金 日 成

主体的な経済管理体系と方法を貫徹しよう
政務院および党中央委員会経済担当部署の責任幹部との談話 
1984年12月5日

 最近の経済活動における欠陥を分析してみると、それは経済幹部が人民経済に対する指導と管理を正しくおこなっていないことに起因しています。我々は久しい前に社会主義経済の指導、管理で堅持すべき原則を明らかにし、社会主義社会の要求と、わが国の実情にかなったすぐれた経済管理体系と方法をうち立てました。しかし、経済幹部は、それを活動に正しく具現していません。いわば、竜馬はあてがわれたのに、幹部がそれを乗りこなせないというわけです。そのため、これまで人民が刻苦奮闘して築きあげた社会主義の経済土台は、その威力を十分に発揮していません。

 いま政治・思想の面でみれば、わが国に比肩する国は世界にありません。朝鮮人民は、わが党の革命思想であるチュチェ思想で武装し、党のまわりにかたく団結して、チュチェの革命偉業を完成するために力強く闘っています。わが国のように党と人民が一心団結し、人々の精神・思想状態が健全な国はどこにもありません。我々は、これに対し、大きな自負をもって誇ることができます。しかし、経済の面でみれば、まだそうではありません。もちろん、わが国の経済は、外部の影響を受けずに安定した土台の上でたえず発展しており、人民は食・衣・住の心配をすることなく幸せに暮らしていますが、発達した国に比べれば技術的に立ち後れた面が多く、不足しているものも少なくありません。我々が経済の指導と管理を改善し、社会主義経済建設を力強くおし進めて、経済をいちだんと発展させるなら、わが国はどの面からみても何うらやむことのない国になるでしょう。

 私はきょう、政務院と党中央委員会経済担当部署の責任幹部が会した機会に、社会主義経済をどのような原則で指導し管理運営すべきか、既存の経済管理体系と方法を具現するうえで重要な問題は何かということについて改めて強調したいと思います。

 周知のように、社会主義建設において経済の指導と管理を改善するのは極めて重要な問題です。社会主義経済建設の成果は、経済に対する指導と管理をいかにおこなうかにかかっているといえます。社会主義経済に対する指導と管理は、経済の規模が拡大し、生産の社会化水準と近代化水準が高まるにつれて、いっそう重要な問題として提起されます。例え、社会主義制度が樹立され、物質的・技術的土台がある程度築かれたとしても、発展する現実の要請に応じて経済の指導と管理を改善しなければ、経済を速やかに発展させることができず、社会主義・共産主義建設を成功裏におし進めることもできません。

 社会主義社会における経済の指導と管理は、資本主義社会のそれに比べ、はるかにむずかしく複雑なものです。生産手段の私的所有にもとづき、勤労者を搾取してより多くの利潤をあげることが生産の目的となっている資本主義経済では、国家的範囲における経済の指導と管理が大きな問題にはなりません。資本主義社会における経済管理というのは、個々の資本家が自分の企業を管理し運営することですが、そうした資本主義的企業管理方法は数百年の歴史をもっています。社会主義経済は、資本主義経済とは根本的に事情が異なります。社会主義経済は生産手段の社会的所有にもとづいており、社会主義社会における生産の目的は、たえまなく増大する人民の物質的・文化的需要をみたすことにあります。社会主義社会では、すべての経済活動が国家的または社会的範囲で進められ、人民経済の各部門間、各単位間の複雑な生産的連係が単一の計画によって実現されるので、人民経済を正しく指導し管理運営するというのは決して容易なことではありません。そのうえ、社会主義への道は前人未踏の道であるので、社会主義を建設する過程で社会主義経済管理の理論を新たに定立し、経験も一つひとつ積んでいかなければなりません。したがって、社会主義を建設している国々では経済を指導し管理運営する過程で一時的に欠陥があらわれることもあり、それが経済発展にある程度の影響を及ぼすこともあります。

 いま帝国主義者は、社会主義諸国の経済が沈滞状態に陥っているだの、計画経済を導入すれば失敗するだの、社会主義国が経済を発展させるためには「自由化」の道に進まなければならないだのと、社会主義諸国を誹謗中傷しています。これは、社会主義経済制度をそしり、社会主義諸国を資本主義の道に逆もどりさせようとする狡猾な策動です。

 一部の社会主義国で経済発展テンポが一時的に落ちているからといって、それは決して社会主義経済制度が悪いとか、社会主義的管理方法では経済を速やかに発展させることができないという根拠にはなりません。社会主義経済制度の優位性の問題と、その優位性を発揮させる問題は別個のものです。社会主義経済制度の優位性は、社会主義社会の要求に即応して経済管理体系と方法をうち立て、それに依拠して経済を科学的に、合理的に管理運営してこそ十分に発揮されるのです。

 社会主義経済では、帝国主義者の唱える「自由化」は許されません。社会主義経済はその固有を法則に従って発展するのです。社会主義経済は、資本主義的方法で管理運営することができないのはいうまでもなく、社会主義的方法と資本主義的方法をとりまぜた、どっちつかずの方法で管理運営することもできません。社会主義経済は、もっぱら社会主義的方法でのみ管理運営することができるのです。社会主義経済の管理運営に資本主義的方法を取り入れるのは、結局、社会主義経済制度を資本主義経済制度に切りかえることを意味します。

