金 日 成

自力更生の革命精神を強く発揮して
   社会主義経済建設をおし進めよう
経済部門の責任幹部との談話 
−1987年1月3日− 


 私は、新年を迎え、みなさんが元気で仕事に励んでくれるよう望みます。

 元日に開かれた中央人民委員会・政務院合同会議でも述べましたが、我々は今年から革命と建設で極めて重要な意義をもつ第3次7か年計画の遂行に着手することになります。第3次7か年計画の基本課題は、人民経済の主体化、現代化、科学化をひきつづき力強くおし進め、社会主義の完全な勝利のための物質的・技術的土台を強固に築くことです。

 第3次7か年計画は、非常に膨大な計画です。新たな展望計画期間に、我々は第6回党大会が示した社会主義経済建設の10大展望目標を達成し、工業生産は1.9倍、農業生産は1.4倍以上増大させなくてはなりません。そのためには、工業と農業をはじめ、人民経済の各部門を現代技術で装備し、生産能力をさらに高めるための基本建設を大々的に進めなければなりません。

 第3次7か年計画が遂行されれば、我が国は経済発展において世界的に発達した国々の列に加わるようになり、社会主義の完全な勝利をめざす朝鮮人民のたたかいでは決定的な前進が遂げられるでしょう。そうなれば、人民の物質・文化生活は極めて高い水準に達し、我が国はいっそう暮らしよい人民の楽園に変わるでしょう。

 しかし、新たな展望計画の遂行をめざす我々のたたかいは、けっして快調に進むものではありません。我々は国土が分断されており、アメリカ帝国主義と直接対峙している困難な状況のもとで新たな展望計画を遂行することになるのです。アメリカ帝国主義者は、南朝鮮におびただしい兵力を引き入れ、我が共和国を標的にした軍事演習を頻繁におこなう一方、我が国を経済的に窒息させるため、最新科学技術と重要な戦略物資が我が国にはいらないように策動しています。

 国際共産主義運動の内部に発生した現代修正主義も朝鮮革命の前途に多くの難関をつくりだしています。現代修正主義者は、社会主義を「改革」「改編」するといって資本主義の道に進んでおり、国際主義の原則をことごとく放棄しています。したがって、社会主義建設において、かれらとの国際主義的協力は期待しがたいものとなっています。ひいては、我々がその誤った修正主義的政策に従わないからといって、かれらは我々に経済的圧力を加えています。

 第3次7か年計画の課題は膨大で、幾多の難関もありますが、我々は新たな展望計画を十分自分の力で遂行することができます。いまは、我々が素手で廃墟のなかで戦後の復興建設をしたときとは違います。いま、我々の力は、あのときに比べて数百倍に成長しました。我々には、自立的民族経済の強固な土台があり、社会主義建設の実践闘争のなかで鍛えられ、党のまわりにかたく団結した人民があり、我が党が育てあげた有能な科学者、技術者の大集団があります。

 要は、幹部と党員と勤労者が、自力更生の革命精神をいかに強く発揮するかということです。自力更生は、自分の力を信じ、自分の力に依拠してないものはつくりだし、不足するものは探し出して提起された課題をあくまで遂行していく強靱な革命精神です。すべての幹部が、革命の指揮メンバーであるという高い自覚をもって、自力更生、刻苦奮闘の革命精神を強く発揮してこそ、現在の経済的土台を効果的に利用して第3次7か年計画の高い目標を成功裏に達成することができます。

 いま問題なのは、幹部に革命の指揮メンバーとしての自覚と自力更生、刻苦奮闘の革命精神が欠けていることです。以前は幹部が、私からどんなにむずかしい任務を受けても、理由や口実をつけず昼夜を分かたず奔走して、期日内に間違いなく遂行したものですが、いまは幹部が重要な任務を受けても、どうのこうのと泣き言を並べて適時に遂行していません。採掘工業部門の幹部は坑木や炭車をくれないので石炭を満足に生産できないといい、金属工業部門の幹部は原料と電力が供給されないので鋼材を計画どおりに生産できないといい、機械工業部門の幹部は鋼材が供給されないのでトラックやトラクターを量産できないといっています。

 自力更生、刻苦奮闘の革命精神のない人は、革命をおこなうことができません。自力更生、刻苦奮闘の革命精神がなければ、自分の力を信じるのでなく他人をあてにするようになり、ちょっとした難関にも自信を失って動揺したり、くじけたりするようになります。そういうことでは我々は結局、第3次7か年計画を遂行することができず、ひいては社会主義を成功裏に建設することもできません。

