金 日 成

科学研究活動に新たな転換をもたらすために
科学院の科学者におこなった演説 
−1983年3月23日− 


 私は科学院創立30周年の記念日に科学院にくるつもりでしたが、事情があってそうすることができず、きょうになってくることができました。

 私はきょう、我が国の科学者、技術者が科学研究活動で達成した誇らしい成果を示す科学展示館を非常に心うれしく見てまわりました。

 これまで科学者、技術者は、党と革命のために、祖国と人民のために献身し奮闘して、科学研究活動で立派な成果を達成し、国の科学技術と人民経済の発展に大いに寄与しました。

 私は、これまで科学者、技術者がきずきあげた大きな業績を高く評価し、献身的なたたかいと貴い努力の誇らしい結実をもって科学院創立30周年を意義深く迎えた科学院のすべての科学者、技術者と職員に熱烈な祝賀と深い感謝を送ります。

 我々が30年前に科学院を創立する当時は、我が国に大学卒業者は幾人もいませんでした。科学院創立当時の学者としては李升基(リスンギ)同志、姜永昌(カンヨンチャン)同志、そして、総合大学の老学者などの数名にすぎませんでしたが、いまでも、かれらの名前を全部あげられるくらいです。当時、我々には、すべてのものが不足していました。朝鮮民主主義人民共和国科学院は実際上、ゼロの状態から出発したわけです。しかし、我々はその間、見違えるほどの発展を遂げました。

 こんにち我が国は、我が党によって育てられた120万のインテリ大集団をもっています。科学院で科学研究活動に従事する科学者だけでも数千名におよびます。こんにち、科学院は強固な土台の上に立っています。

 120万のインテリは、解放後我が党のふところで育った科学者、技術者、専門家の誇らしい大集団です。

 解放後、我が国は非常に困難な状態にありました。しかし、我々は未来に向かって前進するため、なによりもまず人材を育てる仕事からはじめなければなりませんでした。我が党は、人間があらゆるものの主人であり、すべてを決定するというチュチェ思想の原理にもとづき、新しい祖国の建設において民族幹部養成事業を第一義的な課題として提起しました。我々は困苦欠乏にたえ、あらゆる困難を克服しつつ、総合大学をはじめ、各大学と各種形態の幹部養成機関、科学研究機関を設け、民族幹部を系統的に養成しました。我々はまた、民主主義革命と社会主義革命、そして社会主義建設の実践闘争のなかでインテリを革命的に鍛え、国の頼もしい人材に育てあげました。

 私が第6回党大会で指摘したように、我々の育てたインテリは、いまが働き盛りの40代、50代の元気旺盛な人たちです。我々は、活力にあふれチュチェ思想で武装した有能な科学者、技術者の大集団を擁しているため、社会主義経済建設の10大展望目標を十分実現できるという確信をもっています。

 我が党が育てた120万のインテリ大集団は、こんにち我が党と人民がもっている富のうちで最も貴く、最も大きな富です。120万のインテリ大集団を擁しているのは、我が党と人民の大きな誇りであり、光栄であり、これは我々に提起されるすべての革命課題を成功裏に遂行できる強固な土台、確固たる裏付けとなります。私はこのことを非常に満足に思っています。

 近年、我が国の科学者、技術者は、じつに多くのことをなし遂げました。みなさんが科学研究活動で達成した成果のうちには、社会主義建設で参考にすべきものも多く、生産に導入すべきものも少なくありません。しかし、我々はこれに満足することはできません。我々は、これまでの成果にもとづいて国の科学技術を新たな高い段階に発展させるため積極的に努力しなければなりません。

 我が国の科学技術を新たな高い段階に発展させるためには、科学研究活動にたいする指導を決定的に改善しなければなりません。

 これまで政務院は、科学研究活動にたいする指導を正しくおこないませんでした。科学研究活動にたいする指導で重要なのは、科学研究活動を党の要求する方向でおこない、研究の成果がそのつど生産に導入されるようにすることです。しかし、政務院は、科学者に研究課題も明確に与えず、科学研究活動に必要な物質的条件も十分に保障せず、研究の成果を生産に導入する対策も積極的に立てませんでした。そのため、科学研究活動において所期の成果を達成できなくしました。

 最近我が党は、科学研究活動にたいする指導を強化するためのいくつかの組織的な対策を講じました。科学院の院長も新たに任命し、党中央委員会の科学研究機関にたいする指導を改善するようにしました。

