金 日 成

社会主義農村テーゼに示された技術革命の課題を
立派に実現するために
経済部門の責任幹部との談話 
−1987年10月21日− 


 私は昨年12月の最高人民会議第8期第1回会議でおこなった施政演説で、社会主義農村問題にかんするテーゼを立派に貫徹することを特に強調しました。そして、先日の中央人民委員会でも、この問題について再び強調しました。

 『我が国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』は、農村問題を最終的に解決するための社会主義農村建設の綱領です。このテーゼが発表されて以来、20余年のあいだにその正当性と生命力は実生活を通じて明白に実証されました。

 我々は社会主義農村建設において、確信をもって農村テーゼが示した道をひきつづき前進すべきです。社会主義農村問題を解決するためには、農村テーゼを貫徹する以外に他の道はありません。

 我々は社会主義農村テーゼに示されたとおり、農村において思想革命と文化革命を力強く展開して農民の思想・意識水準と文化・技術水準をさらに高めると同時に、技術革命を力強くおし進めなければなりません。技術革命を力強くおし進めることは、現在、農村テーゼの貫徹において提起される極めて重要な課題です。

 農村技術革命を積極的におし進めてこそ、農業を工業化、現代化して、農民を骨のおれる労働から完全に解放することができます。こんにち、労働者階級と農民の差は労働条件に多くあらわれています。労働者階級と農民の労働条件における差をなくし、農村でも8時間労働制を実施するためには、農村技術革命を力強くおし進めて農業の物質的・技術的土台をいっそう強化し、農作業の機械化、化学化の比重を決定的に高めなければなりません。農業部門で穀物生産の画期的な増大をはかろうとしても、農村技術革命を強力におし進めなければなりません。我が国の農業部門におけるヘクタール当たりの収量は高い水準に達してはいますが、まだ穀物生産を増やせる余地は多いといえます。現段階において穀物生産をさらに増やす重要な方途の一つは、ほかならぬ農村技術革命を力強く推進することです。

 いま経済幹部は、農村技術革命に相応の関心を払っていません。近年、経済幹部が農村技術革命に無関心で、その実現のための経済組織活動に取り組んでいないので、農業部門にトラクターも多く送れず、化学肥料も十分に供給できませんでした。また、畑地潅漑の建設も積極的におし進められず、これまで建設しておいた畑地潅漑施設を効果的に利用する対策も満足に講じられませんでした。経済幹部が農村技術革命に積極的に取り組まなければ、農村テーゼに示された技術革命の課題を完遂することはできません。

 経済幹部は、社会主義農村問題にかんするテーゼをゆるがせにすることなく、テーゼに示された技術革命の課題を立派に実現するため積極的に努力すべきです。

 なによりも、農業の水利化をいっそう高い水準で実現すべきです。

 農業生産は、自然・気候条件の影響を多く受け、特に我が国は稲作を多くするので、潅漑に力を入れることが極めて重要です。昔から、稲作は水作だといってきました。畑作でも潅水をしなくては高い安定した収穫が得られません。

 我が党は、解放直後から農業の水利化に深い関心を払ってきました。我々は大衆運動によって潅漑工事を大々的に進め、水利化の課題を立派に実現しました。こんにち我が国は、稠密な潅漑綱でおおわれており、不利な気候条件のもとでも農業を安全に営める条件がととのっています。しかし、我々はこれに満足することはできません。近年、寒冷前線の影響によって、世界各国で用水の問題が深刻化しています。我が国にも寒冷前線の影響が及んでいるのですから、我々はこれまでの水利化の成果を強固にし、さらに発展させなければなりません。言いかえれば、農業の水利化をさらに高い水準で実現しなければなりません。

 稲作での用水の問題を完全に解決するための水路工事を積極的におし進めるべきです。

 寒冷前線の影響によって建設ずみの貯水池に水をみたせないので、貯水池から遠く離れている一部の協同農場では用水不足のため稲作で支障を受けています。黄海(ホワンヘ)南道の一部の協同農場と平安(ピョンアン)南道の一部の干拓地の水田では、用水不足のためヘクタール当たりの所期の収量を高められないありさまです。

