金 日 成

インドネシア『ムルデカ』新聞社副社長の
質問に対する回答
−1986年3月6日− 
 
  主席閣下、閣下は朝鮮革命を指導する過程でチュチェ思想を創始し、それをすべての分野に具現するため不眠不休の労苦を重ねています。
 朝鮮でチュチェ思想がどのように具現されているかについて、具体的に説明していただけないでしょうか。

  わが国でチュチェ思想がどのように具現されているかについて具体的に説明するには、多くのことを語らなければなりませんが、私はこの問題について重点的に簡単に述べようと思います。

 チュチェ思想は、朝鮮革命の指導思想です。わが党と共和国政府のすべての路線と政策は、チュチェ思想に根ざしており、チュチェ思想を具現しています。朝鮮人民が革命と建設でおさめたすべての成果は、チュチェ思想を具現する闘いの輝かしい結実です。

 チュチェ思想は、人間中心の世界観であり、人民大衆の自主性を実現するための革命学説です。チュチェ思想は、人間を中心にすえて世界を考察し、それに対応し、人間の運命の問題に正しい解答を与えます。

 チュチェ思想は、人民大衆が革命と建設に対し、主人としての態度をとり、思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛を実現することを要求します。

 各国の革命と建設の主人は、その国の人民自身であり、革命と建設における勝利の要因も、その国の人民自身の力であります。それゆえ、人民大衆は革命と建設に対し主人としての態度をとり、思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛を実現しなければなりません。主体、自主、自立、自衛、これは革命の指導原則です。

 革命と建設は、人間の意識的な闘いであるため、革命と建設を成功裏に進めるためには、何よりも思想において主体性を確立しなければなりません。思想における主体性の確立は、かつて事大主義が甚だしかったわが国において、なおのこと切実な問題として提起されました。

 我々は事大主義に反対し、思想において主体性を確立するため粘り強く闘ってきました。その結果、人民のあいだでは事大主義と教条主義が一掃され、民族的自負と自主意識が高まりました。いま、我々の社会にはチュチェ思想がみなぎっており、全人民がチュチェ思想の要求どおりに思考し行動しています。

 政治は、社会生活において決定的役割を果たす重要な分野です。政治において自主性を堅持してこそ、国家と民族の尊厳を守り、社会生活のすべての分野で自主性を実現することができます。

 わが共和国政府は、すべての活動分野で自主性を堅持しています。共和国政府は、朝鮮人民の利益とわが国の実情に即応して路線と政策をすべて独自に立て、人民自身の力に依拠して貫徹しています。共和国政府は、対外関係において完全な平等権を行使しており、国際関係で提起されるすべての問題を独自の信念と判断によって解決しています。

 自主独立国家の建設において経済的に自立することは非常に重要です。経済的自立を達成してこそ、民族の独立を強固にし、政治的自主権を完全に行使し、人民に自主的で創造的な生活を物質的に十分に保障することができます。

 経済的に自立するためには、自立的民族経済を建設しなければなりません。わが共和国政府は、これまで自立的民族経済建設路線をうちだし、自力更生の革命精神を発揮して、それを貫徹することによって、歴史上、短期間内に国の経済的立ち後れを一掃し、我々の資源と我々の力によって動き、多方面的に発展し現代技術で装備された社会主義の自立的民族経済を立派に建設しました。こんにち、我々の自立的民族経済は、国内生産で国の物質的需要をみたしており、日をおってますます発展しています。

 国防における自衛の実現は、自主独立国家建設の必須の要求です。自力で自分を守ることのできない国は、事実上、自主独立国とはいえず、新しい社会を建設することもできません。わが共和国政府は、自衛的軍事路線を貫徹して、いかなる侵略者をもゆうに撃退し、社会主義祖国と革命の獲得物を守ることのできる自己の強固な防衛力を整えました。

 革命と建設は、人民大衆のための事業であり、人民大衆自身が遂行すべき事業です。革命と建設の目的は、人民大衆の自主性を実現することにあり、革命と建設の成果は人民大衆の創造力をいかに発揮させるかにかかっています。

