金 日 成

日本社会党代表団との談話
 −1984年9月19日−


 私は朝鮮労働党中央委員会と私自身の名で、石橋委員長先生を団長とする日本社会党代表団を改めて熱烈に歓迎します。

 このたび石橋委員長先生が高位級の代表団を率いて我が国を公式訪問されたことは、我々両党間の兄弟的友好関係と信頼の情が極めて厚く、深いものであることを示しています。

 我が党は、隣邦に日本社会党のような立派な党をもっていることをたいへんうれしく思い、誇りとするものです。

 石橋委員長先生を団長とする日本社会党代表団の今回の訪朝を契機に、両党が最近の国際情勢と相互の関心事となっている諸問題について意見を交わすことになれば、それは、両党間の友好関係の発展において新たな転換をもたらすことになると考えます。

 いましがた、石橋委員長先生は国際情勢について述べられましたが、私もそれに同感です。

 いま、世界各国の人民はいずれも核戦争の脅威にさらされています。そのため、世界のいたるところで反戦・反核運動がはげしく展開されているのです。

 特に、ヨーロッパで反戦・反核運動が強力にくりひろげられています。ヨーロッパでは、社会主義諸国の人民ばかりでなく、資本主義諸国の人民も核戦争に反対してたたかっています。

 アジアでは、日本社会党と我が党が核戦争に反対して積極的にたたかっています。

 数年前、両党は、東北アジア地域における非核地帯・平和地帯設置にかんする共同宣言を発表しました。これは、反戦・反核運動が力強く展開されているこんにちの実情に即応した正当な措置であります。

 石橋委員長先生は、両党が非核地帯・平和地帯の設置をめざして力強くたたかいつづけることについて述べられましたが、我々はそれを全面的に支持します。

 我々は、アジアにおける非核地帯・平和地帯設置のための闘争を各国の政党、大衆団体が連合して広くくりひろげる必要があると思います。いまなおアジア諸国の一部の党は、非核地帯・平和地帯設置の運動にこれといった反応を示していません。

 きのう石橋委員長先生は、最近オーストラリアとニュージーランドの労働党政権が中心となって「南太平洋討論会」を開いたことにふれ、その地域における非核地帯の設置が現実的な政治的課題として提起されていると述べられました。南太平洋地域諸国が、非核地帯を設置するためにたたかうのは好ましいことです。

 我々は、政権党であろうと、政権党でなかろうと、各国の党と大衆団体、そして、広範な人民大衆が力を合わせて、アジアに非核地帯・平和地帯を設置する運動をさらに積極的に進めるべきであると考えます。我々は、そのために貴党とともに積極的に努力するでしょう。

 私は最近、インド共和国の国会代表団に会いましたが、インドも核戦争の危険を防ぐために力強くたたかうつもりであるとのことでした。

 非同盟運動内でも非核地帯・平和地帯設置のスローガンをかかげています。

 いま世界の人民は、核兵器の製造と配備に反対し、核兵器の使用を禁止し、核兵器を完全に廃絶するためにたたかっています。

 私は、非核地帯・平和地帯の設置をめざす運動を大衆的に力強く展開しようというあなたがたの意見に同感です。

 アメリカと日本、南朝鮮間の三角軍事同盟問題についていうならば、我々はあなたがたと見解を同じくしています。

 現在、アメリカと日本、南朝鮮が、三角軍事同盟を結成するために策動していることは明白です。特にアメリカは、三角軍事同盟をつくりあげるために策動する一方、南朝鮮に現代兵器を提供していますが、これは極めて危険なことです。

 南朝鮮の執権者は、南朝鮮かいらい軍の軍人の前で、戦争が起これば1日か2日のうちに終えるべきだとうそぶいています。これは結局、戦争で核兵器を使用するということを意味します。通常兵器では、1日や2日で戦争を終わらせることはできません。南朝鮮かいらい一味は、核兵器「眩惑症」にかかっています。それで、南朝鮮人民は南朝鮮かいらい政権に反対しています。

 私は、両党・両国人民がかたく団結して米・日・南朝鮮間の三角軍事同盟結成策動に反対して積極的にたたかうべきだと思います。

 昨夕の宴会での演説でも述べましたが、日本がアメリカの核の傘のもとに軍事大国化と海外膨張の道へ進むならば、それは、日本人民の利益に背き、アジア諸国の人民を威嚇する行為として断固たる排撃と糾弾を受けるでしょう。

 私は以前、我が国を訪問した日本の自由民主党の有志議員団に会ったときにも、この問題について述べたことがあります。私はそのとき、かれらに、日本が経済大国として第三世界諸国と好ましい関係をもつならば経済を発展させることができ、世界の人民から支持を受けるだろう、しかし、日本が軍事大国の道に進むならば、世界の人民に脅威を与えることになり、結局、世界の人民から排斥されるようになるだろう、といいました。

