金 日 成

中小規模の水力発電所を数多く建設するために
―両江道の責任幹部協議会でおこなった演説― 
1982年8月13日 

 両江道は水力資源が非常に豊富です。おおざっぱに見積もっても両江道には76万KWの電力生産が可能な中小規模の水力発電所を建設することができるとのことです。一つの道に中小規模の水力発電所を建設して、76万KWの電力を生産できるというのならたいしたものです。

 私は、どうすれば両江道が自力で電力を生産して工場、企業所をフルに操業させることができるかということを数年前から研究してきました。石炭の足りない両江道が動力問題を自力で解決するためには、中小規模の水力発電所を大々的に建設して電力を大量に生産しなければなりません。両江道では、石炭を生産するより電力を生産するほうが容易です。

 このたび両江道では、中小規模の水力発電所建設案を私の意図どおりに作成しませんでした。両江道では、河川にそって下りながらいくつものダムをつくって中小規模の水力発電所を建設することを予見していますが、そのようにしては多くの電力を生産することができません。

 そういうやり方で中小規模の水力発電所を建設しては大きい落差が得られないので、電力をいくらも生産できないばかりでなく、工事量が多くなり設備もたくさん設置しなければならないので、いろいろな面で不利です。胞胎発電所の場合も川にダムを建設して水路を長く引けなかったので、落差が小さくて電力をあまり生産できない状態です。大同江では他の方法がないので、美林閘門発電所と麦田閘門発電所の落差を大きくすることができませんでしたが、両江道のような山間部では大きい落差をつくれない理由がありません。

 両江道では、河川にダムを建設して尾根づたいに水平に水路をつくり、水を引いて渓谷に落下させる方法で大きい落差を得て中小規模の水力発電所を建設しなければなりません。ある人民軍部隊にこういう方法で中小規模の水力発電所を建設する課題を与えましたが、両江道でもそういう方法で中小規模の水力発電所を建設する案を作成すべきです。

 両江道にこうした方法で中小規模の水力発電所を大々的に建設すれば、道内の需要をみたしてなお余るほどの電力を生産することができるでしょう。そうなれば、恵山製紙工場と恵山紡織工場をはじめ、道内の工場、企業所に電力を十分に供給でき、いまのように石炭のため苦労することもないでしょう。

 河川にダムを建設し、水路をつくって水を引き、渓谷に落下させる方法で大きい落差を得て中小規模の水力発電所を建設すれば、それくらいの電力を生産するためにダムをいくつも建設して小さい落差をそのまま利用する発電所を建設するより工事量も減り、設備や資材も少なくてすみます。水路をつくるときに岩盤にでくわすと工事が難行しますが、そのかわり大きい落差が得られるし、発電機の台数も減らすことができます。

 両江道には渓谷が多いので、どの河川にせよダムを建設し、尾根づたいに水路をつくり、水を1〜2キロメートル引いて渓谷に落下させれば、50〜70メートルの落差を得ることができるでしょう。50〜70メートルの落差を得るとすれば、すでに見積もったよりも約10倍の電力を増産することができるでしょう。

 人民軍では、ダムを建設して150メートル区間の水路をつくり、水を引いて渓谷に落下させる方法で小規模の水力発電所を建設しましたが、小型発電機2基で大量の電力を生産しています。もし、人民軍がこのようにせず、ダムの下に発電所を建設していたならば、電力をいくらも生産できなかったでしょう。この発電所では、渇水期には発電機を1基だけ稼働させ、満水期には2基稼働させる方法で電力を生産していますが、いまは満水期なので2基の発電機をフルに稼働させています。人民軍が建設した水力発電所は大きなものではありませんが、そこで生産される電力を温室の暖房に利用しています。

 両江道でもこういう方法でまず発電所を一つ建設してみる必要があります。

 わが国には、中小規模の水力発電所を建設できる河川がたくさんあります。冠帽川や温堡川に小さなダムを建設し、尾根づたいに水路をつくって水を引き、500メートルぐらいの落差を得れば多くの電力を生産することができます。1トンの水を500メートルの高さから落下させて4000KWの電力が生産されるとすれば、冠帽川や温堡川から1秒当たり5トンの水が流れると見積もっても2万KWの電力を生産することができます。冠帽川や温堡川の水を引いて400メートルの落差を得るとしてもたいしたものです。