 これから、党中央委員会の科学・教育事業部と政務院は、科学研究活動にたいする指導と統制をいっそう強化しなければなりません。

 なによりもまず、科学者に科学研究課題を明確に与え、かれらが科学研究活動を立派に進められるよう、必要な物質的条件を十分に保障すべきです。

 科学者の研究活動条件をととのえるうえで特に重要なのは、実験室と中間試験工場を充実させることです。実験室とともに中間試験工場を充実させずには、科学研究の成果を生産に導入するうえで提起される科学技術上の問題を円滑に解決することができません。ところが、政務院が中間試験工場をよくととのえてやらないので、科学者の多くの研究成果を工業化する試験が満足に進められないありさまです。そのため、少なからぬ科学研究成果が黙殺され、生産に導入されたものはそれほどありません。科学研究の成果を生産に導入する場合にしても、非常に消極的です。科学研究活動の成果を効果的に利用しなければ、大勢の科学者が研究活動にたずさわる意義がありません。

 いま国家では、科学者の研究成果にもとづいて数万トン能力の大規模合成ゴム工場の建設を計画しています。合成ゴム生産の研究成果を工業化するためには当然、中間試験工程をへなければなりません。ところが、政務院は、いままで中間試験工場一つ満足にととのえていないありさまです。現在、150トン能力の中間試験工場が一つあるとのことですが、それではこれから建設する予定の合成ゴム工場と比例があいません。150トン能力の中間試験工場で試験しては、数万トン能力の大規模合成ゴム工場の建設で提起される技術上の問題を円滑に解決することができません。数万トン能力の大規模合成ゴム工場を建設するためには、少なくとも3000トン能力の中間試験工場を建設して試験してみなければなりません。それでこそ、比例があいます。政務院と国家計画委員会が早々に3000トン能力の中間試験工場を一つととのえてやっていたなら、いまごろは生産と工場管理の経験もかなりつみ、幹部も少なからず育っているはずです。そうしていたなら、数万トン能力の合成ゴム工場を建設することくらいはさほど問題にならないでしょう。

 先日、政務院をはじめ、行政・経済機関の幹部が集まった機会にも話したことですが、私は久しい前にかすみ石を総合的に処理してアルミニウムをとり、カリ肥料とセメントを生産する問題を提起しました。第4回党大会の報告でも、かすみ石で工業用アルミニウムを自力で解決する課題を示しています。酸素熱法によるカーバイド生産の問題も第4回党大会の報告で提起したことです。

 かすみ石を総合的に処理してアルミニウムとカリ肥料を生産する課題は、いまなお満足に実行されていません。この課題は党大会で提起したのですから、我が党の科学研究路線であり工業建設路線であるのに、いまなお実行していないというのは極めてゆゆしいことです。党大会でうちだした課題が満足に実行されていないのは、科学者のせいだとばかりはいえません。これは、党中央委員会と政務院の担当部署が科学研究活動に必要な条件をととのえてやらないことと少なからず関係しています。

 最近、私がかすみ石でカリ肥料を生産する問題をふたたび提起して、はじめて政務院はやっと中間試験の対策を請じています。科学試験をせっかちにおこなっては成果をあげることができません。

 我々は国情が困難を極めていた厳しい祖国解放戦争のときにも、李升基博士がビナロンの研究をつづけられるよう必要な条件をすべてととのえてやりました。後方の安全な場所に実験室を設け、戦後には中間試験工場も建てました。我が党が深い関心を払って積極的に援助したので、ビナロンの研究が完成され、ビナロン生産の工業化が実現されました。

 私が機会あるたびに李升基博士について誇らしく語るのは、かれが国内原料にもとづいて繊維問題を解決したからです。もともと李升基博士は、解放前、日本でビナロンの研究をして論文まで書きました。しかし、日本ではその研究をつづけることができませんでした。国が解放されると、かれは南朝鮮に渡りましたが、そこでも事情は同じでした。当時、アメリカ帝国主義の忠実な手先である李承晩支配層には、国の科学技術の発展をはかろうとする考えなど毛頭なかったし、したがって、自国の科学者、技術者は必要でありませんでした。そのため、南朝鮮の反動支配層は、李升基博士に研究条件をととのえてやりませんでした。