 我々は、隣邦の日本が、軍事大国にならず、経済大国でありつづけながら、第三世界諸国、新兵独立諸国との友好・団結を強化し、世界の平和を維持していくことが極めて重要であると考えます。

 次に三者会談問題について述べましょう。

 我々は今年の初めに、我々とアメリカ、南朝鮮間の三者会談開催にかんする提案を示しました。

 現状下において、我が国の緊張を緩和し、祖国の統一を早める方途は三者会談の道しかありません。

 石橋委員長先生が述べられたように、三者会談提案はもともとアメリカ側が先に出したものです。前アメリカ大統領のカーターも南朝鮮に来て発表した「共同声明」で三者会談問題を提起しており、そのほかにもアメリカ側は、我々に三者会談問題を間接的に重ねて提起してきました。かれらは1976年から、我が方に三者会談問題をいろいろなルートを通じて提起してきました。

 我々の支持者たちが、アメリカ側に、朝鮮の停戦協定を平和協定にかえるべきではないかと提言するたびに、かれらは三者会談開催の必要性を指摘しました。アメリカは昨年9月にも第三国を通じて、三者会談問題を我々に提起してきました。そのアメリカが、いざ我々が三者会談提案をうちだし、三者会談を開こうというと、それに応じようとしません。

 いまアメリカは、四者会談、もしくは、我が国の北と南が双務会談を開くよう要求しています。もちろん、朝鮮の北と南が直接会談をおこなうこともできます。しかし、現状下にあっては北と南の会談は不可能です。

 あなたがたもご存じのように、かいらい全斗煥が日本を「訪問」するとき、南朝鮮人民はもちろんのこと、日本人民もかれの日本「訪問」に反対しました。我々は、人民が反対するかいらい全斗煥と対座して会談することはできません。もし我々がいま、かれと会談するならば、それはかれに反対してたたかう人民を無視することになるでしょう。人民の政権を代表する我々が、どうして人民の反対する人と会談ができるでしょうか。

 全斗煥は、「政権」の座についてから「南北韓当局最高責任者の相互訪問」問題を提起したことがあります。我々は、北と南の高位当局者会談をおこなうためにはまず、全斗煥が南朝鮮人民にたいし、民主化運動を弾圧し多数の人民を虐殺したことを謝罪すべきだといいました。全斗煥は、光州人民蜂起のとき、多数の人民を虐殺し、光州人民蜂起と結びつけて民主人士金大中に死刑を言い渡しました。それで我々は、全斗煥がまず南朝鮮人民にたいし誤りを謝罪してから、7.4南北共同声明の原則にもとづいて祖国を統一するための会談をおこなおうといいました。

 我々は、朴正煕が「大統領」在任中であった1972年7月4日に南北共同声明を発表しましたが、それには、国の統一を自主、平和、民族大団結の原則で実現する問題が指摘されています。

 我々はまた、北と南の高位当局者会談をおこなうためには、南朝鮮で反共騒ぎを中止し、金大中をはじめ、多くの人々の政治活動の自由を保障すべきであるといいました。我々は、南朝鮮当局者が我々の要求条件を受け入れるならば、かれらと会談ができるといいました。

 しかし南朝鮮のかいらい一味は、内政干渉だといって、我々の要求条件を受け入れませんでした。我々の要求条件は、決して内政干渉にはなりません。それは、外国や他民族との関係問題ではなく、同一民族の内部で提起される問題であり、したがって、それを内政干渉とみなすことはできません。

 我々は、北と南の高位当局者会談が当分のあいだ不可能であれば、北と南の各政党、大衆団体や民主人士を網羅する政治協商会議をおこない、これに内外の民主人士をすべて参加させようといいました。しかし南朝鮮かいらい一味は、これにも反対しました。我々は北と南の会談に反対しません。

 我々が三者会談で討議しようとする諸問題は、現状下においては三者会談でなければ解決できない問題です。

 我々は、三者会談で基本的に2つの問題を討議しようというのです。三者会談を通してなによりもまず、我々とアメリカとのあいだに締結した停戦協定を平和協定にかえるつもりです。次に、我々は北と南のあいだで不可侵宣言を採択するつもりです。これは、国の統一を直ちに実現できない状況下において、我が国における緊張を緩和する最も合理的な方案です。我々は、国の統一を直ちに実現できない状況下にあって、我が国に生じている緊張だけでも緩和しようというのです。停戦協定を平和協定にかえ、北と南が不可侵宣言を採択し、双方の軍隊を縮小するならば、朝鮮での緊張を緩和することができ、そうなれば、国を平和的に統一できる条件がととのいます。