 社会主義社会は「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という集団主義の原則が支配する社会であり、勤労者のあいだの同志的協力と団結が社会関係の基本となっている社会です。社会主義社会では、あらゆるものが生産の主人であり社会の主人である勤労人民大衆に奉仕すべきであり、勤労人民大衆の底知れない創造力を発揮させてすべての問題を解決していかなければなりません。経済に対する指導と管理においては、必ずこのような社会主義社会本来の要求を正しく具現しなければなりません。そうしてこそ、社会主義経済制度の優位性を余すところなく発揮させ、社会主義建設を成功裏におし進めることができるのです。

 社会主義社会はまた、旧社会の遺物である思想、技術、文化の後進性と階級的な差をはじめ、各種の差が残っている過渡的社会です。社会主義経済の指導と管理において社会主義社会の共産主義的性格とともに、その過渡的特性も当然、考慮に入れるべきです。経済に対する指導と管理において社会主義社会の過渡的特性を無視すれば、分配で原則からはずれた均一主義が助長され、合理的な経済管理ができず、経済建設に重大な損失をもたらすようになります。

 労働者階級の党が偏向を犯すことなく社会主義経済建設を成功裏に導いていくためには、社会主義社会の特性に応じて経済の指導管理原則を確立し、それを経済管理に具現しなければなりません。

 では、社会主義経済をどのような原則で指導し管理運営すべきでしょうか。

 社会主義経済の指導と管理運営で何よりも重要なのは、党の指導と行政の指導を正しく結合させることです。

 労働者階級の党は、勤労人民大衆の利益の徹底した擁護者であり、社会主義・共産主義建設の指導的力量であります。党の指導のもとでのみ、社会主義経済を勤労人民大衆の根本的利益と社会主義・共産主義建設の合法則的要求に即応して発展させることができ、広範な大衆を社会主義建設に力強く立ち上がらせることができます。社会主義経済に対する党の指導は、社会主義経済建設をなんの偏向もなく成功裏におし進めるための決定的な裏付けです。

 社会主義経済に対する党の指導は、本質において政治的指導です。党は、社会主義経済建設の目標と方向を正しく示し、政治活動、対人活動を通じて大衆を経済課題の遂行へと力強く呼び起こさなければなりません。

 生産手段が資本家の所有となり、勤労者が搾取の対象となっている資本主義社会では勤労者をカネと鞭によって動かしていますが、勤労者が国家権力と生産手段の主人となっている社会主義社会では、そういう方法で人々を動かすことはできません。社会主義社会では必ず、思想を啓発する政治的方法で勤労者を動かすべきです。

 社会主義経済の指導と管理において政治活動を優先させよというのは、決して行政的指導、経済組織活動をゆるがせにしてもかまわないということを意味するのではありません。政治活動によって高まった勤労者の革命的熱意と創造的積極性は、綿密な経済組織活動によって生産活動に具現されてはじめて大きな物質的成果としてあらわれるのです。勤労者に政治活動をおこなう目的は、それ自体にあるのではなく、経済管理を立派におこなって生産を増やし、社会主義経済建設を促進することにあります。社会主義経済の指導と管理においては、政治活動を確固と優先させ、これに経済組織活動を正しくとりあわせるべきです。

 社会主義経済の指導と管理運営において、中央の唯一的指導と地方の創意性を正しく結合させなければなりません。

 人民経済の各部門が密接に結びついて一つの全一的な体系をなしている社会主義経済は、中央の唯一的な指導のもとでのみ人民大衆の要求と利益に即応して管理運営され、計画的で均衡のとれた発展を遂げることができます。また、地方ごとに実情が異なり、特性があるので、地方の創意性が保障されてこそ、指導を現場に接近させ、地方の予備と潜在力を余すところなく引き出すことができます。

 社会主義経済の指導と管理運営において地方の創意性を無視し、中央の唯一的指導のみを絶対化すると、指導が現場とかけはなれた官僚主義的で主観主義的な指導となり、そうなれば経済を速やかに発展させることができなくなります。逆に中央の唯一的指導を弱化させ、地方の創意性を前面におしたてると、「地方分権化」の要素が生じ、そうなれば社会主義経済制度そのものの存立が危うくなります。社会主撥経済の指導と管理運営においては必ず、中央の唯一的指導を確固と保障したうえで地方の創意性を最大限に発揮させなければなりません。

 社会主義経済の指導と管理運営において、集団指導と統一的指揮を正しく結合しなければなりません。

 社会主義経済は、党と国家の統一的指導と人民大衆の創造的エネルギーによって発展する高度に組織化された経済であるので、行政指揮官一人の力だけでは正しく管理運営することができません。「百科事典」のようにすべての事柄に精通した人間などありえません。社会主義経済を正しく管理運営するためには、必ず党委員会の集団指導と行政指揮官の統一的指揮を正しく結合させなければなりません。言いかえれば、経済管理で提起されるすべての問題を党委員会で集団的に討議して当該の決定を採択し、行政指揮官はその実行を統一的に指揮しなければなりません。決定は集団的に討議して採択し、指揮は統一的におこなうようにすれば、経済の管理運営におけるすべての問題を正しく解決できると同時に、行政・経済幹部の主観と独断をなくして大衆の知恵と創意を大いに引き出し、規律と秩序を確立し、生産と経営活動を能率的におこなうことができます。