 我々は南朝鮮の愛国的な革命組織をつうじて、李升基博士が南朝鮮で見捨てられていることを知り、かれを連れてくるようにしました。かれは、すすんで愛国の道を選び、共和国北半部にきました。李升基博士は、主体的科学を発展させるという我が党の路線を我が国の現実に具現した科学者であり、その研究成果にもとづいて創設されたビナロン工業は主体的工業の立派な手本です。

 こんにち我々には、科学研究活動に必要な物質的条件を十分に保障できるあらゆる条件と可能性があります。政務院は所与の条件と可能性を利用して、科学者の研究活動条件を十分に保障すべきです。

 中間試験工場は、具体的な検討もせずにみだりに建設してはいけません。これから中間試験工場をつくる問題が提起されたときは、党中央委員会と政務院の当該部署が慎重に検討し、必ず必要であると認められるものだけつくるようにすべきです。党中央委員会と政務院の当該部署は、科学院から提起される科学研究課題も具体的に検討して承認すべきです。

 これから中間試験工場はできるだけ、平城、順川、价川、徳川地区をはじめ、平壌から近いところに建設するのがよいでしょう。

 科学研究活動に必要な資材を十分に供給すべきです。鋼材、非鉄金属、セメント、原木などの資材は、生産量からその一部をさいて科学研究活動にふり向けるべきです。私はすでに久しい前に、科学研究活動に必要な資材をその生産量から0.5%程度さいて供給するよう指示しました。政務院はこの指示をしばらくのあいだは実行しましたが、最近になって現行生産に追われるからといってよく実行していません。こういうことでは、科学技術を速やかに発展させることができません。政務院は、科学研究活動に必要な資材を無条件、供給するシステムを確立しなければなりません。科学院から提起される外貨問題も十分に検討して解決してやるべきです。

 科学院管下の建設企業所を充実させなければなりません。そうしてこそ、科学院が研究室や実験室をつくり、中間試験工場も建て、自活していくことができます。現在、科学院管下に700余名の従業員を擁する建設企業所があるとのことですが、その規模を1500名程度に増やして建設企業所の充実をはかるべきです。今後、必要であれば従業員をさらに増やすこともできます。

 こんにち科学者、技術者には、極めて重要な任務が提起されています。科学者、技術者は、科学研究活動をいっそう力強くおし進め、国の科学技術水準をいちだんと高め、人民経済の速やかな発展に積極的に寄与しなければなりません。

 第1に、人民経済の主体化を実現する科学研究活動に第一義的に力をそそがなければなりません。

 人民経済の主体化を実現するうえで提起される重要な問題は、国内の原料、燃料で工業を発展させることです。

 科学者、技術者は、国内の原料と燃料を最大限に動員、利用するための研究活動に力をそそがなければなりません。

 科学者、技術者はこれとともに、我が国にない原料と燃料を国産で代用する研究活動を積極的に進めるべきです。

 いま人民経済の各部門でステンレス鋼が多く要求されていますが、我々はそれをいくらも生産していません。ステンレス鋼を大量に生産するためには、多くのニッケルが必要ですが、我が国にはニッケル資源が豊富でないばかりか、その品位も高いものではありません。したがって、国内のわずかなニッケル資源をもっては、人民経済におけるステンレス鋼の需要を充足させることはできません。科学者は、ニッケルをあまり使わないようにするか、または使わずに、国内の豊富な原料でステンレス鋼を生産するための研究活動を進め、ステンレス鋼を代用できる耐食性材料をつくりだす研究活動も進めるべきです。こうして、我が国にないか少ない原料、燃料を他のもので代用する方途を積極的に探しだしてこそ、工業の主体性を確固と保障することができます。

 きょう科学展示館で無煙炭でつくった電極を見ましたが、それはさほど意味がありません。我が国に黒鉛がなければ別ですが、黒鉛が豊かなのに、わざわざ無煙炭で電極をつくる必要はありません。我が国で無煙炭は非常に大事なものです。無煙炭は、燃料としてだけでなく、カーバイド生産をはじめ、人民経済各部門で工業原料としても広範に利用されています。したがって我々は、無煙炭を工場、企業所と家庭でできるだけ使わないようにする運動をくりひろげています。我々は、どこにでもおかまいなく無煙炭を使おうとせず、最大限に節約しなければなりません。