 いまアメリカは北と南が直接会談することを要求していますが、南朝鮮かいらい政権は、停戦協定を平和協定にかえ、北と南のあいだで不可侵宣言を採択する問題を解決できる権限をもっていません。

 朝鮮停戦協定には、我が方の代表とアメリカの代表が署名しました。もちろん、中国人民義勇軍の代表も停戦協定に署名しています。しかし、中国人民義勇軍は、我が国から久しい前に撤退しました。それゆえ、現在互いに対峙している停戦協定締約双方が、それを平和協定にかえるための会議をおこなわなければなりません。

 現在、「韓米連合軍」司令官はアメリカ人です。したがって、北と南の不可侵宣言も南朝鮮で「韓米連合軍」司令官が承認しなければ、実際の効力をあらわすことができません。かりに、北と南が不可侵宣言を採択したとしても、アメリカがそれを認めなければ、その宣言はなんの用もなさず、空文書になってしまいます。したがって、北と南の不可侵宣言は、必ず三者会談で採択しなければなりません。

 アメリカは、朝鮮停戦協定の締約当事者です。アメリカが三者会談を開こうとしないのは、南朝鮮を永久に軍事基地、核兵器庫として掌握し、東北アジア諸国を威嚇するためです。アメリカが三者会談を避けようとするのは、いかなる詭弁をもってしても正当化できません。

 我々はいま三者会談の開催を主張しており、これからもアメリカにそれを要求しつづけるでしょう。

 我が国の統一問題を解決するためには、アメリカ当局者をして、我々に「南侵」する考えがないことを信ずるようにしなければなりません。

 アメリカ当局者は、北朝鮮の軍事力は南朝鮮より強く、朝鮮に「南侵の脅威」があると、しきりにデマを飛ばしています。これは、かれらが南朝鮮を永久に占領するための口実にすぎません。

 石橋委員長先生は、以前、木村先生が我が国に「南侵の脅威」は存在しないという立派な話をしたと評価されましたが、かれの言ったことは正しいと思います。

 事実、我々の軍事力が南朝鮮より強くないということは、常識的に考えただけでも明白です。共和国北半部の人口は南朝鮮のそれに比べてはるかに少なく、我々の人民軍は南朝鮮かいらい軍の半分にもなりません。軍事装備の面においても、南朝鮮かいらい軍は近代的なアメリカ製兵器で武装しています。

 私は、日本の軍事評論家であれ、他のどの国の軍事評論家であれ、我々の軍事力が南朝鮮の軍事力より強いというのは嘘だと評価するものと考えます。我々の軍事力が、南朝鮮より強い条件は一つもありません。

 しかしアメリカの議会では、我々の軍事力が南朝鮮より強いとし、毎年南朝鮮に軍事援助を与えるべきだと喧伝しています。

 アメリカはありもしない「北からの南侵の脅威」を口実に、毎年南朝鮮に莫大な軍事援助を与えており、南朝鮮で大規模の軍事演習をくりひろげています。南朝鮮で昨年はチーム・スピリット83合同軍事演習をおこない、今年は昨年よりさらに大規模のチーム・スピリット84合同軍事演習をおこないました。南朝鮮で毎年おこなわれている大規模の軍事演習には、多数のアメリカ軍と南朝鮮かいらい軍が参加しています。

 我々には「南侵」する考えがなく、また「南侵」することもできません。我々は、南朝鮮でいかなる不意の事変が起こる場合にも南朝鮮に進攻する考えはなく、緊張をつくりだきないばかりか、緊張を緩和するため努力しつづけるでしょう。

 アメリカ当局者は、我々に「南侵」する考えがないことを信じるべきです。アメリカ当局者が、我々に「南侵」する考えがないことを信じないのは、南朝鮮を永久にかれらの軍事基地、植民地として掌握しつづけようとしているからです。

 我が党の祖国統一方針は明白です。

 我々は、第6回党大会で、北と南が互いに相手側に現存する思想と体制をそのまま容認する基礎のうえで、北と南が同等に参加する民族統一政府を組織し、そのもとで北と南が同等の権限と義務をもち、それぞれ地域自治制を実施する連邦共和国を創立することを主張しました。

 連邦国家では、最高民族連邦会議を構成し、その議長は朝鮮民主主義人民共和国の代表と南朝鮮の代表が輪番制でつとめようというわけです。

 我々は、南朝鮮を共産主義化する考えがないということをすでに久しい前にせん明し、第6回党大会の報告でも明らかにしました。南朝鮮には、日本、アメリカ、西ドイツ、フランスをはじめ、外国が投資したものがたくさんあります。我々がもし、我々の思想と体制を南朝鮮に強要するなら、南朝鮮に投資した国の人たちがおびえることでしょう。それで我々は、南朝鮮を共産主義化する考えがないということを明らかにしました。この問題について私は1981年、ドイツ社会民主党委員長の特使が我が国を訪問したさいにも話しました。