 わが共和国政府は、人民大衆の利益を擁護することをその活動の最高原則とし、常に人民の利益をしっかりと擁護しており、人民の幸福のためにすべてを尽くしています。我々は、何か決定を一つ採択するにしても、まず人民の要求を考慮に入れ、工場を一つ建設するにしてもまず人民の便宜を考えます。わが共和国政府の実施する政策は、すべて人民の利益と幸福のためのものです。

 我々は、人民大衆の革命的熱意と創造的才能を高度に発揮させることを、革命と建設の成果をもたらす基本的な裏付けとみなし、常に人民大衆の創造的役割を高めて革命と建設で提起されるすべての課題を遂行しており、人民大衆の力に依拠してつきあたる難関を克服しています。これまで、わが国では情勢が複雑で、難関が多かったにもかかわらず、我々が社会主義建設をスムーズに、そして、成功裏におし進めることができたのは、まさに、わが党が人民大衆の革命的熱意を余すところなく発揮させ、大衆の力を正しく組織動員したからです。

 革命と建設は、人民大衆がおこなうことであるため、人民大衆を有力な存在に育てあげることが極めて重要です。

 人民大衆を自主的な思想・意識と高度の科学技術をもった有力な存在に育てるためには、教育事業を発展させなければなりません。そのため、我々は教育事業をすべての事業に優先させ、これに大きな力をそそいでいます。我々は、朝鮮の実情にかなった先進的な教育制度をうち立て、就学前教育と学校教育、成人教育をともに発展させています。わが国の新しい世代はすべて11年制義務教育体系に組み込まれて労働年齢にいたるまで完全な中等一般教育を受けており、勤労者は各種形態の成人教育体系に組み込まれて、働きながら学んでいます。我々は、全社会をインテリ化するというわが党の方針にもとづいて、将来は高等義務教育を実施する考えです。高等義務教育が実施されれば、わが国の勤労者は誰もが大学卒業程度の知識を身につけるようになるでしょう。そうなれば、人民の創造力はかつてなく高まり、我々の社会はさらに速く前進するようになるでしょう。

 チュチェ思想を具現するための朝鮮人民の闘いは、こんにち新たな高い発展段階に入っています。我々はいま、全社会のチュチェ思想化を実現するために闘っています。

 全社会のチュチェ思想化は、朝鮮革命の総体的任務です。全社会のチュチェ思想化は、社会の全構成員をチュチェ型の共産主義的人間にかえ、社会生活のすべての分野をチュチェ思想の要求どおりに改造して、人民大衆の自主性を完全に実現する事業です。

 我々は今後もひきつづきチュチェ思想の旗を高くかかげ、革命闘争と建設事業をいっそう力強くおし進めて、全社会をチュチェ思想化する歴史的偉業を立派に実現するでしょう。


  主席閣下、社会主義制度のもとで個人の利益と集団の利益を結合する原則が、朝鮮ではどのように具現されているかについてお話ししていただきたいと思います。

  個人の利益と集団の利益を正しく結合させることは、社会主義制度の重要な要求です。

 社会主義制度は、勤労人民大衆があらゆるものの主人となり、社会のあらゆるものが勤労人民大衆に奉仕する社会制度です。社会主義社会においでは、個人の利益と集団の利益は密接につながっており、本質上一致しています。社会主義社会において集団の利益は、すなわち勤労者自身の利益となり、個々の勤労者の利益は社会的集団の利益の一部分となります。社会的集団の割前が多くなれば、個々の勤労者にゆきわたる割前もそれだけ多くなります。

 社会主義社会において、個人の利益と集団の利益を正しく続合させることは極めて重要な問題として提起されます。個人の利益と集団の利益を正しく結合させないならば、好ましくない結果をもたらすようになります。もし、個人の利益を尊重せず、集団の利益のみを前面におし立てるならば、勤労者の革命的熱意を低落させ、生産の発展に支障をきたすようになり、集団の利益を考慮に入れず個人の利益のみを前面におし立てるならば、共同経営を発展させることができず、国の富を増やすことができなくなります。それゆえ、社会主義社会では、個人の利益と集団の利益をともに尊重し、それを正しく結びつけなければなりません。

