれほど高くありません。ですから、20万トン級のタンカーを購入するのがよいでしょう。タンカーを2隻購入する場合、20万トン級1隻と10万トン級1隻とするのが有利でしょう。

 タンカーの問題は私が方向を示したとおり、自力で建造する一方、外国から購入する方法で解決するのがよいと思います。

 ドックを建設しなければなりません。

 ドックを建設すれば、わが国の船をそのつど修理することができ、外国の貨物船を修理して外貨を少なからず獲得することもできます。

 羅津には、乾ドックではなく浮ドックを建設すべきです。現在、乾ドックではなく、浮ドックをつくって利用するのが世界的趨勢となっています。もともと、羅津に乾ドックをもう一つ建設する計画でしたが、6月12日船舶修理工場に乾ドックがあるのですから、羅津には乾ドックを増設せず、浮ドックを一つ設けるべきです。これから、6月12日船舶修理工場と羅津に新設する浮ドックでは、外国船舶の修理を専門とすべきです。

 南浦にも9月10日船舶修理工場に乾ドックがあるのですから乾ドックを増設せず、浮ドックを設けるべきです。

 10年ほど前に9月10日船舶修理工場を建設するとき、私が乾ドックにするか浮ドックにするかを検討し、乾ドックにするのがよいとして乾ドックを建設させました。そのとき、9月10日船舶修理工場の乾ドックを約2年がかりで建設しました。乾ドックは地面を掘って閘門だけ設ければよいので、建設費はそれほどかかりません。けれども、9月10日船舶修理工場に大型貨物船を一度に数隻横付けできる係留場があれば、乾ドックを増設しなくても外国船を幾隻でも修理することができるでしょう。

 今後、南浦に貨物船の修理ができる4万トン級ほどの浮ドックをもう一つ増設すべきです。

 新浦造船所には、乾ドックを建設しなければなりません。6月12日船舶修理工場と羅津に設ける浮ドックで外国船の修理を専門にすることになるのですから、国内船を修理する乾ドックを一つ建設しなければなりません。国内船を修理する乾ドックは新浦造船所に建設するのが最適です。現在、新浦造船所に建設中の乾ドックを早急に完成し、そこで国内船を修理させることにすべきです。

 第3次7カ年計画期間に20万トン級の乾ドックを建設しなければなりません。そうすれば、そこで20万トン級のタンカーも修理することができます。

 ドックの利用率を高める対策も立てるべきです。

 現在のドックの利用率を高めることは、ドックを増設することに劣らず重要です。現在のドックの利用率を高めるだけでも、ドックを増設せずとも多くの貨物船を修理することができます。ドックがさらに必要な場合には建設すべきですが、現在のドックの利用率を高めて貨物船を適時に修理することができれば、ドックを増設しないのがよいと思います。いま、船舶修理工場でドックを効果的に利用しないので、外国の貨物船をそれほど修理できないありさまです。

 ドックの利用率を高めるには、ドックでの貨物船の滞留時間を極力短縮し、船内の修理は係留場につないでおこなうべきです。そして、船舶修理工場に修理用資材を十分に供給しなければなりません。現在、ドックの利用率が低いのは、船舶修理用資材を適時に供給しないためだと思います。船舶修理工場に修理用資材を十分に供給すれば、船をドックのなかですぐ修理できるので、船の滞留時間を短縮し、ドックの利用率を高めることができます。

 外国の貨物船の修理に必要な資材を国家が供給しにくいものは、船舶修理工場が自分で外国から購入すべきです。船舶修理工場では、船の修理に必要な鋼板など各種の資材は2隻分くらいの余裕をもつようにしなければなりません。

 船舶修理用資材の購入に必要な外貨は、船舶修理工場が船を修理して得た外貨の一部でまかなうようにすべきです。船舶修理工場が稼いだ外貨で必要な資材を購入するのを政務院がよく承認してくれないとのことですが、それは船舶修理工場が外貨をさほど稼げないからでしょう。船舶工業部が船舶修理に必要な外貨の提供を受けようとすれば、外貨をたくさん獲得すべきであって、現在のように船舶修理がいくらもできず実入りが少なくては外貨を割り当ててもらうのが難しいでしょう。

 これからは、船舶工業部門で最初の船を修理して得た外貨の一部を船舶修理用資材の購入に使えるようにしますから、その資金を早く回転させるべきです。

 政務院は、船舶工業部が1年間に外国の貨物船を修理して得た外貨のうち、国家に納める額と、自家消費できる額を定めてやるべきです。そして、船舶修理工場に消費を許す外貨は他に流用できないようにすべきです。船舶修理工場のドック利用率を何%に高めるということも規定すべきです。

 船舶工業部門の幹部は、船舶工業問題についてさらに検討しなければなりません。そうしてこそ、正しい対策を立てて活動を展開することができます。鉄道運輸部門にも一日の貨物輸送量を定めてやりましたが、200日間戦闘がはじまる前までは満足に遂行されませんでした。ところが、200日間戦闘期間に要求の度合を強め、仕事の手配を綿密にしたところ、いまは以前と同じ条件のもとでも毎日の輸送課題を遂行しています。日によっては計画よりも5万トンも超過輸送しています。

 いまや、船舶工業部門でも数年間の不調を挽回する時期に来ています。船舶工業部門の幹部は、船舶工業の発展をはかる見積もりを一つひとつ具体的に立てるべきです。

 艤装品はどういうものをどれくらい国産化するか、1年間に何隻の船を建造するかといったことも具体的に見積もらなければなりません。そうするためには、船の需要国が何トン級の船を何隻求めるのかをはっきり確かめなければなりません。このたび、ある国の人と話し合ってみると、彼らは2万トン級とか5万トン級といった大型貨物船よりも数千トン級の船を多く求めているようです。その国が購入しようとする船は主に河川で利用するものですから、大型貨物船は必要としないようです。国内用の船も必要なだけ正確に見積もって建造しなければなりません。船をあまり建造しすぎると、のらりくらりする人が多くなりかねません。船で近距離輸送をするのは、意味がありません。東海岸地区から西海岸地区への貨物輸送に船を利用するのは結構ですが、東海岸地区の範囲で運航するのはそれほど利得がありません。

 この機会に、建造した船を進水させておきながら速やかに完成できない原因も分析してみるべきでしょう。皆さんがきょうの午後に船舶工業の問題について具体的に検討してみれば、それにもとづいて来年度の計画と1990年度の計画を正しく立てることができるでしょう。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』41巻

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