 政治的・道徳的刺激と物質的刺激を適切に結合することは、社会主義経済管理の重要な原則です。

 私がいつも言っていることですが、人間はあらゆるものの主人であり、すべてを決定します。機械と原料があるからといって、おのずと品物がつくられるわけではありません。人間が機械を使って原料を加工してこそ品物がつくられるのです。品物がいかに立派につくられ、原料がどれほど節約されるかというのも結局、人間がどのように働くかにかかっています。したがって、経済活動で成果をあげるためには、その担当者である勤労者の革命的熱意と創造的積極性を高く発揮させなければなりません。

 社会主義社会において勤労者の革命的熱意と創造的積極性を高く発揮させる最も合理的な方途は、政治的・道徳的刺激と物質的刺激を適切に結合することです。社会主義社会で人々は、社会的労働に対して政治的関心と物質的関心をもちます。政治的・道徳的刺激と物質的刺激を適切に結合してこそ、勤労者は経済活動に対する主人としての態度と高い生産意欲をもち、党と革命、祖国と人民のために、そして、自分自身のために社会的労働に積極的に参加するようになります。もし、政治的・道徳的刺激を軽視し、物質的刺激の強化にのみこだわるならば、それは、社会主義社会本来の要求に反するものであり、勤労者のあいだで利己主義を助長させ、ひいては社会主義建設を失敗させる結果をまねきかねません。また、物質的刺激を無視し、政治的・道徳的刺激一面のみにかたよるならば、それは、社会主義社会の過渡的特性を無視することになり、勤労者の創造的積極性を高く発揮させることができないのはいうまでもなく、一部の勤労者のあいだに懸命に働こうとしない傾向が生じかねません。社会主義経済の管理においては、必ず政治的・道徳的刺激を基本とし、これに物質的刺激を適切に結合しなければなりません。

 我々は、これまで社会主義を建設する全過程で、常に経済をより科学的、合理的に管理運営するため積極的に努力し、社会主義経済の管理原則を具現してわが国の実情に合った経済管理体系を確立し、経済管理方法をたえず改善してきました。我々は、テアン(大安)の事業体系を基本とする主体的な経済管理体系と方法を貫くことによって、社会主義経済建設を何の偏向もなしに推進することができました。その結果、わが国の経済は、強固な自立的土台の上でたえず速いテンポで発展してきました。わが国の工業生産は、社会主義的工業化の歴史的課題を遂行する14年間には毎年平均19.1%、6か年人民経済計画を遂行する期間には毎年平均18.4%の速いテンポで成長しました。今年は第2次7か年人民経済計画の最終年度ですが、この期間に工業生産の年平均成長テンポは12%以上に達することが見込まれています。穀物生産は、1956年の287万トンから今年は1千万トンに増大し、ほぼ4倍に達しました。工業と農業生産のこのような速い成長テンポは、資本主義諸国では考えることさえできないものです。これは、社会主義社会ではあたかも経済の速やかな発展が不可能であるかのように喧伝している、帝国主義者の反社会主義宣伝の欺瞞性を現実によって実証するものといえます。

 我々のこれまでの経験は、社会主義社会の本性と過渡的特性に即して経済管理体系と方法をうち立て、経済の指導と管理を科学的、合理的におこなえば、社会主義経済は、資本主義経済とは比べようもない速いテンポで発展するということを示しています。我々は、チュチェ思想にもとづいて朝鮮式の新たな経済管理体系と方法を創造し、それを貫いて社会主義経済建設でたえまない発展と高揚をもたらしていることに対し、当然の誇りと自負をもつことができます。

 我々は、実践を通じてその正当性と生命力が実証された主体的な経済管理体系と方法をいっそう立派に貫き、社会主義経済建設でひきつづき高揚を起こさなければなりません。

 我々は、何よりもまず、テアンの事業体系を立派に貫くべきです。

 テアンの事業体系は、社会主義経済の指導と管理において堅持すべき諸原則を全面的に具現している科学的で合理的な経済管理体系です。我々が社会主義経済建設の実践を通じて体験したことですが、テアンの事業体系ほどすぐれた経済管理体系はありません。経済幹部は、テアンの事業体系の優位性を正しく認識し、それをいっそう立派に貫くべきです。

 テアンの事業体系の核心は、党委員会の集団指導であります。私は、テアンの事業体系をうちだしたとき、党委員会を当該単位の最高指導機関と規定し、経済管理において党委員会の集団指導を確実に保障するようにしました。工場、企業所の集団的指導機関は、工場党委員会です。工場、企業所に新たな課題が提起されれば、党委員会で集団的に討議して、その遂行方途を決定し、任務を分担すべきであり、それにもとづいて支配人と技師長は、職場長、作業班長との活動をおこなって生産をおし進め、党書記は、党組織と職業同盟、社労青などの勤労者団体を動かし、経済活動を政治的に後押しすべきです。

 党委員会の集団指導を保障するうえで重要な問題は、党会議を集団的指導機関としての使命に即して正しく運営し、党活動家がその本分にのっとって活動することです。党書記は、党委員会を運営する議長として、党会議で民主主義を大いに発揚させ、絶対に独断と専横に走ってはなりません。そして、党書記をはじめ、すべての党活動家は、経済幹部の活動を代行するのでなく、党員と勤労者に対する政治活動を優先させて、彼らが経済管理に主人らしく参加し、生産で革命的熱意と創意を強く発揮するようにさせるべきです。