 わが国では、国家が社会主義制度の要求に即応して個人の利益と集団の利益を正しく結合させる原則で、すべての政策を実施しており、勤労者が「一人はみんなのために、みんなは一人のために!」という共産主義的原則に従って働き、生活するようにしています。

 わが国では国家が経済を指導するにあたって、個人の利益と集団の利益がともに十分保障されるよう、深い注意を払っています。我々は、国の経済発展の高いテンポを保障すると同時に勤労者の物質・文化生活も速やかに向上させることができるよう、蓄積と消費の均衡を適切に保ち、すべての勤労者に労働の量と質に応じて分配する社会主義的分配の原則を実施しています。商品の価格を定めるさいにも、国家の財政収入を保障しながらも勤労者の生活を考慮して、人民生活に切実に必要な一般消費財の価格はできるだけ安くしています。

 わが国ではまた、国の物質的富の増大に伴って、勤労者により多くの社会的恩恵が追加的にゆきわたるようにしています。

 我々は、すでに農業現物税制を廃止し、租税制度を完全に撤廃し、無料義務教育制と無料治療制、有給休暇制と静養および休養制、社会保障制を実施しています。労働者、事務員、農民には、国家と社会の負担で住宅を提供しています。そして、幼稚園の幼児から大学生にいたるまで、すべての幼児と生徒・学生は、季節ごとに国家から衣服の供給を受けており、労働者、事務員は、ただも同然の安値で国家から食糧の供給を受けています。

 わが国では、勤労者が集団労働にまじめに参加するようにさせる一方、各自の意思と技能に応じて公共サービス活動や副業もおこなうよう奨励しています。勤労者が集団労働にまじめに参加しながら、余裕時間を利用して公共サービス活動や副業をおこなえば、かなりの追加収入を得ることができ、消費財の生産も増やすことができます。

 こんにち、わが国のすべての勤労者は、社会主義制度のもとで誰もが食・衣・住の心配、子弟を学校にやる心配、病気にかかっても治療の心配をせず、幸福な生活を営んでいます。勤労者は生きた体験によって、社会主義建設と国の富強発展のための闘争がとりもなおさず自分自身のためのものであることを深く確信し、社会と集団のためにすべてをささげて闘っています。


  主席閣下、私はこのたび朝鮮民主主我人民共和国を訪問して、貴国人民が社会主義建設で偉大な成果をおさめたことをじかに確認しました。
 この過程には難関も少なくなかったと思います。
 そして、貴国では外国資本を導入する計画があるのでしょうか。これについてお話ししていただけないでしょうか。

  あなたが指摘したように、朝鮮人民はこれまで社会主義建設で大きな成果をおさめました。わが国の人民は、朝鮮労働党の正しい指導のもとに、社会主義革命を成功裏に遂行し、社会主義建設を力強く促進して、立ち後れた植民地半封建社会であったわが国を繁栄する自主、自立、自衛の社会主義国にかえました。

 社会主義建設をめざす我々の前進途上には、多くの障害と難関が横たわっていました。我々は、旧社会から植民地的跛行性をおびた立ち後れた経済を受け継ぎ、それさえも3年間の戦争によって甚だしく破壊されました。戦後、我々は、何もない廃墟のなかから新たに経済建設をはじめなければなりませんでした。当時我々には資材や資金も不足し、民族技術幹部もわずかしかいませんでした。しかし、朝鮮人民は自力更生の革命精神を高く発揮し、つきあたる障害と難関を克服しました。我々は自力で民族技術幹部を大々的に養成し、経済建設に必要な資材や資金も国内の源泉を動員して解決しました。

 いま我々は、これまでの成果にもとづいて社会主義経済建設の新たな展望計画を準備しています。新たな展望計画期間に、我々は第6回党大会がうちだした社会主義経済建設の10大展望目標を達成しようとしています。社会主義経済建設の10大展望目標は、近い将来、年間1千億KWhの電力、1億2千万トンの石炭、1500万トンの鋼鉄、150万トンの非鉄金属、2000万トンのセメント、700万トンの化学肥料、15億メートルの織物、500万トンの水産物、1500万トンの穀物を生産し、10年のあいだに30万ヘクタールの海面干拓をおこなうことです。これは、非常に雄大を目標です。この目標を達成するためには、国家の投資を大々的に増やさなければならず、そうするには膨大な資金が要求されます。