 我々は、朝鮮の北と南に現存する社会制度もそのままにし、北と南が外国と結んでいる対外関係もそのままにし、互いに侵害しないようにしようというのです。

 敵は、我が国の軍事境界線を「反共防波堤」といっており、日本の一部の人もそういっています。我々は、敵がこのようにいう口実をなくしてしまおうというのです。

 我々は、北と南に現存する社会制度をそのままにして中立的な連邦共和国を樹立し、我が国を中立国にすることを主張しています。これは、我が国がどの国の衛星国にもならないようにしようということです。

 朝鮮の北と南に現存する社会制度をそのままにして中立化すれば、我が国は社会主義制度と資本主義制度間の一つの緩衝的な中立地帯となるでしょう。そうなれば、共産主義政権が日本を脅かすという論議もなくなり、我が国は世界のすべての国と友好関係を発展させることができるでしょう。

 私は、あなたがたが我々の三者会談提案を積極的に支持しており、我が国の緊張緩和に深い関心を払い、我々を支援していることに感謝しています。

 我々は、あなたがたが我々にたいする信義を守りつづけていることを高く評価し、敬意を表します。

 私は、今後も貴党がひきつづき我々に支持声援を寄せてくれるよう期待します。

 私は、石橋委員長先生が、今後とも両党間の友好の強化に努めたいといわれたことをありがたく思っています。

 我々は、日本人民との善隣・友好・親善関係を発展させる問題を非常に重視しています。

 いうまでもなく、日本の現当局者は、南朝鮮一辺倒の政策を実施し、朝鮮民主主義人民共和国に非友好的な態度をとっています。しかし、これは過渡的な現象であると考えます。私は、今後、朝・日両国の関係が改善されるものと確信しています。

 石橋委員長先生は、今後、社会党がさらに積極的な闘争をくりひろげ、日本で自由民主党政権が独断的な行動をとれないようにすると述べられましたが、私はそれを全幅的に支持します。我々は、日本が必ずそうなるものと楽観しています。なぜなら、日本社会党が、平和、民主主義、非武装中立の立派な闘争綱領をかかげているからです。

 我々は、今後とも両党の関係をさらに発展させるために努力するでしょう。

 朝・日両国間の漁業問題は、関係者たちに貴方と討議させようと思います。

 我々は、朝・日民間漁業暫定合意書の有効期間を延長することに反対しません。最初、両国間の民間級漁業問題を討議するときにも、日本政府は我が国に友好的な態度をとったのではなく、現在にいたって我が国にたいする態度がさらに悪化したわけでもありません。

 数年前、漁業暫定合意書の有効期間延長問題を協議するために、我が方の代表団が日本を訪問することになっていましたが、日本政府は朝鮮代表団の団長がどうの、なにがどうのと付帯条件をつけてきました。日本政府は我が国にたいし、自分勝手に誰は来い、誰は来るなというふうに極めて非友好的な態度をとりました。これは、我々を侮辱する行為です。それで我々は、代表団を日本に送りませんでした。当時、日本政府は我が国にあまりにも非友好的であったと思います。

 我が方の代表団が日本に行けないからといって、我々が生きていけないわけでもなく、また、日本が我々を認めないからといって、朝鮮民主主義人民共和国が存在しえないわけでもありません。

 もともと、我が党は日本社会党の意見も考慮し、我が国の経済水域内に漁獲に来るのが日本の零細漁民であるということも考慮して、たとえ日本政府は我が国に非友好的であっても、それにかかわりなく朝・日民間漁業暫定合意書に調印するようにはからいました。我々は、日本政府のためを思って漁業暫定合意書に調印したのではありません。我々は、両党、両国人民間の友好関係と日本の零細漁民の生活上の利益を考慮して、漁業分野での協力にかんする暫定合意書に調印したのです。

 日本政府が我々に友好的な態度をとるか非友好的な態度をとるかということは、日本政府に参与する個別的な人にかかわることであって、日本人民はいつも我々に友好的であります。したがって、朝・日民間漁業暫定合意書の有効期間を延長するのはむずかしい問題ではありません。我々はこれを大きな問題と見ていません。この問題は、望ましく解決されるでしょう。

 双方が討議して、民間漁業分野で協力する共同委員会を組織するのかよいと思います。我々の方から日本に行くよりは、日本側から我が国に来て討議するほうがよいでしょう。

 きょうは、この程度にしたいと思います。

 今後さらに討議する問題があれば、委員長先生と個別的にまた会うこともできるし、関係者同士でも協議する問題があれば協議することができるでしょう。

 私の話を注意深く聞いてくださったことに感謝します。

出典:『金日成著作集』38巻


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