 こんにち、テアンの事業体系を貫くうえで重要な問題は、資材供給活動を改善することです。

 資材供給は、計画の遂行を保障するための極めて重要な活動です。私はテアンの事業体系をうちだしたとき、上部が責任をもって資材を作業現場まで送り届ける整然とした資材供給体系を確立しました。しかし、経済幹部は私がうち立てた体系どおりに資材供給活動をおこなっておらず、そのため一部の工場、企業所では、資材が円滑に供給されず、可能な増産ができないありさまです。

 資材供給活動を正しくおこなうためには、資材商社のあいだで契約を結び、それにもとづいて資材を供給しなければなりません。

 いま政務院と資材供給省では資材を配分するような業務を少なからず担当していますが、そのようなやり方では資材供給活動が円滑におこなわれるはずがありません。政務院と資材供給省が資材の配分を担当したのでは、人民経済各部門で要求するすべての資材を円滑に供給することができず、またそうすれば、資材不足のために計画を遂行できなくても政務院の委員会、省と工場、企業所の幹部は責任を負おうとしないでしょう。

 資材は、必ず資材商社を通じて人民経済の各部門間、工場、企業所間で契約を結び、それに従って受け渡しするようにしなければなりません。かりにある部門や工場、企業所が資材供給契約を履行しなかった場合は、違約金を支払わせるべきです。そうすれば、政務院が資材の配分といったようなことをしなくてもすみ、政務院の責任幹部が資材の問題で口をさしはさむ必要もなくなるでしょう。私が内閣首相を勤めていたときは、資材を契約に従って供給する厳格な規律をうち立てたので、資材の供給が円滑におこなわれました。

 政務院と国家計画委員会では、行政的指令によって資材を供給する傾向をなくし、資材商社を通じ、人民経済各部門間、工場、企業所間の契約にもとづいて供給する厳格な規律をうち立てなければなりません。

 政務院と資材供給省では、備蓄物資や国家的意義をもつ一部の輸入資材のようなものだけを掌握して供給すべきです。

 人民経済の各部門間、工場、企業所間で契約を結び、それに従って資材を供給するためには、資材商社と工場、企業所の資材供給部署の役割を高めなければなりません。いま資材商社と資材供給部署は、上部から割り当てられた資材を受けて下部に送り届ける伝達者の役割を果たしているだけですが、それではいけません。資材商社と資材供給部署は、必要な資材を調べたあと、他の部門、他の工場、企業所と契約を結び、その契約が確実に履行されるようにし、受けた資材をそのつど供給すべきです。工場、企業所の資材供給部署と資材倉庫では、上部から受けた資材を生産工程の要求に即応して加工すべきものは加工して生産現場に送り届けるべきです。

 資材供給活動で商業的形態を正しく利用しなければなりません。いま一部の委員会、省と工場、企業所では、必要以上の資材を受け取って死蔵させたり浪費する傾向が少なからず見られますが、これは、資材供給活動で商業的形態を正しく利用していないことに起因しています。資材供給活動で商業的形態を正しく利用すれば、工場、企業所が必要以上の資材を受け取って死蔵させたり浪費した場合は、それだけ損失をこうむることになるので、そのようなことはしないでしょう。

 社会主義経済は、計画経済であり、計画化は社会主義経済の管理運営で極めて重要な意義をもちます。社会主義経済の指導と管理は計画化からはじまり、経済活動の成果は主に計画化をいかにおこなうかにかかっています。社会主義経済は、計画的にのみ発展し、計画なくしては一歩も前進することができません。社会主義社会で計画化を正しく進めなければ、経済を速やかに発展させることができないのはいうまでもなく、社会主義経済建設全般に重大な影響を及ぼしかねません。

 わが党によって創造された計画の一元化システムは、党の経済政策が貫かれるよう国家が計画化を掌握して統一的に指導する社会主義的計画化システムです。計画を一元化すれば、経済の指導と管理で中央の唯一的指導と地方の創意性を正しく結合し、国家計画機関の活動家の主観主義、官僚主義と生産者の機関本位主義、地方本位主義をなくし、現実的で動員力のある計画を立て、党の経済政策を立派に貫くことができます。

 計画の細部化は、人民経済の各部門と工場、企業所の経営活動を細部にいたるまで正しくかみあわせる、すぐれた社会主義的計画化方法です。計画を細部化すれば、人民経済の個々の部門と工場、企業所の経営活動を国の全般的な経済発展と密接に結びつけ、計画を細部にいたるまで正しくかみあわせて計画の均衡を保ち、社会主義経済建設を速いテンポでおし進めることができます。

 我々は、計画の一元化、細部化の方針を貫くことによって、計画化に新たな転換をもたらさなければなりません。

 人民経済の計画化で基本は、経済発展の速いテンポとバランスを正しく保つことです。

 テンポとバランスを正しく保つのは、社会主義経済発展の合法則的要求です。経済発展の速いテンポは正しいバランスを前提とし、バランスは速いテンポを実現するための手段です。したがって、人民経済の計画化でテンポとバランスのいずれかを絶対視したり軽視してはならず、必ず経済発展の速いテンポが保たれるように積極的な計画を作成し、人民経済の各部門間、再生産部門間のバランスを正しく保たなければなりません。