 幹部は、革命と建設で提起されるすべての問題を自分の力で解決するため懸命に努力しなければならず、いかなる難関と試練につきあたっても動揺したり、くじけたりせず、自信と楽観にあふれて勇敢に克服すべきです。

 もともと、自力更生、刻苦奮闘するのは、共産主義者の重要な闘争気風です。共産主義者は、人類の理想である社会主義・共産主義を建設するためにたたかう自覚的な革命家です。共産主義者が革命をおこなうのは誰かの指示や強要によるものではなく、誰かによく思われるためでもありません。共産主義者は、自分の信念にもとづいて革命をおこなうのです。社会主義・共産主義を建設しようというかたい覚悟をもってみずから革命の道に立った共産主義者は、常に自国人民の力を信じ、それに依拠して革命と建設で提起されるすべての問題を解決していくことを重要な革命の準則とすべきです。自分の力を信じようとせず、他人の力をあてにして依存心を起こしては革命をおこなうことができません。自力更生の道こそ、革命の最終的勝利を達成する道であり、共産主義者にはこの道以外にはありません。

 我々は、抗日革命闘争の当初からこんにちにいたる全期間、自力更生、刻苦奮闘の革命的原則を一貫して堅持し、自分の力で革命闘争と建設事業を進めてきました。

 革命闘争史の学習を通してみなさんも知っているとおり、我々が抗日武装闘争を組織、展開するうえでいちばん難問題となったのは武器を獲得することでした。当時、我々に武器をただで提供するという国もなければ、武器を買ってこようとしても資金がありませんでした。こうした状況のもとで、みずからを武装する道は、敵の武器を奪い、自力で武器をつくる道しかありませんでした。我々は、「武装は我々の生命だ! 武装には武装で!」という戦闘的スローガンをかかげ、敵の武器を奪う血みどろのたたかいを展開しました。武器を獲得するため、数多くの革命同志が高貴な生命まで投げだしました。そのとき、我々が獲得した一挺一挺の銃には革命同志の熱い血がにじんでおり、かれらの燃えるような愛国心がこもっていました。我々は敵の武器を奪って武装する一方、自力でも武器をつくりました。実際上、満足な道具一つない状態で、武器を自分の手でつくるというのは、普通のときなら想像すらできないことです。しかし、抗日遊撃隊員はあらゆる難関を克服し、自力で火薬を製造し、鉄片と鉄線を手に入れて大小さまざまな爆弾をつくりました。その時につくった爆弾を「延吉爆弾」と呼びましたが、抗日遊撃隊員はその「延吉爆弾」で多くの敵を殺傷しました。

 我々は、取るに足りない経済とからっぽの国庫を引き継がされた解放直後のあの困難な時期にも、他国に頼らず、自分の力で破壊された工場と炭鉱、鉱山を復旧して操業し、祖国の運命を決する厳しい祖国解放戦争の時期にも自力で地下に兵器工場を建設し、武器をつくって敵と戦いました。

 国のすべてのものが破壊され、何からはじめればよいのかわからなかった戦後の復興建設の時期にも、我々は他人の力に頼らず、みずからの力に頼りました。我々は文字どおり、廃墟のなかから復興建設をはじめました。当時、一部の人のあいだには動揺がありました。反党反革命分派分子らは、人民の力では戦後復興建設の困難な課題は遂行できないから、外国の援助に依存すべきだといいました。我が党は、反党反革命分派分子らのこうした態度を断固排撃し、人民の力に頼って戦後の復興建設を進めることにしました。人民は、党の方針を支持して立ち上がり、困苦欠乏に耐えて悪戦苦闘し、破壊された経済を短い期間に立派に復旧したばかりでなく、新しい工場も多く建設し、トラクターやトラック、電気機関車をはじめ、各種の近代的な機械もたくさん製作しました。

 私が楽元(ラクウォン)の労働者たちを自力更生の模範として高く評価するのは、党からいかにむずかしい課題がまかされても、かれらは上部に頼ろうとせず自力で無条件遂行したからです。

 楽元の労働者たちは厳しい祖国解放戦争の時期、敵の爆撃によって工場の生産施設が甚だしく破壊された困難な状況のもとでも、戦時生産をいっときも中断せずに手榴弾をつくって前線に送り、戦後には増産と節約闘争を強化しようという党の呼びかけにこたえて、自力で幾多の難関を克服して大型揚水機とトラッククレーン、掘削機などの近代的な機械設備を立派に製作しました。我々は、楽元機械工場の労働者たちが自力更生して製作したトラッククレーンや掘削機、揚水機で建設を進め、潅漑もしました。楽元の労働者たちは最近にも、工業の発達した国でしかつくれないという大型酸素分離機を自力で遜色なくつくりだしました。楽元の労働者たちが近代的な大型酸素分離機をつくりだしたのは、我が国の機械工業の発展において、いま一つの高い高地を占領したことを意味します。

