金 日 成

ユーゴスラビア国際政治社、社長兼責任主筆の
質問に対する回答
−1984年12月28日− 
 
  あなたは、現在の世界政治・経済情勢をどう評価されますか。

  こんにちの世界政治情勢は一口にいって、反帝・自主をめざす諸国人民の闘争が日ましに強化されている反面、支配圏の維持、拡張を企む帝国主義者の侵略と戦争策動がさらに露骨化していることによって特徴づけられます。

 現代は、自主性の時代です。かつて抑圧され、さげすまれた人民が世界の主人として登場し、歴史を力強くおし進めており、自主性の激しい潮流が世界の全大陸に打ち寄せています。人民が自主性を要求し、自主の道に進むのは現代の基本的趨勢です。

 反帝・自主をめざす世界各国人民の革命闘争の強化に恐れをなした帝国主義者は、自己の支配圏を維持するため侵略と戦争策動をいっそう強めています。

 帝国主義者は、新興諸国に対する武力干渉と転覆・破壊活動をたえず強行しており、正義の解放闘争に立ち上がった人民を公然と武力をもって弾圧しています。

 いまアメリカは、力によって世界を支配しようとする極めて無謀な世界戦略を追求しています。アメリカは、膨大な軍備拡張計画を立て、核兵器をはじめ、大量殺人兵器の生産と配備を急いでおり、世界のいたるところに軍事基地を増やし、侵略兵力を増強しています。

 帝国主義者の侵略と戦争策動によって、アジアとヨーロッパ、中近東とラテンアメリカ、南部アフリカなど世界のすべての大陸で平和と安全が甚だしく破壊され、核戦争の危険が日ましに増大しています。

 事実上、いま人類は、戦争か平和かという重大な岐路に立たされています。

 世界のすべての平和愛好人民は、新たな世界戦争の危険を防ぎ、世界の平和と安全を守るため断固として闘わなければなりません。

 こんにちの世界経済情勢についていうならば、経済分野においても政治分野と同様、西側世界の先進諸国と新興諸国間、そして、億万長者と勤労人民大衆間の対立と闘争が基本的特徴をなしているといえます。

 こんにち帝国主義者は、慢性化した経済危機から抜けだすため、内では勤労者に対する搾取を強める一方、外では社会主義諸国に対する経済的圧力と第三世界諸国に対する新植民地主義的略奪を強化しつつ、旧国際経済秩序を維持しようと執拗に策動しています。

 帝国主義者のこうした策動に対処して、社会主義諸国と非同盟諸国をはじめ、新興諸国は、自国の経済的潜在力をよりどころにして、新興諸国間の経済・技術上の交流と協力を強めて民族経済を発展させており、旧国際経済秩序をうちこわして新国際経済秩序を確立するため積極的に闘っています。

 帝国主義者の経済的圧力と世界的な経済危機の影響にもかかわらず、社会主義諸国では経済が安定した基盤のうえで社会主義経済法則にもとづきひきつづき発展しています。社会主義経済は、計画経済であり、人民的な経済であります。社会主義社会では、国の天然資源と労働力資源が計画的かつ合理的に利用され、すべての経済活動が人民大衆の物質的・文化的福祉増進に奉仕します。社会主義経済制度のこうした本質的優位性によって、社会主義諸国では生産が、たえず増大し、科学と技術が急速に発展し、人民の物質・文化生活が系統的に向上しています。

 こんにち、非同盟諸国をはじめ、発展途上諸国では、民族経済を建設して経済的自立を達成しようとする気運が高まりつつあります。これは、非常に好ましいことであると思います。

 もちろん、少なからぬ発展途上国は、いまなお経済的に困難な状態にあります。しかし、発展途上諸国が国内資源を最大限に動員利用して南南協力を強化するならば、当面の経済的難局を克服して後進状態から脱却し、自立的民族経済を成功裏に建設することができるでしょう。

