金 日 成

主体的な軽金属工業を発展させるために
 経済部門の責任幹部との談話
−1986年11月10日− 


 私はきょう、軽金属工業を発展させるうえで提起される諸問題について述べようと思います。

 軽金属は、機械工業、電力工業、軽工業、建材工業など人民経済の各部門と国防工業、人民生活の分野に広く利用されます。おそらく、軽金属を使わない部門はないでしょう。

 軽金属は、軽くてすぐれた耐食性を有しています。それゆえ、軽金属とその合金を自動車、トラクター、船舶・飛行機の生産や各種の機械・建具・金具の生産に利用すれば製品を軽量化することができ、見栄えもします。トラクターの生産にアルミニウム合金を使えば、軽くて水田にはまりこむようなことがないので、水田の耕転によいでしょう。いま世界各国では、軽金属を利用して機械製品を軽量化する方向に進んでいます。

 軽金属工業を発展させることは、人民経済の自立性と主体性を強化し、科学と技術を発達させ、人民生活を向上させるうえで非常に重要な意義をもっています。

 国の科学技術と人民経済の急速な発展にともない、こんにち軽金属の需要は急増しています。軽金属工業を発展させてこそ工業の部門構造をいっそう完備し、科学技術と人民経済の発展に必要な軽金属を円滑に生産供給し、自立的民族経済の威力をより強く発揮させることができます。

 我々はこれまで、自立的民族経済建設路線を提示し、その貫徹をめざして奮闘してきました。その結果、こんにち我が国では、経済建設に必要な原料と資材を基本的に国産でまかなっています。しかし、我々はいまなお、国の天然資源を十分に開発、利用していないばかりか、自立的民族経済の要求に即応して人民経済の部門構造を完備していません。我々は、国内資源に依拠する新しい工業部門を多く創設し、工業部門の生産工程を整備、補強して工業の部門構造をいっそう完備しなければなりません。

 我が国の工業において弱い部門は、軽金属工業だといえます。いま、他の工業の物質的・技術的土台はしっかりかためられていますが、軽金属工業の生産土台は人民経済各部門で要求される軽金属を自力で生産、供給できるほどには強固になっていません。軽金属を生産する工場はわずかにすぎず、その生産量も多くありません。そのため、外国から少なからぬ軽金属を輸入しています。以前、牡丹峰(モランボン)競技場(現在の金日成競技場)を拡張するとき、ひさしに使う軽金属資材が不足してそれを外国から輸入しなければなりませんでした。我々は、軽金属資材を外国から輸入しつづけるわけにはいきません。

 我々は、軽金属工業の発展に力をそそぎ、人民経済の軽金属需要をみたさなければなりません。軽金属工業も他の工業と同様、我が国の資源にもとづいて発展させるべきです。すなわち、我々は、主体的な軽金属工業を建設しなければなりません。

 我が国には、軽金属資源が豊富に埋蔵されています。かすみ石とカリ長石、チタン鉱にも恵まれています。これまでの地質調査資料によれば、平安北道朔州サクチュ地区には年に400万トンとしても50年余り採掘できるかすみ石が埋蔵されており、黄海南道青丹(チョンダン)地区には年に300万トンとしても100年間は採掘できるカリ長石が埋蔵されています。それに、平安南道、平安北道、咸鏡北道、江原道などの各地にチタン鉱が少なからず埋蔵されています。これから地質調査を深めていけば、より多くのカリ長石とかすみ石、チタン鉱を探し出すことができるでしょう。

 我が国に無尽蔵に埋蔵されているカリ長石、かすみ石、チタン鉱を採掘して処理すれば、アルミニウムとチタンを大量に生産することができます。

 アルミニウムは、代表的な軽金属です。アルミニウムは、機械製品はいうまでもなく、電線の生産にも広く使われます。銅が不足して電線を多く生産できない現状のもとで、アルミニウムで電線を生産すれば多くの銅を節約しながらも電力工業の発展に必要な電線の問題を解決することができます。

 アルミニウム合金をつくって建材に利用すれば、公共施設と勤労者の住宅を近代的に建設することができます。劇場、映画館、学校、商店などの公共施設と住宅の窓枠をアルミニウム合金でつくれば建築がたやすくなり、軽快で外観もよくなります。住宅の窓枠を木材でつくると変形してよくありませんが、アルミニウム合金でつくれば変形しません。いつだったかある国に行ってみると、15〜20階建ての高層住宅の窓枠がアルミニウム合金製のものでしたが、住宅がこぎれいで、都市がさっぱりした感じでした。アルミニウム合金で容器や台所用具などの日用品をつくれば、勤労者に文化的な生活条件をととのえてやることができます。