 科学者、技術者は、主体的立場にしっかり立って、科学研究活動をしなければなりません。そうして、我が国の工業を主体化するうえで切実に提起される科学技術上の問題を解決すべきです。これが、国の人民経済発展のための科学研究活動の基本であるといえます。

 科学者、技術者は特に、冶金工業でコークスの使用量を減らし、国内の石炭で鉄を生産するための科学研究活動をさらに強化しなければなりません。

 製鉄で重要なのは鉄鉱石とコークスですが、鉄鉱石は我が国に無尽蔵です。最近も地質探査員は、両江道地区で新たな鉄鉱石埋蔵地を発見したとのことです。探鉱をつづければ、今後、鉄鉱石はもっと探しだせるでしょう。ところが、問題はコークス用炭です。これまでコークスのかわりに国内炭で鉄を生産する研究活動で貴重な成果が達成されました。これから科学者は、冶金工業の主体性を強める研究活動を各方面にわたっていっそう深めるべきです。科学者は安州炭の研究もいっそう深め、我が国に豊かに埋蔵されている安州炭が冶金工業の主体化の実現に効果的に利用されるようにすべきです。

 科学者、技術者は、軽工業を発展させるための原料問題の解決にも関心を払わなければなりません。

 科学者、技術者が経済幹部と力を合わせてすこし努力すれば、国内の原料で軽工業を速やかに発展させることができます。

 以前、軽工業部門の幹部のあいだに、国産のビナロンで織物を生産しようとせず、外国からテトロン綿や木綿綿などを輸入して織物を生産しようとする傾向があらわれました。それで、軽工業部門の幹部を批判したのですか、最近はそういう傾向がなくなりました。要は、活動家がどういう観点に立っていかに努力するかにあります。

 いま我が国の工業発展水準は、非常に高いにもかかわらず、いまだに人民生活に必要な日用品を十分に生産できずにいます。我々はこの問題を一日も早く解決しなければなりません。我が党は、軽工業革命を力強くくりひろげ、人民生活に必要ないろいろな商品がすべての商店にたくさん出まわるようにしてから、次回の党大会を開催するつもりです。

 科学者、技術者は、党の意図を明確に知り、軽工業革命を起こすうえで問題となっている接着剤、染料など、各種の資材と原料を国産化する研究活動に力を入れるべきです。

 第2に、第6回党大会が示した社会主義経済建設の10大展望目標を達成するための科学研究活動を力強く進めなければなりません。

 社会主義経済建設の10大展望目標は、極めて困難で膨大な課題です。しかし、これは我が党と人民が真剣に取り組んで努力すれば十分遂行できる現実的な闘争目標です。

 1000億KWhの電力生産目標をとってみてもそういうことがいえます。これから、各種の水力資源開発方式による水力発電所の建設を予見して初歩的に見積もっただけでも、我が国に700億〜800億KWhの水力資源があるとのことです。これはたいへんな量です。これからより多くの水力発電所を建設し、黒鉛状無煙炭とボタを利用する火力発電所と原子力発電所が建設されることまで計算に入れれば、1000億KWhの電力生産目標は十分達成できるという結論が得られます。

 1億2000万トンの石炭生産目標も達成できます。我々が力を集中して安州地区の炭鉱を近代的に改造拡張し、新しい採炭法を導入すれば、そこからだけでも年に1億トンの石炭が産出されます。安州地区には、毎年1億トンとしても、160年ものあいだ採炭できる石炭が埋蔵されています。

 1000億KWhの電力生産目標と1億2000万トンの石炭生産目標さえ達成すれば、他の展望目標はすべて達成することができます。

 150万トンの非鉄金属生産目標を達成する問題は、昨年の党中央委員会の咸興総会で具体的に討議し、決定まで採択しました。

 1500万トンの鋼鉄生産目標も達成することができます。石炭を十分に供給し、主体的な製鉄法を広く導入するなら鋼鉄生産はいくらでも増やすことができます。

 いま我々は、社会主義経済建設の10大展望目標を達成する対策を一つひとつ立てています。

 社会主義経済建設の10大展望目標を成功裏に達成するためには、多くの科学技術上の問題を解決しなければなりません。この科学技術上の問題を一つひとつ解決して、人民の社会主義建設を科学的、技術的に立派に保障するのが、まさに現段階における科学者、技術者の栄誉ある革命課題です。