 我が国の自立的で近代的な工業と発達した農業、さん然たる民族文化と強力な国防力は、ある大国の援助や「神様」の恵みによるものではなく、それはみな、朝鮮人民が党の指導のもとに、自力更生、刻苦奮闘の革命精神を発揮して献身的にたたかった結果です。したがって、朝鮮人民が革命闘争と建設事業で達成したすべての成果は、自力更生、刻苦奮闘の革命精神が生んだ貴い結実だといえます。いま、世界の多くの国の人が、我が国を「自力更生の模範国」と高くたたえているのは決してゆえなきことではありません。

 朝鮮人民は比類なく困難な状況のもとで、自分の力で社会主義を建設しようと人一倍苦労し、血と汗も余計に流しましたが、そのかわり自己の幸せな生活を確固と裏付ける朝鮮式の社会主義を立派に建設したことにたいし大きな誇りと自負をいだいています。

 我々は、我が党と人民の自力更生の伝統を立派に継承すべきです。「自力更生、刻苦奮闘の革命精神をさらに強く発揮して、第3次7か年計画の高い目標をくりあげて達成しよう」 これがいま、我が党がかかげている重要な戦闘的スローガンです。

 人民経済のすべての部門、すべての単位で、党の戦闘的スローガンを高くかかげ、国家計画を自力で無条件遂行する革命的気風を確立すべきです。

 生産手段が私的所有になっている資本主義社会では生産が無計画におこなわれますが、生産手段が社会的所有になっている社会主義社会では、すべての生産が国家の統一的な指導のもとに計画的におこなわれます。国家の全般的な計画遂行と国の経済発展は、個々の部門、個々の単位が、国家計画をいかに遂行するかにかかっています。もし、ある部門、ある単位が、国家計画を円滑に遂行できなければ、それと連関している部門と単位が影響を受け、ひいては国の経済発展全般に支障を与えるようになります。したがって、どの部門、どの単位をとわず、自己に課された国家計画を日別、月別、四半期別に、そして、指標別に無条件遂行しなければなりません。

 特に、第3次7か年計画の初年度である今年度の人民経済計画を成功裏に遂行するために奮闘すべきです。はじめ半分という言葉のとおり、何事であれ出だしが肝心です。今年度の人民経済計画を成功裏に遂行してこそ、新たな展望計画をくりあげて遂行する突破口を開くことができます。それゆえ、どんな手段を講じてでも、今年度の人民経済計画を必ず遂行しなければなりません。

 今年度の人民経済計画を遂行するうえで、金属工業、電力工業、石炭工業、建材工業、化学工業の各部門と鉄道運輸部門が先頭に立つべきです。そうしてこそ、人民経済のすべての部門で生産を高い水準で正常化し、今年の全般的な人民経済計画を成功裏に遂行することができます。それで、私はすでに党中央委員会第6期第12回総会で今年、鋼材は毎月いくら生産し、電力は瞬時電力でいくら生産し、石炭とセメントは毎日いくら生産し、鉄道輸送は毎日いくら遂行し、窒素肥料生産と石油精製は年中にいくらするという課題を示しました。みなさんは、私が党中央委員会総会でうちだした課題を銘記し、一月から
それを間違いなく遂行すべきです。

 幹部が自分の部門、自分の単位の国家計画を自力で円滑に遂行するためには、上部から要件の保障が得られればよく、保障されなくても自分の力でやるという覚悟で、内部の潜在力を積極的に動員する経済組織活動を綿密におこなうべきです。何事であれ自分の力でやるという覚悟で根気よく取り組むなら、難問解決の方途を見出し、内部の潜在力を動員することもできます。

 いま一部の幹部は、なにか課題を追加すると泣き言をいい、予備を探し出そうとはせず、上部に頼ろうとばかりしますが、それではいけません。我々には、いまなお埋もれている内部の潜在力がたくさんあります。内部の潜在力というものは特別なものではありません。生産に利用されずに残っていたり、効果的に利用されていない労働力や設備、資材がほかならぬ内部の潜在力です。こういう潜在力は、どの部門、どの単位をとわずどこにもあります。