 我々が莫大な資金と労働力をつぎこんで西海(ソヘ)閘門を建設したので、これからは平安南道と黄海南道の主要穀物生産地の潅漑用水の問題を円滑に解決できるようになりました。西海閘門の水を引く水路工事が完成されれば、平安南道の干拓地の水田と黄海南道の用水不足をきたしている地域に用水を十分に供給することができます。

 昨年から黄海南道をはじめ、用水の不足する地域に西海閘門の水を引く水路工事をおこなっていますが、工事がかなり進捗しています。水路工事にひきつづき大きな力を入れて、すでにはじめた工事はもちろん、新たにはじめる工事も早々に終えるべきです。政務院は、水路工事に必要な資材と設備をそのつど供給しなければなりません。

 散水式畑潅漑の建設を力強くおし進めるべきです。

 トウモロコシづくりの基本は、一代雑種の種子をまき、肥料を十分にほどこすと同時に、水をたっぷりやることです。トウモロコシは、肥料と水を多く要する作物です。トウモロコシは、特に雄花と穂が出る時期に畑の水分を85%保障しなければなりません。一部の人は、トウモロコシの葉が一日ぐらいしおれるのはたいしたことでないかのように思っていますが、実はそうではありません。この時期に畑の水分が不十分で、トウモロコシの葉が一日しおれるだけでも、収量にかなりの影響が及びます。それゆえ、トウモロコシづくりで高い安定した収穫を得るためには、すべての畑に潅水をして水を十分に与えなければなりません。

 7号農場では畑に散水式潅漑を導入して、毎年ヘクタール当たり8〜9トンのトウモロコシを収穫しています。この農場では、これまでトウモロコシのヘクタール当たり収量が8トンを下回ったことがありません。もともと、この畑は、土地が悪いといって協同農場が投げだしたものです。ところが、散水式潅漑を導入して以来、収穫高が上がりました。

 トウモロコシ畑に潅水をすれば、ヘクタール当たりの収量を2、3トンは高めることができます。トウモロコシ畑を50万ヘクタールほど潅水するとして、ヘクタール当たりの収量を2トン高めても、100万トンの増収になります。トウモロコシが100万トンというのは少ない量ではありません。100万トンのトウモロコシがあれば、各道の穀物加工工場をすべてフル稼働させても余るでしょう。

 農業部門では、数年内に平地の畑はもちろん、斜面畑もすべて潅水すべきです。

 畑地潅漑はうねま潅漑より散水式潅漑のほうがまさっています。うねま潅漑では畑をまんべんなくしめらすことができず、土地が洗い流され水の浪費も多いですが、散水式潅漑は雨水のように水を降らすので、畑をほどよくしめらし、畑の栄養物質も洗い流されることがありません。

 畑に散水式潅漑を導入するためには、管の問題を解決しなければなりません。

 散水式畑潅漑の建設に必要な本管を鋳鉄管にすると銑鉄がたくさんかかるのが問題です。おおざっぱな計算によっても、50万ヘクタールのトウモロコシ畑に散水式潅漑を導入するには100万トンほどの銑鉄が必要です。散水式畑潅漑の建設に100万トンの銑鉄を供給するというのは容易なことではありません。

 私は、鋼材を重要建設対象に供給しながらも散水式畑潅漑に必要な管の問題を解決する方策はないものかと、いろいろ考えてみました。ところがある日、車で通りすがりに道路の端に立っているコンクリートの電柱が目にとまりました。車から降りて電柱を見ながら、あれは中が空洞になっているのが明らかだが、あんなふうに管をつくれば散水式潅漑に必要な管の問題が解決できるのではなかろうかと考えました。コンクリート電柱のようにセメントで内面のなめらかな管をつくれば十分、畑地潅漑に利用できそうでした。帰ってきて当該部門の幹部に電話をかけ、散水式畑潅漑に必要な本管をセメントでつくれないだろうかと尋ねると、つくれるとのことでした。それで、一度試しにつくってみるようにといったところ、そのとおりしてみると申し分ないとのことでした。散水式畑潅漑に必要な管をセメントでつくれば、鋼材はそれほどかかりません。50万ヘクタールの畑に散水式潅漑を導入するとしても、それに必要な管をセメントでつくれば鋼材は数万トンしかかかりません。