 かすみ石とカリ長石の総合処理をすれば、アルミニウムだけでなく、カリ肥料とセメントも生産することができます。これこそ、朝鮮のことわざにあるとおり、一石二鳥というものです。

 我が党が、国内資源にもとづくアルミニウム生産の課題を示したのは久しい前のことです。朝鮮労働党第4回大会では、我が国に豊富に埋蔵されているかすみ石でアルミニウムを生産する課題を示しました。

 ところが、これまで幹部たちは、かすみ石でアルミニウムを生産する対策を講じることなく、ミョウバン石とボーキサイトでアルミニウムを生産しようとしました。そのため、多くの時間と労働力を費やしながらも、いまなお、アルミニウムの問題を解決できずにいます。いうまでもなく、ミョウバン石とボーキサイトでアルミニウムを生産するのは結構なことです。世界各国では、ボーキサイトでアルミニウムをさかんに生産しています。しかし、我が国は、ボーキサイト資源に恵まれていません。幹部が最初から主体的立場にしっかり立って、我が国に豊富に埋蔵されているかすみ石とカリ長石を採掘して処理する対策を講じていたなら、アルミニウムの問題は解決されているはずです。

 私は数年前に、かすみ石の総合的処理問題を再度提起し、政務院でこの問題にたいする研究を強め、かすみ石総合処理中間試験工場を建設する対策を講じるようはからいました。

 最近、かすみ石とカリ長石を総合処理してアルミナとカリ肥料、セメントを生産するうえで提起される科学・技術上の問題が少なからず解決されました。この4月、順川かすみ石総合処理中間試験工場でカリ長石で生産したアルミナ試製品を見ましたが、非常に高品位のものでした。かすみ石とカリ長石を処理するときに出る鉱滓でセメントを生産する試験にも成功しましたが、その質は順川セメント連合企業所で生産されるセメントに劣らないといいます。

 朔州地区のかすみ石を年に400万トン処理すれば、アルミナ46万トン、カリ肥料20万トン、セメント540万トン、炭酸ソーダ8万トン、磁鉄精鉱20万トン、燐灰石精鉱16万トンが生産され、青丹地区のカリ長石を年に300万トン処理すれば、アルミナ45万トン、カリ肥料51万トン、セメント1000万トンが生産され、炭酸ソーダも多量に生産されます。

 かすみ石400万トンとカリ長石300万トンを処理して生産したアルミナでは45万トン以上のアルミニウムを生産できますが、これなら国内需要をみたしても余ります。国内で消費して残ったアルミニウムを輸出すれば、多くの外貨を獲得することができます。現在の世界的趨勢からして、鋼鉄は大量生産しても販路が問題ですが、アルミニウムはいくらでも輸出できます。アルミニウムを買おうという国が多く、トン当たりの価格も鋼鉄よりずっと高値です。かすみ石とカリ長石を処理して生産したアルミニウム45万トンのうち、26万トンを輸出するとすれば、トン当たり1200ドルとしても約3億ドルは獲得できます。26万トンのアルミニウムを板材や管、電線などに加工して輸出すれば、何倍もの外貨を獲得することができるでしょう。当座は、アルミナでアルミニウムを生産するのがむずかしければ、アルミナで高アルミナ質レンガやグラインダーなどのアルミナ製品を生産して輸出しても外貨を少なからず獲得することができます。

 かすみ石400万トンとカリ長石300万トンを総合処理すれば、約70万トンのカリ肥料を生産できますが、それなら農業を立派に営むことができます。

 我が国の耕地は利用されはじめてから久しいので、地力が衰えています。文献によれば、李朝中葉に、もはや載寧(チェリョン)平野などでは、稲を栽培したとのことです。そのときからとみても、我が国における稲栽培の歴史は300年にもなります。穀物生産を増やすためには、田畑に土入れをしたり、腐植土を多くほどこしたりして地力を高めると同時に、窒素肥料、燐酸肥料、カリ肥料など各種の肥料をバランスよくほどこさなければなりません。カリ肥料は、農作物の生育に不可欠な3要素肥料の一つです。いま、我が国で窒素肥料と燐酸肥料は少なからず生産していますが、カリ肥料はいくらも生産されていません。そのため、田畑にカリ肥料を十分にほどこすことができず、みすみすヘクタール当たりの収量を高めることができずにいます。

