金 日 成

戦争を防止し平和を守ることは人類に課された焦眉の課題
 朝鮮半島における非核・平和のための平壌国際会議に参加した
代表を歓迎する宴会でおこなった演説
1986年9月6日

 尊敬する代表の皆さん!

 同志と友人の皆さん!

 新たな世界大戦、核戦争を防止し、平和を守ることが、人類の焦眉の課題となっているとき、わが国の首都平壌では、朝鮮人民と世界の平和愛好人民の共通の志向と念願を反映して、朝鮮半島における非核・平和のための国際会議が開かれました。

 私は、国際平和年に、非核・平和のための国際会議がわが国で開催されたことをたいへんうれしく思い、世界の平和偉業に対する強い使命感と、朝鮮人民に対するかたい連帯感をいだいて平壌国際会議に参加した代表の皆さんを熱烈に歓迎します。

 朝鮮半島の緊張を緩和し、核戦争の危険を防ぐことは、国際政治舞台において解決を迫られる切実な問題の一つです。

 いま朝鮮半島には、非常に緊張した情勢が生じており、核戦争の危険は日増しに増大しています。わが国では、軍事境界線を隔てて、北側と南側に武装した軍人が銃口を向けあっています。軍事境界線の南側には、核兵器で装備した4万余のアメリカ軍と、ほぼ100万に達する南朝鮮の軍隊がおり、彼らは、常に北に向けて攻撃態勢を整えています。

 いま皆さんが会議を進めているここ平壌は、アメリカの核弾頭の恒常的な標的となっています。ほかならぬこうしたところで、世界各国の代表と平和の闘士、著名な人士が一堂に会して非核・平和のための会議を開くこと自体が、核戦争の危険性と平和運動の必要性をひしひしと感じさせ、このたびの会議の意義をいっそうクローズアップさせるものです。世界の関心が集中しているなかで開かれたこのたびの平壌国際会議は、帝国主義の核狂信者と好戦分子には、大きな打撃となり、平和のために闘う朝鮮人民と世界の平和愛好人民には大きな力となり励ましとなるでしょう。

 朝鮮半島の緊張した情勢と核戦争の危険は、アメリカの対朝鮮政策と対アジア戦略の直接の産物です。

 アメリカが朝鮮で追求している目的は、「二つの朝鮮」をつくりあげて、わが国を永久に分裂させ、南朝鮮を彼らの植民地として掌握しつづけることであり、南朝鮮を足場に共和国北半部とアジアの社会主義諸国、ひいては全アジア大陸を侵略することであります。

 アメリカ帝国主義者は、その侵略目的を達成するため、南朝鮮で核兵器をはじめ、侵略兵力を大々的に増強しており、新たな戦争挑発策動に狂奔しています。周知のように、アメリカは、狭い南朝鮮に、配備密度においてNATO地域の4倍に相当する膨大な量の核兵器を引き入れています。アメリカはそれでも足らず、今後、南朝鮮に新型核兵器と化学兵器をさらに搬入し、数十の核兵器特殊貯蔵庫を建設しようとしています。

 アメリカ帝国主義者は、南朝鮮で核戦争演習に熱をあげており、そのため南朝鮮では銃砲の響きが鳴りやまず、きな臭いにおいが濃くただよっています。

 アメリカ帝国主義者は、その侵略的な対アジア戦略の遂行に日本軍国主義者を引き入れるため、アメリカと日本、南朝鮮間の三角軍事同盟をつくりあげる策動をいっそうむきだしにしています。これは、極東地域におけるアメリカの侵略と戦争策動が、ますます危険な段階につき進んでいることを示すものです。

 わが党と共和国政府は、アメリカの侵略政策に対処して、朝鮮半島の緊張を緩和し、平和を守り、朝鮮問題を平和的に解決するため積極的に闘っています。

 我々は、朝鮮民族に対して担っている重大な責任と、世界平和偉業への崇高な使命感から、国の統一を自主的に、平和的に実現するという根本方針を堅持するとともに、多くの合理的で建設的な平和提案を示し、その実現のため誠意ある努力をつくしてきました。