 散水式潅漑に必要な支管は、プラスチックでつくればよいので問題ありません。

 散水式畑潅漑の建設を大々的に進めるためには、スプリンクラーの生産も決定的に増やさなければなりません。いま、一部の協同農場では散水式潅漑施設をすべて設置しておきながら、スプリンクラーがこわれて潅水が満足にできないとのことです。スプリンクラーを生産する工場の充実化をはかるべきです。

 散水式畑潅漑の建設は、各道がそれぞれ責任をもって自力でおこなうようにすべきです。これに必要なコンクリート管なども各道が十分自力で生産供給できます。セメント工場は、平安南道と平安北道、黄海南道と黄海北道をはじめ、ほとんどすべての道にあるので、生産をもう少しだけ増やすならば、コンクリート管の生産に必要なセメントは自給できるでしょう。コンクリート管の生産に必要な鉄線も各道でそれぞれ解決できます。製鋼工場とセメント工場のない道は中央から援助すべきでしょう。

 散水式畑潅漑の建設を力強くおし進めるためには、実地調査を具体的におこなわなければなりません。幹部が下部に出向いて畑地潅漑対象の調査をし、設備と資材の供給対策も講じるべきです。

 散水式畑潅漑の建設を積極的に進める一方、建設ずみの散水式畑潅漑施設を効果的に利用しなければなりません。農業部門では、散水式畑潅漑施設をきちんと管理し補修整備する運動を強力に展開すべきです。そうして、多くの労働力と資材をかけて建設した散水式畑潅漑施設が十分に効果を発揮できるようにしなければなりません。

 農業の総合的機械化を完成すべきです。

 農業の総合的機械化を完成してこそ、搾取と抑圧から解放された農民を骨のおれる労働からも完全に解放し、農業生産をさらに高めることができます。我々が農業を機械化する目的は労働生産性を高めることにもありますが、農民を骨のおれる労働から解放し、かれらの労働をらくにすることが主な目的です。資本主義社会では、資本家がより多くの利潤を得るために農業を機械化しますが、社会主義社会では農民を骨のおれる労働から解放するために農業を機械化するところにその根本的な違いがあります。

 いま、農村技術革命において最も困難な課題は、総合的機械化を完成することであるといえます。しかし我々には、農業の総合的機械化を完成できる強固な物質的・技術的土台が築かれています。我々は、自力更生、刻苦奮闘の革命精神を強く発揮して、大規模のトラクター生産基地をはじめ、近代的な農業機械生産基地をしっかりととのえており、これまで農業部門に供給した機械化手段も相当なものです。また、農村技術革命を担当できる技術陣も準備されており、農民の技術・文化水準も高まっています。要は、幹部が農業の総合的機械化の完成のため、いかに取り組むかということです。幹部は、搾取と抑圧から解放された農民を骨のおれる労働からも完全に解放するのが共産主義者の気高い義務であるという自覚をもって、農業の総合的機械化の完成のため積極的に努力すべきです。

 農業の総合的機械化を完成するためには、なによりもトラクターをはじめ、各種の近代的農業機械を大量に生産して農村に供給しなければなりません。

 農村に農業機械を多く供給せず、技術革命のスローガンを叫ぶだけでは農業の総合的機械化を完成することはできません。

 トラクターを量産して農村に供給すべきです。

 トラクターは、田畑の耕転と運搬作業はもちろん、各種の農作業ができる立派な機械化手段です。農業の機械化を完成できるかどうかは結局、トラクターを増産できるかどうかにかかっているといえます。経済幹部は、現在のトラクター工場をさらに充実させ、鋼材を十分に供給してより多くのトラクターを生産して農村に供給できるようにしなければなりません。

 チョンリマ(千里馬)号トラクターを大量に生産するのが一番です。チョンリマ号トラクターは、生産の歴史も長く、協同農場でいちばん多く利用されているものです。チョンリマ号トラクターは、耕転としろかき、それに運搬作業にも適しています。このトラクターは燃料油の消費量が少し多いのが欠点ですが、それはトラクターを軽量化すれば退治できます。それゆえ、チョンリマ号トラクターの生産を中断することなく、ひきつづき増やすべきです。