 両江道でも小紅湍水にダムを建設し、尾根づたいに大紅湍の薬圃まで水路をつくれば大きい落差を得ることができますが、1秒当たり2トンの水が流れるとしてもかなりの電力を生産することができるでしょう。

 鯉明水にもダムを建設し、水路をつくって大きい落差を得る方法で中小規模の水力発電所を建設すれば、数千KWの電力を生産することができます。両江道では1〜2年内に鯉明水に中小規模の水力発電所を建設して三池淵地区の住宅に電気暖房をほどこし、公共建築物に必要な電力問題も解決するといっていますが、これは非常によいことです。鯉明水の上流にダムを建設して尾根づたいに水路をつくり、水を引いて渓谷に落下させる方法で大きい落差を得て電力を生産したあとは、集水し、それをふたたび同じ方法で利用する発電所を建設しなければなりません。このような方法で中小規模の水力発電所を建設すれば、河川の一定の区間の水が減るかも知れませんが、そこには人が住んでいないので問題になることはありません。鯉明水から5メートル程度水を水路に汲みあげれば、大きい落差が得られる尾根があるとのことですが、水を汲みあげる方法は好ましくありません。水路に水を汲みあげるには、それだけの電力が消費されることになります。水を水路に汲みあげようとするのではなく、ダムを建設して水が尾根づたいにつくった水路に自然に流れこむようにすべきです。

 電力工業省では、鯉明水に高さ2メートルのダムを建設し、尾根づたいに1.4キロメートルの水路をつくって21メートルの落差をもった鯉明水1号発電所を建設して250KWの電力を生産し、同じ方法で鯉明水2号発電所を建設して320KW、鯉明水3号発電所を建設して500KW、鯉明水4号発電所を建設して1280KWの電力を生産する見積もりを立てていますが、中小規模の水力発電所はそういうふうに建設すべきです。

 佳林川にもダムを建設し、水路をつくって水を引き、大きい落差を得て発電所を建設すれば、河川づたいに3つのダムを築いてそこに発電所を建設するよりももっと多くの電力を生産することができるでしょう。佳林川に大坪ダムをはじめ、3つのダムを築いて大きな貯水池をつくり、そこに発電所を建設すれば、佳林川渓谷の景色がいっそう美しくはなりますが、そうしなくても佳林川渓谷の景色は美しいので関係ありません。

 金正淑郡でも院洞地区にダムを建設して水路をつくり、水を引いて大きい落差を得れば、かなりの電力を生産することができるでしょう。しかし、院洞地区に発電所を建設すれば、イカダ流しに支障があるのではないかという問題が提起されます。中小規模の水力発電所を建設するときに、イカダ流しをする区間は残しておくべきでしょう。

 甲山地区にも甲山1号発電所を大きく建設し、白岩地区にも中小規模の水力発電所を建設することができます。白岩地区を通るときに見ると、もったいない水をむだに流していました。白岩地区に発電所を建設しても、鉄道が水に浸かることはないでしょう。

 雲寵江上流にもダムを建設し、尾根づたいに水路をつくって水を引けば、大きい落差を得てかなりの電力を生産することができ、大紅渓谷にもそのような方法で中小規模の発電所を建設することができます。

 河川にダムを建設して尾根づたいに水路をつくり、水を引いて電力を生産する中小規模の水力発電所は、渓谷の傾斜が急であればあるほど建設に有利です。両江道内の河川は流れが急であるうえに尾根に水路をつくるのも容易なので、中小規模の水力発電所を建設するのに有利でしょう。