 朝鮮停戦協定を平和協定にかえ、北と南のあいだに不可侵宣言を採択するための三者会談提案をはじめ、我々の示した公明正大な平和提案は、既に世界各国人民のあいだに広く知られています。我々は、今年に入ってからも、軍事当局者会談を開き、朝鮮半島における緊張と軍事的対決を解消するという重大な発起をおこない、共和国政府の声明を発表して、朝鮮半島を非核地帯・平和地帯にかえるための積極的な平和提案を示しました。

 しかし、我々が示した平和提案は、現在まで一つとして実現されておらず、朝鮮半島の情勢は日増しにに激化しています。これはもっぱら、アメリカと南朝鮮当局者が緊張緩和と平和を望んでおらず、依然として侵略と戦争政策を追求しているためです

 アメリカの対朝鮮政策、対アジア戦略に変化がなく、アメリカ軍がひきつづき南朝鮮を占領し、侵略策動をはたらいている状況のもとでは、決して朝鮮半島のゆるぎない平和は保障されず、わが国の統一問題も解決されません。朝鮮半島の緊張を緩和し、平和を保障し、朝鮮の統一問題を平和的に解決するためには、南朝鮮からいっさいの核兵器を撤去し、アメリカ軍が撤退しなければなりません。

 朝鮮半島の平和と安全を保障する問題は、世界の平和と安全を保障する問題と直結しており、朝鮮半島の平和と安全をぬきにしては、世界の平和と安全について考えることができません。

 南朝鮮が、極東最大の核前哨基地と化し、朝鮮半島で厳しい情勢が継続している状況のもとで、わが国ではいつ戦争が勃発するかわからず、朝鮮で戦争が起これば、それは直ちに世界的な核戦争に拡大される恐れがあります。したがって、朝鮮半島の現事態は、朝鮮人民ばかりでなく、周辺諸国と世界のすべての国の人民にとって重大な脅威とならざるをえません。

 こんにち、平和を愛する世界各国の政府と人民は、朝鮮半島の緊張した情勢に注目し、深い憂慮を示しており、戦争を防止し、平和を守り、祖国の自主的平和統一を達成するための朝鮮人民の闘いに積極的な支持声援を寄せています。

 朝鮮人民と世界の進歩的人民の共同闘争によって、南朝鮮からアメリカ軍が撤退し、朝鮮半島に非核地帯・平和地帯が設置されれば、世界で最も危険な核戦争の根源地の一つが除去されることになり、アジアと世界の平和を維持するうえで大きな前進がもたらされるでしょう。

 私は、この機会をかりて、朝鮮労働党中央委員会と共和国政府の名において、朝鮮半島における平和と祖国の平和的統一をめざす朝鮮人民の闘いを積極的に支持声援しており、朝鮮半島を非核地帯・平和地帯にするという我々の提案に積極的な支持と連帯を寄せている、兄弟の社会主義諸国と非同盟諸国をはじめ、世界のすべての進歩的な国と平和愛好人民に深い謝意を表するものです。

 代表の皆さん!

 力で世界を支配しようとするのは、アメリカ帝国主義の一貫した世界戦略です。アメリカ帝国主義のこうした世界制覇戦略は、こんにち、核の優位によってその実現をはかろうとするアメリカ支配層の無謀な策動のため、いっそう大きな危険性をおびています。

 現在、アメリカ帝国主義者は、核の優位を占めようという野望から核軍備を拡張し、核兵器の大々的な開発と更新、製造と配備を急いでおり、世界各地で進歩的な国々に対する侵略策動を強化しています。

 彼らは特に、無謀な「スター・ウォーズ計画」をもちだし、核軍備競争を宇宙にまで拡大しようとしており、新たな大量殺りく兵器である二元化学兵器を生産して世界各地に配備しようとしています。

 帝国主義者の戦争政策と核兵器増強策動のため、こんにち、地球上には核戦争の暗雲がたれこめており、人類は核戦争の脅威にさらされています。核戦争を防止できなければ、人類はとりかえしのつかない災難と惨禍をこうむるでしょう。人類の生存と文明を脅かす核戦争は何としてでも防止されなければならず、平和は必ず維持されなければなりません。