 科学者、技術者は、我が国の水力資源をより多く利用し、電力生産を増大するよい方途を深く研究し、石炭生産を早急に増やし、それを効果的に利用する対策も研究しなければなりません。科学者、技術者は、安州地区の炭鉱を大々的に開発して石炭生産を増やす方途を研究するとともに、近代的な採炭設備を研究製作し、先進採炭法と炭鉱の地下水処理方法も研究しなければなりません。いま炭鉱では、石炭運搬に多くの労働力をかけていますが、長距離ベルトコンベヤーの設置をはじめ、石炭運搬を近代化するいろいろな方法も研究すべきです。科学者、技術者が、石炭生産目標を達成するために研究し解決すべき科学技術上の問題は非常にたくさんあります。

 鋼鉄生産目標をはじめ、10大展望目標の他の目標を達成するうえでも、解決を要する科学技術上の問題がたくさんあります。科学者、技術者は、こうした科学技術上の問題を成功裏に解決することによって、社会主義経済建設の10大展望目標の達成に積極的に寄与しなければなりません。

 社会主義経済建設の10大展望目標は困難かつ膨大な課題ではありますが、我々はその実現について楽観しています。いまは、我々が素手で敵の銃を奪い取って戦った抗日武装闘争の時期でもなく、すべてをゼロの状態からはじめた解放直後の困難な時期でもありません。こんにち我々は、党と革命にかぎりなく忠実な革命的労働者階級と120万のインテリ大集団、そして自立的民族経済の強固な土台をもっています。こうした状況のもとで、我々が全人民の力を正しく組織、動員し、あらゆる潜在力と可能性を動員利用するなら、社会主義経済建設の10大展望目標の実現は十分可能です。

 第3に、技術革命を遂行するための科学研究活動を積極的に進めなければなりません。

 技術革命は、思想革命、文化革命とともに我が党がうちだした社会主義建設の戦略的路線です。人々を搾取と抑圧から解放したあとは、技術革命を遂行して骨のおれる労働からも解放しなければなりません。我々は、日本帝国主義侵略者を打倒して人民を民族的従属から解放し、民主主義革命と社会主義革命を遂行して人民を階級的従属から解放しました。そしていま我々は、勤労者を骨のおれる労働から解放することを重要な革命課題とし、その実現のために努力しています。

 勤労者を骨のおれる労働から解放するためには、技術革命を力強くおし進めて生産工程の機械化、オートメ化を実現しなければなりません。特に、採掘工業をはじめ、骨のおれる労働の多い部門で生産工程を機械化、オートメ化するため積極的に努力すべきです。

 技術革命は、すなわち機械革命です。機械工業を発展させずには、技術革命をおし進めることができません。我々は、機械工学、自動化工学を速やかに発展させ、我が国の機械工業を新たな高い段階に引き上げなければなりません。こうして、高度にオートメ化された近代的機械設備までもすべて自力で生産すべきです。

 人民経済のオートメ化を実現するためには、一部の工場設備を輸入することももちろん必要です。しかし、外国の技術に依存しては、人民経済のオートメ化を成功裏に実現することができません。いまアメリカ帝国主義者は、反帝闘争の先頭に立っている我が国の社会主義建設を妨げ、我々が早く発展できないようにしようと策動しています。アメリカ帝国主義者は、依然として我が国にたいする経済封鎖政策を追求しており、かれらが特許権を保有している現代技術が、我が国にはいらないようにするためあらゆる策動を弄しています。こうした状況のもとで、我々がオートメ化設備など、近代的な機械設備を生産する工場をプラント輸入するにはさまざまな障害があります。我々はあくまでも、自力ですべてを解決するため積極的に努力しなければなりません。自力更生の革命精神をもってねばり強く取り組んで努力すれば、なんでも自力で解決することができます。

 自分の力を信じ、自力更生するのは、我々の終始一貫した革命的原則です。我々は、革命をはじめるときから他力本願ではなく、あくまで自分の力に依拠しました。抗日武装闘争の時期、我々は外国から銃1丁、手榴弾をつくる簡単な設備一つ支援をうけることができませんでした。我々は、命をかけて敵の武器を奪い取って武装し、自分の力と知恵で「延吉爆弾」をつくり、敵と戦いました。

 我々は戦後、性能のよい高速エンジンをつくるときにも、工場をプラント輸入したのではなく、自力で工場を建設してつくったのです。もちろん、我々が自力で性能のよい高速エンジンを製作する過程には多くの難関があり、たいへん苦労しました。しかし、我々は結局成功し、性能のよい高速エンジン生産基地をしっかりと築きあげました。