 かすみ石とカリ長石を処理してカリ肥料を毎年70万トン生産すれば、国内で使っても余るでしょう。カリ肥料は、田畑1ヘクタール当たり200キログラム施肥できれば申し分ありません。我が国の耕地は果樹園を含めて約200万ヘクタールですから、カリ肥料が40万トンあればヘクタール当たり200キログラムはほどこすことができます。そうすれば、穀物と果物、野菜、工芸作物をいまよりずっと多く生産することができます。

 セメント工場を建設し、かすみ石400万トンとカリ長石300万トンを総合処理するときに出る鉱滓でセメントを生産するなら、1500有余万トンは出ます。我が国では現在も大量のセメントを生産していますが、これから1500万トンを増産するなら、我が国はセメントの王国になるでしょう。

 欲をいえば、400万トンのかすみ石を処理する工場と300万トンのカリ長石を処理する工場を同時に建設したいところですが、現状ではそれは無理です。電力が不足ぎみなので、2つの対象を同時に建設することはできません。もともとは、かすみ石処理工場を先に建設することになっていました。しかし、かすみ石はカリ長石に比べてカリ成分の含有量が少ないので、かすみ石を処理するくらいでは我が国の農業発展のために切実に要求されるカリ肥料の問題を解決することができません。カリ肥料の問題を早急に解決するためには、カリ成分の多い青丹地区のカリ長石を総合処理する必要があります。それで、カリ長石を処理する工場を先に建設することにしました。今年5月の党中央委員会政治局会議では、カリ長石を処理する工場を沙里院地区に建設することにし、その建設対象を5個地区の建設対象の一つに決めました。この工場を建設するのは、カリ肥料の増産が重要な目的なので、工場の名称を沙里院カリ肥料工場としました。

 沙里院(サリウォン)カリ肥料工場の建設を促進すべきです。

 沙里院カリ肥料工場に回転炉2基を1組にして12基設置することを予見していますが、回転炉4基で年に100万トンのカリ長石が処理できるなら、回転炉12基では年に300万トン処理することができます。回転炉12基をすべていっぺんに建設すべきか、さもなければ、先に1、2基を建設して運営する過程で経験を得てから、あとの回転炉を建設すべきかはさらに研究してみる必要があります。

 沙里院カリ肥料工場の建設は膨大なものであるだけに、しっかりと手はずをととのえて取り組まなければなりません。最近、沙里院カリ肥料工場の建設がはじまりましたが、これには、西海(ソヘ)閘門の建設に参加した人民軍軍人が動員されています。沙里院カリ肥料工場の建設に動員された労働者、技術者と人民軍軍人の意気込みはたいへんなものです。問題は、幹部が必要な条件をいかに保障するかにかかっています。設計を先行させ、建設に必要な設備と資材をそのつど供給し、建設陣容をしっかりかため、建設者への供給活動を円滑におこなうべきです。

 全国がこぞって沙里院カリ肥料工場の建設を労働力の面でも物質的にも力強く支援すべきです。

 沙里院カリ肥料工場の建設と並行して、その工場と連関した対象の建設を推進すべきです。カリ長石鉱山も開発し、鉄道引き込み線も敷設すべきです。また、これからの工場の運営に必要な電力と石炭の供給対策も、いまからあらかじめ立てておくべきです。

 先ごろ開かれた中央人民委員会の会議で黄海北道と黄海南道の経済問題を討議するとき、沙里院カリ肥料工場の建設にかんして提起される課題について具体的に言及したので、これ以上述べないことにします。

 沙里院カリ肥料工場の建設を終えたあと、かすみ石を処理する工場を建設する考えです。今後、かすみ石を処理する工場は价川地区に建設するのがよさそうです。价川地区には、工場を建設できる敷地もあり、原料と燃料を運搬し、動力と工業用水を供給するうえでも問題になることがありません。

 チタン生産を増大させるべきです。

 チタンは軽くて硬質なうえに耐熱性があるので、アルミニウムとともに人民経済の各部門に広く利用されます。チタン生産が重要であるため、その生産を増大させるよう再三強調したにもかかわらず誰もこの問題に関心を払っていませんが、それではいけません。人民経済発展の現実的要求に即応してチタン生産を追いつかせるべきです。チタン生産を増大させるためには、チタン鉱山もさらに開発し、チタン生産についての研究も深めるべきです。チタン工業をいかに振興させるかという案を立てて提出すべきです。