 豊年(プンニョン)号トラクターもたくさん生産して農村に供給すべきです。豊年号トラクターがなければ、田畑の深耕も、耕地整理もできません。

 忠誠(チュンソン)号トラクターも生産して農村により多く供給すべきです。

 生産されたトラクターを地域の特性に応じて適切に配分すべきです。チョンリマ号を多く供給すべきところにはチョンリマ号を、豊年号を多く供給すべきところには豊年号を、忠誠号を多く供給すべきところには忠誠号というふうに各種のトラクターを正しく取り合わせて供給しなければなりません。

 農村にトラクターを多く供給すると同時に、その利用秩序を正しく立てるべきです。トラクターの利用は、農作業を基本とすべきです。トラクターで荷物を運搬する仕事は自分の協同農場内に限らせ、是非とも、必要な場合にのみ隣接の協同農場まで行って荷物を運搬するようにしなければなりません。

 協同農場にトラックも供給すべきです。

 農業部門で輸送問題を解決し、総合的機械化を完成するためには、トラックがなければなりません。いまは協同農場にトラックの台数が少ないので、肥料などの営農物資をほとんどトラクターで運搬しています。そのため、トラクターが使えなくなり、営農にも支障をきたしています。

 昨年、最高人民会議の代議員選挙に参加するため平原(ピョンウォン)郡へ行ったとき、地元の幹部と対話してみると、駅から遠く離れている協同農場では、鉄道駅におろされた肥料をトラクターで運搬するので、トラクターがこわれ、肥料も適期にほどこせないとのことでした。それで、平原郡にトラックを供給するようはからいました。平原郡では肥料をトラックで運搬してきて適期にほどこしたので、今年は昨年より作柄がよくなりました。協同農場にトラックを供給することが極めて重要です。

 農村に耕地100ヘクタール当たり1台の割合でトラックを供給すべきです。勝利(スンリ)58トラックを耕地100ヘクタール当たり1台の割合で供給すれば、協同農場では必要な営農物資をすべて運搬することができるでしょう。そうなれば、トラクターは耕転としろかきなどの農作業のみをし、長距離輸送はしなくてもすむので、合理的に利用でき、その寿命ものばすことができます。

 農村に苗取り機や田植機、稲刈り機、肥料と農薬を散布する機械など各種の近代的な農業機械をより多く生産して供給すべきです。

 農村に供給された農業機械の利用率を高めなければなりません。

 いま、協同農場が保有している農業機械は少なくないのですから、それを合理的に利用するだけでも営農実績をさらにあげ、農民の骨のおれる労働を少なからず軽減することができます。

 トラクターの利用率を高めることに第一義的な関心を向けるべきです。

 トラクターの部品とタイヤ、燃料油を十分に供給し、トラクターとトラクター用農業機械をそのつど修理、整備するようにしなければなりません。

 トラクター運転手の責任感と役割を高めることが極めて重要です。トラクター運転手の責任感と役割を高めてこそ、トラクターの利用率をあげることができるばかりでなく、農業の総合的機械化を成功裏に実現し、農業生産を高めることもできます。今後、機械化された農村では農作業をほとんどトラクター運転手が担当するようになるので、トラクター運転手にたいする教育を正しくおこなって、かれらが農村の主人であり、農業の直接的担当者であるという高い自覚をもち、積極性と創意性を発揮して働くようにしなければなりません。そして、トラクター運転手の技術・技能水準をたえず高めなければなりません。

 トラクターだけでなく、農村に供給された他の農業機械も効果的に利用すべきです。

 農業の総合的機械化を完成するためには次に、我が国の実情に合う新しい農業機械をより多く生産しなければなりません。

 我が国では稲作の面積が多く、また、我が国の耕地のなかには斜面畑と小区画の田畑が少なくありません。それゆえ、外国で広く利用されている農業機械であっても、それが我が国の実情によく合わない場合もあります。外国製のトウモロコシ用のコンバインをみても、それは平野地帯の大区画の畑でのみ使えるもので、斜面畑や小区画の畑では利用できません。我が国のトウモロコシ畑のなかには、斜面畑と小区画の畑が多いので、そういう機械は我が国の実情に合うとはいえません。したがって、農業の総合的機械化を成功裏に完成するためには、我が国の地形条件と農法に合う各種の農業機械を多くつくりださなければなりません。科学者、技術者の役割を高め、生産者大衆のあいだで創意考案運動を力強く展開して、平野地帯の田畑はもちろん、斜面畑と小区画の田畑の農作業も機械化できる、扱いやすく能率の高い新しい農業機械をより多くつくりださなければなりません。4馬力エンジンを利用して各種の小型農業機械をたくさん生産すれば、斜面畑と小区画の田畑の農作業を機械化するのに極めて効果的でしょう。