 内部の潜在力を最大限に動員するためには、なによりも、幹部が生産者大衆のなかにはいって政治活動を活発におこない、かれらの思想を啓発しなければなりません。

 社会主義社会で最も大きな潜在力は、生産と管理の主人である勤労者の頭のなかにあります。それゆえ、他のすべての活動と同じく、内部の潜在力を動員する活動も、政治活動を先行させて勤労者の思想を啓発してこそ、成果をおさめることができます。すべての活動において政治活動を先行させ、大衆の自発的熱意と創造的積極性を呼び起こすのは我が党の伝統的な活動方法です。

 私は、革命と建設を指導する過程で困難な問題が提起されると、人民のなかにはいって政治活動をおこない、かれらの革命的熱意を呼び起こす方法でそれを解決しました。

 みなさんも承知のとおり、1956年は我が党と人民にとって試練の年でした。アメリカ帝国主義と南朝鮮かいらい一味は、「北進」ラッパを騒々しく吹き鳴らし、共和国北半部を侵略するための戦争挑発策動をたえず強行し、党内に潜入した反党反革命分派分子らは、それぞれ大国を後ろだてにして党に挑戦してきました。当時、修正主義者の圧力もひととおりのものではありませんでした。こうした情勢のもとで、我々は1957年から第1次5か年計画を遂行しなければならなかったのですが、我々には資金と労働力、資材が不足していました。特に、鋼材不足は厳しいものがありました。それで私は、党中央委員会1956年12月総会を終えて、幾人かの幹部をともなって降仙(カンソン)製鋼所に行きました。私が現地の幹部と協議会を開き、来年に鋼材を計画より1万トン増産することができないだろうかと聞くと、かれらは分塊圧延機の公称能力が6万トンだから、それはむずかしいと答えました。私は、工場の幹部とそれ以上討議しても問題が解決されそうもないので労働者たちに直接訴えてみるつもりで、倉庫として建てられた建物にかれらを集めて演説をしました。私は労働者たちに、いま国の実情は極めて困難だ、来年度から第1次5か年計画の遂行にとりかかるが、我々には、資金と資材、労働力と設備も不足している、そのうえ反党反革命分派分子らは党に反対して頭をもたげ、修正主義者は我々に圧力をかけており、アメリカ帝国主義と南朝鮮かいらい一味は再び「北進」すると騒ぎたてている、我々には労働者階級しか頼るところがない、みなさんが内部の潜在力を探し出して鋼材を計画より1万トン増産すれば国が腰をのぼせるだろう、と訴えました。私が演説を終えると、労働者たちはいっせいに立ち上がって万歳を叫び、党の要求どおり鋼材を無条件生産すると決意しました。降仙の労働者たちは、党の呼びかけにこたえてこぞって奮起し、内部の潜在力を動員して6万トン能力の分塊圧延機で12万トンの鋼材を生産する奇跡を生みました。その後、降仙の労働者たちは、技術革新運動を活発に展開し、6万トン能力の分塊圧延機を100万トン能力に引き上げました。

 降仙製鋼所の労働者たちの模範に見習って全国の多くの工場、企業所が従来の公称能力と基準量を破り、新たな革新を起こしました。1957年、金策製鉄所の労働者たちは、19万トン能力の製鉄設備で27万トンの銑鉄を生産しました。

 増産闘争を展開する過程で、我々の前に横たわっていた難関は克服され、国の経済事情が緩和され、社会主義建設でチョンリマ(千里馬)の大高揚が起こりました。

 すべての幹部は、生産者大衆のなかに深くはいって政治活動を先行させ、かれらが新たな展望計画の遂行がもつ意義と重要性を明確に認識し、内部の潜在力の探求、動員に積極的に乗り出すようにすべきです。

 節約運動を強化することは、内部の潜在力を動員するうえで重要な意義をもちます。節約運動を強化してこそ、現有の設備と資材、労働力でより多く生産し、建設することができます。

 いま、どの部門をみても、国家と社会の財産をずさんに管理し、浪費する現象がなくなっていません。機械工業部門では規格に合う鋼材を使わず、製品より何倍も大きな素材を削っており、加工の過程で不合格品を出して多くの鋼材を浪費しています。化学工業部門と金属工業部門では、設備をそのつど補修、整備せず、設備の運転で標準操作法を正確に守らないため多くの電力を浪費しています。特に、浪費が多いのは建設部門です。建設部門では、設計をいい加減にし、不良施工をして多くの労働力とセメント、鋼材、レンガ、木材を浪費しています。こうした浪費は、程度の差こそあれ、どの部門、どの単位にも見られます。浪費をなくすことなしには、いくら多く生産し建設しても、国を富強にすることができず、人民に裕福な暮らしをさせることもできません。