 帝国主義者は、社会主義諸国への経済的圧力と第三世界諸国に対する新植民地主義的略奪を強化しながら、経済危機からの活路を求めようと苦慮していますが、そうした企図は絶対に成功しません。

 最近、西側の通信は、一部の資本主義国で経済が回復に向かっていると報道していますが、それはあくまでも部分的で一時的な現象にすぎません。資料によると、回復のきざしを見せていた資本主義世界の経済は、来年からまた成長テンポが落ちるものと予測されています。現在、資本主義諸国では、依然として深刻な原料難、燃料難、商品販路難に直面しており、赤字財政と貿易赤字、インフレと失業が増大しています。

 元来、資本主義社会には、経済の全般的で長期的な安定などというものはありえません。生産の無政府性が支配する資本主義社会では、慢性的な経済危機の存在が一つの法則となっています。特に、こんにち、資本主義経済の生命線である第三世界諸国に対する資源略奪体制が崩壊しつつある状況のもとで、資本主義諸国の経済は決してスムーズな発展を遂げることはできず、帝国主義が経済危機から完全に抜けだす活路などはありえません。


  あなたは、非同盟政策と非同盟運動において現在、そして将来、どのような課題が第一義的に提起されるとお考えでしょうか。

  非同盟運動は、現代の強力な反帝・自主勢力であり、最も幅広い国際的運動であります。非同盟運動は、世界の進歩的人民の自主的志向と要求に即応して人類の歴史を力強く前進させており、帝国主義者の侵略と戦争策動に大きな打撃を与えています。

 反帝・自主は、非同盟運動の崇高な理念であり、いかなるブロックにも加わることなく、自主的に進むのはこの運動の根本原則です。すべての非同盟国は、非同盟運動の崇高な理念と根本原則をかたく守らなければなりません。そうしてこそ、非同盟運動は、自己の固有な特性を保持し、その崇高な使命を果たすことができるでしょう。

 現時点において非同盟運動に提起されている焦眉の問題は、新たな世界戦争の危険を防ぎ、世界の平和と安全を守ることです。

 新たな世界戦争を防止し、平和を守るのは、時代の厳粛な課題であり、人類の一致した志向であります。自主的で平和な新しい世界の建設をめざして闘う非同盟運動は、当然この厳粛な課題の解決に第一義的な関心を払わなければなりません。

 非同盟諸国は、帝国主義者の侵略と戦争策動に一致した行動をもって反撃を加えるべきであり、世界のすべての平和愛好勢力とともに反戦・反核平和運動を力強く展開しなければなりません。非同盟諸国は、兵力増強と軍備競争の中止、完全な軍備撤廃の実現、すべての軍事ブロックの解体、他国に存在する外国の軍隊と軍事基地の撤去、世界の各地域における非核地帯・平和地帯の設置をめざして、断固、闘わなければなりません。

 こんにち非同盟運動に提起されている重要な問題の一つは、旧国際経済秩序をうちこわして新国際経済秩序を確立し、南南協力を拡大発展させることです。

 旧国際経済秩序は、植民地主義制度の産物であり、帝国主義者の搾取と略奪、支配と統制のテコであります。現在、帝国主義者は、旧国際経済秩序に依拠して発展途上諸国の資源を略奪し、これらの国に経済的難関をつくりだしています。非同盟諸国をはじめ発展途上諸国は、旧国際経済秩序をうちこわして新国際経済秩序を確立しないことには、帝国主義者の搾取と略奪から抜けだすことができず、新しい社会を成功裏に建設することもできません。

 非同盟諸国は、公正な価格制度と金融通貨制度をうち立て、不公平で不合理なあらゆる国際経済関係を組み替えるため積極的に闘わなければなりません。

 南南協力の実現は、第三世界諸国が当面の経済的難関を克服して経済的自立を達成し、新国際経済秩序を確立するうえで、極めて重要な問題として提起されます。

 発展途上諸国は、南南協力を実現できる大きな潜在力をもっています。これらの国は、豊かな天然資源をもっており、新社会建設の過程で得た立派な経験や技術も一つや二つはもっています。発展途上諸国が、集団的自力更生と有無相通ずる原則のもとに、相互協力の可能性を最大限に利用して南面協力を多面的に拡大発展させるならば、大国の世話にならなくても経済と文化を発展させ、人民の生存を脅かす飢餓と貧困、疾病と無知から抜けだし、新社会建設における多くの困難で複雑な問題を成功裏に解決することができます。