 人民経済の計画化においてバランスを保つことが極めて重要であるので、私は機会あるたびにこのことを強調し、1974年7月の計画部門活動家協議会では、わが国の経済の現状にてらして具体的な実例をあげながら説明しました。にもかかわらず、その後も国家経済幹部と計画部門の活動家は、人民経済計画の作成にあたってバランスの調整に関心を払っていません。いま少なからぬ工場、企業所で電力と石炭、輸送がネックになって生産と建設に支障をきたしていますが、その主な原因は、人民経済の計画化で電力工業と加工工業間、採掘工業と加工工業間、生産と輸送間のバランスを正しく保っていないところにあります。

 国家経済幹部と計画部門の活動家は、今後、人民経済の計画化にあたって蓄積と消費間のバランス、生産手段生産と消費財生産間のバランス、人民経済各部門間のバランスと部門内部のバランス、地域間のバランスと企業所間のバランス、企業所の生産工程間のバランスと生産要素間のバランスなど、人民経済の全般的かつ総合的なバランスと部分的で細部的なバランスをともに正しく保つことに深い関心を払うべきです。

 現在、計画化の改善で提起されるいま一つの重要な問題は、党の経済政策を貫くための計画的措置を適時に講じることです。

 わが国で人民経済発展6か年計画と第2次7か年計画の期間に、電力工業と採掘工業の発展に相応の関心を払わなかったので、電力と石炭事情が逼迫しました。それで私は、電力と石炭生産に大きな力を入れて電力工業と石炭工業を先行させるという党の方針を貫くことについて特に強調しました。ところが、政務院と国家計画委員会では、あれこれと口実を設けて、電力生産と石炭生産に力を集中するという党の方針が貫かれるように適時に計画的措置を講じませんでした。そのため、電力と石炭の不足は、依然として解消されていません。また、政務院と国家計画委員会が、軽工業革命の方針を貫くための計画的措置を適時に講じなかったため、人民生活を画期的に向上させるという党の構想が満足に実現されていません。

 わが党は、社会主義建設の展望目標と現実発展の要求に即応して各時期に正しい経済政策と方針を示し、その貫徹のための活動を導いています。政務院と国家計画委員会は、党が新たな政策と方針をうちだせば、絶対性、無条件性の原則でそれを貫徹するための計画的措置を適時に講じるべきです。これは、計画化で必ず守るべき重要な原則であり、政務院と国家計画委員会の活動家に負わされた党的義務であります。活動家はこれに対する正しい認識をもって仕事にあたるべきです。

 人民経済計画を正しく作成するとともに計画規律を強化し、計画遂行に対する統制を厳しくすべきです。

 人民経済の計画規律が確立しておらず、計画遂行に対する統制も弱いのが現状です。政務院の各委員長、相と工場、企業所の支配人は、人民経済計画を超過遂行するため懸命に努力しないばかりか、計画を達成できなくても大して良心の呵責を受けていません。私が内閣首相を勤めていたときは、相と工場、企業所の支配人は、人民経済計画を極めて慎重に受けとめ、それを超過遂行するため懸命に努力し、計画を達成できないことを最大の恥とみなしたものです。

 人民経済計画は、革命の要求と全人民の意思を反映した党の指令であり、国家の法であります。国家計画は、誰もたがえることができず、無条件、確実に実行しなければなりません。人民経済のすべての部門、すべての単位で、人民経済計画を日別、月別、四半期別、指標別に間違いなく遂行する強い規律を確立し、それに対する党的、法的統制を強化すべきです。

 社会主義経済管理の体系と方法を貫いて社会主義建設で新たな高揚を起こすためには、政務院の役割をさらに高めなければなりません。

 政務院は、国家の行政的執行機関であり、党の経済政策を貫徹する活動を手配し指導する経済司令部だといえます。党が経済路線と政策をうちだしたあと、それがいかに貫かれるかは、政務院がその機能と役割を十分に果たすかどうかにかかっています。わが党の路線と政策は、すべて正しいものです。政務院が、経済司令部としての機能と役割を十分に果たせば、経済の指導と管理が立派になされ、人民経済が速やかに発展します。しかし、政務院は、経済組織活動と指導を満足におこなっていません。政務院の責任幹部は、党の路線と政策を貫くための経済組織活動を綿密におこない、正しく指揮すべきなのですが、ただ私が与えた課題を受け売りするやり方で仕事をしています。いま一方では労働力が余って労働者を遊ばせているかと思えば、他方では労働力不足のため可能な増産もできず、また工場、企業所で原料と資材が円滑に供給されなかったり、設備の故障のため生産の正常化をはかれないといったようなことが少なからず見られますが、それを具体的に分析してみると、結局、政務院が経済組織活動と指導を正しくおこなっていないところに主な原因があります。

 わが党は、国内でコークス用炭が産出されない実情のもとで、金属工業を主体化する路線を示し、その実現のために多大の努力を傾注してきました。その結果、国内に無尽蔵な無煙炭をもって製鉄工業の原料と燃料問題を解決できる道が開かれ、主体的な製鉄原料と燃料を生産供給する基地もかなり築かれました。しかし、政務院がこれに深い関心を払わず、経済組織活動に積極的に取り組まなかったので、その生産は伸び悩んでいます。