 人民経済のすべての部門、すべての単位で、節約運動を大衆的運動として力強く展開すべきです。節約せよというのは、当然使うべきものも使うなということではありません。必要なところには使い、不必要なところには使わず、なるべく少なく使い、切り詰めて使うのが節約です。

 節約制度を強化するためには、幹部が国の経済管理をきちょうめんにしなければなりません。幹部は経済管理において見積もりをきちんと立て、労働力と物資、資金の消費を一つひとつ具体的に検討し、それを最大限に節約し効果的に利用する対策を講じるべきです。いま電力が不足ぎみなので、電力の節約に深い関心を払うべきです。電力を節約するためには、電力系統をいっそう完備し、送電ロスを減らし、時差交代制産組織を綿密におこなうべきです。

 節約制度を強化するためにはまた、生産者大衆を正しく教育し、かれらが主人としての立場で個人の財産より国家と社会の財産を大切にし、1グラムの石炭、1ワットの電力、1片の鉄、1条の糸でも切り詰めて使うようにしなければなりません。

 これとともに、国家財産をずさんに扱い、浪費する行為にたいし強い思想闘争を展開すべきです。仕事をいい加減にして国家財産を浪費するのは、人々の頭のなかに利己主義をはじめ、古い思想の影響が残っているからです。古い思想の残りかすを根こそぎにする思想闘争を強化せずには、浪費行為を根絶することができません。したがって、些細な浪費行為にたいしても黙認することなく、そのつど思想闘争を展開して徹底的に克服すべきです。

 法的統制も強化すべきです。国家の物資を詐取したり、浪費した場合には、誰をとわず法的制裁を受けるべきです。

 内部の潜在力を最大限に動員するためには、質的指標の改善に相応の関心を払わなければなりません。

 質的指標は、国家の人的・物的資源を生産と建設にどれほど効果的に利用するかを示す指標です。労働生産性と物資消費基準、設備利用率、原価などの質的指標をたえず改善してこそ、生産と建設での浪費をなくし、労働力と設備、資材、資金を極力節約することができます。

 ところがいま、少なからぬ経済機関の幹部と工場、企業所の幹部は、質的指標の改善に関心を払っていません。政務院の各委員会、省と工場、企業所の一部の幹部は、自分の部門、自分の単位で質的指標がどのように遂行されているのか確かめてもいません。そのため、質的指標のうち、改善されるものはわずかにすぎず、一部の質的指標はひきつづき低い水準にとどまっています。製品単位当たりの電力消費基準などは、10年前も現在もこれといった差がありません。すべての部門、すべての単位で科学的な技術・経済上の見積もりにもとづいて質的指標の基準を正確に定め、それを正しく適用し、発展する現実の要求に即応して質的指標をたえず改善すべきです。

 自力更生、刻苦奮闘の革命精神を発揮して新たな展望計画を成功裏に遂行するためには、内部の潜在力を最大限に動員、利用するとともに、技術革命を力強くおし進めなければなりません。

 技術革命は、生産を増大させ、経済建設を早める重要な裏付けです。人民経済のすべての部門、すべての単位で技術革命を力強くおし進め、生産工程を現代化し、進んだ生産方法を取り入れてこそ、労働生産性を高め、原料と燃料、資材を節約して新たな展望計画の膨大な課題を成功裏に遂行することができます。いま、工場、企業所の少なからぬ幹部は、当面の生産にのみきゅうきゅうとし、技術の発展にはほとんど関心を向けていません。一部の幹部は、工場に立ち後れた機械設備があってもそれを更新することは考えず、労働者と技術者からよい技術革新案が提起されても現行生産が忙しいという口実でよく取り入れていません。幹部がこういうことでは、いつになっても技術を革新することができず、立ち後れた機械設備を更新することも、生産を早急に発展させることもできません。