 新たな展望計画の遂行に必要な資金問題を解決するうえで、基本は自力更生することです。

 我々は、外国の独占資本を導入しないでしょう。外国の独占資本をむやみに導入しては、経済的に従属させられる恐れがあります。外国に経済的に従属させられれば、政治的にも従属させられるものです。

 いうまでもなく、経済建設をおこなうには、国内になかったり不足するものは外国から輸入しなければならず、そうするには外貨が必要です。我々は、外貨問題も自力で解決しようと思います。わが国には、鉛、亜鉛、銅、金、銀などの非鉄金属資源が非常に豊富です。国内にたくさん埋蔵されている非鉄金属を採掘して外国に売れば、経済建設に必要な外貨の問題を解決することができます。

 社会主義建設で重要な意義をもつのは、国内の潜在力を最大限に動員利用するとともに、世界各国との経済・技術交流と協力を発展させることです。わが共和国は、わが国に友好的な国々とは、思想と体制の違いにかかわりなく、平等と互恵の原則で経済合作と交流をおこなっていくでしょう。


  主席閣下、最近、閣下は、高麗民主連邦共和国を創立する方法で国を統一するという方案を示しました。
 この方案が、祖国統一の最も正当を方案となる根拠はなんであり、相異なる二つの体制が結合できる可能性と、朝鮮が統一されたのち社会主義思想と体制が優位を占めることになるでしょうが、全朝鮮人民にそれが受け入れられるであろうかについてご説明いただけないでしょうか。

  朝鮮人民は40年ものあいだ民族分裂の苦痛をなめています。朝鮮人民に民族分裂の苦痛と悲劇を強要しているのはアメリカです。アメリカ帝国主義者は、南朝鮮を軍事基地、植民地として永久に掌握するため「二つの朝鮮」政策をもちだし、朝鮮の分断を永久化しようと策動しており、南朝鮮当局者もやはり、アメリカの「二つの朝鮮」政策に積極的に追従して国の統一を妨げています。

 我々は、絶対にアメリカの「二つの朝鮮」策動を許すことができません。もし、我々がこれを許すとなれば、朝鮮民族は永久に二つに別れ、南朝鮮は永久にアメリカの植民地になってしまうでしょう。

 わが党と共和国政府の確固たる立場は、わが国を永久に「二つの朝鮮」に分裂させようとするあらゆる策動に反対して北と南を一つに統一することであり、国の統一を平和的に実現することです。

 我々はこうした立場から、朝鮮労働党第6回大会で高麗民主連邦共和国を創立して祖国を統一するという新たな方案をうちだしました。

 高麗民主連邦共和国創立方案は、朝鮮の北と南に存在する思想と体制をそのまま容認する基礎のうえで、北と南が同等に参加する民族統一政府を樹立し、その下で双方が同等の権限と義務をもって、それぞれ地域自治制を実施する連邦国家を形成して祖国を統一しようというものです。

 我々の示した高麗民主連邦共和国創立方案は、全朝鮮人民の民族的念願と利益、朝鮮の具体的現実を正しく反映した、最も正当な祖国統一方案です。

 こんにちにおける全朝鮮人民の最大の民族的悲願は、一日も早く祖国統一偉業を成就することです。朝鮮人民はすべて、国の統一が一日も早く平和的に実現されることを望んでいます。全朝鮮人民の願いどおり国の統一問題を正しく解決するためには、朝鮮の具体的現実から出発して統一方途を見出さなければなりません。

 朝鮮の北と南には、長いあいだ相異なる体制が存在しており、それぞれ相異なる思想が支配しています。こうした状況のもとで、民族の団結をなし遂げ、国の統一を平和的に実現するには、ある一方の思想と体制を絶対化してはいけません。もし、ある一方がその思想と体制を絶対化してそれを相手側に強要しようとするならば、対決と衝突は避けがたいものとなり、そうすればかえって分裂を深める結果をもたらすようになるでしょう。それゆえ、わが国の現状下で、国の統一を平和的に実現する最も早くて確実性のある方途は、北と南の思想と体制をそのままにし、北と南が連合して一つの連邦国家を形成することです。連邦共和国が創立されれば、北南間の相互理解を促進して、民族的団結を強化し、国と民族の統一的発展をはかることができます。