 私は、人民の食糧問題を円滑に解決するため農業第一主義の方針を示し、農業に深い関心を払ってきました。しかし、政務院では、農業第一主義の方針を貫くための経済組織活動を実質的におこないませんでした。政務院の責任幹部は、農業生産を増大させるためのこれといった意見一つ提起したことがありません。今年は豊作に恵まれましたが、それは政務院が仕事に励んだからではなく、党中央委員会が仕事の手配を綿密におこなったからです。党中央委員会の金正日同志は、私がソ連と東欧社会主義諸国の訪問に発ったあと、金日成同志は高齢の身であるにもかかわらず、わが党と人民のために遠い外国訪問の途についた、だから今年の農業をより立派に営んで金日成同志に喜びを与えようという戦闘的な呼びかけを盛った電報指示を下達する措置を講じました。こうして、全党、全国、全人民が、党中央委員会の電報指示を支持して立ち上がり、混合糞尿土をさらに多く生産してほどこし、草取りも1回余計におこなう運動を展開しました。肥料年度の肥料生産が限られている状況のもとで、穀物生産を増やすには混合糞尿土をたくさん生産してほどこし、草取りをいっそう丹念にしなければならないというのはわかりきったことです。それだけに、こんなことは当然、政務院が先に発案して手配すべきなのですが、そうしませんでした。

 政務院の責任幹部が党の路線と政策を貫くための経済組織活動を綿密におこなわないのは、彼らに党の方針に対する絶対性、無条件性の精神が欠けているからです。政務院の責任幹部は、何か課題が与えられるとすぐ泣き言を並べますが、それはたいへん間違っています。もちろん、政務院は国の経済活動全般を指導するのですから、その過程には当然隘路があるでしょう。しかし、それは戦後復興建設の時期や社会主義建設の大高揚の時期に比べれば何でもありません。政務院の責任幹部が、党の方針に対する絶対性、無条件性の精神をもって取り組むなら、障害と難関を十分に克服し、経済活動の難問を解決することができます。

 現在、政務院の責任幹部の活動における最大の欠陥の一つは、下部をしっかりと掌握していないことです。政務院の責任幹部は、下部を掌握する体系を確立せず、現実のなかに入らないので下部の実情にうといのです。そんなことでは経済組織活動を正しくおこなうことはできません。下部を具体的に掌握するのは、経済組織活動と指導の第一工程であり、その成果を左右する先決条件であります。

 政務院の責任幹部は、こういう欠陥を早急に是正し、政務院が名実ともに国の経済司令部としての機能と役割を果たせるよう積極的に努力すべきです。

 党の路線と政策を貫くための経済組織活動と指導は、政務院の基本的機能です。政務院の責任幹部は、党の路線と政策に対する絶対性、無条件性の精神をもって経済組織活動を手ぬかりなくおこない、経済活動に対する指導を強化すべきです。

 政務院の責任幹部は、党が新しい政策を示せば、それを下部の活動家に伝達することにとどまらず、深く研究して具体的な遂行方途を見いだし、下部の活動家に任務を分担すべきです。下部の活動家に課題を与えたあと、その遂行状況について報告させ、点検もおこない、かつ十分に援助しなければなりません。

 政務院は、下部を掌握する体系を確立すべきです。政務院で、総理が副総理と委員長、相、道経済指導委員長を通じて掌握し、彼らがまた下部の活動家を通じて掌握する体系を確立すれば、政務院が国の全般的な経済実態をつぶさに知り、経済組織活動を立派に展開し、経済活動の難問をそのつど解決することができます。

 政務院が指導的機能を正しく遂行するためには、経済活動で提起されるすべての問題を総理に集中させ、副総理と委員長、相が政務院の決定と指示を確実に実行する強い規律を確立しなければなりません。いま、政務院の活動が順調に進まない主な原因の一つは、政務院に規律がないことです。無規律な軍隊は、戦闘で勝利できません。政務院の規律が乱れていては国の経済活動を正しく指導することができません。これから先、党の政策を貫徹するための総理の指示と政務院の決定をまともに実行しない副総理や委員会、省の責任幹部に対しては、批判を加え、党の処罰や行政上の処罰も適用して、彼らが気を引き締めるようにすべきです。

 政務院の委員会、省の役割も高めなければなりません。道経済指導委員会を新設したとき、一部の委員会、省の責任幹部は、委員会、省にはこれといってなすべきことがなくなったかのように考え、責任をもって仕事にあたりませんでしたが、道経済指導委員会に属していた管理局を委員会、省に所属させたので、仕事はもっと多くなりました。委員会、省は、強い責任感をもって経済組織活動を主人としての立場でおこなわなければなりません。

 経済を指導し管理運営するうえで道経済指導委員会の役割が重要です。我々が道経済指導委員会を設けたのは、指導を現場に接近させるためです。道経済指導委員会の活動家の役割を高めてこそ、下部をしっかり掌握し、生産を現地で実質的に指導することができ、地方の責任感と創意性を高めることができます。道経済指導委員会は、管理局を委員会、省に移管したので、生産に対して全面的な責任は負いませんが、道に駐在している政務院の現地指導機関として委員会、省を援助し、現地での指導を立派におこなうべきです。