 両江道で中小規模の水力発電所を立派に建設するためには、大きい落差を得る方策を立てなければなりません。中小規模の水力発電所は、ダムを建設し水路をつくって水を水平に引き、渓谷に落下させる方法で建設しなければなりません。そうすれば、少なくとも40〜50メートルの落差を得ることができます。40〜50メートルの落差なら、現在の見積もりどおり河川にそって下りながらいくつものダムを築いて発電所を建設するよりもさらに多くの電力を生産することができるでしょう。尾根づたいに水路をつくり、そこに水を引いて渓谷に落下させて大きい落差を得るためには、測量を正確にしなければなりません。

 河川にダムを築いて集水した水を尾根づたいに水平に引くための水路は、鉄管かヒューム管を連結するなり、板を利用してといのようにすることもできるでしょう。現在、鉄鋼材とセメントが不足しているので、鉄管やヒューム管は緊要なところにのみ使い、水路は板を利用してといのようにつくらなければなりません。板で水路をつくると、最初は少し水漏れがしますが、水がひきつづき流れるうちに板が膨張するので漏らなくなります。木は水にひたっているとそれほど腐りません。板で水路をつくっても数十年はもちます。

 抗日武装闘争当時、汪清遊撃根拠地では水車で米をついて遊撃隊に供給しました。当時、木でといをつくって水車をまわしたものです。最初は水がもりましたが、といの継ぎ目にカヤなどをつめておくと漏りませんでした。水路にビニールフィルムを敷いて水漏れを防ぐようにするという人もいますが、ビニールフィルムが足りないのでそれは不可能です。

 中小規模の水力発電所は、できるだけ地元の資材を多く利用する方向で建設しなければなりません。中小規模の水力発電所のダムをコンクリートで建設するとよいのですが、いまはセメントが足りないのでそれを供給するのは不可能です。いまのところ木材で建設し、ゆくゆくセメントが十分に生産されれば、コンクリートで建設しなおせばよいでしょう。ダムを木材で建設しても、水が漏らないようにすれは大丈夫です。

 両江道では中小規模の水力発電所を多く建設しなければならないので、自力でセメント工場を建てなければなりません。セメント工場の建設に必要な資材は供給することにします。

 他の道でも、中小規模の水力発電所建設に必要なセメントは自力で生産して使うようにしなければなりません。そうしてこそ、道で自力更生の革命精神を高く発揮することができます。慈江道、両江道、咸鏡北道のような道でセメントを自給するのはさほど問題になりません。各道で中小規模の水力発電所建設に必要なセメントを全量自力でまかないきれないというのなら、当分のあいだは国家が一部供給することにしますが、なんとしてでも自力でまかなうために努力しなければなりません。国家が中小規模の水力発電所建設に必要なセメントをひきつづき供給すれば、各道では自力で生産しようとしないでしょう。両江道ではセメント工場を建設したのち、焼成炉に使う無煙炭だけ他の道からもってくることにし、電力問題は自力で解決しなければなりません。

 両江道に中小規模の水力発電所建設事業所を大きく組織するつもりです。中小規模の水力発電所建設事業所が組織されれば、水路工事などは数個所の対象を同時になし遂げることができます。事業所を組織して建設労働力を大鎮坪渓谷と鯉明水渓谷、金正淑郡などに数百人ずつ送りこめば、工事をすみやかに終えることができるでしょう。

 中小規模の水力発電所設備のうち水車がいちばん問題だというなら、電力工業省管下の咸興電力設備部品工場に肉づけをして水車を生産するようにさせるべきです。咸興電力設備部品工場を拡張し生産能力を高めるのに必要なセメント、鋼材、木材とトラック、トラクター、旋盤、ボーリング盤、歯切盤、空気ハンマーを供給すべきです。

 順川電力設備補修事業所で中小規模の水力発電所に設置する100KVA、200KVA、300KVA変圧器の生産が可能なら、その生産に必要な珪素鋼板と銅を供給して、今年度中に変圧器を生産できるようにすべきです。

 両江道地区の中小規模の水力発電所建設案を作成しなおすべきです。

 中小規模の水力発電所建設案を正確に立てるためには、水力資源の調査を綿密にしなければなりません。水力資源の調査を綿密にすれば、すでに見積もったよりももっと多くの電力生産予備をみつけだすことができます。当該部門の専門家が現地踏査によって水力資源を調査し、水路をつくる位置も具体的に検討しなければなりません。