 高麗民主連邦共和国創立方案には、北南双方の利害関係が公正に考慮されています。高麗民主連邦共和国が創立されれば、北と南の地域政府は、全民族の利益と要求に即応する範囲内で独自の政策を実施することができ、したがって連邦国家内で北と南のどの階級や階層、党派の利益も損われないでしょう。それゆえ、高麗民主連邦共和国創立方案は、民族の分裂を追求せず、国の統一を望む人であれば誰でも受け入れることのできる合理的かつ公明正大な統一方案です。

 朝鮮人民は、5千年の長い年月にわたって同じ血筋を引き、同じ国、同じ国土で暮らしてきた単一民族であり、ひとしく祖国統一を至上の課題としています。全民族がひとしく祖国の統一を至上の課題と認めている以上、思想と体制の違いが統一を不可能にする条件とはなりえません。一国内に相異なる思想をもった人々がともに暮らすことは可能であり、一つの統一国家内に相異なる社会体制が存在することも可能です。それゆえ北と南が、自己の思想と体制を相手側に押しつけない原則を守るならば、十分、高麗民主連邦共和国を創立して国の統一を実現することができます。

 我々の新しい祖国統一方案は、その正当さのため全朝鮮人民はもとより、世界の進歩的人民からも支持と歓迎を受けています。

 我々は、新しい祖国統一方案を一日も早く実践に移し、統一された祖国で幸せに暮らそうとする同胞の願いを実現するためあらゆる努力を傾けるでしよう。


  主席閣下、いま南朝鮮は、北か「南侵」するという口実でアメリカ軍の南朝鮮駐屯を要請しつづけていますが、北が南を先に攻撃しないということを保障できるでしょうか。
 そして、ソウルで開催されることが計画されているオリンピック競技に対し、どうお考えになっているかお伺いしたいと思います。

  アメリカは、朝鮮が解放されたのち南朝鮮を武力で占領し、40年間も植民地支配を実施しています。アメリカ軍の南朝鮮占領は、朝鮮半島の緊張を激化させる根源となっており、朝鮮の統一を実現するうえで主なる障害となっています。朝鮮半島での戦争の危険を取り除き、朝鮮の自主的平和統一を実現するためには、南朝鮮からアメリカ軍を撤退させ、朝鮮の内政に対するアメリカの干渉を終わらせなければなりません。

 しかし南朝鮮当局者は、ありもしない「南侯の脅威」について喧伝し、アメリカ軍が南朝鮮に駐留しつづけることを求めています。

 南朝鮮当局者が騒いでいる「南侵の脅威」というのは、アメリカ軍の南朝鮮占領を合理化するための欺瞞術策です。南朝鮮当局者は「南侵の脅威」について騒ぎ立てることによって、南朝鮮人民の反ファッショ民主化運動を弾圧し、アメリカの庇護のもとに彼らの長期執権野望を実現しようと策しています。

 わが国に「南侵の脅威」というのは存在しません。

 我々は、「南侵」しないということを再三再四明らかにしています。1972年に発表された南北共同声明にも、北と南が武力を行使しないということが明確に指摘されています。我々の示した三者会談と北南国会会談の提案にも、朝鮮半島の緊張を緩和し、平和的方法で祖国を統一しようとするわが共和国政府の立場が明らかに反映されています。三者会談と北南国会会談が実現して、我々とアメリカとのあいだに平和協定が結ばれ、北と南のあいだに不可侵宣言が採択されれば、朝鮮半島の平和を維持できる法的保障がとりつけられるでしょう。

 我々には「南侵」の意思が全くなく、また「南侵」する能力もありません。南朝鮮には、北半部に比べてはるかに多くの武力があります。現在、南朝鮮には4万余名のアメリカ軍とほぼ100万に達する南朝鮮かいらい軍がいます。南朝鮮の兵力数は、我々の2倍以上になります。軍事装備を比べてみても、南朝鮮駐留アメリカ軍と南朝鮮かいらい軍は近代的な兵器で装備されています。軍事専門家が朝鮮の北と南の軍事力を冷静に評価するならば、わが国に「南侵の脅威」があるのでなく、かえって北侵の脅威があることを認めるでしょう。