 社会主義経済管理の体系と方法を貫くうえで、党中央委員会の経済担当部署の役割を高めることが極めて重要です。

 いま、党中央委員会の経済担当部署は、その役割を満足に果たしていません。党政策の実行であらわれている偏向をそのつど掌握しておらず、党政策が正しく実行されない傾向を見ても闘おうとしないばかりか、経済活動を発展させるための対策案を出したことも別段ありません。党中央委員会の経済担当部署がその責務を全うしなければ、党の経済政策が正しく貫かれず、社会主義経済建設に対する党の指導を十分に保障することもできません。

 党中央委員会の経済担当部署は、党の経済政策の実行に対する掌握をしっかりおこなうべきです。そうしなければ、党の意図に即して経済活動が進められているかどうかがわからず、そうなれば偏向があらわれてもそのつど正すことができません。

 党中央委員会の経済担当部署の活動家は、党の路線と政策を貫徹しない否定的傾向と強く闘うべきです。わが党は、革命を進める党であり、闘う党であります。闘争なくしては革命は前進しません。党の路線と政策の貫徹であらわれている否定的傾向と強く闘わずには、経済活動を発展させることができず、社会主義経済建設を力強くおし進めることもできません。党中央委員会の経済担当部署の活動家は、党の方針を貫く活動を怠ったり、ずるずると引きのばすような傾向に対してはいささかも黙過することなく、すぐさま問題視して強く闘うべきです。

 社会主義経済建設を力強くおし進めるための対策案を提起するのは、党中央委員会の経済担当部署が当然おこなうべき重要な活動です。党中央委員会の経済担当部署が経済活動に対する立派な対策案をたくさん提起してこそ、社会主義経済建設に対する政策的指導を十分に保障することができます。これから党中央委員会の経済担当部署では、社会主義経済建設で提起される問題を正しく調べて分析し、経済活動を発展させるための対策案をそのつど提起すべきです。

 党中央委員会経済担当部署の機能と役割を高めるためには、部署のメンバーを精鋭主義の原則でかためなければなりません。

 いま一部の幹部は、部署の人員が多ければ仕事が順調に運ぶがのように考えていますが、それは間違っています。仕事の能率は人員によってではなく、有能な活動家がどれほどいるかによって決まるのです。一人の名医は百人のやぶ医者にまさるという言葉があります。部署に多くの人員をおくのでなく、有能な人を何人かおくべきです。

 党中央委員会の経済担当部署を若くて知識のある堅実な人でかためるべきです。そうすれば、彼らが元気旺盛に仕事をおし進めることができます。

 党中央委員会経済担当部署の活動家は、政務院の活動を代行してはなりません。それをすると、政務院の活動家の責任感が弱まるばかりでなく、彼らのあいだに党政策の実行を怠る傾向があらわれても、それと闘うことができなくなります。党中央委員会経済担当部署の活動家は、政務院の活動を代行するのでなく、政務院の責任幹部と委員長、相が、党の経済政策を貫徹するための仕事の手配を正しくおこなえるように党の立場から援助し、彼らの活動に欠陥があらわれたら、そのつど説諭して是正させるべきです。

 わが党によって創造された社会主義経済管理の体系と方法どおりに、経済を科学的、合理的に指導し管理運営するためには、経済幹部の水準を決定的に高めなければなりません。

 社会主義社会において経済管理の主人は生産者大衆であり、経済管理の成果は、彼らを経済管理にいかに参加させるかにかかっています。幹部の水準が高くてこそ、経済活動を正しく組織し指導することができ、生産者大衆の役割を高めて生産を速やかに発展させることができます。

 現在、経済幹部の水準は、発展する現実に比べて立ち後れています。経済幹部の水準を速やかに高めなくては、規模がいちだんと拡大し、主体化、現代化、科学化の水準が高い段階に達しているわが国の経済を科学的、合理的に指導し管理運営することができません。

 経済幹部は、何よりもまず、わが党の経済政策と主体的な経済理論で武装しなければなりません。

 わが党の経済政策は、社会主義経済建設の唯一の指導指針であります。わが党の経済政策には、社会主義経済建設で提起されるすべての問題が理論的に解明されているばかりでなく、その実現方途まで具体的に示されています。経済幹部は、党の経済政策を系統的に、全面的に研究して体得し、特に自己の部門、自己の単位の党政策に精通していなければなりません。

 主体的な経済理論は、人間中心の経済理論であり、それは、わが党の経済政策の理論的基礎であります。経済幹部は、主体的な経済理論で武装してこそ、わが党の経済政策を原理的に深く把握して国の経済を朝鮮式に発展させ、社会主義経済管理の体系と方法をより立派に貫くことができます。

 経済幹部は、社会主義社会で作用する経済法則と経済カテゴリーを深く体得すべきです。社会主義経済は、社会主義社会で作用する経済法則に従って発展するので、経済幹部が経済法則と経済カテゴリーをよく知らなければ、社会主義経済を正しく指導し管理運営することができません。しかし、わが国の経済幹部は、社会主義の経済法則と経済カテゴリーについてよく知らないのが現状です。そのため、経済管理において社会主義経済法則の要求を正しく具現できず、価格、原価、利潤などの経済的テコを効果的に利用できないありさまです。