 非同盟諸国をはじめ発展途上諸国は、南南協力を多面的に拡大発展させる効果的な対策を立て、それを実践に移すためともに努力しなければなりません。

 わが党と共和国政府は、南南協力の実現に深い関心を払っています。我々は、第三世界諸国との経済協力や文化交流を着実に実行しており、最近アフリカ諸国と農業分野で合作する積極的な措置を講じました。

 第三世界諸国が農業分野における合作と交流を発展させるのは、農業生産の増大をはかり、新社会の建設で最大の難題とされている食糧問題を解決し、「食糧兵器」を使用する国々の経済的圧力をはねのけるうえで極めて重要な意義をもっています。

 わが党と共和国政府は今後、農業をはじめ、各分野で南南協力の全面的な拡大発展のためにより積極的に努力するでしょう。

 いま非同盟運動には、帝国主義者の分裂・離間策動を阻止破綻させ、統一と団結をなし遂げることが切実な課題となっています。

 団結は、力の源であり、すべての勝利の基本的要因であります。非同盟諸国は、政治的にかたく団結するため誠実に努力すべきです。

 非同盟諸国は、相互関係において完全な平等と内政不干渉の原則を守り、構成国間の意見相違と紛争問題をはじめ、団結の妨げとなるすべての問題を団結と協力の精神にもとづいて解決すべきです。また、いかなるブロックにも追従せず、帝国主義者の狡猾な分裂・離間策動にあざむかれて互いに嫉視反目したり争うようなことがあってはなりません。

 非同盟運動の強化発展のため積極的に闘うのは、わが党と共和国政府の一貫した立場であります。我々は、今後とも常に非同盟運動の崇高な理念と根本原則に忠実でありつづけ、ユーゴスラビアをはじめ、すべての非同盟国と力を合わせ、非同盟運動の強化発展のため積極的に努力するでしょう。


  国際関係分野において貴国が堅持している基本理念はどのようなものでしょうか。

  わが党と共和国政府が対外活動分野で一貫して堅持している基本理念は、自主、親善、平和です。この理念は、自主的で平和な新しい世界を建設しようとする朝鮮人民と世界各国人民の共通した志向と念願を反映しています。

 わが党と共和国政府は、対外活動分野で自主性を堅持しています。

 我々は、すべての対外政策をわが国の具体的な実情と朝鮮人民の利益に即して独自に決定しており、完全な平等と相互尊重の原則で、ほかの党、ほかの国々との関係を発展させています。

 わが党と共和国政府は、わが国の自主権を尊重する世界各国との友好関係を発展させるために努力しています。

 わが党と共和国政府は、社会主義諸国と非同盟諸国をはじめ、新興諸国との友好関係の発展に第一義的な関心を払っています。

 我々は、自主性とプロレタリア国際主義の原則にもとづいて、社会主義諸国との団結と友好・協力関係を強化発展させるため積極的に努力しています。我々は、社会主義諸国との友好を重視しているがゆえに、この夏、ソ連とユーゴスラビアをはじめ、東欧社会主義諸国を公式親善訪問し、また最近、中国を非公式訪問しました。社会主義諸国に対する我々の訪問は成功裏におこなわれ、これを契機に兄弟諸国との団結と友好・協力関係はより高い段階に発展しました。