 新たな世界大戦、核戦争を防止し、平和を守るためには、帝国主義者の核軍備競争と核戦争策動を阻止する闘いを全世界的な範囲で力強く繰りひろげなければなりません。

 強者の前では卑屈になり、弱者の前では凶暴になるのが帝国主義者です。平和と正義を愛する世界諸国人民がかたく団結すれば無敵の強者になり、その団結した力で闘うならば、ゆうに帝国主義者の核戦争策動を阻止し、平和を守ることができます。

 世界のすべての平和愛好人民は、広範な統一戦線を結成し、反戦・反核平和運動を力強く展開して、帝国主義者の無分別な核兵器増強策動と宇宙の軍事化策動を粉砕し、いっさいの核兵器の完全廃絶を実現するとともに、日増しに露骨になる帝国主義者の侵略と戦争挑発策動を阻止しなければなりません。

 我々の惑星に核兵器があるかぎり、核戦争の危険は消え去らず、人類は恒常的な核の脅威から抜けだすことができません。それゆえ、核兵器の実験と製造、配備を禁止し、現在の各種核兵器を削減し、ひいては、すべての核兵器を完全に廃絶しなければなりません。ただこうするときにのみ、人類は核惨禍の危険から最終的に抜けだすことができ、世界の平和は強固な基礎のうえで維持されるでしょう。

 こんにち、アジアとヨーロッパをはじめ、世界各地で反核・平和の声が力強く響きわたっており、反戦・反核平和運動が強力に展開されています。

 ソ連共産党とソ連政府は、核実験の禁止、核軍縮の実現、宇宙の軍事化の防止、20世紀末までの核兵器と化学兵器の完全廃絶を内容とする積極的な平和提案を示し、先ごろはまた、一方的な核実験凍結期限を1987年1月1日まで延長するという主動的な措置を講じました。これは、核戦争の危険を取り除き、世界の平和と安全を守ろうとするソ連共産党とソ連政府の責任ある立場と平和愛好的な対外政策をそのまま示すものです。

 我々は、世界の平和と安全を守るためのソ連の平和提案を積極的に支持し、その実現をめざすソ連人民の闘いにかたい連帯を送るものです。

 非核地帯・平和地帯を設置し、それを拡大していくことは、核軍縮を実現して核戦争を防止し、平和を守る重要な方途です。

 我々は、バルカン半島とヨーロッパの各地域に非核地帯・平和地帯を設置するための東欧社会主義諸国とこの地域の人民の闘いを積極的に支持し、彼らにかたい連帯を送ります。
 我々はまた、アフリカと中近東、インド洋と南太平洋をはじめ、世界各地域に非核地帯・平和地帯を設置するための世界の平和愛好人民の闘いを積極的に支持します。

 朝鮮人民は、平和を愛する人民であり、平和を守るために闘うのは朝鮮労働党と共和国政府の一貫した対外政策です。わが党と共和国政府は、今後とも自主・親善・平和の旗を高くかかげて、社会主義諸国人民と非同盟諸国人民、世界のすべての平和愛好人民とかたく団結して、核戦争を防止し、平和を守るために断固、闘うでありましょう。

 私は、朝鮮半島における非核・平和のための平壌国際会議が順調に進められて立派な成果をおさめ、反帝・平和をめざす代表の皆さんの今後の闘いで新たな勝利が達成されるよう願いつつ、朝鮮人民と社会主義諸国人民、非同盟諸国人民をはじめ、世界の平和愛好人民との戦闘的友好・団結のために、朝鮮半島における非核・平和のために、世界の平和と人類の繁栄のために、会議に参加した各国の代表と国際機構の代表、すべての外国の賓客の皆さんの健康のために、ここに列席した同志と友人の皆さんの健康のために乾杯することを提起します。
                                                
出典:『金日成著作集』40巻


ページのトップ


inserted by FC2 system