 経済幹部は、経済実務水準の向上に相応の関心を払うべきです。例え、理論水準は高くても、経済実務水準が低ければ、経済活動を正しく指導することができません。経済理論と経済実務を兼備した人であってこそ有能な経済幹部だといえるのです。

 現代生産工程は、すなわち科学技術工程であり、科学と技術をぬきにしては経済の発展について考えることができません。現代科学技術に依拠して急速に発展する大規模の社会主義経済を正しく指導し管理運営するためには、経済幹部が科学と技術に精通していなければなりません。しかし、経済幹部の科学技術知識水準は高いとはいえません。私は、これから先、わが国で年に150万トンの非鉄金属が生産されるようになれば、それをそのまま売るのでなく加工して売ろうと考え、当該部門の幹部に非鉄金属の加工技術について聞いてみたのですか、これといった知識がありませんでした。それで外国の工学大辞典で調べてみたところ、そこに亜鉛合金とその利用について簡単に記されていました。政務院の責任幹部と委員長、相をはじめ、国家経済機関の活動家のなかには、国内の大学や外国の留学で自然科学技術を学んだ人がかなりいますが、彼らが学んだのはひと昔前のことです。いま科学と技術は非常に速いテンポで発展しています。30年前、20年前に学んだ科学技術をもってしては、発展する現実の要求に即応して国の経済を正しく指導し管理運営することができません。

 経済幹部の水準を高めるうえでいま一つの重要な問題は、高い指導芸術を身につけることです。

 一部の人は忙しく立ちまわって、仕事に打ちこんでいるように見えても仕事に成果がありませんが、それは、彼らが指導芸術を身につけていないことに起因しています。政務院の責任幹部が下部をしっかりと掌握できないのも、幹部が機構のことで愚痴をこぼすのも、指導芸術に欠けているからです。兵士なら指導芸術を身につけていなくても自分にまかされた戦闘任務を遂行できるでしょうが、指揮官の場合は指導芸術を身につけなくては自分の任務を遂行することができません。

 指導芸術というのは、特別なものではありません。指導芸術とは一言でいえば、集団と大衆を動かし導いていく方法であり、手腕です。大衆のなかに深く入り、彼らの意見に耳を傾け、大衆の創意を大いに引き出し、彼らを奮起させて提起された問題を解決していくのが、ほかならぬ指導芸術なのです。

 経済幹部は高い指導芸術を身につけ、1人が10人、10人が100人、100人が1000人、1000人が1万人を動かす方法で広範な大衆を奮い立たせて課された経済課題を遂行していかなければなりません。

 経済幹部が水準を高めるためには、何よりも革命的学習気風を確立し、熱心に学習しなければなりません。

 私は、既に抗日武装闘争の時期に、革命家にとって学習は第一の義務であるというスローガンをうちだしました。これは、現在も依然としてわが党の重要なスローガンとなっています。革命家は、生命かつきるまでたえず学習し、革命の糧を得なければなりません。

 いま幹部には、学習の条件が十分に保障されています。最近、経済幹部は人民大学習堂に足しげく通って勉強しているそうですが、それは非常によいことです。人民大学習堂には、政治、経済、文化をはじめ、各分野の図書がそろっており、そこでは講義や講演もおこなわれるので、幹部が日常的に人民大学習堂に出かけて勉強すれば、水準を速やかに高めることができるでしょう。

 経済幹部が水準を高めるためには、学習に励むと同時に、下部に出向いて大衆のなかに深く入らなければなりません。

 大衆が生活し働く現場は、幹部の立派を学校であり、大衆は幹部のすぐれた教師です。私はこれまでほぼ60年にわたる革命闘争の過程で、地下革命闘争と武装闘争を指導し、民主主義革命と社会主義革命も指導し、社会主義建設も指導してきましたが、革命と建設に必要な知識を学校の教師から学んだことはこれといってありません。もちろん、なかには書物から学んだこともありますが、ほとんどは革命同志と人民のなかに深く入り、彼らと生死、苦楽をともにしながら実践を通じて体得したものです。書物から得た知識は、現実のなかで実践を通じて検証されてこそ、役に立つ生きた知識になるのです。特に、指導芸術を身につける問題は、大衆のなかに深く入り、さまざまな状況で実際に活動してみなくては解決することができません。

 こんにち、わが党が求めている経済幹部は、党への忠実性が強いだけでなく、深い経済知識と科学技術知識、そして、巧みな指導芸術を身につけた人です。経済幹部は、革命的な学習気風をうち立てて熱心に勉強し、大衆のなかに深く入り、彼らと苦楽をともにしながら不断に学ばなければなりません。こうして、党への忠実性が強く、経済と科学技術に対する深い知識と巧みを指導芸術を身につけた立派な幹部としてしっかり準備すべきです。

 政務院の責任幹部と党中央委員会経済担当部署の責任幹部は、わが党によって創造された主体的な経済管理体系と方法を立派に貫いて社会主義経済建設に新たな高揚をもたらし、わが国の社会主義経済制度の優位性を余すところなく発揮させるべきです。
                                                
出典:『金日成著作集』38巻

<注>金日成主席は、ソ連(当時)、東欧(当時)諸国公式訪問のため清津を出発(1984年5月16日〜7月1日)


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