 農業部門では、耕地整理をきちんとおこなうべきです。

 耕地整理をきちんとしなければ農業の機械化を成功裏に実現することができません。農村にトラクターなど農作業の機械化に必要な農業機械をいくら供給しても、耕地整理をきちんとしなければ、それを効果的に利用することができません。耕地整理をきちんとすることは、土地の利用率を高めて穀物生産を高めるうえでも重要な意義をもちます。

 耕地整理をきちんとするかどうかということも、他のすべての仕事と同様、党の方針にたいする幹部の観点と立場にかかっています。農業部門の幹部は、党の方針にたいする正しい観点と立場に立って、耕地整理に積極的に取り組まなければなりません。

 棚田を整理すべきです。棚田を整理するからといって、むやみやたらにしてはならず、それぞれの地域の特性を考慮し実情に応じておこなうべきです。以前、黄海南道のある郡では、白米を食べようといって、多くの斜面畑を棚田にかえましたが、そういう棚田はもとどおりトウモロコシ畑にするのが有益です。山間部の棚田は、あぜの面積が20〜25%を占め、干害もこうむりやすいので、稲をつくるとヘクタール当たり3トン以上収穫するのは無理です。しかし、棚田を畑にしてトウモロコシを植え、散水式潅漑をすれば、ヘクタール当たり8〜9トン、よくすれば10トンまで収穫できます。棚田でヘクタール当たり3トンの稲を収穫するより、それを畑にしてヘクタール当たり9トンのトウモロコシを得るほうがずっとましです。

 湿地帯の棚田は畑にしてはなりません。湿地帯の棚田は畑にかえてトウモロコシを植えるより、そのままにして稲作をするほうがましです。湿地帯の棚田はそのままにして稲を植えることにし、機械化ができるようによく整理しなければなりません。

 耕地整理をきちんとするためには、整理対象にたいする調査を綿密にしなければなりません。各道が道内の農業大学の教員と学生を動員して、耕地整理対象にたいする調査を筆地別にくわしくおこなうようにすべきです。

 農業の電化をいっそう円滑に実現すべきです。

 農業部門の電化を円滑に実現してこそ、水利化の成果をいっそう強固にし、総合的機械化を成功裏に完成することができ、農村をより文化的にととのえることもできます。我が国ではまだ石油が産出されないので、農業の機械化を積極的におし進めるには電気動力を多く利用しなければなりませんが、そのためにも農村の電化を円滑に実現しなければなりません。

 我が国では久しい前に電化が実現され、農村のすべての里に電気が入り、農作業と農民の生活における電気の利用分野ははるかに広くなりました。しかし、まだ農村の電化は満足すべき水準に達しているとはいえません。幹部は、農業の電化をいっそう高い水準で立派に実現するため積極的に努力しなければなりません。

 農村の電力需要を充足させるためには、中小規模の発電所を大々的に建設して電力生産を増やさなければなりません。

 我が国には大小の河川がたくさんあるので、随所に中小規模の発電所を建設することができます。中小規模の発電所をたくさん建設すれば、国家的にそれほどの投資をしなくても電力生産を速やかに増やすことができます。地方の潜在力を積極的に探求動員して、中小規模の発電所建設を大衆的連動で力強く展開すべきです。特に、糸車式の水車による水力発電所をたくさん建設すべきです。風力発電所も建設すべきです。水力資源に富み、発電所建設に有利な地帯では中小規模の発電所を大々的に建設して、そこで生産される電力を脱穀や乾燥、粉砕作業などだけでなく、炊飯や暖房にも利用すべきです。そうすれば、農民の生活はいっそううるおいのあるものになるでしょう。