 わが党と共和国政府は、非同盟諸国をはじめ、第三世界諸国との国家関係をたえず発展させており、政治、経済、文化の各分野にわたって団結と協力の強化をはかっています。

 我々は、わが国に友好的な資本主義諸国とも友好関係を結び、経済・文化交流を発展させています。

 朝鮮人民は、平和を愛する人民であり、平和のために闘うのはわが党と共和国政府の一貫した政策であります。わが党と共和国政府は、世界の平和と安全を守るため積極的に闘っています。

 世界の平和と安全は、帝国主義者の侵略と戦争策動に反対する闘争を通じてのみ守ることができます。わが党と共和国政府は、世界の平和愛好勢力とかたく団結し、日を追って強化される帝国主義者の侵略と戦争策動を阻止破綻させ、新たな世界戦争の危険を除去するために断固闘っています。

 こんにち、新たな世界戦争が勃発しうる最も危険な地域の一つは朝鮮半島です。わが党と共和国政府は、わが国の緊張を緩和し、祖国の平和的統一の前提条件をつくるため、我々とアメリカ、南朝鮮間の三者会談開催に関する新たな提案を示し、その実現をめざして積極的に闘っています。我々の主動的な発議と積極的な努力によって、今年、わが国では、長いあいだ閉ざされていた北南間の障壁の扉が開かれ、北と南の対話が再開されました。朝鮮半島で平和が維持されているのは、もっぱら、わが党と共和国政府の平和愛好的な立場と忍耐強い努力の結果であります。我々は、朝鮮での戦争勃発を防ぎ、平和を守るためあらゆる努力をつくし、社会主義の東方のとりでをゆるぎなく守って世界の平和偉業に積極的に寄与するでしょう。

 わが党と共和国政府は今後とも、対外活動分野で自主、親善、平和の理念を堅持しつづけるでしょう。


  あなたは、これまでのユーゴスラビアとの関係の発展をどうお考えでしょうか。

  わが国とユーゴスラビアの関係は、非常に好ましく発展しています。

 両国は、自主性、平等、互恵の原則にもとづいて国家関係を結び、それを両国人民の志向と念願にそってたえず発展させてきました。こんにち、両国人民は、社会主義建設と非同盟運動の強化発展のために、世界の平和と安全を守るために緊密に支持し協力し合いながら、ともに闘っています。

 朝鮮とユーゴスラビアの立派な友好・協力関係は、両国の指導者と人民の共同の努力によってもたらされました。1975年6月の私のユーゴスラビア訪問と、1977年8月のヨシプ・ブロズ・チトー同志のわが国訪問は、両国の友好・協力関係の発展において画期的な契機となりました。私はこの6月に再び兄弟の国ユーゴスラビアを訪問して、貴国の党および国家の指導的幹部諸同志と意義深い対面をし、ベオグラード市民の熱烈な歓迎とあついもてなしを受けました。私のこのたびの訪問を契機に両国の友好のきずなはさらに強固なものとなりました。

 朝鮮とユーゴスラビアの友好・協力関係は、社会主義と非同盟運動の崇高な理念にもとづく同志的な関係であり、両国における社会主義建設の促進と全般的社会主義勢力の強化、非同盟運動の拡大発展に有益な寄与をなしています。

 私は、両国の友好・協力関係が、政治、経済、文化の各分野にわたって好ましく発展していることを非常に満足に思っています。

 朝鮮人民は、ユーゴスラビア人民との友好を非常に重視しており、ヨーロッパにユーゴスラビア人民のような親しい戦友をもっていることを誇らしく思っています。朝鮮人民はこれまでと同様、今後ともユーゴスラビア人民との友好・協力関係を発展させるためにあらゆる努力を尽くすでしょう。

 朝鮮とユーゴスラビアの伝統的な友好・協力関係は今後、両国の党および政府と人民の共同の努力によってさらに拡大発展するでしょう。

 私はこの機会をかりて、兄弟のユーゴスラビア人民が、ヨシプ・ブロズ・チトー同志の偉業を継承し、ユーゴスラビア共産主義者同盟第12回大会の決定を貫徹する闘いで新たな成果をおさめるよう心から願うものです。
出典:『金日成著作集』38巻 

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