 アルミニウムとチタンで各種の軽金属合金を生産する対策を講じるべきです。

 これから、アルミニウムとチタンが量産されれば、各種の軽金属合金をつくるべきです。そうしてこそ、軽金属を人民経済の発展に広く利用することができます。いまから、軽金属合金を大々的に生産する対策を立てておかず、軽金属が大量生産されるときになって対策を立てようとするなら、それだけ軽金属工業の発達に支障を与えるようになります。

 軽金属加工基地をしっかり築くべきです。

 軽金属を加工することは、軽金属の生産に劣らず重要な問題です。いまにカリ長石とかすみ石を大量処理してアルミニウムを量産しても、加工がうまくできなくては、アルミニウムを大量生産した意味がなくなります。アルミニウムやその合金を塊状のまま使うわけにはいきません。圧延したり、線引きにしたりして、管や板、線など各種の製品にして使わなければなりません。現在、我が国に軽金属加工工場があるにはありますが、その能力はわずかなもので、技術装備水準も高くありません。軽金属加工基地をしっかり築かずには、やがて量産される軽金属を全部加工することができず、加工品の質を向上させることもできません。

 現在、我が国には鉄鋼加工基地がしっかり築かれているので、軽金属加工基地を築くのは問題ありません。鉄鋼を加工するのも軽金属を加工するのも原理は同じですが、幹部が仕事の手配さえ綿密にすれば、軽金属加工基地を立派に築くことができます。軽金属加工基地は、亀城(クソン)市のように機械工場の多いところに設けるのがよいと思います。

 軽金属資源を探し出すための地質調査にも力を入れるべきです。

 我が国には各種の軽金属資源が埋蔵されていますが、地質調査が不十分でそれを全部探し出せずにおり、埋蔵確定量も正確でありません。我が国にどんな軽金属資源があり、その埋蔵量はどれほどだということをはっきり知らなくては、軽金属工業の発展方向を正しく定め、確信をもって軽金属工業を振興させることができません。探査部門で地質調査を深め、我が国にある軽金属資源を残らず探し出し、カリ長石とかすみ石、チタンの埋蔵量を正確に確定しなければなりません。

 主体的な軽金属工業を発展させるためには、科学者、技術者の役割を高めなければなりません。

 科学者、技術者は、軽金属工業の発展のための科学・技術上の問題を解決するうえで少なからぬ成果を達成しましたが、自己満足する根拠は少しもありません。我が国における軽金属部門の科学研究活動は、いまはじまったばかりのところです。軽金属部門の科学研究活動においては、アルミニウムの生産で電力消費基準量をさげるためにはどうすべきか、軽金属合金の質を向上させるためにはどうすべきか、といった問題をはじめ、まだ解決がまたれる科学・技術上の問題が少なくありません。軽金属工業部門の科学者、技術者は、主体的立場にしっかり立って、国内の原料資源に依拠して軽金属工業を発展させるうえで提起される科学・技術上の問題を解決するため大いに努力すべきです。

 科学者、技術者の役割を高めるためには、かれらに研究課題を明確に与え、総括を適時におこない、研究条件を十分にととのえてやらなければなりません。我が国の経済的土台は強固なのですから、幹部がその気にさえすれば科学研究に必要な資材などは十分提供することができます。私はすでに久しい前に、科学研究に必要な資材はその生産量の0.5%を割いて提供するよう指示しました。政務院は、科学研究に必要な資材を無条件に提供すべきです。科学研究に必要な実験設備と資材、試薬のうち、国内でまだ生産できないものは外国から輸入してでも、そのつどまかなうべきです。

 主体的な軽金属工業を発展させることは、祖国の繁栄と人民の幸せのための誉れ高く、はりあいのある事業です。党の方針どおり軽金属工業を発展させるなら、我々の世代にいま一つの主体的工業を創設することになります。軽金属工業を発展させるのは容易なことではありませんが、幹部たちが戦後にビナロン工業を創設したときのあの精神、あの気迫で奮闘するなら、ゆうに軽金属工業を急速に発展させることができるでしょう。

出典:『金日成著作集』40巻


ページのトップ


inserted by FC2 system