 農繁期に急増する電力需要をみたす対策も講じるべきです。農繁期に農業部門では、揚水機を稼働させようとするだけでもかなりの電力が必要です。農繁期には、営農にすべてを服従させる原則で電力供給を綿密に手配しなければなりません。

 農業の電化に必要な電気設備と資材を円滑に生産供給すべきです。機械工業部門では、発電機とモーター、変圧器、電線などの電気設備と資材をより多く生産して農業部門に供給しなければなりません。

 農業の化学化を完成するために奮励努力すべきです。

 農業の化学化を完成すれば、農民の労働をらくにしながらも穀物生産を増やし、人民に食糧を十分に供給し豊かな生活をさせることができます。

 農業の化学化において基本となるのは、各種の肥料をたくさん生産して農村に供給することです。

 私がいつも言っていることですが、肥料はすなわち米です。穀物は、肥料をほどこしただけ生産されます。私が直接、農業部門を指導しながら試してみたところによると、窒素肥料施肥量と穀物生産量の比率は1対10です。すなわち、各種の肥料をバランスよくほどこせば、ヘクタール当たり100キログラムの窒素肥料で1トンの穀物が生産されます。したがって穀物生産を増やすためには、化学肥料をたくさん生産しなければなりません。

 我々は新たな展望計画の最終年度に、720万トンの化学肥料を生産しなければなりません。そうすれば、農業の化学化は高い水準に達します。当該部門では、我が国の土壌と農作物の生物学的特性にかなった効能の高い各種化学肥料を計画どおり生産供給すべきです。

 窒素肥料生産をさらに増やすべきです。我が国が保有している窒素肥料生産能力は小さいものではありません。現在の工場だけフル稼働させても、窒素肥料生産を著しく増やすことができます。経済幹部は、窒素肥料を生産する工場をフル稼働させる積極的な対策を講じるべきです。肥料工場設備の補修、整備に必要な資材をそのつど供給し、石炭も十分に供給すべきです。

 燐酸肥料の生産を増やすことが極めて重要です。燐酸肥料生産を増やさずには、農作物のヘクタール当たり収量を高めることができません。田畑に燐酸肥料をたくさんほどこしてこそ、農作物の光合成作用がさかんになり、他の肥料ももっとよく吸収します。寒冷前線の影響が甚だしいうえに、密植をするので、燐酸肥料をたっぷりほどこすことがなおさら重要です。

 燐酸肥料は、窒素肥料と燐酸肥料の比率を1対1.2にしてほどこすのが適量です。これは、私が農業を直接指導する過程で得た科学的な基準です。

 燐酸肥料を大量生産するためには、現在の燐灰石鉱山の生産能力を高めなければなりません。豊年(プンニョン)鉱山、双竜(サンリョン)鉱山、永楡(ヨンユ)鉱山をはじめ、燐灰石鉱山の生産能力を高める工事を急ぐべきです。燐酸肥料は国内の原料で生産することを考えるべきであって、外国の燐灰石の品位が高いからといってそれを輸入して生産しようとしては、燐酸肥料の問題を解決することができません。燐灰石鉱山の生産能力を高める一方、燐酸肥料を生産する工場も補修、整備して、その能力を拡張しなければなりません。投資をせずには燐酸肥料の生産を増やすことができません。政務院は、燐酸肥料生産部門に思いきった投資をしなければなりません。

 カリ肥料の生産を大幅に増やすべきです。カリ肥料は、作物の生育に欠かせない3要素肥料の一つです。カリ肥料を十分にほどこさなくては、ヘクタール当たりの収量を高めることができません。いま、窒素肥料と燐酸肥料は結構ほどこしていますが、カリ肥料はそうではありません。水田にカリ肥料を十分にはどこさないと、稲が伸びるあいだは作柄がよいように見えますが、穂が出たあとは稲粒が十分に実らず、シイナができてヘクタール当たりの収量が落ちるようになります。

 カリ肥料は、ヘクタール当たり200キログラムほどこすのが適量です。ヘクタール当たり200キログラムのカリ肥料をほどこすためには、我が国の耕地面積を200万ヘクタールほどとみて、40万トンは生産しなければなりません。我が国でカリ肥料は、沙里院(サリウォン)カリ肥料連合企業所を建設しなくては解決されません。沙里院カリ肥料連合企業所の第1段階建設だけ終えても、34万トンほどのカリ肥料が生産されます。さしあたり、カリ肥料を外国から輸入するなり、いろいろな方策を講じて田畑のカリ成分を保障する対策も立てるべきです。