 我々は、戦争ではなく平和を望んでいます。朝鮮人民は、苦難にみちた長期の闘争過程で血と汗でかちとった社会主義の獲得物を大切にしており、それが戦争によって再び廃墟となるのを望みません。

 わが党と共和国政府は、わが国の緊張を緩和し、朝鮮半島の平和を維持するため可能なあらゆる努力を傾けています。今年に入っても、わが共和国政府は1986年2月1日から共和国北半部の全領域で大規模の軍事演習をおこなわず、北南間の対話が進められる期間は軍事演習をいっさい中止することに決定して、それを内外におごそかに宣言し、アメリカ政府と南朝鮮当局も南朝鮮で軍事演習を中止するよう提議しました。

 しかしアメリカ帝国主義者は、我々の平和愛好的な発起と世界の進歩的人民の意思に反して、この2月10日から南朝鮮で大規模のチーム・スピリット86合同軍事演習を繰り広げでいます。チーム・スピリット86合同軍事演習には、アメリカ帝国主義侵略軍と南朝鮮かいらい軍20余万と航空母艦、戦略爆撃機、ミサイルなどおびただしい最新戦争手段が動員されていますが、これは実際上まるまる一つの戦争をおこなってありあまるほどの膨大な武力です。

 大規模のチーム・スピリット86合同軍事演習は、わが共和国北半部に先制攻撃を加えるための侵略的で攻撃的な核戦争演習です。軍事境界線付近でおこなわれているこの軍事演習は、いつでも実戦へと移行できる危険性をはらんでいます。

 アメリカ帝国主義と南朝鮮当局者かおこなっている無謀なチーム・スピリット86統合同軍事演習のため、北と南のあいだで進められていた各分野の対話は中断され、わが国には核戦争の暗雲がますます重くたれこんでいます。

 朝鮮で核戦争が起これば、どの地域より先に被害をこうむるのは東北アジア地域です。ですから、チーム・スピリット86合同軍事演習は、朝鮮半島のみならず、極東とアジアの平和維持において大きな脅威となっています。

 アメリカは、極度に冒険的な軍事演習を直ちに中止し、南朝鮮から核兵器とアメリカ軍を一日も早く撤収しなければなりません。

 諸般の事実は、朝鮮に現実的に存在するのは、「南侵の脅威」でなく、北侵の脅威であることを明白に示しています。

 南朝鮮のソウルで開催されることになった第24回オリンピック競技大会についていうならば、我々はソウルでオリンピック競技大会をおこなうのは不適当だとみなしています。分断された朝鮮のある一方だけでオリンピック競技大会を開催するとなれば、「二つの朝鮮」をつくりあげようとする分裂主義者の策動をあおりたでることになり、北と南の対決と反目をいっそう激化させることになるでしょう。南朝鮮は、あいつぐ戦争演習騒ぎによって火薬のにおいがただよっているところであり、民主主義がことごとく抹殺され、政治的不安と混乱が持続しているところです。それゆえ、南朝鮮でオリンピック競技大会をおこなうことは、世界の平和と諸人民間の友好と協力をはかるオリンピックの崇高な理念に反します。

 世界の平和愛好人民とスポーツマンは、オリンピック運動がその崇高な理念に即しておこなわれるよう望んでいます。もし、世界の平和愛好人民とスポーツマンの意思に反して、オリンピック競技大会をソウルでのみおこなうならば、それはオリンピック史上に恥ずべき汚点を残すことになり、オリンピック運動の分裂をまねくようになるでしょう。

 我々は、オリンピック運動の危機を救い、第24回オリンピック競技大会を成功させようとする真剣な念願から出発して、今回のオリンピック競技大会を朝鮮の北と南が共同主催することを主張しています。