 技術革命はおこなわず、当面の生産にのみきゅうきゅうとして現状維持でもしようとする幹部は、党に忠実な人だとはいえません。幹部は、技術革命にたいする観点を正し、技術革命を力強くおし進めるべきです。幹部は、社会主義経済建設の展望目標と現実的要求に即応して科学技術発展計画を正確に立て、その遂行へと科学者、技術者と広範な勤労者の創造力を積極的に引きだすべきです。人民経済の各部門で立ち後れた古い設備を近代的に改造し、生産工程の機械化、オートメ化、ロボット化、コンピューター化を実現するために奮闘すべきです。そして、農村技術革命をおし進めて農業を工業化すべきです。農業の水利化、電化がすでに実現された状況のもとで、その成果を強固にし、トラクターや稲自脱コンバインをはじめ、各種の近代的な農業機械と肥料、農薬を大量に生産して農村に供給することにより、農業の総合的機械化と化学化を一日も早く実現しなければなりません。

 自力更生、刻苦奮闘の原則で社会主義を建設するというのは、けっして、国際的交流と協力を排除し、必要なものをすべて自力で解決するということを意味するのではありません。必要なものをすべて自力で解決している国はないし、いくら発達している国でも、すべての技術を所有しているわけではありません。我が国の場合も同じです。我が国が資源に恵まれているとはいえ、石油やコークス用炭、生ゴムなどないものが少なくありません。それにもかかわらず、一部の幹部は外国から物資を買い入れたり、先進技術を導入したりするのは、主体性に欠け、自力更生、刻苦奮闘の革命精神がないかのように考えています。我々が国内にないか、わずかしかない原料をそのつど外国から買い入れず、外国の先進科学技術を導入することなく自力で研究するといって時間を延ばすなら、社会主義経済建設の課題を成功裏に遂行することができません。我々は、自国の資源と技術で経済を建設し発展させるのを基本としながら、国内にないか、わずかしかない物資、立ち後れた技術は、外国との経済・技術交流と協力を通じて解決すべきです。こうするのが経済的にも有益です。

 幹部が、自力更生、刻苦奮闘の革命精神を強く発揮するためには、我が党の革命思想、チュチェ思想で武装し、社会主義偉業の勝利の確信をもたなければなりません。

 チュチェ思想は、人間の運命の主人は人間自身であり、人間の運命を切り開く力も人間自身にあるという思想です。チュチェ思想は、人民大衆の自主性を実現するための目標と、その実現方途を明示しています。幹部は、チュチェ思想で武装してこそ、前進途上の難関と試練を自分の力で克服し、社会主義偉業の正当性を確信して、その勝利のために献身することができます。一部の幹部は仕事が忙しいからといってチュチェ思想の学習を怠っていますが、そういうことでは思想的に変質をきたすようになります。幹部は、いくら仕事が忙しくても学習を中断することなくつづけて、チュチェ思想を信念化し、チュチェ思想の要求どおり活動し生活するのを体質化すべきです。

 チュチェ思想とはゆかりのない事大主義、敗北主義などあらゆる不健全な思想に反対して強くたたかうべきです。

 私がすでに述べているように、事大主義は、大きい国、発達した国にかしずき崇拝する奴隷屈従思想であり、自国、自民族を見下し蔑視する民族虚無主義思想です。もちろん、我々の内部に思想潮流としての事大主義はありませんが、幹部のあいだに事大主義の傾向性は残っています。幹部が事大主義に毒されれば、大きい国、発達した国に頼ろうとし、我が党が示した路線と政策に疑念をいだいてよく実行しようとせず、独自の思考力が麻痺して創意性を発揮することができなくなり、しまいには事の正否も判別することができなくなってしまいます。それで、私は久しい前に、人が事大主義に走れば愚か者になり、民族が事大主義に染まれば国が滅び、党が事大主義に陥れば革命と建設を台無しにするといったのです。

 敗北主義は、つきあたる難関に恐れをなして退いたり、自暴自棄に走る極めて有害な思想です。幹部が敗北主義に陥ると革命勝利の信念を失い、ちょっとした難関にも恐れをなして動揺したり座り込んだりし、難問を解決するために身を入れず、条件にかこつけて懸命に努力しようとしません。敗北主義は、社会主義偉業への確固たる信念がなく、自国人民の力を信じない人々のあいだにあらわれます。革命家にとって敗北主義は禁物です。幹部は、いかに困難な局面に直面しても絶対に敗北主義に陥ってはならず、たたかいを挑めばそれを打開することができるという信念と楽観にみちていなければなりません。

 すべての幹部は、事大主義と敗北主義の弊害をはっきり認識し、それに反対して断固たたかうべきです。

 私は、すべての幹部が、自力更生、刻苦奮闘の革命精神を強く発揮し、当該部門の経済課題を成功裏に遂行することにより、社会主義経済建設でいま一度新たな高揚を起こすものと確信します。

出典:『金日成著作集』40巻 


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