 珪素肥料は、生産を増大させるうえでこれといった難問はありません。金属工場に珪素肥料生産基地を増設し、生産を増やせば間にあいます。珪素肥料は生産も重要ですが、輸送対策を綿密に立てることが極めて重要です。鉄道運輸部門は輸送の手配を綿密にして、生産された珪素肥料をそのつど運搬しなければなりません。

 マグネシウム肥料や棚素肥料など各種の微量要素肥料も、生産を増やして十分に供給すべきです。

 土補酸肥料の生産対策を講じ、田畑の地力を高めるべきです。

 我が国の田畑は、およそ開拓の歴史が長いので、地力がたいへん衰えています。載寧(チェリョン)平野は昔から肥沃な土地として知られていましたが、開拓されてから長くたっているので、いまは以前と違います。以前、江原(カンウォン)道に行って准陽郡浦泉(ヘヤングンポチョン)協同農場を視察したことがありますが、その農場の畑も開拓されてから長くたっているので、地力が衰えて作柄がかんばしくありませんでした。

 田畑の地力を高めるためには、堆肥をたくさんつくってほどこさなければなりません。これは久しい前から強調していることですが、源泉が欠乏して満足に生産されていません。いま協同農場の管理委員長や里党書記は、ヘクタール当たり堆肥を15トンほどこした、20トンほどこしたと報告していますが、実際はそうなっていません。田畑の地力を高める最もよい方法は、堆肥の代用になる土補酸肥料をたくさん生産してほどこすことです。農業の化学化を実現するうえで、土補酸肥料を重視しなければなりません。

 土補酸肥料の生産基地を早急にととのえるべきです。土補酸肥料工場を平安南道と咸鏡南道、咸鏡北道に建設すべきです。平安南道では、他のことは少々できなくても土補酸肥料工場の建設に力を入れ、土補酸肥料を早く生産しなければなりません。土補酸肥料工場の建設に必要なものは全部供給すべきです。土補酸肥料工場を建てて量産すれば、田畑はもちろん、果樹園や桑畑などにもほどこすことができるでしょう。土補酸肥料を果樹園にほどこせば、果実の出来がよくなります。

 農業の化学化において重要なのは、除草剤などの化学手段を広く利用して農民を骨のおれる労働から解放することです。

 我々は、農民を骨のおれる労働から解放するための技術革命の遂行において大きな成果を達成しましたが、いまなお農村では、草取りのような手間の多くかかる骨のおれる農作業を少なからず手労働でしています。農民を骨のおれる除草作業から完全に解放するためには、能率的な各種の除草機を生産供給すると同時に、効能の高い除草剤をたくさん生産して農村に供給しなければなりません。現在の除草剤生産工程を補強し、除草剤工場の建設を早く終えなければなりません。除草剤工場の建設に労働力が不足するなら、ほかに動員された労働力でもまわし、設備が問題なら設備を補強する対策を講じるべきです。

 病害虫から農作物を保護し、収量を高めるのになくてはならない殺虫剤と生育促進剤など、各種の農薬生産を増やす対策を講じるべきです。

 農村における技術革命を完成させる事業をいっぺんにしようとせず、2段階に分けて進めるべきです。第1段階では平野の多い道に力を集中して先に終え、第2段階では山間部の道に力を集中して終えるようにすべきです。平安南道の孟山(メンサン)郡のような山間部の郡は、両江(リャンガン)道と条件が似ているので、第2段階にいれてもよいでしょう。農村技術革命を完成させる事業は、各道と郡の具体的実情と条件に応じておこなうべきです。

 社会主義農村問題にかんするテーゼに示された技術革命の課題を完成するのは、けっして容易なことではありません。しかし、我々は近い年内に農村技術革命の課題を完成する目標を立てて奮闘しなければなりません。経済幹部は、農業の物質的・技術的土台を強化する経済組織活動に取り組み、農村技術革命の遂行において強い革命精神と責任感を発揮すべきです。

出典:『金日成著作集』40巻 


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