 我々の共同主催案は、オリンピック運動の理念と世界の進歩的人民とスポーツマンの願いにかなう正当かつ合理的な提案です。この共同主催案が実現されれば、今回のオリンピック競技大会への参加を保留している国々を含め、世界のすべての国が第24回オリンピック競技大会に参加するようになり、そうなればオリンピック運動は危機から救われることになるでしょう。また、オリンピック競技大会を朝鮮の北と南が共同主催するようになれば、わが国の北南関係を改善し、民族的和解と団結を達成し、北南間の対話の推進にも好ましい影響を及ぼすようになるでしょう。

 いま世界各国の政府と人民とスポーツマンは、我々のオリンピック共同主催案を歓迎し、それに積極的な支持を表明しています。

 第24回オリンピック競技大会を朝鮮の北と南が共同主催するようになれば、わが国の北と南は単一チームを構成して参加すべきです。外国でもない自分の国で開催するオリンピック競技大会に、北と南のスポーツ選手が別々に参加する必要はありません。北南単一チームを構成してオリンピック競技大会に参加すれば、5千年の長い歴史を有する朝鮮民族の英知と才能を世界の面前に示威することになり、これは全朝鮮人民と世界の人民を喜ばせることになるでしょう。

 第24回オリンピック競技大会を朝鮮の北と南が共同主催する場合、我々は平壌でおこなわれる各種目の競技に立派なスポーツ施設を提供し、選手と役員、ジャーナリスト、観光客など平壌に来るすべての人をあたたかく迎え、彼らの便宜をはかるでしよう。

 我々は、世界のすべての進歩的人民が、我々のオリンピック共同主催案が実現されるよう、積極的に努力してくれることを期待します。


  主席閣下は、非同盟運動の強化発展のために重要な役割を果たしています。非同盟運動、特に、南南協力の発展をめざす閣下の構想についてお伺いしたいと思います。

  非同盟運動は、反帝・自主の崇高な理念を具現している進歩的な運動です。非同盟運動を拡大発展させてこそ、帝国主義者の侵略と干渉策動を成功裏にはねのけ、世界の平和と安全を守り、国際舞台で提起されるすべての問題を新興諸国人民の要求と利益に即して解決することができます。

 朝鮮民主主義人民共和国は、非同盟運動の加盟国として、この運動の強化発展のため積極的に努力しています。

 非同盟運動を拡大発展させるためには、非同盟諸国がこの運動の根本原則を厳守し、それにもとづいてかたく団結しなければなりません。

 いかなるブロックにも加担せず、自主的に進むのは非同盟運動の根本原則です。すべての非同盟国が自主性をしっかり守るとき、この運動はその固有な特性を保ち、反帝・自主の崇高な理念を実現することができます。非同盟諸国は、自主性をあくまでも擁護し、すべての活動で自主性を堅持しなければなりません。

 非同盟諸国の団結は、非同盟運動の力の源泉であり、反帝共同偉業の勝利のための決定的な裏付けです。非同盟諸国間の団結を強化することは、こんにち帝国主義者が新興諸国を分裂、離間させようと狡猾に策動している状況下で、いっそう重要な問題として提起されています。

 非同盟諸国は、帝国主義者の分裂・離間策動に団結の戦略をもって対抗し、一致した行動で帝国主義者の分裂・離間策動を粉砕しなければなりません。非同盟諸国は、常に団結を第一とし、それにすべてを服従させ、社会体制と政見、信教の違いを超越してかたく団結しなければなりません。非同盟諸国は、個々の国家間に発生する意見の相違や紛争問題も団結の原則で解決しなければなりません。

 非同盟諸国はかたく団結して、非同盟運動の崇高な目的と理念を実現するための共同闘争を力強く繰り広げるべきです。

 非同盟諸国は何よりもまず、帝国主義者の侵略と戦争政策に反対して断固闘わなければなりません。帝国主義者の侵略と戦争策動を粉砕し、世界の平和と安全を守るうえで重要なのは、世界的範囲で反戦・平和運動を力強く繰り広げることです。非同盟諸国は、世界の平和愛好人民と広範な統一戦線を結成し、帝国主義者の戦争挑発策動を暴露、糾弾し、兵力増強と軍備拡張策動を粉砕しなければなりません。また、外国にある侵略的軍事基地を撤廃し、侵略軍隊を撤去させ、完全な軍備撤廃を実現するために闘わなければなりません。