 両江道に中小規模の水力発電所を建設する案ができあがれば、現地か平壌に帰って報告をうけようと思います。両江道の責任幹部が党中央委員会総会に参加するため平壌に行かなければならないので、そのときに報告をうけることにしてもよいでしょう。

 電力工業省で元山に10万KW、咸興に15万KW、沙里院に10万KW、海州に10万KW、開城に2万4000KW能力の火力発電所を建設するといっていますが、それに対しては異存がありません。電力工業省が見積もったとおり火力発電所を建設しても、黒鉛状無煙炭を供給するのはさほど問題になりません。

 黄海北道と黄海南道、開城市の責任幹部の意見どおり沙里院、海州、開城に建設する火力発電所では、黄海北道に埋蔵されている黒鉛状無煙炭を燃料にするのがよいでしょう。そうすれば、江原道に埋蔵されている黒鉛状無煙炭は元山と咸興に建設する火力発電所の燃料にすべきです。

 江原道に埋蔵されている黒鉛状無煙炭は元山と咸興に建設する火力発電所だけで使うので、黒鉛状無煙炭の質がよければ、元山に20万KW能力の火力発電所を建設することができるでしょう。しかし、黒鉛状無煙炭を燃料にする火力発電所の建設ははじめてなのですから、元山には10万KW能力の火力発電所を建設すべきでしょう。黒鉛状無煙炭を燃料とする火力発電所を建設すれば、そこから石膏が得られるとのことです。

 都市に黒鉛状無煙炭を燃料とする火力発電所を建設すれば、セントラル・ヒーティングを導入して石炭不足を解消することができます。まだ都市にセントラル・ヒーティングが十分に導入されていないため、石炭を民需用として多く供給しているので、石炭が不足して工業部門の生産に支障を与えています。セメントとカーバイド、鉄の生産だけでも大量の石炭が要るので、都市をセントラル・ヒーティング化し、民需用として供給していた石炭は工業部門にまわすべきです。

 将来、都市にセントラル・ヒーティングを導入し、住民がガスで炊飯をするようにしなければなりません。平壌に帰りしだい、科学者に黒鉛状無煙炭によるガス生産の研究課題を与えようと思います。

 三池淵国際ホテルと普天温水旅館を立派に建てなければなりません。

 三池淵国際ホテルは、客が多くないので大きく建てる必要はありません。三池淵国際ホテルは、建物を幾棟も建てることなく、52名収容できる館1棟と付属建物だけ建てればよいでしょう。国際ホテルを幾棟も建てると管理運営が困難です。建物を幾棟も建てれば、その管理に多くの人をおかなければならず、暖房もむずかしくなります。暖房をほどこすためには、各建物にスチーム管を通さなければなりませんが、それも簡単なことではありません。

 普天温水旅館は、総聯活動家の宿泊する旅館なので、温泉が出る普天郡温水坪に建てるのがよいでしょう。日本に住んでいる人は温浴を好みます。

 普天温水旅館も幾棟も建てる必要はありません。いま、山の中腹に建てている建物は2階まで工事が進んでいるなら、そのまま完成させるべきです。これから総聯活動家が個別に来る場合は、現在の建物に宿泊させるべきです。現在の5棟の建物のうちで4棟を人民軍が利用しているなら、彼らをほかのところに移して旅館にすればよいでしょう。

 普天温水旅館の収容能力は150名にしないで100名にすべきです。150名にすると、管理がむずかしくなります。総聯活動家が一度に100名以上来る場合は、旅館の収容能力にあわせてよこせばよいでしょう。普天温水旅館を早く建てるべきです。

 三池淵には毎年、内外の数多くの人がやって来るので、三池淵国際ホテルと普天温水旅館は高級資材を使って内装、外装ともにきれいに仕上げなければなりません。これらの建設に必要な資材は、国家予備から出庫することにします。
出典:『金日成著作集』37巻 

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