 今後、近代的な機械設備を自力で生産して人民経済各部門の生産工程を機械化、オートメ化する過程には、さまざまな障害と難関があるでしょう。しかし、科学者、技術者が、外国にたいする事大主義を一掃し、自力更生の革命精神を高く発揮して積極的に努力するならば、つきあたる種々の障害と難関を克服し、技術革命の課題を成功裏に遂行していくことができるでしょう。

 科学者が科学研究活動で成果をおさめるためには、革命的な学習気風を確立して水準を早く高めなければなりません。

 科学者は人一倍学習に励み、発展する現実の要求に即応してその水準を不断に高めなければなりません。もし科学者がいま到達した水準に満足したり、以前外国に留学して学んできたことがたいしたものであるかのように思って学習をおこたるならば、科学研究活動で成果をおさめることはできません。

 科学者にとっては、学習が第一義的な任務です。科学者は、学習にたいする観点を正し、毎日、研究課題を遂行するほかに何時間か計画的に学習すべきです。他の仕事に動員されたときにも、毎日、学習時間を定めて学習を日常化すべきです。

 科学者は、なによりもまず専攻部門の学習に力を入れるべきです。こうして、自分の専攻部門の科学技術上の問題に精通し、その分野の世界的趨勢にも明るくなければなりません。

 科学者はまた、外国語の学習を強化しなければなりません。

 科学者が外国語を知らなくては、世界の先進科学と技術を日常的に研究し、それをそのつど取り入れることができません。

 私の考えでは、科学者は、特に日本語、英語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、中国語の学習に力を入れるのかよいと思います。私はきょう、党中央委員会総書記の名で、科学院のすべての科学者が外国語学習を強化して、第7回党大会が開催されるときまで1つ以上の外国語を完全にマスターすることを重要な課題として提起するものです。科学者が外国語の学習を強化して、2つ以上の外国語をマスターするなら、それにこしたことはありません。

 これから科学院では、毎週何時間かの外国語学習時間を定め、その時間に科学者に外国語の学習をさせるべきです。ちかごろ、テレビジョンで外国語の講義をしていますが、それを利用しても外国語の学習をすることができるでしょう。科学者のあいだで外国語の学習を強化すれば、3年もすればすべての科学者が外国の科学技術書を自由自在に読んで翻訳できる水準に到達するでしょう。

 科学者の外国語学習状況を1985年の下半期に一度総括してみる考えです。私が直接総括できなければ、党中央委員会の科学・教育事業部に指示して統括させる考えです。総括は、試験を実施する方法もあり、翻訳課題を与えて実行させる方法もあります。

 いま人民大学習堂に外国の科学技術書がたくさん備えてありますが、それを科学者が1冊ずつ担当して翻訳するようにさせるのかよいでしょう。科学技術書をたくさん翻訳して道、市、郡の図書館と大きな工場、企業所の図書室に送ってやれば、たいへん喜ばれるでしょう。数年前、外国から私に贈られてきた『現代科学工学大辞典』を朝鮮語で翻訳出版させましたが、いまその辞典が効果的に利用されています。

 科学者が外国の科学技術書を翻訳すれば、その過程で多くの知識を習得し、また外国語のレベルも早く高まるでしょう。

 科学者が熱心に学習をしようとするなら、人民大学習堂を効果的に利用すべきです。

 私は久しい前に平壌市建設総計画図を承認するとき、平壌市中心部のいちばんよいところに人民大学習堂を建てる場所をあけておくようにし、そこに人民大学習堂を建設させました。党の指導のもとに、人民大学習堂は短時日に壮大な規模で立派に建設されました。人民大学習堂は、世界に誇れる記念碑的建造物であり、朝鮮人民の貴い財産です。人民大学習堂はたんなる図書館ではなく、大学と同じような科学教育の殿堂です。科学者、技術者が、人民大学習堂を効果的に利用すれば、多くのことを学ぶことができるでしょう。

 私がきょう、科学研究活動について示した課題をすべての科学者に伝達すべきです。

 私は、科学院のすべての科学者、技術者が、高い革命的熱意をもって科学研究活動に新たな転換をもたらし、党のあつい信頼と期待に必ずこたえるものと確信します。

出典:『金日成著作集』37巻


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