 こんにち、非同盟諸国に提起されている重要な問題は、南南協力を拡大発展させることです。

 南南協力は、非同盟諸国と発展途上諸国が集団的自力更生の原則で、経済的、技術的に協力し合って経済的自立を達成し、政治的独立を強固にするための共同の戦略であり、旧国際経済秩序をうちこわし、新国際経済秩序を確立する闘争の一環です。

 南南協力を実現できる条件と可能性はいくらでもあります。非同盟諸国と発展途上諸国は、膨大な人的資源と無尽蔵な天然資源をもっており、経済建設分野で得たすぐれた経験と技術も少なからずもっています。

 我々は、非同盟諸国と発展途上諸国が、すべての条件と可能性を最大限に利用して南南協力を実現するならば、現在の経済的難関を克服して、経済的自立を達成し、公正な新国際経済秩序を確立する問題も解決することができると考えます。

 非同盟諸国と発展途上諸国は、南南協力を実現できる効果的な対策を立て、それを直ちに実践に移すべきです。南南協力を、いっきょに各分野にわたって全面的に実現することは困難でしょう。それゆえ、発展途上諸国のあいだでいますぐ実現できる分野からはじめて一つひとつ解決しながら、しだいに拡大する方法で南南協力を実現すべきです。

 非同盟諸国と発展途上諸国は、何よりも食糧問題の解決に第一義的な意義を付与し、農業分野で相互協力と交流を実現しなければなりません。いま帝国主義者は、食糧を武器にして発展途上諸国を再び手中におさめようとしています。ですから、発展途上諸国が食糧問題を自力で解決するか否かは、飢餓と貧困から脱するか否かという問題であるばかりでなく、帝国主義者に再び従属させられるか否かという深刻な問題として提起されています。非同盟諸国と発展途上諸国は、相互協力の可能性を正しく利用し、農業の各分野で合作と合弁・技術交流を広範におこなって、農業の速やかな発展をはからなければなりません。こうして、食糧の自給自足を実現すべきです。そのほか軽工業、建設、資源開発、水産業、保健医療の各分野においても交流と協力を実現することかできるでしょう。

 南南協力を発展させるのは、わが共和国政府の一貫した方針です。我々は、これまで南南協力を実現するため各方面から努力しており、一部の発展途上諸国と農業や建設、保健医療など各分野での協力を実現しています。我々は、これらの国との協力を通じて南南協力の立派な経験を得ることができると思います。

 わが共和国政府は今後とも、非同盟運動を拡大発展させ、発展途上諸国と力を合わせて南南協力を広く実現するため積極的に努力するでしょう。


  主席閣下、最近、朝鮮とインドネシアの関係は好ましく発展しています。両国の関係発展の展望についてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

  朝鮮人民とインドネシア人民はかつて、帝国主義者の植民地支配下であらゆる不幸と苦痛を強いられてきた歴史的境遇の共通性と、自主的な新しい社会を建設しようとする共通の志向によって、以前から友好のきずなを結び、各分野にわたって交流と協力を発展させできました。こんにち両国は、政治的連帯を強め、経済的・文化的交流と協力を発展させるため努力しています。

 朝鮮とインドネシアの関係は、いっそう好ましく発展する展望をもっています。両国はともに、反帝・自主の崇高な理念を実現するために闘っている非同盟運動の加盟国であり、侵略と戦争に反対し、平和を守るために闘う平和愛好国です。朝鮮とインドネシアは、国際関係において完全な平等と相互尊重の原則を堅持しており、両国間の友好と協力関係を発展させることに利害関係をもっています。したがって、両国の関係は、これから各分野にわたって好ましく発展するものと思います。

 わが共和国政府と朝鮮人民は今後、自主、親善、平和の対外政策理念にもとづいて、インドネシアとの友好・協力関係を強化発展させるため積極的に努力するでしょう。

 私は、この機会をかりてインドネシア人民にあいさつを送り、国の自主的発展と民族の繁栄をめざすインドネシア人民の闘争においで大きな成果がおさめられるよう祈ります。
出典:『金日成著作集』39巻 

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